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傭兵とリフレイン」(2015/03/15 (日) 16:49:31) の最新版変更点

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時計を見る。殺し合いが始まってから、もう一時間半ほど経っていた。 周囲を警戒しつつ、まだ他の参加者に遭遇していないことに焦りを覚える。 さっさと優勝して首輪を外して貰わねばならない。 しかし、隣にいるこの男は、全く焦った様子は無い。 「ところでよぉ、高山さん」 共に歩く青年が、まるで友人に電話してくるような気楽さで話しかけてくる。 緊張感の欠片もないその声に、少し苛立ちを覚えながら反応する。 「どうした、何か問題が発生したか」 「いやぁ、カタいねぇ、やっぱ」 「……?」 何を言いたいのかが分からない。固い?硬い?難い? 脳内で手塚の発した単語を変換しようと試みるが、どれも意味がしっくりこない。 考えている内に、手塚が続きを言う。 「オレの事は呼び捨てでかまわねぇからさ、アンタもあだ名とかあれば教えてくれない?」 ああ、そういうことか。と納得する。 自分の態度が堅苦しい、と言いたいのだろう。 そんなつもりも、そんな態度を取る理由も無いのだが。 やはり傭兵だった頃の習慣が抜けていないのだろう、と推測する。 高山浩太は元傭兵である。 傭兵と言われても、およそ一般人には馴染みの薄いものだろうが、現在でも存在する立派な職業である。 普通、金銭などの利益により雇われ、直接に利害関係の無い戦争に参加する兵のことを傭兵と言う。 傭兵として生きる者は、より良い傭兵として評判を上げようとするのが常である。 良い傭兵の条件は腕が良いこともあるが、それ以上に信頼できることが前提だ。 しかし、軽口な人間ではまず信頼は得られず、「良い傭兵」という評判も付かない。 そして、自分は元とはいえ金銭目的の傭兵であり、根っからの職業軍人だった。 会話を交わすのは重要な時のみ、その際も出来るだけ感情を入れずに。 そうして生きてきた自分が寡黙なのは、当然であると言える。 そんなことを考えていると。 「なぁ、聞いてるか?高山さん」 焦れた声が、高山の思考を「殺し合い」の世界へと引き戻す。 今、自分と手塚は、F-1に架かる橋を渡り終えた所だった。 周りには民家が点在しているが、生活感は全くしない。 本当に殺し合いの為だけに作られた舞台なのだろう。 「たーかーやーまーさーん」 いい加減しつこい。 数分前の戦闘を経て、手塚は自分にやたらと話しかけるようになった。 最初、馴れ合うつもりは無い、と一蹴したが、手塚からは 「馴れ合いじゃない。戦闘で巧く連携するためにも、互いを知ることは大切だろう?」 と言われ、一瞬言い返すことが出来なかった。 確かにそうだった。 戦争の際には、傭兵とはいえ、他の兵士とある程度の連携が求められる。 戦争中とはいえ勝手気ままな行動をすることは、結果として他の兵士に迷惑を掛けることになってしまう。 それを考えると、手塚の「巧く連携するために互いを知る」というのは的を射ている発言だ。 だからと言って、この場で無神経に面倒な会話をすることもないだろうが。 橋を渡っている間にも、手塚はやれ身の上を教えてくれだとか、 やれ人生の目標はあるか、等としつこいくらいに話しかけてきた。 途中、こちらが無視を決め込んでいるのが分かったのか、呆れたように仰仰しく肩を竦めた。 しかし、諦めることはなく、今度は手塚自身の話を始めた。 「俺は今が楽しけりゃあいいのさ。この今一瞬を最高にエキサイトできりゃあな」 「俺はこの場で何が起きようが構わないが、楽しくないのだけは勘弁なんだ」 それをも無視をし続けていた所で、あの質問である。 「好きなように呼んでくれて構わない。俺はそういったものに頓着はしないからな」 適当に答えておいた。これで手塚も満足するだろう、と考えたのだが。 「んじゃあよ、俺はアンタをコータと呼ぶから、アンタは俺をヨシミツって呼んでくれ。 ああ、もちろんその他に俺様をこう呼びたい名前があればそれで呼んでくれてもいい」 隣の男は、まるで友達を相手にするように、実に楽しそうに喋っている。 「……なぜだ」 口から疑問の声が漏れる。 この男は現状を理解しているのか、と疑念を持つ。 「あぁ?互いを知って巧く連携をとる為だろ?」 手塚は先程の言葉を繰り返した。 「これは一時的な同盟だ。いずれ殺し合うことになるんだぞ」 ここはあくまで「バトルロワイアル」。殺し合いの場所。 生き残ることが出来るのは一人だけ。そのことだけを考えるべきだ。 そう、人間を殺すとき一番邪魔になるのは「情」である。 親しく過ごした時間が長い人ほど、いざという時も「情」が生まれて殺害を拒絶してしまう。 あるいは心の優しい者ならば、相手の「情」が移って殺害を躊躇ってしまうだろう。 しかし、それではダメなのだ。 話していて分かる。手塚は頭の悪い男ではない。 この殺し合いの場で一番にすべきは、「疑う」ことだと理解しているだろう。 ならばなぜ、手塚は自分に親しく言葉を掛けてくるのか。 邪魔になると分かっている「情」を育てるような真似をするのか。 元傭兵の自分には理解できなかった。 だから、つい聞いてしまった。 手塚は話を中断されて少し不機嫌そうだったが、立ち止まって、当然とばかりに言う。 「コータが気に入ったからさ」 しばしの沈黙。目の前の男はにこやかに笑っている。 