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アーチャー時を越えた遭遇」(2012/08/08 (水) 15:25:37) の最新版変更点

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  素早く駆ける朱。 その朱をよくよく辿っていくと赤い外套の男である事がわかる。 特徴的な肌の褐色。 白に染まった頭髪。 大きな大きな背中。 その姿は弓兵らしくない弓兵(アーチャー)の姿であった。 『守護者』として活動し、衛宮士郎を1番に全ての参加者を皆殺しを決意した兵隊であった。 ――数時間前、彼は赤原猟犬で参加者の少女を殺した。 正確には彼はその殺した光景を見ていない。 いや、見る必要がなかったのだ。 その赤原猟犬の能力は弾かれようが射手が健在な限り標的を狙い続ける黒くて赤光する魔弾である。 とっくのとっくに狙われたあの少女はあの刃の錆となっているはずなのだから。 「だが能力制限とはまたやっかいな……」 人間とサーヴァントの実力差を埋める為に、主催側が我々の人ならざる者に能力を厳しく制限したのは容易に推測出来る。 他のサーヴァントはどんな制限をくらっているのかはわからない。 だが、投影魔術を基本にする自分にとって投影の時間設定は非常にやっかいだ。 その為、アーチャーは少女を殺す為に放った赤原猟犬を創ったあとからは支給品の『熟練スパナ』を手にしていた。 「こんな武器使いにくいにもほどがあるな」 そもそも自分の愛用する弓か剣の武器では当然剣寄りの武器であるだろう。 しかし、こんなものは剣などではなく、おそらく自分なら一度も投影をしてこの武器を出そうとは考えないだろう。 「支給品に武器が入っていただけまだ恵まれてはいるのだろうな」 そう思い込みアーチャーは心許ない武器を両手にし、参加者を探しに出たのであった。 参加者名簿には目を通していない。 何故ならどうせサーヴァントも人間も殺すのみ、衛宮士郎の姿は見せしめの前にとっくに発見済みであった。 つまり、アーチャーにとってはこのバトルロワイアルはただ殺す者しか居ない催しに過ぎないのだ。 ――――― 街の民家の屋根から見える人影は未だなし。 時間が無駄に過ぎていく1秒。 「ふむ、流石にそんな簡単に殺させてはくれぬか」 屋根からアーチャーはジャンプして降りる。 方針という大袈裟なものではないが、屋根など高い位置からまた弓で狙おうとしていたが効率の悪さに苛立ちを感じた。 自分の足で参加者を見つけて殺した方が手っ取り早いと……。 ◆◆◆◆ 「念の為にも武器は多いに越した事はない」 黒いもの身を包んだ魔術師殺しの異名を持つ衛宮切嗣はとある建物で武器を探していた。 考えたくもないが先程の戦闘で相手になった六道骸に対抗出来たのはワルサーP38と時間操作の為であった。 時間操作はどうにもならないとしてワルサーがもし無かったとしたら既に殺されていたであろう。 「銃やライフルは当然見つかるわけがないか……」 見つけられて包丁やドライバーといったホームセンターなどで簡単に入手出来るものぐらいであった。 「……こんな行動は正義でもなんでもないな」 自分の手の包丁を見ながら思い浮かべるのは死の直前の出来事。 衛宮士郎に正義の味方になりたかったと語って、それなら自分が正義の味方になると言ってくれた士郎の姿であった。 アイリを失い、イリヤと離れた自分にとって残された希望。 ――護らなくてはいけない。 封印していた事を解放しなくてはならない。 「ようやく参加者を見つけた。無防備な相手だ」 アーチャーは熟練スパナで簡単に殺せると判断。 両手にスパナを持ち、気を殺して気配を伺う。 「さて、また六道骸の様な強敵の相手を見つけた時はどうしようか? 僕が適うはずがないしね」 切嗣は一筋縄でいかない事はとっくに感づいていた。 