「運命は、英語で言うとデスティニー」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

運命は、英語で言うとデスティニー」(2012/11/25 (日) 11:44:52) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

と、決意と同時にサーベルが総一の頭を狙っていた。 「うわぁっ…!」 総一はそれを後ろに吹っ飛ぶようにして避け――実際は転んだだけだが――事なきを得た。 しかし脅威は終わっていない。 狂った椎名の標的は、未だ総一のままだ。 総一は起き上がって、椎名からの攻撃に備える。 椎名は、サーベルを大上段に構えて勢いよく振り下ろそうとしている。 万事休す、ただの学生である総一が避けられる道理はない。 だが、幸運の女神が微笑んだのか。 総一は今度の攻撃も避けることができた。 「…っくそ!」 それが分かるとすぐに体勢を整え、総一は椎名に背を向けて走り出す。 椎名も遅れはしたが、素早く総一の背中を追い始める。 森の中、2人だけの追いかけっこが始まった。 ◇◇◇ 森の中を横に並んで歩く影が2つ。 黒神めだかと、桂ヒナギク。 眉目秀麗、才色兼備、文武両道といった言葉が良く似合う、2人の見目麗しい女性がいた。 2人は殺し合いには乗らず、参加者を集めて主催者に対抗することを考えている。 「めだかさん、あれ!」 「…ふむ、参加者か」 そんな彼女たちは、森の中で走っている2人を発見した。 めだかは2人の名前を確認し、悠然と総一たちに近付いて行く。 常識人のヒナギクはそんなめだかを急かすのだった。 ◇◇◇ 森の中を縦に並び歩く影が2つ。 北条かりん、そしてイカロス。 ボーイッシュな少女と、おとなしげな少女の、似合わないとも言えるコンビ。 しかして2人は、この島においては主従関係を結んでいた。 「マスター。参加者です」 「…2人ね」 殺し合いに乗っている彼女たちは、獲物となる参加者を発見した。 かりんは慣れない手つきで手元の銃の残弾を確認して、男の元へと駆け寄ろうとする。 イカロスはあくまで従者として、かりんの後から歩いて行った。 ◇◇◇ 俺は椎名さんから逃げるために、必死に走っていた。 これまで同行して、彼女の強さはよく分かっている。 年は近いのだろうが、少なくとも戦闘に関しては俺よりも数段上だ。 出会ったとき、俺が襲われたときのことを思い出す。 拳銃を持った少女の元へと恐れずに走っていき、俊敏な身のこなしで少女を無力化。 そして第三者が介入するや否や、俺との逃走を瞬時に選択した。 まったく、信じられなかった。 まるで映画のアクションシーンを見ているかのようで。 流れるような、ともすれば美しくも見える戦闘だった。 あの男も言っていたが、本当に彼女は「くノ一」と呼ばれる、本物の忍者なのか。 でなければ、格闘技でも習っているのだろう。 どちらにしても、俺みたいなごく普通の高校生では相手にもならない。 さらに、正気に戻す方法もまったく考えつかない。 …くそっ、どうすればいいんだ! なんて考えた次の瞬間にも、サーベルが背中を掠める勢いで向かってくる。 今は逃げることに集中した方が良い。そんな単純なことに今更気づく。 そして、もう何度目になるか分からない全力疾走をしようとして―― 突然、4人の女の子が出てきた。 ◇◇◇ 「……」 互いに予期せぬ人たちが表れたため、6人は固まってしまった。 椎名は現れた4人に戸惑いサーベルを構えもせず。 かりんは拳銃を誰に向けるかを考えて。 ヒナギクは全員の挙動に目を光らせ。 総一は椎名が攻撃をしてこないことに安堵し。 イカロスは2人の女性の戦闘能力を推し量っていた。 そんな硬直した場を崩したのは。 「私は箱庭学園生徒会長、黒神めだか。24時間365日、私は誰からの相談でも受け付ける!!  貴様たちの悩みは私の所有物だ。一つ残らず私に貢げ!!」 という、荒唐無稽な言葉だった。。 もちろんめだかとしては、総一を攻撃する椎名への発言で。 攻撃をやめろ、私と話をしろ、という意思表示だったのだが。 その場にいた誰も予想しない人物から、声がかかった。 ◇◇◇ 黒神と名乗る女性から、急に発せられた言葉。 私はそれに、なぜか怒りと嫌悪感が湧いてきた。 何を無責任なことを言っているのか。 