気に入っている?元傭兵の自分のことを?何を言っているんだ? 逡巡しつつも、自分の中で反論の言葉を組み立てる。 「……だとしても、俺がお前を呼び捨てにする必要性は無いだろう」 こう言えば、手塚も諦めるかと思ったのだが。 言われた手塚は人差し指を立て「ちっちっち」と言い。 「甘いねぇコータ。もうこの時点で、オレはコータの一歩先にいるんだぜ」 呼び捨てをやめろ、と言いたかったが、それよりも「一歩先にいる」というのが気になった。 訪ねると、手塚は自分との距離を縮め、デイパックを地面に置き、両肩に手を置いてきた。 急にこんなことをされるとは思わなかったので、少し驚くと共に混乱する。 「何をするつもりだ。何度も言うが、今は殺し合いの最中だぞ」 そうだ。ここは殺し合いの舞台だと、再確認する。 だからこそ冷静に、沈着に、思考を殺し合いへと向け――、 「コータ」 ――られなかった。 俯いた自分に、手塚が肩に手を置いたまま話しかける。 「……なんだ」 「今から言うことを、よく覚えておけよ」 先程から一転して真剣な声だった。 ゴクリ、と喉が鳴っていた。自分の知っている、戦争中、生死の係った緊張感とはまた違った緊張感が、そこには在った。 なんだ?こいつは何をしようとしているんだ?いや、俺は何をしているんだ? 疑問符が脳内に押し寄せる。それを消すことが出来ない。 そして、 手塚の口が、 今まさに、開こうと――。 ◆◇◆◇◆◇◆ 眼鏡で三つ編みの少女、羽川翼が目覚めたのは、民家のベッドの上だった。 殺し合いが始まった直後に、ベッドの上に居たことに驚きつつ顔を赤らめていた。 ――あ、え?え、ちょ、やめっ、くぁwせdrftgyふじこlp―― ――ふぅ、これでよし。 今の説明では読者の方々に語弊を招くので、私が代わりに説明するわね。 まず、私が目覚めたのはベッドの上ではなくて、トイレの中だったの。 その方が恥ずかしいって?なぜ? そういったことに過敏に反応する方が恥ずかしいと改めたほうがいいわよ。 それは置いておくとして、とにかくその時の私は混乱したわ。 当たり前よね。目の前で二人の少女と、一人の大柄な男性が死んだのを見た後だもの。 でも、私は割とすぐに立ち直れた。 何はともあれ状況確認をしようとして、名簿を見たおかげだと思う。 私はそこで、名簿に記載された、ある名前を確認した。 【阿良々木 暦(あららぎ・こよみ)】 ――私のクラスメイトで、友達で、そして――。 そう、まあ、一言では表せないような、そんな人だけど。 とにかく私は立ち直った。『阿良々木くんに会う』という目標が出来たおかげで。 え?それだけで立ち直れるものかって? 甘いわね、人間が動くのは目標があるからに他ならないのよ。 目標が無ければ、進むべき道も分からずに迷ってしまうもの。 動くことが出来れば、立ち直ることも出来るのよ。 とにかく、私は殺し合いに乗らずに、阿良々木くんを探すことに決めた。 ひとまずトイレから出て、リビングの椅子に腰掛けた。 そのまま、デイパックの中身を机の上に撒き散らした…と言うとちょっと変ね。 デイパックを引っくり返した、という方が分かりやすいかも。 中には色々な物が入っていたけど、一番気になったのは「ランダム支給品」だった。 恐らくそれであろう一つを手に取って、説明書を読もうとした。 バタン! 次の瞬間、私はお腹にナイフを突きつけられていた。 ドアを壊すくらいの勢いで入ってきた、金髪金眼の8歳ぐらいだろう少女に。 少女の首にも、当然の如く首輪が嵌められている。 こんな小さな子が、殺し合いに巻き込まれ、しかも自分にナイフを突きつけている。 その現状が、私にはどうしても信じられなかった。 だからだろうか、混乱して自分でも訳の分からないことを言っていた。 「ほ、ほら、『けろぴー』だよー」 支給品の一つ、カエルのぬいぐるみの「けろぴー」とやらを、少女の眼前に突き出した。 ――そのまま数秒。何の反応も無い。 「あ、あの……大丈夫?」 再度話しかけるが、反応が無い。 仕方がないので、小さな体を軽く揺すってみる。 軽い。少ししか力を入れていないのにも関わらず、その体は床に倒れ伏した。 「って、えぇぇ!?」 私のせい――じゃないだろう。いくら少女とて、ただ揺すっただけで倒れるわけがない。 それにしても、今の倒れ方は普通じゃない。 「大丈夫?」 三度、話しかける。ついでに体も揺する。 少女はだるそうに「うぅー」と呻きながら、予想外の言葉を発した。 「……血が……足りない……」 ◆◇◆◇◆◇◆ 同行者である高山の両肩に、自分の手を置く。 「……なんだ」 「今から言うことを、よく覚えておけよ」 なーんて、真剣な顔を作って言えば、大抵の奴は黙り込む。 高山はと言えば、まさに狙い通り、黙り込んで緊張したような顔をしている。 俺はワザと、会話の中で「間」を開けて話すようにしている。 相手に考える時間を与えることで、より相手を混乱させることが目的だ。 橋を渡っている間にしつこく話しかけたのも、 自分の主義思想の話を淡々と話して聞かせたのも、 急にお互いを呼び捨てにしようなどと提案したのも、 嫌がらせたのも、侮らせたのも、惑わせたのも、疑わせたのも、全てはこの男を「揺さぶる」為だ。 手塚義光は、高山浩太と戦闘をした後、ずっと考えていた。 『この男を利用するだけ利用して、最後は俺が優勝する術』を。 手塚は優勝できればそれでよかった。 だから、高山と協力してより多くの人を殺す、という話を持ちかけた。勿論、自身の優勝が確定したら裏切るつもりだった。 