いや、本能であろう。 血や戦いを寄せ付ける自分の性である。 「そう、例えば君の様な相手とかね!」 二本のスパナを突き出すアーチャー。 脳みそを守る様に包丁を構える切嗣。 切嗣はアーチャーが襲いかかる事など既に察知していた。 自分は敵を誘き出すプロなのだ。 逆に襲ってこないはずがない。 「……人間にしては対した力だ」 人を見下す口調で話すアーチャー。 『人間にしては――』と言った事や明らかに人間じゃないその外見の赤い外套の男の登場にどう対応するか悩ませる切嗣。 「ぐっ……、なんだこいつは……?」 と、自分から襲ったアーチャーは頭を痛ませた。 何故かはわからない。 目の前の男を目にした瞬間から懐かしさの様なもの、自分が生前守り通した正義が揺さぶられたのがわかった。 (何者だこの男……) まるでこの感じ、『■■■■』を目の前にした様な感覚であった。 「なんだい?急に頭を悩ませて」 「な、なんでもない」 そう言って男から間合いを離すアーチャー。 反撃はされない程度、男と話せる程度の距離の間合いを取って。 「もしかして君はサーヴァントかい?」 「っ!?」 アーチャーは自分の存在『サーヴァント』を知っている男を前に言葉を失った。 自分を見てサーヴァントなど口にするのはサーヴァント同士、もしくは何者かのサーヴァントのマスターになった事のある人物ではないと出るわけがない。 「そうだ。俺は冬木の第五次聖杯戦争の遠坂凛のサーヴァント。 アーチャーのクラスを得て限界して参った」 「……第五次聖杯戦争?」 おかしな事を言う。 冬木の聖杯戦争はまだ四次しか開戦していないはずだ。 なにしろ自らが聖杯を壊して冬木市の大災害を起こした人物でもある自分なのだから。 逆に頷ける事実でもあった。 自分の知るアーチャーとは似ても似つかない存在。 しかもマスターの名前である遠坂凛は、アーチャーのサーヴァントのマスター言峰綺礼とその前のマスター遠坂時巨の娘の名前であったはずだからだ。 「もう第五次聖杯戦争なんてのが始まっているんだね」 「……おかしな口振りだな?」 「僕はね冬木の第四次聖杯戦争のセイバーのマスターをしていた男さ」 アーチャーの頭にジェット機の様な速さで疑問が走った。 第四次聖杯戦争のサーヴァントのセイバーは自分の知るアーサー・ペンドラゴンである。 だがその時のマスターは確か――。 いや、有り得ない。 確かにそのマスターは存在するはずがない。 凛の世界から見ても5年も前に亡くなっていたはずだった。 「貴様の、名を知りたい」 「僕の名前かい?」 と目を閉じてぼそりと。 ――――『衛宮切嗣』。 忘れるはずがない、自らが一番尊敬するその男の名前であったのだから。 死ぬはずだった自分に希望と未来を与えた男の名前。 「嘘を付け貴様っ!貴様が衛宮切嗣のわけがない!」 辞めろ! その名前を簡単に口にするな! アーチャーの怒りが走った。 この偽物を殺す。 偽物の剣を創って偽物を殺す。 「僕の事を知っている口振りじゃないか」 顔を上げるアーチャー。 その姿は確かに自分の救世主、忘れるはずがない『衛宮切嗣』。 自分のじいさんであった。 衛宮士郎(自分)を嫌おうと、彼だけはどうしても嫌いにはなれない。 なるはずがなかった。 「じいさん……。貴様、いや本当にアナタは衛宮切嗣なのですか?」 確かめるまでもなかった。 まさしく古き自分の頭に過ぎるのはその切嗣で間違いないのであるから。 「僕は君にじいさん呼ばれされる筋合いはないな。……が、君はどうにも他人の気がしないな。はじめて会ったサーヴァントなのにね」 「それは俺の真名に関係あるかもな」 「…………」 自分の真名。 正義の味方であり続けて殺された男の名前。 「幼き時、冬木で起きた大災害の話だ。両親も誰もかもが亡くなったあの日、俺はとある人物に助けられた少年だ」 「……まさか、君は……?」 「真名を――『エミヤ』」 時を越えた親と息子の再会であった。 