だったら今ここで、私の妹を助けてくれと言ったら助けてくれるのか。 無理に決まってる。 殺そうとした男のことも忘れ、黒神めだかへの殺意に心を委ねる。 「…だったら相談です、黒神さん」 と言いながら、後ろの手に持った拳銃を握りしめる。 「む?貴方は…北条かりん殿か」 「…はい」 そしてめだかの方を向く。 「ああ、何故名前を知っているのか不審に思われたなら申し訳ないな。 しかし勘違いしないでくれ、支給品に参加者の詳細名簿が入っていただけだ」 「…そんなことは、どうでもいいから…」 ゆっくりと拳銃をめだかに向け。 「…死んでくれる?」 殺意を込めて、引き金を引いた。 ◇◇◇ 発砲音が聞こえても、めだかさんは動かなかった。 撃たれたのかと思ったけど、そうではないらしい。 「…くそっ、イカロス!」 北条かりんが外しただけのようだ。 拳銃にも慣れていないところを見ると、ただの少女なのだろう。 「全員、殺して!」 ――かなり、精神面が危ないようだけど。 「はい、マスター」 イカロスと呼ばれた少女がめだかさんに向かっていく。 手には波打つような刃の剣――確か、フランベルジェといったはず――を持っている。 大きく振りかぶって、薙ぎ払う。 ぶうん、と風を切る音。 身の丈以上の長さがあり、かなり重いはずの剣を、少女は軽々と振る。 しかし、めだかさんはそれを扇子で止めていた。 2人とも、相当な馬鹿力らしい。 (…どんなアクションゲームよ!) 心の中でツッコミを入れる。どうやらこの島では常識は通用しないようだ。 例えば。何もしていないのに、斬りかかられたりする。 サーベルの一撃をバットを構えて防ぎ、跳ね返す。 「まったく、早く知り合いと合流したいっていうのに!」 多少の怒りも含ませながら、ヒナギクは山本のバットを振って刀にする。 狂った忍者との戦いが始まった。 ◇◇◇ 追われていたはずの総一は、いつの間にか置いてけぼりにされていた。 ここに居たのが自分第一の現実主義者だったなら、助かる為にすぐに逃げただろう。 けれども総一は、その場から動こうとはしなかった。 (北条かりん…やっぱりあの子だったのか…) 同じゲームの参加者『だった』、総一を襲ったこともある少女。 死んでしまったはずの少女が生きていることは不思議だったが。 少女が再び殺し合いに乗っていることが、総一にはショックだった。 (止めさせないと!) 少女に再び道を間違えさせるわけにはいかない。 ある種の使命感すら持って、総一はかりんに近付いた。 ◇◇◇ (くっ…うまくいかない…) かりんは内心、舌打ちをした。 (運がいいと思ったのに…) 数時間前のスタンド使いもそうだが、この島には強い人間ばかりだ。 この2人の女性は、とても楽に殺せる相手じゃない。 イカロスの馬鹿力でも敵わないのだから。 (どうする!?) 焦りが心を支配する。 自分だけが逃げれば、イカロスは捕まってしまうだろう。 そうなると1人きりになって、最初に逆戻りだ。 かといってイカロスと共に逃げれば、間違いなく女――黒神めだかは追って来る。 修羅場を潜り抜けてきたわけでもないかりんは、機転を利かせることもできず。 今の状況は、まさに八方ふさがりだった。 (どうする?どうする?どうする?) 「大丈夫?」 「!?」 唐突に声をかけられて、背筋が凍る。振り向くと、最初の標的だった男がいた。 「…何?」 「君を助けたい。俺は君を知っている。殺し合いに乗るような子じゃない」 早口で話す男の真意が分からなかった。 こんな男は知らないし、分かったような事を言われるのも腹が立つ。 「あなたにどうこう言われる筋合いはない!」 拳銃を男に向ける。脅しと本気が半々だ。 しかし男は動じない。 「…死にたいの?」 「君は撃たない」 断言される。拳銃を持つ手が震えた。 なんで、なんで拳銃を怖がらないんだろう。それが不思議で、怖かった。 「君は撃たない。優しい子だから」 男は子供をあやすように、私に優しく声をかける。 殺し合いだということを感じさせないその声が、なんだか、とても、心に響いた。 「殺し合いに乗ったのも、誰かの為なんじゃないのか?」 男が聞いてくる。 そうだ、かれん――。私はかれんの為に。 「そうよ!私はかれんの為に、優勝しなきゃいけな」 「だったら!」 言葉を遮られて、うっ、と詰まる。それくらい、男の声には有無を言わさぬ迫力があった。 