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地獄絵図が、広がっていた。 むせ返りそうな程の腐臭と、そこかしこに散らばる得体の知れない生物の屍。 巨大なオニヒトデのような生物は現代の科学では有り得ないサイズと、余りにもショッキングな外見をしており、まさしく『海の魔物』と呼ぶに相応しい。 そんな魔物が、幾十もの屍を積み上げている。 いや――もしかすると既に百を超えていたかもしれないが。 『触手』がうねる不気味な音と共に、屍から更に生まれ出てくる魔物。 それらが一斉に獲物に喰らいかかり、そして切り散らされる。 ずっとその繰り返しだった。終わりも進展もない、只同じ場面だけが続いていく。 殺戮を殺戮し、暴力を暴力し、蹂躙を蹂躙する。 普通の人間になら捌ききれないだけの魔物――『海魔』を、眼帯をした如何にもな風貌の男が次から次へと散らして、そして少し退屈そうに顔をしかめている。 そして、海魔どもを生み出す魔力炉となっている一冊の古書を持ったこれまた奇抜な、不気味極まりない風体の巨漢もまた、忌々しげに顔を憎悪に歪めていた。 「おのれおのれおのれェッ!!我が涜心を邪魔立てするかァ!!」 「……ラチが明かねえじゃねえか」 攻め続けるのは英霊キャスター、真名をジル・ド・レェ。 それを捌き続けているのが死神、更木剣八。 互いに、人の手では余るだけの怪物。 二体の人の形をした人外が、既にかなりの時間こうして戦っていた。 端から見ればキャスターが押されているように見えただろうが、状況はまさに膠着状態。 剣八の持つ一振りの刀は相当な業物だし、勿論こうして使いこなせている。 が、いわばそこまでなのだ。 これがいつも使っている斬魄刀だったなら、もしかすれば現在キャスターを斬り伏せ、見事殺し合いの始まりに相応しい勝利を勝ち取っていたかもしれない。 ――――決め手がない。 何せ敵の持つは無限の魔力炉。 衰えることなく生まれ続ける海魔を一気に蹴散らして距離を詰めなければ、勝てない。 剣八の人間離れした体力があるからこそ、ここまで戦い続けているのだが。 このまま永遠に戦っていてはいずれ体力の枯渇が来るのは必然だ。 (あの青瓢箪を斬るにはこの『虚(ホロウ)』を突破しなきゃあいけねえ……チッ、つまらねえ戦い方をしやがる破面だな。虚閃の一つも撃ってこねえとはな) そろそろ決めなきゃあ殺られる。 更木剣八は遅い来る海魔を斬り払い、刀を構え直した。 屍から新たな海魔が生まれ出でてくる――――その時に、地面を強く蹴った。 海魔どもが襲い来る前にキャスターとの距離を詰め、まさに捨て身で斬り伏せる。 背後の海魔に傷を負わされる危険も勿論あるが、彼にとっては所詮些事。 より確実にキャスターを斬り伏せるには、省みないことが必要だし――――そもそも更木剣八という男に『慎重さ』なんてものを求める方が間違いというものだろう。 迫る剣八。 キャスターは自らの持つ古書を逃亡の為の魔術に使おうとする。 果たして間に合うのか。いずれにせよ未来は二つに一つだ。 キャスターが斬られて散るか、剣八が喰われて散るか。 二つの影が、戦闘の終わりを―――― 告げなかった。 「マハジオ」 雷属性を持つ『それ』が、いざ接触せんとするキャスターと剣八の間の地面に撃ち込まれた。 二人の視線が、攻撃の主である少年に注がれる。 そこに立つのは少しばかり息を切らしているまだ幼さ残る少年の姿。 だが、その傍らの存在は余りにも異質すぎた。 ペルソナ、タケミカヅチ。 攻撃の意図で放たれたにしては威力が低かったことを一早く察知した剣八は、つまらなそうに息を吐く。 「…………チッ。面白くねえな」 興が削がれちまった、と呟くと剣八は二人に背を向けて歩いていく。 彼は殺し合いに乗っているわけではない――――ただ、戦いたいだけ。 一度冷めてしまった戦いなど、彼にとってはもはやどうでもいい些事だった。 そして、二人だけが残された。 【E-6 学生寮周辺/黎明】 【更木剣八@BLEACH】 【装備:10年後山本武の刀@家庭教師ヒットマンREBORN!】