だが、考えてみると、元傭兵の高山には、真向勝負で敵わないことは明白だ。 不意打ちならば殺すことは可能だろうが、双方が傷を負うことは間違いないだろう。 加えて、手塚の獲物は剣だが、高山の獲物は拳銃である。 優劣で言えば、明らかに手塚の方が劣っていることになる。 それでは、その優劣をどう引っくり返すか。 数分考えた結果、こういった場に慣れた男ならば、「疑う」ことは必須だと認識しているだろう、と思い、 ならば逆に、高山を「信じている」かのような言動を繰り返し、困惑させて揺さぶろうと考えた。 その後で、高山のデイパックを奪い、無力化する。 手塚は、我ながら機転が利くなと思いつつ、その時を待っていた。。 そして今がその時だ。 「俺の眼を見てくれ」 高山に真剣な声で話しかける。 高山は予想通り困惑している様で、分かりやすく目を泳がせている。 「コータっ!」 最後の一押しとばかりに、肩を一層強く掴む。 高山は驚いたように、こちらを見つめてくる。 はっ、キスする前の女じゃあるまいし、んな顔されても気味悪いだけだぜ。 もういいだろう。俺は行動を起こすことにした。 「ばぁーか」 言いながら、高山の腹部に強烈な膝蹴りをかます。 鍛えられているとは言え、防具も何も無い状態での蹴りはなかなか効いた様だ。 高山がぐっ、と呻いた一瞬の隙を狙って、デイパックと拳銃を奪う。 数瞬後には、高山は降伏せざるをえない状況となっていた。 奪われた拳銃は、正確に高山の頭部を狙っている。 「くそっ……全て演技か……」 高山が小さく呟く。その言葉は手塚よりも自分に向けたものが多いだろう。 素人の演技を見抜けなかったことを相当悔しがっているようだ。 「はっ、そういうことだ。んじゃ、荷物を俺のデイパックに移し替えな」 拳銃で自分のデイパックと高山のデイパックを交互に指し示す。 逆らうことも出来ず、高山はデイパックに荷物を移し替え始める。 食料、地図、拳銃の弾薬と、ほぼ全てを移し替えさせた。 「……ん?」 と、一番奥から箱が出てきた。気になったので開けさせる。 注射器だ。褐色の液体が入った注射器が、10本入っている。 説明書には「違法薬物、中毒性有、取扱注意」とだけ書いてある。 手塚は意味を理解すると同時に、その顔に凶悪な笑みを浮かべた。 「高山さぁん、コレ、使ってみてくれない?」 高山は心底悔しそうに、歯軋りをしていた。 ◆◇◆◇◆◇◆ 私は、食べ物を探していた。 自分が食べる物ではなく、少女に食べさせる物だ。 数分前に、「血が足りない」と言って倒れた少女をどうにか起こした。 水を飲ませたが、調子が良くなる気配は無かった。 食べる物は無いか探したが、支給品の食料は決して「美味しそう」ではない。 少女が喜ぶ食べ物、と思って自らのランダム支給品を探すと、紙製の箱が出てきた。 箱を開けると、甘い香りが鼻をくすぐった。ドーナツのようだ。 甘い物といえば、子供が喜ぶものの代名詞だ。 そう考えて、私は少女の眼前で甘そうなドーナツをちらつかせた。 すると。 「ドオォーナッツじゃあぁぁぁ!」 少女は飛び起きて、ポンデリングにかぶり付いて来た。 「ぷはぁ、食べた食べた」 十数分後、私は、目の前にいる少女に驚いていた。 ドーナツを驚くべき勢いで食べていった少女は、今や元気満タンといった様子だ。 民家のテーブルの上に残っていたのは、ドーナツの箱だけになっていた。 「いやあ、ミスドのドーナツはマジでまいうーじゃな」 妙な喋り方だな、と思いつつ、私は事情を訊こうとした。 まあ、「やっぱミスドは聖地じゃ」とか「ぱないの!」とか言ってほぼスルーされたけど。 やっとこちらを認識した時には、さらに十数分が経っていた。 「ん?お主、どこかで会ったような……」 少女はそう呟いていたが、気のせいだろう。 とりあえず、互いの名前を確認することにした。 金髪少女は名前を忍野忍というそうだ。 珍しい名前だな、と思いつつ自分の名前も告げた。 忍ちゃんは「やはりどこかで……」と首を傾げていたが、とにかく話を先へ進めた。 殺し合いに乗る気はないということは共通しているようだ。 けれども、忍ちゃんの言った、 「まあ、儂を殺そうとする身のほど知らずがいたとすれば、そいつは即殺すがな」 という言葉には、さすがに違和感があるのだが。 実際に忍野忍は吸血鬼であり、「怪異殺し」と呼ばれる怪異の王でもある。 とはいっても、現在の忍は紆余曲折を経て「吸血鬼のなれの果て」となり、力をほぼ失っている。 姿も本来ならば外見は27歳なのだが、今では8歳程度である。 そのことを知らない者は忍を「ちょっと不思議な少女」くらいに思うのも無理はない。 ドーナツを沢山食べたせいか、忍ちゃんは少し眠そうだ。 一段落ついたことだし、次は何をしよう……と、私が思索していると。 「ぐっ」 外から、それもだいぶ近くで呻き声が聞こえた気がした。 窓から外を見ると、橋の近くに二人の男性が居た。 暗い為に顔は良く見えないが、決して仲良くしている様子はない。 帽子を被った男性が、もう一人の男性の頭部に拳銃を突き付けている。 拳銃を突き付けられた男性は、デイパックの中身を移し替えているようだ。 この時点で、どちらが悪人かなど一目瞭然だった。 「あの男、殺し合いに乗っているな」 急に発せられた声に驚く。隣にはいつの間にか忍ちゃんがいた。 眠そうな顔はどこへやら、真剣な顔つきで二人の男性を見ている。 どうする、と訊くと、 「助けてもかまわんが、今の儂たちではまず無理だろう」 と、無常とも取れる言葉が返ってくる。 確かにそうだった。 