息子の姿は遥かに自分の体よりも大きな頼もしい姿であった。 「本当に……、君は?」 「つまり俺は過去ではなく未来から現れたサーヴァントという事だ」 切嗣もアーチャー。 どちら共、もう会えないと思った再会。 嬉しくないわけがなかった。 「そうか、君があの小さかった少年なのか」 「じいさん、久し振り」 お互い武器を降ろしてそのまま話をする為民家へと入って行った。 当然両者共、手を出すつもりは毛頭無かった。 ◆◆◆◆ 「大きくなったもんだな士郎」 「違う。俺はエミヤであり、衛宮士郎とは別人だ」 切嗣には話してしまった方が良いだろうとアーチャーは考えていた。 おそらく彼は士郎を護ろうとするだろう。 自分は士郎を殺そうとする者なのだから。 「でだ、じいさん。俺は今でもじいさんを尊敬している。英雄となり、サーヴァントとなった今でもだ」 「嬉しいね。僕との約束の通り正義の味方になったなんてね」 「あぁ。だが俺はその正義の味方になって激しく後悔をしている」 「……やはり、そうなったのか」 切嗣は自らの過去とエミヤの影を重ねる。 人々を救う為、人を殺す。 それを幾度となく繰り返して繰り返して数え切れないくらいになるのだ。 「だから俺は衛宮士郎を殺して俺が生まれない為にタイムパラドックスを起こす。おそらくじいさんは衛宮士郎を護ろうとするのだろう」 「…………」 切嗣は複雑な表情となる。 護りたかった少年、未来の少年。 互いが互いと敵対しているのだ。 だからといって少年を殺させるわけにもいかないのも事実。 「俺は全力を尽くして衛宮士郎を殺す。 だからじいさん。あんたは全力で衛宮士郎を守り抜いてみろ」 アーチャーは民家の出口に向かう。 切嗣は止めない。 嬉しかった再会だが別れる再会でもあったのだから。 「エミヤ……。なら僕は次に会った時は全力で君を止める。その強い力を僕に見せてもらいたい 最後に質問だエミヤ」 「……」 アーチャーは振り向かない。 切嗣と敵対という信じたくない出来事が直視させられるのだから。 「君は正義の味方になって嬉しかった事はなかったのかい?」 アーチャーは振り向かない、答えない。 民家のドアに手を付け、大きくなり過ぎたその息子の背中を見送った。 小さかった少年の背中と比べながら……。 【H-6 民家/早朝】 【アーチャー@Fate/stay night】 【装備:熟練スパナ@ペルソナ4】 【支給品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:『守護者』として行動する。 2:参加者を殺し、最後には主催者たちも殺す。 3:衛宮士郎は必ず殺す。セイバー、切嗣には……? 【備考】 ※凛ルート、召喚直後からの参加です ※投影は一度の使用につき30分のインターバルが発生します。また、弓の射程距離が短くなっています ※固有結界は発動できますが、膨大な魔力を消費します 【衛宮切嗣@Fate/Zero】 【装備:ワルサーP38(残弾4/8)@現実】 【所持品:支給品一式、ワルサーP38の予備弾(残弾24/24)、包丁@現実、ドライバー@現実、ランダム支給品×2】 【状態:健康、疲労(中)】 【思考・行動】 1:衛宮士郎を優勝させる。その為にはどんな手段をも厭わない。 2:エミヤは……? 【備考】 ※死後からの参戦です。 ※「時間操作」は使用できますが、通常時よりも負担がかかります。 ※六道骸を危険視しています。 【熟練スパナ@ペルソナ4】 序盤に手に入る花村陽介の装備武器。SPを+40にする効果を持つ。 【包丁@現実】 ホームセンターなどで買える普通の包丁。 【ドライバー@現実】 ホームセンターなどで買える普通のドライバー。 |[[たとえバラバラになろうとも]]|時系列|[[朱より赤し]]| |[[朱より赤し]]|投下順|[[たとえバラバラになろうとも]]| |[[皆の世界をまもるヒト]]|アーチャー|[[この大地の果てで(前編)]]| |[[偽善正義]]|衛宮切嗣|[[]]|