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:疲労(中)】 【思考・行動】 1:強者と戦いたい。 2:戦うに値する相手を探す。 ※破面編終了後からの参加です ■ 「俺は巽完二。勿論殺し合いなんざする気はねえ」 「私はジル・ド・レェ――そうですね、『青髭』とでもお呼びください、カンジ」 腐臭漂う戦闘の跡地から少し離れた場所で、巽完二は情報交換に応じていた。 『青髭』の言い分では、自分が子供を助けようとしたら急に襲撃されたらしい。 で、仕方なく『宝具』とやらを用いて対抗したと。 完二も大分常識離れした日常を送ってきたが、英霊なんて存在は知らなかった。 かの聖処女、ジャンヌ・ダルクの同胞だったらしい。 「私も『ペルソナ』などというものは全く存じ上げませんでしたよ。ウフフ、この世にはまだまだ私の知らぬ神秘が有るのですね」 ペルソナ。 巽完二にとっては日常で、青髭にとっては非日常の存在。 真っ向からぶつかればサーヴァントである青髭の方が圧倒的だが脅威には変わりない。 窮鼠猫を噛む、だ。 サーヴァント。 『青髭』にとっては常識で、巽完二にとっては非常識の存在。 ペルソナだけでは対抗することが難しい強力な宝具を保持している。 しかも、切り札はまた別にあるらしい。 「で、なんだけどよ――――」 はい?と青髭が疑問符を浮かべた瞬間。 タケミカヅチが、顕現した。 『ペルソナっ!』という声を、確かに聞いた。 それはつまり、敵対の意思を示すということである。 「おやおや……カンジ。これはどういうことでしょうか?」 「ふざけてんじゃねえぞ、『青髭』。俺が騙されるとでも思ったか」 これはこれは、と青髭――否。『キャスター』は静かに笑った。 「私は踊らされていた訳ですか。やってくれましたねえ」 「動くなよ。この距離でなら、宝具なんてモンが使われる前に終わらせられんだぜ」 そう。この間合いで海魔を呼び出そうと、タケミカヅチの攻撃が通ってしまう。サーヴァントであったとしても、ペルソナの全力をもし直撃すればかなりの痛手になるだろう。 完二もまた、キャスターが此処で逆らうことなく素直に拘束でもされてくれればどうこうする気はなかった。幾ら殺し合いに乗った相手だとしても、生きている人型の生物なのだ。 もし激情に任せて殺してしまったら、咎として一生完二を苛んだかもしれない。 少なくとも、憎むべき悪魔、シャルルに敗北したことになる。 「……何もしなきゃ危害は加えねえ、縛らせてはもらうけどな」 「……分かりました。私とてジャンヌの復活を成すまでは死ねませんのでねえ」 わざとらしく両手を挙げ、降参の意を示すキャスター。 ジャンヌの復活を成すまでは、という部分に不安はあったが、拘束すれば所詮は無力だ。 宝具の古書もこの際預からせて貰えば、もうキャスターは只の人間も同然。 デイパックから、支給された手錠を取り出すと完二はキャスターの両腕に触れる。 ぐちゃっ。 「は……?」 油断していた。 敗因はたったそれだけ。 侮っていた。 サーヴァントという存在を。 宝具さえ封じればいいと、思ってしまった。 そんなものは大きな間違いだったのに。 胸が熱い。 肺を綺麗に貫かれているようだ。 霞む視界には、邪悪な笑顔で微笑むキャスター。 そして、自らを貫き射止めた腕。 「……ッ……ァ……ぺ……ルゥ……ソ……」 「おっと、そうはさせませんよ」 一際激しく、鮮血が飛び散った。 肺を破壊されて瀕死の彼の最期の抵抗も虚しく。 抉り出されたぐちゃぐちゃのナカミが、キャスターの手で握り潰された。 尤も、その地獄を巽完二はもう見ていなかったのだが。 視界はもう消えている。 人生が終わるまで、きっと後十秒もないだろう。 走馬灯というには短すぎる思い出が脳裏を駆け抜けていく。 でも、それはかけがえのない日々で。 だから彼は、死に際に一つだけ、思った。 ――――ありがとう。 &color(red){【巽完二@ペルソナ4  死亡】} □ 巽完二の死体を見下ろして、キャスターは邪悪に笑う。 