「俺が協力する。元の世界に戻ったら、妹を助けるために何でもする」 力強く、言葉を続ける男。その目は真剣そのもので、そして―― 「だから――人殺しなんて、やめてくれ」 男は泣いていた。 情けない、と思う反面、かっこいい、とも思った。 今まで、私のことをここまで考えてくれた人はいなかった。 「わ、私、は…」 泣きそうになる。拳銃を持つ手は震えまくっている。 この男が、怖かった。私の事を知らないくせに、心配してくる男が。 「人殺しをして、そのかれんちゃんは喜ぶのか?」 男は私の心を覗き込んでくる。ズカズカと、遠慮なく。 けれど、と心が揺れる。つまりこの男は、本気で心配しているんだ。 初めて会った、名前も知らない筈のこの私の事を。 「…銃を渡してくれないか」 男は再び、優しく声をかける。 その言葉で決心した。今はこの男を、信じてみよう。 この人なら、どうにかしてくれる。そんな期待を込めて、銃を渡そうとして近寄った瞬間。 男の胸から、鋭い剣が生えた。 ◇◇◇ 「大丈夫ですか、マイマスター」 後ろから、そんな声が聞こえる。 この声はイカロスと呼ばれた少女か、と激痛に耐えながら考える。 視線を下に向けると、自分の血に染まった剣が見えた。 自分の胸から剣が生えているところを見るなんて、夢にも思わなかった。 あるいは、今この瞬間が夢なのか。 いや、夢じゃない。俺の前には確かに――北条かりんがいる。 泣きそうな顔をして、俺を見ている。信じられない、といった顔だ。 「……気に、しないで、くれ」 どうにか言葉を発する。気にするな、君のせいじゃない、そう伝えたかった。 しかし、その言葉を聞いたかりんは、余計に顔を歪ませた。 そして俺に背を向けて走り出す。何かを吹っ切るように、何かから逃げるように。 「マスター!」 この少女、イカロスが俺を刺したのは、恐らくかりんの為なのだろう。 なんでかは知らないがかりんに忠誠を誓っていて、そしてかりんに近寄った俺を敵と認識して刺した。 そんなところだろう。 お互いかりんを心配しての行動だったとしたら、報われないなと薄く笑った。 だがすぐに痛みが走り、顔が引きつる。 「マスター!待ってください!」 どうにかイカロスを目で追うと、かりんの消えていった方向を見ている。 走ってかりんを追おうとしたのだろうが、それは黒神めだかさんが許さなかったようだ。 「邪魔をしないでください!」 と言いながらも、武器なしで倒せる相手ではないと踏んだのだろう。 イカロスは俺の体から、剣を引き抜いた。 「ぐっ、あああ!!」 強引に引き抜かれたせいで、強烈な痛みが神経を伝わり、筋肉が、脳が、悲鳴を上げる。 地面に膝をつく。力を入れようにも入らない。そのまま前に倒れ込んだ。 分かる、自分はもう死ぬのだと。血と共に力が無くなるのを感じる。 ああ、北条かりんは、大丈夫だろうか。殺し合いに、乗ることはないだろうか。 考えてみれば、自分はこのバトルロワイアルで何一つ達成しないまま死ぬ。 麗佳にも二度と会えない。 主催者に対抗することも叶わない。 椎名さんも、結局正気に戻せなかった。後悔ばかりが頭をよぎる。 そういう運命だったなんて、割り切ることは出来ないけど。 いまさら何を言っても遅いのだろう。もう、眠くなってきた。 つまり、これは。 「……ゲームオーバー、ってことかな。はは…」 自嘲めいた笑いと共に、少年はその一生を終えた。 &color(red){【御剣総一@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-  死亡】} ◇◇◇ 「…ふう、やっと倒れた」 桂ヒナギクは、自分にサーベルを向けてきた少女を見下ろす。 忍者のような身のこなしには苦戦させられたものの、相手も疲労が溜まっていたようだ。 激しい戦闘の末、少女は電池が切れたように倒れて気絶した。 狂ったように攻撃してきたことも含めて、この少女には聞きたいことが多くある。 だがそれも、少女の目が覚めてからになるだろう。 「さて、と…」 周りを見ると、未だにめだかさんはイカロスと闘っていた。 そのそばには、少年――詳細名簿には御剣総一とあった――が倒れている。 「あれって…死んでる!?」 戦闘に巻き込まれないよう静かに近付いてみると、確かに死んでいた。 胸には酷い傷があり、そこから大量の血が流れ出ている。 おそらくは、イカロスの剣によるものだ。