  素早く駆ける朱。 その朱をよくよく辿っていくと赤い外套の男である事がわかる。 特徴的な肌の褐色。 白に染まった頭髪。 大きな大きな背中。 その姿は弓兵らしくない弓兵(アーチャー)の姿であった。 『守護者』として活動し、衛宮士郎を1番に全ての参加者を皆殺しを決意した兵隊であった。 ――数時間前、彼は赤原猟犬で参加者の少女を殺した。 正確には彼はその殺した光景を見ていない。 いや、見る必要がなかったのだ。 その赤原猟犬の能力は弾かれようが射手が健在な限り標的を狙い続ける黒くて赤光する魔弾である。 とっくのとっくに狙われたあの少女はあの刃の錆となっているはずなのだから。 「だが能力制限とはまたやっかいな……」 人間とサーヴァントの実力差を埋める為に、主催側が我々の人ならざる者に能力を厳しく制限したのは容易に推測出来る。 他のサーヴァントはどんな制限をくらっているのかはわからない。 だが、投影魔術を基本にする自分にとって投影の時間設定は非常にやっかいだ。 その為、アーチャーは少女を殺す為に放った赤原猟犬を創ったあとからは支給品の『熟練スパナ』を手にしていた。 「こんな武器使いにくいにもほどがあるな」 そもそも自分の愛用する弓か剣の武器では当然剣寄りの武器であるだろう。 しかし、こんなものは剣などではなく、おそらく自分なら一度も投影をしてこの武器を出そうとは考えないだろう。 「支給品に武器が入っていただけまだ恵まれてはいるのだろうな」 そう思い込みアーチャーは心許ない武器を両手にし、参加者を探しに出たのであった。 参加者名簿には目を通していない。 何故ならどうせサーヴァントも人間も殺すのみ、衛宮士郎の姿は見せしめの前にとっくに発見済みであった。 つまり、アーチャーにとってはこのバトルロワイアルはただ殺す者しか居ない催しに過ぎないのだ。 ――――― 街の民家の屋根から見える人影は未だなし。 時間が無駄に過ぎていく1秒。 「ふむ、流石にそんな簡単に殺させてはくれぬか」 屋根からアーチャーはジャンプして降りる。 方針という大袈裟なものではないが、屋根など高い位置からまた弓で狙おうとしていたが効率の悪さに苛立ちを感じた。 自分の足で参加者を見つけて殺した方が手っ取り早いと……。 ◆◆◆◆ 「念の為にも武器は多いに越した事はない」 黒いもの身を包んだ魔術師殺しの異名を持つ衛宮切嗣はとある建物で武器を探していた。 考えたくもないが先程の戦闘で相手になった六道骸に対抗出来たのはワルサーP38と時間操作の為であった。 時間操作はどうにもならないとしてワルサーがもし無かったとしたら既に殺されていたであろう。 「銃やライフルは当然見つかるわけがないか……」 見つけられて包丁やドライバーといったホームセンターなどで簡単に入手出来るものぐらいであった。 「……こんな行動は正義でもなんでもないな」 自分の手の包丁を見ながら思い浮かべるのは死の直前の出来事。 衛宮士郎に正義の味方になりたかったと語って、それなら自分が正義の味方になると言ってくれた士郎の姿であった。 アイリを失い、イリヤと離れた自分にとって残された希望。 ――護らなくてはいけない。 封印していた事を解放しなくてはならない。 「ようやく参加者を見つけた。無防備な相手だ」 アーチャーは熟練スパナで簡単に殺せると判断。 両手にスパナを持ち、気を殺して気配を伺う。 「さて、また六道骸の様な強敵の相手を見つけた時はどうしようか? 僕が適うはずがないしね」 切嗣は一筋縄でいかない事はとっくに感づいていた。 いや、本能であろう。 血や戦いを寄せ付ける自分の性である。 「そう、例えば君の様な相手とかね!」 二本のスパナを突き出すアーチャー。 脳みそを守る様に包丁を構える切嗣。 切嗣はアーチャーが襲いかかる事など既に察知していた。 