完二は知らなかった。英霊ジル・ド・レェは確かに宝具なしでは力を発揮できないサーヴァントだったが、それでも腕力などの桁は人間とは余りに違いすぎるのだ。 少なくとも、人間の頭蓋を片手で握り潰せるくらいには。 完二の腕を振りほどき、反応する前にその胸を貫いた。 キャスターからすれば、只それだけのことでしかなかったのかもしれないが。 「まずは一人といった所ですねえ……おお、我が愛しの聖処女よ………待っていてください、必ずやこの不肖ジル・ド・レェ、貴女を甦らせてみせましょうぞ!」 次は――と、思った時に。 二人の少年少女を、その大きな眼球が捉えた。 殺すか、否か。決まりきった選択肢を脳裏にもう一度描き出す。 またペルソナなんてものを使ってくる相手なら厄介だが、こちらには宝具もある。 打ち負けることはない――――と、確信。 『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』を静かに開き、そして気付く。 前方の二人、その少年の方が――――恐怖ではなく、感動したような表情をしていることに。 「アンタ…………一体何者なんだ」 狂っている。 この少年は滅茶苦茶に汚染された、壊れ物だ。 キャスターには理解できなかったろうが、とにかく少年の目は異常。 「ジル・ド・レェ――『青髭』とでもお呼びください」 言葉はそれきり。 もはやそれは本能だったのかもしれない。 刻命裕也という少年とジル・ド・レェという英霊は――余りに狂いそれ故に共鳴している。 少女、遠野美凪に、二人の視線が同時に向かい。 二人の壊れ物が、壊れすぎた笑顔を浮かべた。 【キャスター@Fate/Zero】 【装備:螺湮城教本@Fate/Zero】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3、手錠@現実、巽完二のデイパック(支給品一式、ランダム支給品×2)】 【状態:返り血(大)、高揚感】 【思考・行動】 1:たくさんの参加者を贄にして魔力回復。 2:あの少年と協力してみるのもいいかもしれない。 3:少女を――――? ※『プレラーティーズ・スペルブック』での大海魔化はできません。 ※『ペルソナ4』の世界の情報を得ました。 ※龍之介に召喚される前からの参戦なので、サーヴァントのことを一人も知らない状況です 【遠野美凪@AIR】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】 【状態:健康、キャスターへの恐怖】 【思考・行動】 1:刻命さんの歪んだ思考を直したい。 2:刻命さん………? ※美凪ルート確定寸前からの参戦。 【刻命裕也@コープスパーティー】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、テレビの世界のメガネ@ペルソナ4、SOS団特製すごろく@凉宮ハルヒの憂鬱、犬の捜索願いの紙@めだかボックス】 【状態:健康、キャスターへの畏敬】 【思考・行動】 1:優勝する。 2:大男(キャスター)への感動、畏敬の念 3:遠野を――――? ※本編開始前からの参戦です。 【手錠@現実】 巽完二に支給。警察からその手の趣味の人まで幅広く用いる拘束具。 【螺湮城教本@Fate/Zero】 キャスターの宝具、支給品扱い。 この本自体が巨大な魔力炉となっており、ジルがキャスターに据えられた所以の一つ。 |[[1人の逃走劇/暴走劇/復讐劇]]|時系列|[[とある最強の一方通行]]| |[[堕ちないネイロ]]|投下順|[[中二病でも殺したい!]]| |[[その男ら、凶暴につき]]|更木剣八|[[撫子の唄]]| |[[その男ら、凶暴につき]]|キャスター|[[朱より赤し]]| |[[fallen down]]|&color(red){巽完二}|&color(red){DEAD END}| |[[クールになれ、刻命裕也!]]|刻命裕也|[[朱より赤し]]| |[[クールになれ、刻命裕也!]]|遠野美凪|[[朱より赤し]]|