帽子の男は拳銃を持ち、剣のようなものも携えている。 しかし、此方に武器と呼べるようなものは、忍ちゃんの支給品のナイフしか無い。 今私たちの居る民家と、男たちの居る場所の距離を考えると、奇襲も出来そうにない。 正攻法でも不可、奇襲も不可。 私たちに残された選択肢は、傍観のみ。 私が強ければ、阿良々木くんが居れば、などと、つい「もしも」を考えてしまう。 そんなことを考えても意味が無いと知っていても。 その度に自分には力が無いということを認めることになるとしても。 「何でもは知らないわよ。知ってることだけ」 そう、私は弱いということを、私は知っている。 だから、悪行を目の前にしているのに何もできない。 帽子の男は、抵抗できない男に何かを注射しようとしている。 私は気付かぬうちに唇を噛んでいた。 【F-1 橋付近民家内/黎明】 【羽川翼@物語シリーズ】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、けろぴー@Kanon、ランダム支給品×1】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:殺し合いには乗らない。 2:阿良々木くんを探す。 3:私は何も出来ない…。 【備考】 ※「つばさキャット」終了後からの参戦です。 ※ストレスが溜まれば、ブラック羽川が出現する可能性もあります。 ※帽子の男(手塚)を危険視しています。 ※黒髪の男(高山)のことは帽子の男の被害者だと思っています。 ※忍野忍とは名前以外に情報を交換していません。 ※忍野忍にどこかで会った気がしています。 【忍野忍@物語シリーズ】 【装備:スペツナヅナイフ@現実】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:やや血液不足】 【思考・行動】 1:殺し合いなど詰まらん。 2:暦を探して血を吸わせて貰う。 3:儂を襲おうと言うのならば、覚悟をしておけ。 【備考】 ※少なくとも「かれんビー」終了後からの参戦です。(明確な参戦時期は後の書き手さんに任せます) ※暦から吸血すれば、外見、能力などが戻る可能性があります。制限は後の書き手さんにお任せします。 ※羽川翼とは名前以外に情報を交換していません。 ※羽川翼にどこかで会った気がしていますが、思い出せません。 ※ドーナツ詰め合わせ@現実 は消費されました。箱はF-1の民家に放置されています。 ◆◇◆◇◆◇◆ 「見た目じゃどんな薬かなんてわかんねぇが……」 手塚は空になった注射器を放り投げ、呟く。 「効き目は充分みてぇだな」 高山は呆けたように中空を見つめている。 違法薬物、というからどんなものかと期待していたが、見事に答えてくれた。 中毒性がある薬は、即ち依存しやすい薬ということだ。 高山の様子からして、この「リフレイン」という薬は依存性も強いだろう。 つまり、この薬をエサにすれば、高山を意のままに操ることも可能ということだ。 高山に、俺に従わなければ「リフレイン」を与えない、と言うだけでいい。 薬欲しさに高山は俺に従うはずだ。 命令次第で、俺の盾にも、俺の剣にもなる。 「ははははははっ!」 奴隷を手に入れたような気になり、俺はこみ上げて来る笑いを抑えられなかった。 上手く行きすぎではないか、などとの疑問は、少しも抱かずに。 【F-1橋付近/黎明】 【高山浩太@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】 【装備:なし】 【所持品:なし】 【状態:気絶】 【思考・行動】 1:????? 【備考】 ※本編開始前からの参戦です。 ※リフレインを摂取しました。今後は過剰にリフレインを求めるようになるかも知れません。  あるいは、精神力により中毒を克服するかも知れません。詳細は後の書き手さんにお任せします。 【手塚義光@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】 【装備:舞の剣@Kanon、ブラックホール14/15@ペルソナ4】 【所持品:支給品一式×2、タバコ10箱@現実、ライター3本@現実、リフレイン×9@コードギアス 反逆のルルーシュ      ブラックホールの弾丸30/30、嵐のボンゴレリング@家庭教師ヒットマンREBORN!】 【状態:健康、気分高揚】 【思考・行動】 1:優勝する為、全参加者を殺害する。 2:高山を引き連れて行動する。 3:高山は利用するだけ利用してボロ雑巾のように使い捨てる。 【備考】 ※本編開始前からの参戦です。 【リフレイン@コードギアス 反逆のルルーシュ】 高山浩太に10本セットで支給。 主にイレブンが使用する違法薬物。中毒に陥ると、やがて発狂に至る。 不幸な現実から幸せな過去に逃避する手段だという。常温では褐色の液体で、注射器を使い摂取する。 【スペツナヅナイフ@現実】 忍野忍に支給。 刀身の射出が可能なナイフ。パロロワではよく見かける。 【ドーナツ詰め合わせ@現実】 羽川翼に支給。 ミスタードーナツのドーナツ10個の詰め合わせ。 【ぬいぐるみ「けろぴー」@Kanon】 羽川翼に支給。 水瀬名雪が大事にしているカエルのぬいぐるみ。 |042:[[這い寄る混沌]]|時系列|035:[[おまもりらんさー]]| |043:[[白騎士物語]]|投下順|045:[[Lの殺意]]| |[[男はつよいよ]]|高山浩太|073:[[繰り返し]]| |~|手塚義光|~| |&color(cyan){START}|羽川翼|~| |&color(cyan){START}|忍野忍|~|
