概要:


SRXの吸気系は『単気筒でありながらツインキャブを持つ』点で特徴がある。

YDIS(Yamaha Duo Intake System:ヤマハデュオインテークシステム)と呼ばれるこのシステムは、プライマリ側の強制開閉VMキャブとセカンダリ側の負圧CVキャブを連結した形状となっており、低速域ではVMキャブのみが作動し、中高速域ではCVキャブが追従するように連動することで急激な空気の吸い込み(息つき)の低減と全開時のパワーの両立を図っている。

このキャブレターの特徴としてアクセルを急閉した時に燃料路が閉じられ、混合気が過薄になってマフラーで不正燃焼が起こる「アフターバーン(アフターファイヤとも)」の発生を防止するために「コースティングエンリッチャ」と呼ばれるバルブが付けられている点が挙げられる。
これはスロットルを閉じたときにスロー系のエア通路を負圧で閉じてしまうもので適正な濃度のガスを供給するために付けられている。
スロットルを閉じたときにパンパンとアフターファイヤが出るようになったと感じたらVMキャブ側面のカバー内にあるダイヤフラムを確認してみる事をお勧めする。
なお中は小さな部品が多く、複数のスプリングでダイヤフラム動作を管理しているので分解時に部品を無くさないこと、組み立て順を間違えないという点には留意すること。


キャブレター口径は初期型600・400とも…プライマリφ27 セカンダリφ28
2型以降600…プライマリφ27 セカンダリφ30
2型以降400…プライマリφ27 セカンダリφ28
である。

プライマリ側は低速を受け持つことから流速を稼ぐためやや口径が絞られている。
セカンダリについては中高速での流量を重視して大口径となっている。

これらによりエアクリーナージョイント径、インテークマニホールド径が左右で異なるので、キャブレターのリプレース時にマニホールドがきつい場合は、高年次のマニホールドに交換するなどで解決する場合があるので留意されたい。

なお、SRXのキャブレターのリプレースとして一般的にケーヒンCR(ラージボディ)、ケーヒンFCR(スモール・ラージ)、ミクニTM(スモールボディ)、ミクニTM-R(スモールボディ)などが用いられるケースが多いが、特に1J系の場合は取り付けにあたってタンクやオイルラインに相応の加工を要するので注意が必要である。


■ 1J系におけるキャブレターリプレースに伴う加工
キャブレターによって作業は異なるが概ね以下の2点。
 ●タンク裏側にキャブレターの逃げをつくること
 ●オイルラインの移設

タンク裏側は通常ハンマーなどで叩いてキャブレターが当たらなくなるまで逃げを作るが、TM-Rなどは非常にボディが大きく、タンクを切るなどの加工を勧めるショップもあり。

オイルラインの移設はカスタムの仕様によっては不要な作業となるが、通常キックモデルでは必須作業。(セルモデルではオイルタンクがここにないので不要)
オイルタンクへの戻り側オイルラインがキャブレターボディと干渉するためこれを移設する。
オイルを完全に抜き取りオイルタンクを取り外して、ノーマルのオイルラインを封して新たにタンクにオイルラインを増設する。
切り粉などが混入せぬようオイルタンクを分解して作業する必要があるが、最近ではバキュームホースで切り粉を吸引しながら外から穴を穿孔する手法もある模様。
ただし完全に混入を防げるわけではないので外から開口する場合は自己責任で。
オイル交換のタイミングに合わせる、作業後のオイル交換を早めにするなどの気遣いは必要と思われる。

上記のほか、スロットルケーブルがタンクに干渉する、キャブレターのジョイントボルトがフレームに干渉する、といった細かい問題が発生する場合あり。取り付け時に極力干渉がないよう留意のうえ作業を行っていただきたい。


STD,FCR,CR,TM,TMR キャブ等のセッティングデータ集
■キャブセッティングデータ 見せっこ
(おぎん%みかん色号@伊豆)


よくあるトラブル
■インシュレータの分離について
(gizmo)


■インシュレータの分離を防ぐには:
インシュレータの修理等についてはよく見かけますが、そもそもなぜ分離するのかを考えて以下の結論に至りました。
SRXのインシュレータにはガスケットではなくOリングが使われています。
ほとんどの人はインシュレータとエアクリーナー側ジョイントのバンドを緩めてキャブだけを外していますが、これではどちらにも無理な力が加わり変形させます。
この力がインシュレータの分離を促しています。
キャブを外す際にはインシュレータとエンジンヘッドの連結ボルト4本を外してエアクリーナー側ジョイントのバンドを緩めてからエアクリーナーケースを後方へずらし、インシュレータ側を上に上げると無理な力はほぼ加えずにキャブを外す事ができます。
つまり、キャブに付いたまま車体から外すという事です。
インシュレータはキャブを降ろしてから外します。
取り付けはキャブにインシュレータを付けて、バンドはインシュレータを回せる程度に仮付けしてから車体に戻します。
エアクリーナー側ジョイントのバンドを締めてからエアクリーナーケースを前方へ戻して固定し、インシュレータとエンジンヘッドの位置を合わせてキャップボルトを締めてきちんと嵌っている事を確認してからインシュレータのバンドを締めます。
Oリングを使っている理由は恐らくは上記のように脱着することを想定しているためと考えられます。
事実、このように外すとインシュレータやエアクリーナーケース側のホースに無理な力がほぼ加わる事なく脱着が可能です。
ただし、この方法だと脱着の際にOリングがずれやすいのでよくチェックしながら取り付けるようにしてください。
(keimiya)

▪️分離したインシュレーター、キャブジョイントの修理
黄色い粉を綺麗に掃除して、エポキシボンド(コニシ ボンドE)で接着してみました。4年経ちましたが今のところ異常ありません。

TT600用の34K-13586-01、34K-13596-01は全長が5mm程度短いですが一般的なキャブジョイントと同じ作りで剥離するようなことはありません。
CR-s31ツインを付けるために使っていました。
値段はノーマルの0.7倍くらい。
追記 
口径はSRXは約35ミリと37ミリ、TT、34Kは両方とも35ミリ、ノーマルキャブは使えませんね。
(かわぐち)


ダイヤフラムの硬化
SRXに限らず、YAMAHA車の多くは燃料路やキャブレターに多数のダイヤフラム(ゴム膜)を用いる傾向があります。
経年劣化で硬化や破れを生じることがあるので、純正キャブレターが突然調子を崩したりしたらまずダイヤフラムの状態を確認してみることをオススメします。

また、ダイヤフラムは燃料系にも及んでおり、進行方向左側のインシュレーターから負圧を取ってガソリンコックのダイヤフラムを作動させ燃料供給を行っています。
燃料コックのダイヤフラムが損傷するとガソリンがキャブレターを経由せず負圧ジョイントから吸い出されてしまうので、何も触ってないのに急に濃い症状が出たらコックも確認すること。

(大磯)

■純正キャブ(テイケイ気化器製)ニードルの型番表記について
4桁の英数字で表わされるニードルの型番ですが、それぞれ以下の意味があります。

1桁目:針の全長を表す。5なら50㎜台の長さを持つ針である。
2桁目:ストレート径を表す。Aが2.48mmでBが2.49㎜と、0.01㎜刻みで増える
3桁目:テーパー角を表す。1なら1度~1度15分の間であり、数字が増える毎に15分ずつ増す。
4桁目:違う針同士で上記3項目が分類上同じになった場合の識別番号。

以上の型番標記の規則に照らし合わせる事で、純正流用で使えそうな針が見えてくるかもしれません。
(SRX自体も型式年式によってジェッティングが都度変更されてます)

スロー及びメインジェットは、パーツマニュアル記載の型番の最後の二桁の倍数がジェットの番手です。
従って、望む番手の半分の数字で発注すれば望む番手が手に入りますが、
すでに欠品で入手できない番手も多数あり、発注してみなければわかりません。

(toto)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年02月05日 08:24