地獄絵図が、広がっていた。 むせ返りそうな程の腐臭と、そこかしこに散らばる得体の知れない生物の屍。 巨大なオニヒトデのような生物は現代の科学では有り得ないサイズと、余りにもショッキングな外見をしており、まさしく『海の魔物』と呼ぶに相応しい。 そんな魔物が、幾十もの屍を積み上げている。 いや――もしかすると既に百を超えていたかもしれないが。 『触手』がうねる不気味な音と共に、屍から更に生まれ出てくる魔物。 それらが一斉に獲物に喰らいかかり、そして切り散らされる。 ずっとその繰り返しだった。終わりも進展もない、只同じ場面だけが続いていく。 殺戮を殺戮し、暴力を暴力し、蹂躙を蹂躙する。 普通の人間になら捌ききれないだけの魔物――『海魔』を、眼帯をした如何にもな風貌の男が次から次へと散らして、そして少し退屈そうに顔をしかめている。 そして、海魔どもを生み出す魔力炉となっている一冊の古書を持ったこれまた奇抜な、不気味極まりない風体の巨漢もまた、忌々しげに顔を憎悪に歪めていた。 「おのれおのれおのれェッ!!我が涜心を邪魔立てするかァ!!」 「……ラチが明かねえじゃねえか」 攻め続けるのは英霊キャスター、真名をジル・ド・レェ。 それを捌き続けているのが死神、更木剣八。 互いに、人の手では余るだけの怪物。 二体の人の形をした人外が、既にかなりの時間こうして戦っていた。 端から見ればキャスターが押されているように見えただろうが、状況はまさに膠着状態。 剣八の持つ一振りの刀は相当な業物だし、勿論こうして使いこなせている。 が、いわばそこまでなのだ。 これがいつも使っている斬魄刀だったなら、もしかすれば現在キャスターを斬り伏せ、見事殺し合いの始まりに相応しい勝利を勝ち取っていたかもしれない。 ――――決め手がない。 何せ敵の持つは無限の魔力炉。 衰えることなく生まれ続ける海魔を一気に蹴散らして距離を詰めなければ、勝てない。 剣八の人間離れした体力があるからこそ、ここまで戦い続けているのだが。 このまま永遠に戦っていてはいずれ体力の枯渇が来るのは必然だ。 (あの青瓢箪を斬るにはこの『虚(ホロウ)』を突破しなきゃあいけねえ……チッ、つまらねえ戦い方をしやがる破面だな。虚閃の一つも撃ってこねえとはな) そろそろ決めなきゃあ殺られる。 更木剣八は遅い来る海魔を斬り払い、刀を構え直した。 屍から新たな海魔が生まれ出でてくる――――その時に、地面を強く蹴った。 海魔どもが襲い来る前にキャスターとの距離を詰め、まさに捨て身で斬り伏せる。 背後の海魔に傷を負わされる危険も勿論あるが、彼にとっては所詮些事。 より確実にキャスターを斬り伏せるには、省みないことが必要だし――――そもそも更木剣八という男に『慎重さ』なんてものを求める方が間違いというものだろう。 迫る剣八。 キャスターは自らの持つ古書を逃亡の為の魔術に使おうとする。 果たして間に合うのか。いずれにせよ未来は二つに一つだ。 キャスターが斬られて散るか、剣八が喰われて散るか。 二つの影が、戦闘の終わりを―――― 告げなかった。 「マハジオ」 雷属性を持つ『それ』が、いざ接触せんとするキャスターと剣八の間の地面に撃ち込まれた。 二人の視線が、攻撃の主である少年に注がれる。 そこに立つのは少しばかり息を切らしているまだ幼さ残る少年の姿。 だが、その傍らの存在は余りにも異質すぎた。 ペルソナ、タケミカヅチ。 攻撃の意図で放たれたにしては威力が低かったことを一早く察知した剣八は、つまらなそうに息を吐く。 「…………チッ。面白くねえな」 興が削がれちまった、と呟くと剣八は二人に背を向けて歩いていく。 彼は殺し合いに乗っているわけではない――――ただ、戦いたいだけ。 一度冷めてしまった戦いなど、彼にとってはもはやどうでもいい些事だった。 そして、二人だけが残された。 【E-6 学生寮周辺/黎明】 【更木剣八@BLEACH】 【装備:10年後山本武の刀@家庭教師ヒットマンREBORN!】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:疲労(中)】 【思考・行動】 1:強者と戦いたい。 