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●研究紹介

このHPは「フードデザート問題 (food deserts issues : 食の砂漠問題)研究グループ」の活動内容を紹介するページです。

フードデザート(food deserts)とは,生活環境の悪化のなかで健康的な食生活の維持が困難となった,都市の一部地域を意味します. 近年欧米諸国では,フードデザートが問題視されています.スーパーストアの郊外進出が顕在化したイギリスでは,1970-90年代半ばに,inner-city / suburban estateに立地する中小食料品店やショッピングセンターの倒産が相次ぎました(Guy 1996).その結果,郊外のスーパーストアに通えないダウンタウンの貧困層は,都心に残存する,値段が高く,かつ野菜やフルーツなどの生鮮品の品揃えが極端に悪い雑貨店での買い物を強いられています(Wrigley 2003ほか).イギリスでは,彼らの貧しい食糧事情が,ガンなどの疾患の発生率増加の主要因であると指摘する研究報告が多数見られます(Davey Smith, D and Brunner, E 1997).一方,アメリカではフードデザートエリアにジャンクフード店が入り込み,肥満問題が発生しています(Swinburn ほか2004,など).

フードデザートは,①社会的弱者(高齢者,低所得者など)が集住し,②商店街の消失などに伴う買い物環境の悪化(食料品アクセスの低下)と,家族・地域コミュニティの希薄化に伴う生活支援の減少(ソーシャル・キャピタルの低下)のいずれか,あるいは両方が生じたエリア,と整理できます. この問題には,社会的排除問題(Social exclusion issues)が強く影響しています.そもそも,街の構造は時代とともに絶えず変化します.都市構造が変わるとき,必ず「ひずみ」が生じます.現在日本で深刻化している,モータリゼーションの進展による中心商店街の空洞化や,大都市圏の縮小の中で取り残され老朽化・高齢化する郊外の住宅団地なども,こうした「ひずみ」の一つです.「ひずみ」に落ち込み苦しむのは,いつの時代も社会的弱者と呼ばれる人たちです.独居世帯の急増(核家族化の進展)や貧困の拡大,社会からの引きこもる高齢者の増加(コミュニティの衰退),不採算地域における生鮮食料品店や公共交通機関(医療,社会福祉施設)の撤退,各種の社会保障制度の見直しなども,フードデザートを拡大させる要因です.フードデザートは,単なる買い物不便という問題ではありません. フードデザート問題は,社会的排除(Social exclusion)の一種であり,社会格差の拡大や社会構造の変容,都市構造の変化,食育問題などが介在しています.

日本では,シャッター通りが増える地方都市の中心市街地や農山漁村,いわゆる無縁社会問題を抱える高齢化団地などで,フードデザート問題が発生しています.なかでも深刻なのが,都市部です。 所得の格差が広がるなか,子供世帯やご近所,友人たちからの支援も得られず,僅かな基礎年金だけで暮らざるをえない一人暮らしのご年配の方が,急速に増えています.社会から引きこもり孤立する年寄りたちの増加も深刻です. フードデザート地域にお住まいのこうした方々の間では,「低栄養」などの健康被害が拡大していることが危惧されます .急激な人口高齢化を迎える日本において,高齢者の居住環境の悪化は喫緊の研究課題です.しかし,多くの自治体ではフードデザート問題を十分には認識していません.

被災地では,フードデザート問題がより一層深刻化しています .被災された方々,地方行政の皆さん,ボランティアの方々.みなさんは本当にガンバッてらっしゃいます.頭がさがります.しかし,フードデザート問題は依然として深刻な状態です.喫緊の課題です.

フードデザート問題の発生には,貧困や高齢者の社会からの孤立など様々な要因が深くかかわっています.生鮮食料品店への近接性のみを高めても,他の要因が改善されない限り,高齢者の栄養状態は改善されにくい現状にあります. また,現在は空洞化する地方都市中心部や過疎地域が注目されていますが,今後急速に高齢化が進みフードデザートが深刻化するのは,大都市郊外(住宅団地など)です.フードデザート問題は,近い将来非正規雇用の若年層や外国人労働者達に拡大していく可能性もあります.長期的視野に立った対策が必要です.