自分は敵を誘き出すプロなのだ。 逆に襲ってこないはずがない。 「……人間にしては対した力だ」 人を見下す口調で話すアーチャー。 『人間にしては――』と言った事や明らかに人間じゃないその外見の赤い外套の男の登場にどう対応するか悩ませる切嗣。 「ぐっ……、なんだこいつは……?」 と、自分から襲ったアーチャーは頭を痛ませた。 何故かはわからない。 目の前の男を目にした瞬間から懐かしさの様なもの、自分が生前守り通した正義が揺さぶられたのがわかった。 (何者だこの男……) まるでこの感じ、『■■■■』を目の前にした様な感覚であった。 「なんだい?急に頭を悩ませて」 「な、なんでもない」 そう言って男から間合いを離すアーチャー。 反撃はされない程度、男と話せる程度の距離の間合いを取って。 「もしかして君はサーヴァントかい?」 「っ!?」 アーチャーは自分の存在『サーヴァント』を知っている男を前に言葉を失った。 自分を見てサーヴァントなど口にするのはサーヴァント同士、もしくは何者かのサーヴァントのマスターになった事のある人物ではないと出るわけがない。 「そうだ。俺は冬木の第五次聖杯戦争の遠坂凛のサーヴァント。 アーチャーのクラスを得て限界して参った」 「……第五次聖杯戦争?」 おかしな事を言う。 冬木の聖杯戦争はまだ四次しか開戦していないはずだ。 なにしろ自らが聖杯を壊して冬木市の大災害を起こした人物でもある自分なのだから。 逆に頷ける事実でもあった。 自分の知るアーチャーとは似ても似つかない存在。 しかもマスターの名前である遠坂凛は、アーチャーのサーヴァントのマスター言峰綺礼とその前のマスター遠坂時巨の娘の名前であったはずだからだ。 「もう第五次聖杯戦争なんてのが始まっているんだね」 「……おかしな口振りだな?」 「僕はね冬木の第四次聖杯戦争のセイバーのマスターをしていた男さ」 アーチャーの頭にジェット機の様な速さで疑問が走った。 第四次聖杯戦争のサーヴァントのセイバーは自分の知るアーサー・ペンドラゴンである。 だがその時のマスターは確か――。 いや、有り得ない。 確かにそのマスターは存在するはずがない。 凛の世界から見ても5年も前に亡くなっていたはずだった。 「貴様の、名を知りたい」 「僕の名前かい?」 と目を閉じてぼそりと。 ――――『衛宮切嗣』。 忘れるはずがない、自らが一番尊敬するその男の名前であったのだから。 死ぬはずだった自分に希望と未来を与えた男の名前。 「嘘を付け貴様っ!貴様が衛宮切嗣のわけがない!」 辞めろ! その名前を簡単に口にするな! アーチャーの怒りが走った。 この偽物を殺す。 偽物の剣を創って偽物を殺す。 「僕の事を知っている口振りじゃないか」 顔を上げるアーチャー。 その姿は確かに自分の救世主、忘れるはずがない『衛宮切嗣』。 自分のじいさんであった。 衛宮士郎(自分)を嫌おうと、彼だけはどうしても嫌いにはなれない。 なるはずがなかった。 「じいさん……。貴様、いや本当にアナタは衛宮切嗣なのですか?」 確かめるまでもなかった。 まさしく古き自分の頭に過ぎるのはその切嗣で間違いないのであるから。 「僕は君にじいさん呼ばれされる筋合いはないな。……が、君はどうにも他人の気がしないな。はじめて会ったサーヴァントなのにね」 「それは俺の真名に関係あるかもな」 「…………」 自分の真名。 正義の味方であり続けて殺された男の名前。 「幼き時、冬木で起きた大災害の話だ。両親も誰もかもが亡くなったあの日、俺はとある人物に助けられた少年だ」 「……まさか、君は……?」 「真名を――『エミヤ』」 時を越えた親と息子の再会であった。 息子の姿は遥かに自分の体よりも大きな頼もしい姿であった。 「本当に……、君は?」 「つまり俺は過去ではなく未来から現れたサーヴァントという事だ」 切嗣もアーチャー。 どちら共、もう会えないと思った再会。 