時計を見る。殺し合いが始まってから、もう一時間半ほど経っていた。 周囲を警戒しつつ、まだ他の参加者に遭遇していないことに焦りを覚える。 さっさと優勝して首輪を外して貰わねばならない。 しかし、隣にいるこの男は、全く焦った様子は無い。 「ところでよぉ、高山さん」 共に歩く青年が、まるで友人に電話してくるような気楽さで話しかけてくる。 緊張感の欠片もないその声に、少し苛立ちを覚えながら反応する。 「どうした、何か問題が発生したか」 「いやぁ、カタいねぇ、やっぱ」 「……?」 何を言いたいのかが分からない。固い?硬い?難い? 脳内で手塚の発した単語を変換しようと試みるが、どれも意味がしっくりこない。 考えている内に、手塚が続きを言う。 「オレの事は呼び捨てでかまわねぇからさ、アンタもあだ名とかあれば教えてくれない?」 ああ、そういうことか。と納得する。 自分の態度が堅苦しい、と言いたいのだろう。 そんなつもりも、そんな態度を取る理由も無いのだが。 やはり傭兵だった頃の習慣が抜けていないのだろう、と推測する。 高山浩太は元傭兵である。 傭兵と言われても、およそ一般人には馴染みの薄いものだろうが、現在でも存在する立派な職業である。 普通、金銭などの利益により雇われ、直接に利害関係の無い戦争に参加する兵のことを傭兵と言う。 傭兵として生きる者は、より良い傭兵として評判を上げようとするのが常である。 良い傭兵の条件は腕が良いこともあるが、それ以上に信頼できることが前提だ。 しかし、軽口な人間ではまず信頼は得られず、「良い傭兵」という評判も付かない。 そして、自分は元とはいえ金銭目的の傭兵であり、根っからの職業軍人だった。 会話を交わすのは重要な時のみ、その際も出来るだけ感情を入れずに。 そうして生きてきた自分が寡黙なのは、当然であると言える。 そんなことを考えていると。 「なぁ、聞いてるか?高山さん」 焦れた声が、高山の思考を「殺し合い」の世界へと引き戻す。 今、自分と手塚は、F-1に架かる橋を渡り終えた所だった。 周りには民家が点在しているが、生活感は全くしない。 本当に殺し合いの為だけに作られた舞台なのだろう。 「たーかーやーまーさーん」 いい加減しつこい。 数分前の戦闘を経て、手塚は自分にやたらと話しかけるようになった。 最初、馴れ合うつもりは無い、と一蹴したが、手塚からは 「馴れ合いじゃない。戦闘で巧く連携するためにも、互いを知ることは大切だろう?」 と言われ、一瞬言い返すことが出来なかった。 確かにそうだった。 戦争の際には、傭兵とはいえ、他の兵士とある程度の連携が求められる。 戦争中とはいえ勝手気ままな行動をすることは、結果として他の兵士に迷惑を掛けることになってしまう。 それを考えると、手塚の「巧く連携するために互いを知る」というのは的を射ている発言だ。 だからと言って、この場で無神経に面倒な会話をすることもないだろうが。 橋を渡っている間にも、手塚はやれ身の上を教えてくれだとか、 やれ人生の目標はあるか、等としつこいくらいに話しかけてきた。 途中、こちらが無視を決め込んでいるのが分かったのか、呆れたように仰仰しく肩を竦めた。 しかし、諦めることはなく、今度は手塚自身の話を始めた。 「俺は今が楽しけりゃあいいのさ。この今一瞬を最高にエキサイトできりゃあな」 「俺はこの場で何が起きようが構わないが、楽しくないのだけは勘弁なんだ」 それをも無視をし続けていた所で、あの質問である。 「好きなように呼んでくれて構わない。俺はそういったものに頓着はしないからな」 適当に答えておいた。これで手塚も満足するだろう、と考えたのだが。 「んじゃあよ、俺はアンタをコータと呼ぶから、アンタは俺をヨシミツって呼んでくれ。 ああ、もちろんその他に俺様をこう呼びたい名前があればそれで呼んでくれてもいい」 隣の男は、まるで友達を相手にするように、実に楽しそうに喋っている。 「……なぜだ」 口から疑問の声が漏れる。 この男は現状を理解しているのか、と疑念を持つ。 「あぁ?互いを知って巧く連携をとる為だろ?」 手塚は先程の言葉を繰り返した。 「これは一時的な同盟だ。いずれ殺し合うことになるんだぞ」 ここはあくまで「バトルロワイアル」。殺し合いの場所。 生き残ることが出来るのは一人だけ。そのことだけを考えるべきだ。 そう、人間を殺すとき一番邪魔になるのは「情」である。 親しく過ごした時間が長い人ほど、いざという時も「情」が生まれて殺害を拒絶してしまう。 あるいは心の優しい者ならば、相手の「情」が移って殺害を躊躇ってしまうだろう。 しかし、それではダメなのだ。 話していて分かる。手塚は頭の悪い男ではない。 この殺し合いの場で一番にすべきは、「疑う」ことだと理解しているだろう。 ならばなぜ、手塚は自分に親しく言葉を掛けてくるのか。 邪魔になると分かっている「情」を育てるような真似をするのか。 元傭兵の自分には理解できなかった。 だから、つい聞いてしまった。 手塚は話を中断されて少し不機嫌そうだったが、立ち止まって、当然とばかりに言う。 「コータが気に入ったからさ」 しばしの沈黙。目の前の男はにこやかに笑っている。 気に入っている?元傭兵の自分のことを?何を言っているんだ? 逡巡しつつも、自分の中で反論の言葉を組み立てる。 「……だとしても、俺がお前を呼び捨てにする必要性は無いだろう」 こう言えば、手塚も諦めるかと思ったのだが。 