2:戦うに値する相手を探す。 ※破面編終了後からの参加です ■ 「俺は巽完二。勿論殺し合いなんざする気はねえ」 「私はジル・ド・レェ――そうですね、『青髭』とでもお呼びください、カンジ」 腐臭漂う戦闘の跡地から少し離れた場所で、巽完二は情報交換に応じていた。 『青髭』の言い分では、自分が子供を助けようとしたら急に襲撃されたらしい。 で、仕方なく『宝具』とやらを用いて対抗したと。 完二も大分常識離れした日常を送ってきたが、英霊なんて存在は知らなかった。 かの聖処女、ジャンヌ・ダルクの同胞だったらしい。 「私も『ペルソナ』などというものは全く存じ上げませんでしたよ。ウフフ、この世にはまだまだ私の知らぬ神秘が有るのですね」 ペルソナ。 巽完二にとっては日常で、青髭にとっては非日常の存在。 真っ向からぶつかればサーヴァントである青髭の方が圧倒的だが脅威には変わりない。 窮鼠猫を噛む、だ。 サーヴァント。 『青髭』にとっては常識で、巽完二にとっては非常識の存在。 ペルソナだけでは対抗することが難しい強力な宝具を保持している。 しかも、切り札はまた別にあるらしい。 「で、なんだけどよ――――」 はい?と青髭が疑問符を浮かべた瞬間。 タケミカヅチが、顕現した。 『ペルソナっ!』という声を、確かに聞いた。 それはつまり、敵対の意思を示すということである。 「おやおや……カンジ。これはどういうことでしょうか?」 「ふざけてんじゃねえぞ、『青髭』。俺が騙されるとでも思ったか」 これはこれは、と青髭――否。『キャスター』は静かに笑った。 「私は踊らされていた訳ですか。やってくれましたねえ」 「動くなよ。この距離でなら、宝具なんてモンが使われる前に終わらせられんだぜ」 そう。この間合いで海魔を呼び出そうと、タケミカヅチの攻撃が通ってしまう。サーヴァントであったとしても、ペルソナの全力をもし直撃すればかなりの痛手になるだろう。 完二もまた、キャスターが此処で逆らうことなく素直に拘束でもされてくれればどうこうする気はなかった。幾ら殺し合いに乗った相手だとしても、生きている人型の生物なのだ。 もし激情に任せて殺してしまったら、咎として一生完二を苛んだかもしれない。 少なくとも、憎むべき悪魔、シャルルに敗北したことになる。 「……何もしなきゃ危害は加えねえ、縛らせてはもらうけどな」 「……分かりました。私とてジャンヌの復活を成すまでは死ねませんのでねえ」 わざとらしく両手を挙げ、降参の意を示すキャスター。 ジャンヌの復活を成すまでは、という部分に不安はあったが、拘束すれば所詮は無力だ。 宝具の古書もこの際預からせて貰えば、もうキャスターは只の人間も同然。 デイパックから、支給された手錠を取り出すと完二はキャスターの両腕に触れる。 ぐちゃっ。 「は……?」 油断していた。 敗因はたったそれだけ。 侮っていた。 サーヴァントという存在を。 宝具さえ封じればいいと、思ってしまった。 そんなものは大きな間違いだったのに。 胸が熱い。 肺を綺麗に貫かれているようだ。 霞む視界には、邪悪な笑顔で微笑むキャスター。 そして、自らを貫き射止めた腕。 「……ッ……ァ……ぺ……ルゥ……ソ……」 「おっと、そうはさせませんよ」 一際激しく、鮮血が飛び散った。 肺を破壊されて瀕死の彼の最期の抵抗も虚しく。 抉り出されたぐちゃぐちゃのナカミが、キャスターの手で握り潰された。 尤も、その地獄を巽完二はもう見ていなかったのだが。 視界はもう消えている。 人生が終わるまで、きっと後十秒もないだろう。 走馬灯というには短すぎる思い出が脳裏を駆け抜けていく。 でも、それはかけがえのない日々で。 だから彼は、死に際に一つだけ、思った。 ――――ありがとう。 &color(red){【巽完二@ペルソナ4  死亡】} □ 巽完二の死体を見下ろして、キャスターは邪悪に笑う。 完二は知らなかった。英霊ジル・ド・レェは確かに宝具なしでは力を発揮できないサーヴァントだったが、それでも腕力などの桁は人間とは余りに違いすぎるのだ。 少なくとも、人間の頭蓋を片手で握り潰せるくらいには。 完二の腕を振りほどき、反応する前にその胸を貫いた。 キャスターからすれば、只それだけのことでしかなかったのかもしれないが。 「まずは一人といった所ですねえ……おお、我が愛しの聖処女よ………待っていてください、必ずやこの不肖ジル・ド・レェ、貴女を甦らせてみせましょうぞ!」 次は――と、思った時に。 二人の少年少女を、その大きな眼球が捉えた。 殺すか、否か。決まりきった選択肢を脳裏にもう一度描き出す。 またペルソナなんてものを使ってくる相手なら厄介だが、こちらには宝具もある。 打ち負けることはない――――と、確信。 『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』を静かに開き、そして気付く。 前方の二人、その少年の方が――――恐怖ではなく、感動したような表情をしていることに。 「アンタ…………一体何者なんだ」 狂っている。 この少年は滅茶苦茶に汚染された、壊れ物だ。 キャスターには理解できなかったろうが、とにかく少年の目は異常。 「ジル・ド・レェ――『青髭』とでもお呼びください」 言葉はそれきり。 もはやそれは本能だったのかもしれない。 刻命裕也という少年とジル・ド・レェという英霊は――余りに狂いそれ故に共鳴している。 少女、遠野美凪に、二人の視線が同時に向かい。 二人の壊れ物が、壊れすぎた笑顔を浮かべた。 【キャスター@Fate/Zero】 【装備:螺湮城教本@Fate/Zero】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2、手錠@現実、巽完二のデイパック(支給品一式、ランダム支給品×2)】 【状態:返り血(大)、高揚感】 【思考・行動】 1:たくさんの参加者を贄にして魔力回復。 2:あの少年と協力してみるのもいいかもしれない。 3:少女を――――? ※『プレラーティーズ・スペルブック』での大海魔化はできません。 ※『ペルソナ4』の世界の情報を得ました。 ※龍之介に召喚される前からの参戦なので、サーヴァントのことを一人も知らない状況です 【遠野美凪@AIR】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】 【状態:健康、キャスターへの恐怖】 【思考・行動】 1:刻命さんの歪んだ思考を直したい。 2:刻命さん………? ※美凪ルート確定寸前からの参戦。 【刻命裕也@コープスパーティー】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、テレビの世界のメガネ@ペルソナ4、SOS団特製すごろく@凉宮ハルヒの憂鬱、犬の捜索願いの紙@めだかボックス】 【状態:健康、キャスターへの畏敬】 【思考・行動】 1:優勝する。 2:大男(キャスター)への感動、畏敬の念 3:遠野を――――? ※本編開始前からの参戦です。 【手錠@現実】 巽完二に支給。警察からその手の趣味の人まで幅広く用いる拘束具。 【螺湮城教本@Fate/Zero】 キャスターの宝具、支給品扱い。 この本自体が巨大な魔力炉となっており、ジルがキャスターに据えられた所以の一つ。 |[[1人の逃走劇/暴走劇/復讐劇]]|時系列|[[とある最強の一方通行]]| |[[堕ちないネイロ]]|投下順|[[中二病でも殺したい!]]| |[[その男ら、凶暴につき]]|更木剣八|[[撫子の唄]]| |[[その男ら、凶暴につき]]|キャスター|[[朱より赤し]]| |[[fallen down]]|&color(red){巽完二}|&color(red){DEAD END}| |[[クールになれ、刻命裕也!]]|刻命裕也|[[朱より赤し]]| |[[クールになれ、刻命裕也!]]|遠野美凪|[[朱より赤し]]|

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