嬉しくないわけがなかった。 「そうか、君があの小さかった少年なのか」 「じいさん、久し振り」 お互い武器を降ろしてそのまま話をする為民家へと入って行った。 当然両者共、手を出すつもりは毛頭無かった。 ◆◆◆◆ 「大きくなったもんだな士郎」 「違う。俺はエミヤであり、衛宮士郎とは別人だ」 切嗣には話してしまった方が良いだろうとアーチャーは考えていた。 おそらく彼は士郎を護ろうとするだろう。 自分は士郎を殺そうとする者なのだから。 「でだ、じいさん。俺は今でもじいさんを尊敬している。英雄となり、サーヴァントとなった今でもだ」 「嬉しいね。僕との約束の通り正義の味方になったなんてね」 「あぁ。だが俺はその正義の味方になって激しく後悔をしている」 「……やはり、そうなったのか」 切嗣は自らの過去とエミヤの影を重ねる。 人々を救う為、人を殺す。 それを幾度となく繰り返して繰り返して数え切れないくらいになるのだ。 「だから俺は衛宮士郎を殺して俺が生まれない為にタイムパラドックスを起こす。おそらくじいさんは衛宮士郎を護ろうとするのだろう」 「…………」 切嗣は複雑な表情となる。 護りたかった少年、未来の少年。 互いが互いと敵対しているのだ。 だからといって少年を殺させるわけにもいかないのも事実。 「俺は全力を尽くして衛宮士郎を殺す。 だからじいさん。あんたは全力で衛宮士郎を守り抜いてみろ」 アーチャーは民家の出口に向かう。 切嗣は止めない。 嬉しかった再会だが別れる再会でもあったのだから。 「エミヤ……。なら僕は次に会った時は全力で君を止める。その強い力を僕に見せてもらいたい 最後に質問だエミヤ」 「……」 アーチャーは振り向かない。 切嗣と敵対という信じたくない出来事が直視させられるのだから。 「君は正義の味方になって嬉しかった事はなかったのかい?」 アーチャーは振り向かない、答えない。 民家のドアに手を付け、大きくなり過ぎたその息子の背中を見送った。 小さかった少年の背中と比べながら……。 【H-6 民家/早朝】 【アーチャー@Fate/stay night】 【装備:熟練スパナ@ペルソナ4】 【支給品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:『守護者』として行動する。 2:参加者を殺し、最後には主催者たちも殺す。 3:衛宮士郎は必ず殺す。セイバー、切嗣には……? 【備考】 ※凛ルート、召喚直後からの参加です ※投影は一度の使用につき30分のインターバルが発生します。また、弓の射程距離が短くなっています ※固有結界は発動できますが、膨大な魔力を消費します 【衛宮切嗣@Fate/Zero】 【装備:ワルサーP38(残弾4/8)@現実】 【所持品:支給品一式、ワルサーP38の予備弾(残弾24/24)、包丁@現実、ドライバー@現実、ランダム支給品×2】 【状態:健康、疲労(中)】 【思考・行動】 1:衛宮士郎を優勝させる。その為にはどんな手段をも厭わない。 2:エミヤは……? 【備考】 ※死後からの参戦です。 ※「時間操作」は使用できますが、通常時よりも負担がかかります。 ※六道骸を危険視しています。 【熟練スパナ@ペルソナ4】 序盤に手に入る花村陽介の装備武器。SPを+40にする効果を持つ。 【包丁@現実】 ホームセンターなどで買える普通の包丁。 【ドライバー@現実】 ホームセンターなどで買える普通のドライバー。 |[[たとえバラバラになろうとも]]|時系列|[[セッキン]]| |[[朱より赤し]]|投下順|[[たとえバラバラになろうとも]]| |[[皆の世界をまもるヒト]]|アーチャー|[[この大地の果てで(前編)]]| |[[偽善正義]]|衛宮切嗣|[[]]|

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