言われた手塚は人差し指を立て「ちっちっち」と言い。 「甘いねぇコータ。もうこの時点で、オレはコータの一歩先にいるんだぜ」 呼び捨てをやめろ、と言いたかったが、それよりも「一歩先にいる」というのが気になった。 訪ねると、手塚は自分との距離を縮め、デイパックを地面に置き、両肩に手を置いてきた。 急にこんなことをされるとは思わなかったので、少し驚くと共に混乱する。 「何をするつもりだ。何度も言うが、今は殺し合いの最中だぞ」 そうだ。ここは殺し合いの舞台だと、再確認する。 だからこそ冷静に、沈着に、思考を殺し合いへと向け――、 「コータ」 ――られなかった。 俯いた自分に、手塚が肩に手を置いたまま話しかける。 「……なんだ」 「今から言うことを、よく覚えておけよ」 先程から一転して真剣な声だった。 ゴクリ、と喉が鳴っていた。自分の知っている、戦争中、生死の係った緊張感とはまた違った緊張感が、そこには在った。 なんだ?こいつは何をしようとしているんだ?いや、俺は何をしているんだ? 疑問符が脳内に押し寄せる。それを消すことが出来ない。 そして、 手塚の口が、 今まさに、開こうと――。 ◆◇◆◇◆◇◆ 眼鏡で三つ編みの少女、羽川翼が目覚めたのは、民家のベッドの上だった。 殺し合いが始まった直後に、ベッドの上に居たことに驚きつつ顔を赤らめていた。 ――あ、え?え、ちょ、やめっ、くぁwせdrftgyふじこlp―― ――ふぅ、これでよし。 今の説明では読者の方々に語弊を招くので、私が代わりに説明するわね。 まず、私が目覚めたのはベッドの上ではなくて、トイレの中だったの。 その方が恥ずかしいって?なぜ? そういったことに過敏に反応する方が恥ずかしいと改めたほうがいいわよ。 それは置いておくとして、とにかくその時の私は混乱したわ。 当たり前よね。目の前で二人の少女と、一人の大柄な男性が死んだのを見た後だもの。 でも、私は割とすぐに立ち直れた。 何はともあれ状況確認をしようとして、名簿を見たおかげだと思う。 私はそこで、名簿に記載された、ある名前を確認した。 【阿良々木 暦(あららぎ・こよみ)】 ――私のクラスメイトで、友達で、そして――。 そう、まあ、一言では表せないような、そんな人だけど。 とにかく私は立ち直った。『阿良々木くんに会う』という目標が出来たおかげで。 え?それだけで立ち直れるものかって? 甘いわね、人間が動くのは目標があるからに他ならないのよ。 目標が無ければ、進むべき道も分からずに迷ってしまうもの。 動くことが出来れば、立ち直ることも出来るのよ。 とにかく、私は殺し合いに乗らずに、阿良々木くんを探すことに決めた。 ひとまずトイレから出て、リビングの椅子に腰掛けた。 そのまま、デイパックの中身を机の上に撒き散らした…と言うとちょっと変ね。 デイパックを引っくり返した、という方が分かりやすいかも。 中には色々な物が入っていたけど、一番気になったのは「ランダム支給品」だった。 恐らくそれであろう一つを手に取って、説明書を読もうとした。 バタン! 次の瞬間、私はお腹にナイフを突きつけられていた。 ドアを壊すくらいの勢いで入ってきた、金髪金眼の8歳ぐらいだろう少女に。 少女の首にも、当然の如く首輪が嵌められている。 こんな小さな子が、殺し合いに巻き込まれ、しかも自分にナイフを突きつけている。 その現状が、私にはどうしても信じられなかった。 だからだろうか、混乱して自分でも訳の分からないことを言っていた。 「ほ、ほら、『けろぴー』だよー」 支給品の一つ、カエルのぬいぐるみの「けろぴー」とやらを、少女の眼前に突き出した。 ――そのまま数秒。何の反応も無い。 「あ、あの……大丈夫?」 再度話しかけるが、反応が無い。 仕方がないので、小さな体を軽く揺すってみる。 軽い。少ししか力を入れていないのにも関わらず、その体は床に倒れ伏した。 「って、えぇぇ!?」 私のせい――じゃないだろう。いくら少女とて、ただ揺すっただけで倒れるわけがない。 それにしても、今の倒れ方は普通じゃない。 「大丈夫?」 三度、話しかける。ついでに体も揺する。 少女はだるそうに「うぅー」と呻きながら、予想外の言葉を発した。 「……血が……足りない……」 ◆◇◆◇◆◇◆ 同行者である高山の両肩に、自分の手を置く。 「……なんだ」 「今から言うことを、よく覚えておけよ」 なーんて、真剣な顔を作って言えば、大抵の奴は黙り込む。 高山はと言えば、まさに狙い通り、黙り込んで緊張したような顔をしている。 俺はワザと、会話の中で「間」を開けて話すようにしている。 相手に考える時間を与えることで、より相手を混乱させることが目的だ。 橋を渡っている間にしつこく話しかけたのも、 自分の主義思想の話を淡々と話して聞かせたのも、 急にお互いを呼び捨てにしようなどと提案したのも、 嫌がらせたのも、侮らせたのも、惑わせたのも、疑わせたのも、全てはこの男を「揺さぶる」為だ。 手塚義光は、高山浩太と戦闘をした後、ずっと考えていた。 『この男を利用するだけ利用して、最後は俺が優勝する術』を。 手塚は優勝できればそれでよかった。 だから、高山と協力してより多くの人を殺す、という話を持ちかけた。勿論、自身の優勝が確定したら裏切るつもりだった。 だが、考えてみると、元傭兵の高山には、真向勝負で敵わないことは明白だ。 不意打ちならば殺すことは可能だろうが、双方が傷を負うことは間違いないだろう。 加えて、手塚の獲物は剣だが、高山の獲物は拳銃である。 