国や地域によって,社会・文化的な背景や都市構造等は大きく異なります.必然的に,フードデザート問題の性質も多様化します.高齢者を中心に問題が深刻化する日本では,欧米とは異なる独自の解決策が必要です.私達のグループは,日本でのフードデザート問題の実態解明と,問題解決に向けた議論を進めることを目的とし,研究を進めています.

●メンバー

岩間信之 (茨城キリスト教大学文学部 准教授): 都市地理学,フードデザート研究
浅川達人 (明治学院大学 教授): 都市社会学
田中耕市 (茨城大学人部学部 准教授): 交通地理学,GIS
佐々木 緑 (広島修道大学人間環境学部 准教授): 環境問題,GIS
駒木伸比古 (愛知大学地域政策学部 准教授): 商業地理学,GIS(フードデザートマップ)
齋藤幸生 (水戸短期大学附属高等学校 教諭): 高齢者福祉問題
池田真志 (拓殖大学商学部 准教授):商業・流通システム


●フードデザートマップ・買い物弱者数全国推計値

東京都中心部のフードデザートマップ,および全国における買い物弱者総数の推計値です.
http://www.icc.ac.jp/inobweb/Tokyo%20FDs%20map.pdf


●農林水産省 農林水産政策研究所 食品アクセス調査チーム

1) 食品アクセス問題ポータルサイト
食品アクセスに関するポータルサイトです.
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/eat/syoku_akusesu.html

2)食品アクセスマップ
全国の食品アクセスマップです.都道府県別に検索が可能です.
http://cse.primaff.affrc.go.jp/katsuyat/


●研究会・メディアでの研究紹介など

1) 本研究グループが発表した講演会・メディアなど
http://www.icc.ac.jp/inobweb/massmedia.html


●最近の動向・ニュース

  • 論文が掲載されました.岩間信之ほか.2014.「商業機能の復興と買い物環境 :岩手県山田町(特集:復興支援 地理学の役割)」.月刊地理702号14-21.(2014.1.6).
  • 被災地研究公開シンポジウム(2013年12月15日 於 岩手県宮古市)で発表しました.岩間信之ほか.2014「岩手県山田町における商業機能の郊外化の現状と課題」.
  • 栃木県からの委託事業の報告書が公開されました.http://www.tck.or.jp/syosin/jigyo/rep.pdf
  • 『改訂新版 フードデザート問題:無縁社会が生む「食の砂漠」』が出版されましたhttps://www.gov-book.or.jp/book/detail.php?product_id=269680 → 入手が困難な場合には,出版元である「農林統計協会」に直接お問い合わせください.
  • 学術論文が掲載されました.岩間ほか(2013):東日本大震災被災地における食料品小売業の復興プロセスと仮設住宅居住者の生活環境問題.E-journal GEO.7(2) 178-196.https://www.jstage.jst.go.jp/article/ejgeo/7/2/7_178/_article/-char/ja/
  • 東洋経済新報社『週刊東洋経済』で,フードデザート問題が特集されました。2012年9月8日号「特集・貧食の時代」(2012.9).
  • 地理空間学会学術賞を頂きました(2012.5).
  • 平成23年度 シンフォニカ 統計GIS活動奨励賞を頂きました(2012.3).
  • フードデザートに関する書籍が出版されました.『フードデザート問題:無縁社会が生む「食の砂漠」』農林統計協会.(2011.6).
  • いばらき生協で開始する移動スーパー事業が,経済産業省による買い物弱者支援対策事業に認定されました.(2010.12)
  • 私達との連携という形で,いばらき生協やセブンイレブンが本格的なFDs対策が進められています.内容は随時ご報告します.(2010.12)
  • NHK総合テレビ「クローズアップ現代」でフードデザート問題が紹介されました. (2010.2.1)
  • NHK総合テレビ「特報首都圏」でフードデザート問題が紹介されました. (2009.7.10)
添付ファイル