よく見れば、今も血が付着している。 許せない。けれど、今はめだかさんと闘っているから手出しは出来ない。 一応、御剣総一の物だろうデイパックを回収しておく。 「…あれ?」 そういえば、イカロスがマスターと言っていた、北条かりんがいない。 いきなり発砲するあたり、彼女もそうとう精神が参っているに違いない。 話を聞きたかったが、いったいどこへ行ったのだろうか。 そして、一番の問題は、この先どうするか。 めだかさんとイカロスの闘いに、どう決着がつくかにもよるのだが。 あと数十分もすれば、放送が始まるはずだ。それを聞いてから決めるのもいいだろう。 戦闘音が響く中、桂ヒナギクは今後のことについて思考することにした。 【E-4 森/早朝】 【北条かりん@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】 【装備:S&W M37エアーウェイト3/5@現実】 【所持品:支給品一式、S&W M37の弾丸45/45@現実、ランダム支給品×2】 【状態:健康、精神的ショック】 【思考・行動】 0:????? 1:優勝してかれんの元に賞金を持って帰る? 2:イカロスと共に参加者を皆殺し? 【備考】 ※本編開始前からの参戦。 ※黒神めだかの名前と容姿を記憶しました。 【イカロス@そらのおとしもの】 【装備:フランベルジェ@とある魔術の禁書目録】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:マスターの命令に従う。 2:命令通り参加者の皆殺し。 3:めだかを殺して、マスターと合流。 【備考】 ※本編開始前からの参戦。 ※桜井智樹ではなく北条かりんがマスターです。 ※武器は没収、羽根で飛ぶ事は制限です。 ※馬鹿力は制限されていません。 【黒神めだか@めだかボックス】 【装備:原初の海@ペルソナ4】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×1】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:桂二年生と行動。 2:主催者から参加者全員に謝らせる。 3:イカロスを捕える。 【備考】 ※オリエンテーション開始直前からの参戦。 ※参加者全員の顔と名前を一致させています。 ※乱神モードは3時間待って10分、改神モードは制限で1日1回の制限です。 【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】 【装備:山本のバット@家庭教師ヒットマンREBORN!】 【所持品:支給品一式×2、羽根の付いたランドセル@Kanon、こけし@そらのおとしもの、 サーベル@ハヤテのごとく!参加者全員の全身写真@その他、ランダム支給品×2】 【状態:疲労(小)】 【思考・行動】 1:めだかさんと行動。 2:このゲームを止める。 3:少女(椎名)が目を覚ました後、話を聞く。 【備考】 ※アテネ編終了後からの参戦です。 ※めだかの知り合いの事を教えてもらいました。 ※参加者のある程度の顔と名前を一致しました。 ※北条かりん、イカロスを危険視しています。 【椎名@Angel Beats!】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:気絶、疲労(大)】 【思考・行動】 1:……。 【備考】 ※ユイ消滅前からの参戦。 ※ギアスは解けたようです。 【フランベルジェ@とある魔術の禁書目録】 イカロスに支給。 一八〇センチを越える巨大な剣で重さも相当。 両刃の刀身は波状に作られており、肉を引き裂き、止血しにくくする。 治りづらい傷を作るため、「死よりも苦痛を与える剣」として知られる。 天草式十字凄教に所属する建宮斎字は、これを片手で振りまわしている。 |[[剣ツルギ物モノ語ガタリ]]|時系列|[[つぎへの方向]]| |[[仮面は微笑む。]]|投下順|[[つぎへの方向]]| |[[堕ちないネイロ]]|御剣総一|[[DEAD END>HEROES]]| |[[堕ちないネイロ]]|椎名|[[HEROES]]| |[[生徒会の一存]]|黒神めだか|[[HEROES]]| |[[生徒会の一存]]|桂ヒナギク|[[HEROES]]| |[[fallen down]]|北条かりん|[[HEROES]]| |[[fallen down]]|イカロス|[[HEROES]]|