優劣で言えば、明らかに手塚の方が劣っていることになる。 それでは、その優劣をどう引っくり返すか。 数分考えた結果、こういった場に慣れた男ならば、「疑う」ことは必須だと認識しているだろう、と思い、 ならば逆に、高山を「信じている」かのような言動を繰り返し、困惑させて揺さぶろうと考えた。 その後で、高山のデイパックを奪い、無力化する。 手塚は、我ながら機転が利くなと思いつつ、その時を待っていた。。 そして今がその時だ。 「俺の眼を見てくれ」 高山に真剣な声で話しかける。 高山は予想通り困惑している様で、分かりやすく目を泳がせている。 「コータっ!」 最後の一押しとばかりに、肩を一層強く掴む。 高山は驚いたように、こちらを見つめてくる。 はっ、キスする前の女じゃあるまいし、んな顔されても気味悪いだけだぜ。 もういいだろう。俺は行動を起こすことにした。 「ばぁーか」 言いながら、高山の腹部に強烈な膝蹴りをかます。 鍛えられているとは言え、防具も何も無い状態での蹴りはなかなか効いた様だ。 高山がぐっ、と呻いた一瞬の隙を狙って、デイパックと拳銃を奪う。 数瞬後には、高山は降伏せざるをえない状況となっていた。 奪われた拳銃は、正確に高山の頭部を狙っている。 「くそっ……全て演技か……」 高山が小さく呟く。その言葉は手塚よりも自分に向けたものが多いだろう。 素人の演技を見抜けなかったことを相当悔しがっているようだ。 「はっ、そういうことだ。んじゃ、荷物を俺のデイパックに移し替えな」 拳銃で自分のデイパックと高山のデイパックを交互に指し示す。 逆らうことも出来ず、高山はデイパックに荷物を移し替え始める。 食料、地図、拳銃の弾薬と、ほぼ全てを移し替えさせた。 「……ん?」 と、一番奥から箱が出てきた。気になったので開けさせる。 注射器だ。褐色の液体が入った注射器が、10本入っている。 説明書には「違法薬物、中毒性有、取扱注意」とだけ書いてある。 手塚は意味を理解すると同時に、その顔に凶悪な笑みを浮かべた。 「高山さぁん、コレ、使ってみてくれない?」 高山は心底悔しそうに、歯軋りをしていた。 ◆◇◆◇◆◇◆ 私は、食べ物を探していた。 自分が食べる物ではなく、少女に食べさせる物だ。 数分前に、「血が足りない」と言って倒れた少女をどうにか起こした。 水を飲ませたが、調子が良くなる気配は無かった。 食べる物は無いか探したが、支給品の食料は決して「美味しそう」ではない。 少女が喜ぶ食べ物、と思って自らのランダム支給品を探すと、紙製の箱が出てきた。 箱を開けると、甘い香りが鼻をくすぐった。ドーナツのようだ。 甘い物といえば、子供が喜ぶものの代名詞だ。 そう考えて、私は少女の眼前で甘そうなドーナツをちらつかせた。 すると。 「ドオォーナッツじゃあぁぁぁ!」 少女は飛び起きて、ポンデリングにかぶり付いて来た。 「ぷはぁ、食べた食べた」 十数分後、私は、目の前にいる少女に驚いていた。 ドーナツを驚くべき勢いで食べていった少女は、今や元気満タンといった様子だ。 民家のテーブルの上に残っていたのは、ドーナツの箱だけになっていた。 「いやあ、ミスドのドーナツはマジでまいうーじゃな」 妙な喋り方だな、と思いつつ、私は事情を訊こうとした。 まあ、「やっぱミスドは聖地じゃ」とか「ぱないの!」とか言ってほぼスルーされたけど。 やっとこちらを認識した時には、さらに十数分が経っていた。 「ん?お主、どこかで会ったような……」 少女はそう呟いていたが、気のせいだろう。 とりあえず、互いの名前を確認することにした。 金髪少女は名前を忍野忍というそうだ。 珍しい名前だな、と思いつつ自分の名前も告げた。 忍ちゃんは「やはりどこかで……」と首を傾げていたが、とにかく話を先へ進めた。 殺し合いに乗る気はないということは共通しているようだ。 けれども、忍ちゃんの言った、 「まあ、儂を殺そうとする身のほど知らずがいたとすれば、そいつは即殺すがな」 という言葉には、さすがに違和感があるのだが。 実際に忍野忍は吸血鬼であり、「怪異殺し」と呼ばれる怪異の王でもある。 とはいっても、現在の忍は紆余曲折を経て「吸血鬼のなれの果て」となり、力をほぼ失っている。 姿も本来ならば外見は27歳なのだが、今では8歳程度である。 そのことを知らない者は忍を「ちょっと不思議な少女」くらいに思うのも無理はない。 ドーナツを沢山食べたせいか、忍ちゃんは少し眠そうだ。 一段落ついたことだし、次は何をしよう……と、私が思索していると。 「ぐっ」 外から、それもだいぶ近くで呻き声が聞こえた気がした。 窓から外を見ると、橋の近くに二人の男性が居た。 暗い為に顔は良く見えないが、決して仲良くしている様子はない。 帽子を被った男性が、もう一人の男性の頭部に拳銃を突き付けている。 拳銃を突き付けられた男性は、デイパックの中身を移し替えているようだ。 この時点で、どちらが悪人かなど一目瞭然だった。 「あの男、殺し合いに乗っているな」 急に発せられた声に驚く。隣にはいつの間にか忍ちゃんがいた。 眠そうな顔はどこへやら、真剣な顔つきで二人の男性を見ている。 どうする、と訊くと、 「助けてもかまわんが、今の儂たちではまず無理だろう」 と、無常とも取れる言葉が返ってくる。 確かにそうだった。 帽子の男は拳銃を持ち、剣のようなものも携えている。 しかし、此方に武器と呼べるようなものは、忍ちゃんの支給品のナイフしか無い。 今私たちの居る民家と、男たちの居る場所の距離を考えると、奇襲も出来そうにない。 正攻法でも不可、奇襲も不可。 