と、決意と同時にサーベルが総一の頭を狙っていた。 「うわぁっ……!」 総一はそれを後ろに吹っ飛ぶようにして避け――実際は転んだだけだが――事なきを得た。 しかし脅威は終わっていない。 狂った椎名の標的は、未だ総一のままだ。 総一は起き上がって、椎名からの攻撃に備える。 椎名は、サーベルを大上段に構えて勢いよく振り下ろそうとしている。 万事休す、ただの学生である総一が避けられる道理はない。 だが、幸運の女神が微笑んだのか。 総一は今度の攻撃も避けることができた。 「……っくそ!」 それが分かるとすぐに体勢を整え、総一は椎名に背を向けて走り出す。 椎名も遅れはしたが、素早く総一の背中を追い始める。 森の中、2人だけの追いかけっこが始まった。 ◇◇◇ 森の中を横に並んで歩く影が2つ。 黒神めだかと、桂ヒナギク。 眉目秀麗、才色兼備、文武両道といった言葉が良く似合う、2人の見目麗しい女性がいた。 2人は殺し合いには乗らず、参加者を集めて主催者に対抗することを考えている。 「めだかさん、あれ!」 「……ふむ、参加者か」 そんな彼女たちは、森の中で走っている2人を発見した。 めだかは2人の名前を確認し、悠然と総一たちに近付いて行く。 常識人のヒナギクはそんなめだかを急かすのだった。 ◇◇◇ 森の中を縦に並び歩く影が2つ。 北条かりん、そしてイカロス。 ボーイッシュな少女と、おとなしげな少女の、似合わないとも言えるコンビ。 しかして2人は、この島においては主従関係を結んでいた。 「マスター。参加者です」 「……2人ね」 殺し合いに乗っている彼女たちは、獲物となる参加者を発見した。 かりんは慣れない手つきで手元の銃の残弾を確認して、男の元へと駆け寄ろうとする。 イカロスはあくまで従者として、かりんの後から歩いて行った。 ◇◇◇ 俺は椎名さんから逃げるために、必死に走っていた。 これまで同行して、彼女の強さはよく分かっている。 年は近いのだろうが、少なくとも戦闘に関しては俺よりも数段上だ。 出会ったとき、俺が襲われたときのことを思い出す。 拳銃を持った少女の元へと恐れずに走っていき、俊敏な身のこなしで少女を無力化。 そして第三者が介入するや否や、俺との逃走を瞬時に選択した。 まったく、信じられなかった。 まるで映画のアクションシーンを見ているかのようで。 流れるような、ともすれば美しくも見える戦闘だった。 あの男も言っていたが、本当に彼女は「くノ一」と呼ばれる、本物の忍者なのか。 でなければ、格闘技でも習っているのだろう。 どちらにしても、俺みたいなごく普通の高校生では相手にもならない。 さらに、正気に戻す方法もまったく考えつかない。 くそっ、どうすればいいんだ! なんて考えた次の瞬間にも、サーベルが背中を掠める勢いで向かってくる。 今は逃げることに集中した方が良い。そんな単純なことに今更気づく。 そして、もう何度目になるか分からない全力疾走をしようとして―― 突然、4人の女の子が出てきた。 ◇◇◇ 「……」 互いに予期せぬ人たちが表れたため、6人は固まってしまった。 椎名は現れた4人に戸惑いサーベルを構えもせず。 かりんは拳銃を誰に向けるかを考えて。 ヒナギクは全員の挙動に目を光らせ。 総一は椎名が攻撃をしてこないことに安堵し。 イカロスは2人の女性の戦闘能力を推し量っていた。 そんな硬直した場を崩したのは。 「私は箱庭学園生徒会長、黒神めだか。24時間365日、私は誰からの相談でも受け付ける!!  そこの貴女、なにか思うことがあるのならば、悩み事があるのならば、私に吐き出すがいい!!」 という、荒唐無稽な言葉だった。。 もちろんめだかとしては、総一を攻撃する椎名への発言で。 攻撃をやめろ、私と話をしろ、という意思表示だったのだが。 その場にいた誰も予想しない人物から、声がかかった。 ◇◇◇ 黒神と名乗る女性から、急に発せられた言葉。 私はそれに、なぜか怒りと嫌悪感が湧いてきた。 何を無責任なことを言っているのか。 だったら今ここで、私の妹を助けてくれと言ったら助けてくれるのか。 無理に決まってる。 殺そうとした男のことも忘れ、黒神めだかへの殺意に心を委ねる。 「……だったら相談です、黒神さん」 と言いながら、後ろの手に持った拳銃を握りしめる。 「む?貴方は……北条かりん殿か」 「……はい」 そしてめだかの方を向く。 「ああ、何故名前を知っているのか不審に思われたなら申し訳ないな。 しかし勘違いしないでくれ、支給品に参加者の詳細名簿が入っていただけだ」 「そんなことは、どうでもいいから……」 ゆっくりと拳銃をめだかに向け。 「……死んでくれる?」 殺意を込めて、引き金を引いた。 ◇◇◇ 発砲音が聞こえても、めだかさんは動かなかった。 撃たれたのかと思ったけど、そうではないらしい。 「……くそっ、イカロス!」 北条かりんが外しただけのようだ。 拳銃にも慣れていないところを見ると、ただの少女なのだろう。 「全員、殺して!」 ――かなり、精神面が危ないようだけど。 「はい、マスター」 イカロスと呼ばれた少女がめだかさんに向かっていく。 手には波打つような刃の剣――確か、フランベルジェといったはず――を持っている。 大きく振りかぶって、薙ぎ払う。 ぶうん、と風を切る音。 身の丈以上の長さがあり、かなり重いはずの剣を、少女は軽々と振る。 しかし、めだかさんはそれを扇子で止めていた。 2人とも、相当な馬鹿力らしい。 (……どんなアクションゲームよ!) 心の中でツッコミを入れる。どうやらこの島では常識は通用しないようだ。 例えば。何もしていないのに、斬りかかられたりする。 サーベルの一撃をバットを構えて防ぎ、跳ね返す。 「まったく、早く知り合いと合流したいっていうのに!」 多少の怒りも含ませながら、ヒナギクは山本のバットを振って刀にする。 狂った忍者との戦いが始まった。 ◇◇◇ 追われていたはずの総一は、いつの間にか置いてけぼりにされていた。 ここに居たのが自分第一の現実主義者だったなら、助かる為にすぐに逃げただろう。 けれども総一は、その場から動こうとはしなかった。 (北条かりん……やっぱりあの子だったのか) 同じゲームの参加者『だった』、総一を襲ったこともある少女。 死んでしまったはずの少女が生きていることは不思議だったが。 少女が再び殺し合いに乗っていることが、総一にはショックだった。 (止めさせないと!) 少女に再び道を間違えさせるわけにはいかない。 ある種の使命感すら持って、総一はかりんに近付いた。 ◇◇◇ (くっ、うまくいかない……) かりんは内心、舌打ちをした。 (運がいいと思ったのに……) 数時間前のスタンド使いもそうだが、この島には強い人間ばかりだ。 この2人の女性は、とても楽に殺せる相手じゃない。 イカロスの馬鹿力でも敵わないのだから。 (どうする!?) 焦りが心を支配する。 自分だけが逃げれば、イカロスは捕まってしまうだろう。 そうなると1人きりになって、最初に逆戻りだ。 かといってイカロスと共に逃げれば、間違いなく女――黒神めだかは追って来る。 修羅場を潜り抜けてきたわけでもないかりんは、機転を利かせることもできず。 今の状況は、まさに八方ふさがりだった。 (どうする?どうする?どうする?) 「大丈夫?」 「!?」 唐突に声をかけられて、背筋が凍る。振り向くと、最初の標的だった男がいた。 「……何?」 「君を助けたい。俺は君を知っている。殺し合いに乗るような子じゃない」 早口で話す男の真意が分からなかった。 こんな男は知らないし、分かったような事を言われるのも腹が立つ。 「あなたにどうこう言われる筋合いはない!」 拳銃を男に向ける。脅しと本気が半々だ。 しかし男は動じない。 「……死にたいの?」 「君は撃たない」 断言される。拳銃を持つ手が震えた。 なんで、なんで拳銃を怖がらないんだろう。それが不思議で、怖かった。 「君は撃たない。優しい子だから」 男は子供をあやすように、私に優しく声をかける。 殺し合いだということを感じさせないその声が、なんだか、とても、心に響いた。 「殺し合いに乗ったのも、誰かの為なんじゃないのか?」 男が聞いてくる。 そうだ、かれん――。私はかれんの為に。 「そうよ!私はかれんの為に、優勝しなきゃいけな」 「だったら!」 言葉を遮られて、うっ、と詰まる。それくらい、男の声には有無を言わさぬ迫力があった。 「俺が協力する。元の世界に戻ったら、その子を助けるために何でもする」 力強く、言葉を続ける男。