私たちに残された選択肢は、傍観のみ。 私が強ければ、阿良々木くんが居れば、などと、つい「もしも」を考えてしまう。 そんなことを考えても意味が無いと知っていても。 その度に自分には力が無いということを認めることになるとしても。 「何でもは知らないわよ。知ってることだけ」 そう、私は弱いということを、私は知っている。 だから、悪行を目の前にしているのに何もできない。 帽子の男は、抵抗できない男に何かを注射しようとしている。 私は気付かぬうちに唇を噛んでいた。 【F-1 橋付近民家内/黎明】 【羽川翼@物語シリーズ】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、けろぴー@Kanon、ランダム支給品×1】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:殺し合いには乗らない。 2:阿良々木くんを探す。 3:私は何も出来ない…。 【備考】 ※「つばさキャット」終了後からの参戦です。 ※ストレスが溜まれば、ブラック羽川が出現する可能性もあります。 ※帽子の男(手塚)を危険視しています。 ※黒髪の男(高山)のことは帽子の男の被害者だと思っています。 ※忍野忍とは名前以外に情報を交換していません。 ※忍野忍にどこかで会った気がしています。 【忍野忍@物語シリーズ】 【装備:スペツナヅナイフ@現実】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:やや血液不足】 【思考・行動】 1:殺し合いなど詰まらん。 2:暦を探して血を吸わせて貰う。 3:儂を襲おうと言うのならば、覚悟をしておけ。 【備考】 ※少なくとも「かれんビー」終了後からの参戦です。(明確な参戦時期は後の書き手さんに任せます) ※暦から吸血すれば、外見、能力などが戻る可能性があります。制限は後の書き手さんにお任せします。 ※羽川翼とは名前以外に情報を交換していません。 ※羽川翼にどこかで会った気がしていますが、思い出せません。 ※ドーナツ詰め合わせ@現実 は消費されました。箱はF-1の民家に放置されています。 ◆◇◆◇◆◇◆ 「見た目じゃどんな薬かなんてわかんねぇが……」 手塚は空になった注射器を放り投げ、呟く。 「効き目は充分みてぇだな」 高山は呆けたように中空を見つめている。 違法薬物、というからどんなものかと期待していたが、見事に答えてくれた。 中毒性がある薬は、即ち依存しやすい薬ということだ。 高山の様子からして、この「リフレイン」という薬は依存性も強いだろう。 つまり、この薬をエサにすれば、高山を意のままに操ることも可能ということだ。 高山に、俺に従わなければ「リフレイン」を与えない、と言うだけでいい。 薬欲しさに高山は俺に従うはずだ。 命令次第で、俺の盾にも、俺の剣にもなる。 「ははははははっ!」 奴隷を手に入れたような気になり、俺はこみ上げて来る笑いを抑えられなかった。 上手く行きすぎではないか、などとの疑問は、少しも抱かずに。 【F-1橋付近/黎明】 【高山浩太@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】 【装備:なし】 【所持品:なし】 【状態:気絶】 【思考・行動】 1:????? 【備考】 ※本編開始前からの参戦です。 ※リフレインを摂取しました。今後は過剰にリフレインを求めるようになるかも知れません。  あるいは、精神力により中毒を克服するかも知れません。詳細は後の書き手さんにお任せします。 【手塚義光@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】 【装備:舞の剣@Kanon、ブラックホール14/15@ペルソナ4】 【所持品:支給品一式×2、タバコ10箱@現実、ライター3本@現実、リフレイン×9@コードギアス 反逆のルルーシュ      ブラックホールの弾丸30/30、嵐のボンゴレリング@家庭教師ヒットマンREBORN!】 【状態:健康、気分高揚】 【思考・行動】 1:優勝する為、全参加者を殺害する。 2:高山を引き連れて行動する。 3:高山は利用するだけ利用してボロ雑巾のように使い捨てる。 【備考】 ※本編開始前からの参戦です。 【リフレイン@コードギアス 反逆のルルーシュ】 高山浩太に10本セットで支給。 主にイレブンが使用する違法薬物。中毒に陥ると、やがて発狂に至る。 不幸な現実から幸せな過去に逃避する手段だという。常温では褐色の液体で、注射器を使い摂取する。 【スペツナヅナイフ@現実】 忍野忍に支給。 刀身の射出が可能なナイフ。パロロワではよく見かける。 【ドーナツ詰め合わせ@現実】 羽川翼に支給。 ミスタードーナツのドーナツ10個の詰め合わせ。 【ぬいぐるみ「けろぴー」@Kanon】 羽川翼に支給。 水瀬名雪が大事にしているカエルのぬいぐるみ。 |042:[[這い寄る混沌]]|時系列|035:[[おまもりらんさー]]| |043:[[白騎士物語]]|投下順|045:[[Lの殺意]]| |016:[[男はつよいよ]]|高山浩太|073:[[繰り返し]]| |~|手塚義光|~| |&color(cyan){START}|羽川翼|~| |&color(cyan){START}|忍野忍|~|

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