その目は真剣そのもので、そして―― 「だから――人殺しなんて、やめてくれ」 男は泣いていた。 情けない、と思う反面、かっこいい、とも思った。 今まで、私のことをここまで考えてくれた人はいなかった。 「わ、私、は……」 泣きそうになる。拳銃を持つ手は震えまくっている。 この男が、怖かった。私の事を知らないくせに、心配してくる男が。 「人殺しをして、そのかれんちゃんは喜ぶのか?」 男は私の心を覗き込んでくる。ズカズカと、遠慮なく。 けれど、と心が揺れる。つまりこの男は、本気で心配しているんだ。 初めて会った、名前も知らない筈のこの私の事を。 「……銃を渡してくれないか」 男は再び、優しく声をかける。 その言葉で決心した。今はこの男を、信じてみよう。 この人なら、どうにかしてくれる。そんな期待を込めて、銃を渡そうとして近寄った瞬間。 男の胸から、剣が生えた。 ◇◇◇ 「大丈夫ですか、マイマスター」 後ろから、そんな声が聞こえる。 この声はイカロスと呼ばれた少女か、と激痛に耐えながら考える。 視線を下に向けると、自分の血に染まった剣が見えた。 自分の胸から剣が生えているところを見るなんて、夢にも思わなかった。 あるいは、今この瞬間が夢なのか。 いや、夢じゃない。俺の前には確かに――北条かりんがいる。 泣きそうな顔をして、俺を見ている。信じられない、といった顔だ。 「……気に、しないで、くれ」 どうにか言葉を発する。気にするな、君のせいじゃない、そう伝えたかった。 しかし、その言葉を聞いたかりんは、余計に顔を歪ませた。 そして俺に背を向けて走り出す。何かを吹っ切るように、何かから逃げるように。 「マスター!」 この少女、イカロスが俺を刺したのは、恐らくかりんの為なのだろう。 なんでかは知らないがかりんに忠誠を誓っていて、そしてかりんに近寄った俺を敵と認識して刺した。 そんなところだろう。 お互いかりんを心配しての行動だったとしたら、報われないなと薄く笑った。 だがすぐに痛みが走り、顔が引きつる。 「マスター!待ってください!」 どうにかイカロスを目で追うと、かりんの消えていった方向を見ている。 走ってかりんを追おうとしたのだろうが、それは黒神めだかさんが許さなかったようだ。 「邪魔をしないでください!」 と言いながらも、武器なしで倒せる相手ではないと踏んだのだろう。 イカロスは俺の体から、剣を引き抜いた。 「ぐっ、あああ!!」 強引に引き抜かれたせいで、強烈な痛みが神経を伝わり、筋肉が、脳が、悲鳴を上げる。 地面に膝をつく。力を入れようにも入らない。そのまま前に倒れ込んだ。 分かる、自分はもう死ぬのだと。血と共に力が無くなるのを感じる。 ああ、北条かりんは、大丈夫だろうか。殺し合いに、乗ることはないだろうか。 考えてみれば、自分はこのバトルロワイアルで何一つ達成しないまま死ぬ。 麗佳にも二度と会えない。 主催者に対抗することも叶わない。 椎名さんも、結局正気に戻せなかった。後悔ばかりが頭をよぎる。 そういう運命だったなんて、割り切ることは出来ないけど。 いまさら何を言っても遅いのだろう。もう、眠くなってきた。 つまり、これは。 「……ゲームオーバー、ってことかな。はは……」 自嘲めいた笑いと共に、少年はその一生を終えた。 &color(red){【御剣総一@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-  死亡】} ◇◇◇ 「ふう、やっと倒れた」 桂ヒナギクは、自分にサーベルを向けてきた少女を見下ろす。 忍者のような身のこなしには苦戦させられたものの、相手も疲労が溜まっていたようだ。 激しい戦闘の末、少女は電池が切れたように倒れて気絶した。 狂ったように攻撃してきたことも含めて、この少女には聞きたいことが多くある。 だがそれも、少女の目が覚めてからになるだろう。 「さて、と……」 周りを見ると、未だにめだかさんはイカロスと闘っていた。 そのそばには、少年――詳細名簿には御剣総一とあった――が倒れている。 「あれって……死んでる!?」 戦闘に巻き込まれないよう静かに近付いてみると、確かに死んでいた。 胸には酷い傷があり、そこから大量の血が流れ出ている。 おそらくは、イカロスの剣によるものだ。よく見れば、今も血が付着している。 許せない。けれど、今はめだかさんと闘っているから手出しは出来ない。 一応、御剣総一の物だろうデイパックを回収しておく。 「……あれ?」 そういえば、イカロスがマスターと言っていた、北条かりんがいない。 いきなり発砲するあたり、彼女もそうとう精神が参っているに違いない。 話を聞きたかったが、いったいどこへ行ったのだろうか。 そして、一番の問題は、この先どうするか。 めだかさんとイカロスの闘いに、どう決着がつくかにもよるのだが。 あと数十分もすれば、放送が始まるはずだ。それを聞いてから決めるのもいいだろう。 戦闘音が響く中、桂ヒナギクは今後のことについて思考することにした。 【E-4 森/早朝】 【北条かりん@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】 【装備:S&W M37エアーウェイト3/5@現実】 【所持品:支給品一式、S&W M37の弾丸45/45@現実、ランダム支給品×2】 【状態:健康、精神的ショック】 【思考・行動】 0:????? 1:優勝してかれんの元に賞金を持って帰る? 2:イカロスと共に参加者を皆殺し? 【備考】 ※本編開始前からの参戦。 ※黒神めだかの名前と容姿を記憶しました。 【イカロス@そらのおとしもの】 【装備:フランベルジェ@とある魔術の禁書目録】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:マスターの命令に従う。 2:命令通り参加者の皆殺し。 3:めだかを殺して、マスターと合流。 【備考】 ※本編開始前からの参戦。 ※桜井智樹ではなく北条かりんがマスターです。 ※武器は没収、羽根で飛ぶ事は制限です。 ※馬鹿力は制限されていません。 【黒神めだか@めだかボックス】 【装備:原初の海@ペルソナ4】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×1】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:桂二年生と行動。 2:主催者から参加者全員に謝らせる。 3:イカロスを捕える。 【備考】 ※オリエンテーション開始直前からの参戦。 ※参加者全員の顔と名前を一致させています。 ※乱神モードは3時間待って10分、改神モードは制限で1日1回の制限です。 【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】 【装備:山本のバット@家庭教師ヒットマンREBORN!】 【所持品:支給品一式×2、羽根の付いたランドセル@Kanon、こけし@そらのおとしもの、 サーベル@ハヤテのごとく!参加者全員の全身写真@その他、ランダム支給品×2】 【状態:疲労(小)】 【思考・行動】 1:めだかさんと行動。 2:このゲームを止める。 3:少女(椎名)が目を覚ました後、話を聞く。 【備考】 ※アテネ編終了後からの参戦です。 ※めだかの知り合いの事を教えてもらいました。 ※参加者のある程度の顔と名前を一致しました。 ※北条かりん、イカロスを危険視しています。 【椎名@Angel Beats!】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:気絶、疲労(大)】 【思考・行動】 1:……。 【備考】 ※ユイ消滅前からの参戦。 ※ギアスは解けたようです。 【フランベルジェ@とある魔術の禁書目録】 イカロスに支給。 一八〇センチを越える巨大な剣で重さも相当。 両刃の刀身は波状に作られており、肉を引き裂き、止血しにくくする。 治りづらい傷を作るため、「死よりも苦痛を与える剣」として知られる。 天草式十字凄教に所属する建宮斎字は、これを片手で振りまわしている。 |[[剣ツルギ物モノ語ガタリ]]|時系列|[[つぎへの方向]]| |[[仮面は微笑む。]]|投下順|[[つぎへの方向]]| |[[堕ちないネイロ]]|御剣総一|[[DEAD END>HEROES]]| |~|椎名|[[HEROES]]| |[[生徒会の一存]]|黒神めだか|~| |~|桂ヒナギク|~| |[[fallen down]]|北条かりん|~| |~|イカロス|~|

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: