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来ヶ谷唯湖という少女は、本来こんな人物ではない。 たとえば『リトルバスターズ』が存在する世界では姉御肌の個性的な人物になるし、気になる男子に告白されれば心が揺らぐ、そんな普通の少女の一面だって持っている。 こんな風に殺し合いに身を投じ、進んで殺人を犯そうとするような人間ではないのだ。 しかし来ヶ谷唯湖はこうして狂人顔負けの行動をして、更には王の力―――ギアスさえ手に入れた。 科学の街の超能力者の高圧電流を受けてもびくともしないその姿は、化け物のようですらあったろう。 彼女がそんな人外じみた真似をやって除けたのはひとえに、彼女が信じていたからだ。 ――――この世界が『ユメ』であることを、ひた向きに信じていたから、たったそれだけの話。 夢の中で怪我をしたって、実際に身体が傷付くわけがない。 子供でも判るような当たり前を、彼女はこの立派な現実に当てはめてしまっていた。 狂った彼女にとってそれが幸運なのかはたまた不運だったのかは本人すら預かり知らぬ話だ。 だが来ヶ谷唯湖は確かにこの瞬間、動揺を見せていた。 所詮現実には届かない儚い夢だと信じているのに、それでも彼女の心を不気味な感覚が襲う。 こめかみに手を当てて目を見開くその姿は、つい数時間前に一人の少女を狂わせた狂人の動作とは到底思えない。 それは紛れもなく、予期せぬ悲劇に動揺する一人の少女の姿だった。 「唯湖。お前、どうしたんだ? えらい変わりようだぞ?」 C.C.が心配しているような言葉をかけてくるが、その声色にそんな優しさは欠片も見当たらない。 これが彼女の平常であったのだが、それを警告――共犯者としての――と受け取った来ヶ谷は、可能な限りの平静を装って応答する。 「いや、何でもないさ……少し意外な名前が呼ばれたものでな」 そうか、と表面上はつまらなげに答えるC.C.だが、その瞳は来ヶ谷を見透かしているかのようだ。 彼女は知っている。 世界へ反旗を翻した一人の少年、ルルーシュ・ランペルージ。 悪を名乗り、世界の敵意を一点に集中させて、絶好の好機を逃さずに全てを達成した改革者。 必要とあらばどこまでも非情になることの出来た彼でさえも、大切な人間の死には心を動かした。 人間という生き物は、結局のところ非情に徹することは出来ないのかもしれない。 このバトルロワイアルの世界を自らの『夢』と断じ、誰の目から見ても明確な『狂人』っぷりを見せていた来ヶ谷唯湖でさえも、狂いきることは出来ていないのだ。 (人間ってのは……わからないな) 不死故に、多くの人間を見てきた彼女でさえも、未だ人間という生物の本質は見抜けていない。 外道としか呼べないような所業を涼しい顔でやってのけても、一人の人間の死がそれを揺るがす。 逆に、つい先刻まで紛れもない善人だった人間だろうと、変貌するのは僅か一瞬。 彼女に『不死』を与えた一人のシスターの、突如豹変した表情が脳裏を過り、慌てて幻影を拭う。 とにかく人間はわからない―――負の思考に陥らぬ内に、緑髪の少女は結論付けた。 C.C.にそんなまどろっこしい思考を意図せず強いた来ヶ谷唯湖は、自分の記憶を手繰っていた。 この可笑しな夢に辿り着く前に見ていた、願望の塊の世界のことを、少しずつ思い出していく。 瞼の裏に再生される、見慣れた風景。 夏の日射しが燦々と照りつけ、爽やかな風が吹き抜けていく感覚が甦ってくる。 空はもうじきに暮れようとする頃を示す茜色、しかし日光の強さは未だ健在だ。 ここは、グラウンド。来ヶ谷の所属している野球チーム『リトルバスターズ』のホームグラウンド。 部活動のキャプテンが連合した化物チーム相手に見事勝利をもぎ取り、目標は達成された。 勝ち目はかなり低い勝負であったが、勝敗を分けたのは仲間との結束だとか、そんな少年漫画的要素だ。 何せここは来ヶ谷唯湖の夢。 夢の中でなら、どんな奇跡だって起こるのだから。 少しずつ生じている綻びは、近い内に致命的な崩壊へと繋がるだろう―――夢の終わりに。 そんな時、来ヶ谷唯湖は彼と出会った。 正確には、彼――直枝理樹という少年を、初めて恋愛対象として見た。 彼から告白されて、どこか達観していた彼女の心とて、確かに揺らいだのだ。 しかし無情にも、そんなにも幸せな夢は終幕を迎えようとしていた―――奇跡は起きなかった。 夢は終わり、自分は現実に戻る筈だった。しかし目を開いてみれば、今度は随分と趣味の悪い悪夢ときた。 夢なのだから、面白い夢は楽しまなければ損だ。 そう思って、きっぱりと『幸せな夢』に見切りをつけて『悪夢』に身を投じた。 電撃使い(エレクトロマスター)の少女だの、王の力(ギアス)だの、ファンタジックな要素も増えた。 自らも『強制狂人』のギアスを手に入れ、これからいよいよ本格的に殺し合いを楽しんでいこうと思っていた―――それなのに、放送で彼の名前が呼ばれた時、狂人の心が確かに、凍ったのだ。 たかが夢の世界の、それも『前回』の夢のキャラクターの死に、何かを感じた。 直枝理樹が死んだ報せを受けて、一瞬全てが馬鹿馬鹿しいとさえ思ってしまった。 (理樹くん、か) 個性派揃いのリトルバスターズの中では、一際普通で、だからこそ皆の中心にいた少年。 誰とでも別け隔てなく接することの出来る優しさこそ、彼が好感を持たれる理由だったろう。 来ヶ谷もまた、最初から彼を『面白い』と思った。 それが俗に『恋』と呼ばれる不可思議な感覚に変わってからも、その妙な感覚にどこか納得がいった。 そして今もまた、不可思議な感情に囚われている。 『夢のキャラクター』に向けるべきでない、恋ともまた違う攻撃的な感情が、来ヶ谷唯湖を苛む。 (ほほう―――私は今、怒っているのか) 理樹を殺した何処の誰とも知れない輩のことを考えるだけで、激しく感情が昂る。 表面上こそ出さないが、つい数分前までは狂人だった少女と同一人物とはとても思えない、無念の死を遂げた『好きな人』の死に憤る―――そんなごく当たり前の感情が、来ヶ谷を支配していた。 仲間に向けて嫌がらせが行われた時にも怒りを露にした来ヶ谷だが、今回はその比ではない。 殺意なんて生易しい言葉では表現しきれないほどの復讐心が、呪いのように沸騰している。 泥のように粘っこく、狂乱の心は悪意へと変わっていく。 (……ああ、認めよう。私は理樹くんが好きだ) こんな自分を愛してくれた、たった一人の男の子を、来ヶ谷唯湖も愛していた。 夢だとか現実だとか、そんなものはもうどうでもいい。 来ヶ谷唯湖という一人の人間の意思で、直枝理樹を愛することを誓う。 たとえ罪深い決断を強いられようが、畜生の身に貶められようが、絶対に見失うことはしない。 だから、来ヶ谷の役割は狂人なんかではなく――――彼の愛した世界の守護。 仮にこれが夢の世界だろうが、直枝理樹という少年はキャラクターの一人一人を、愛していた。 リーダー、棗恭介のことは頼れるリーダーとして。 その妹、棗鈴は放っておけない幼なじみとして。 筋肉馬鹿、井ノ原真人は大切な親友として。 硬派ながら本質は馬鹿である青年、宮沢謙吾もまた親友として。 来ヶ谷唯湖には愛を伝えてくれたが、きっと彼は誰一人として、貶められることを望まないだろう。 来ヶ谷だけを特別扱いするような人間でないことは、彼を知る者ならば誰もが知っている。 理樹を愛している。だからこそ、彼の願望をどんな手段を用いてでも守護すること。 「C.C.」 「………む? どうした、何かを決めた目をしているな。さっきまでとは大違いだ」 「ああ、少し思い出したものでね―――幸せな夢をな」 C.C.には、今の来ヶ谷の瞳に見覚えがあった。 質と覚悟こそ違えど、それは彼女の最初の共犯者、ルルーシュ・ランペルージのそれによく似ている。 何かを守り、何かを得るために何かを犠牲にして戦う―――そんな瞳だ。 「これから私は少しばかりやり方を変える。『目的』を目指すことにした」 「ほう。聞かせてみろ」 「リトルバスターズ―――私の"ユメ"を守る。その為に私は誰でも殺す。いくらでも殺す」 狂人の瞳から、確かな覚悟を秘めたそれに変化していた。 来ヶ谷唯湖の出した答えは、結局のところ鮮血の舞い散る殺人鬼の道。 最後に行き着くところこそ変わっているが、本質的には然程変わっていないのだ。 だが、彼女は変わっている。 夢―――非現実の世界で、非現実の恋人の望みを成就させるために、非現実の存在を殺す。 全く以て無意味な話かもしれないが、これが来ヶ谷の出した結論だった。 「……随分な変わりようだな、唯湖。ただしお前は分かっているのか?」 思い出されるのは、予想もしない奇策・謀術で不利を覆していった少年の姿。 彼の台詞を、使う。 「――――――撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ、ということを」 引き返すことなどありえない。 C.C.の言葉には確かに重みがあったし、ただの小娘に過ぎない来ヶ谷よりも、彼女の方が世界を知っている。 だがしかし、来ヶ谷はその言葉を敢えて―――振り切った。 「そのくらいのこと、この夢が始まった瞬間から弁えていたさ。私は、このバトルロワイアルが始まった瞬間から――、この世の全ての悪を担うくらいの覚悟をしていたのだからな」 口から出任せだった。覚悟なんてつい先刻したばかりだし、バトルロワイアル開始直後は確かに狂人だったのだから。 それを見抜いたのかどうかは定かではないが、険しい顔をしていたC.C.は、笑いを溢した。 来ヶ谷唯湖のあまりの変わり様に。 まるでどこかの誰かさんのように、本当に高校生か分からなくなるほどの決意の速さに。 笑わずにはいられなかった。 「いいぞ、乗ってやる、来ヶ谷唯湖―――お前はなかなか、面白い」 「誉め言葉として受け取っておこう、魔女」 狂人を脱して、守護するための殺人鬼。 流れ行くままに、身を委ねる魔女。 少しだけ距離の近付いた二人は、やはり歪んだ方向でバトルロワイアルを馳せる。 ――――朝霧が、心地好い。 【E-4 森/朝】 【来ヶ谷唯湖@リトルバスターズ!】 【装備:宗像形の日本刀@めだかボックス】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:リトルバスターズの面々を生還させ、理樹くんの望みを叶える 2:C.C.と行動し、人々を惑わしつつも人数を減らしていく 【備考】 ※来ヶ谷ルート、夢が覚める前からの参加です ※御坂美琴、鳴上悠の容姿のみを把握しました ※直枝理樹への恋心を思い出し、狂人思考から脱しました 【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:このゲームを傍観する 2:唯湖を傍観する 3:ただし、唯湖から何か指示された場合は可能なら従うのも吝かではない 【備考】 ※本編最終話後からの参戦。 ※来ヶ谷唯湖に漠然とした興味を抱きました |[[The Butterfly Effect]]|時系列|[[主催者のバカ野郎共に大いに抵抗して脱出するための素晴らしき仲間達]]| |[[一人じゃないから]]|投下順|[[HEROES]]| |[[堕ちないネイロ]]|来ヶ谷唯湖|[[]]| |[[堕ちないネイロ]]|C.C.|[[]]|
来ヶ谷唯湖という少女は、本来こんな人物ではない。 たとえば『リトルバスターズ』が存在する世界では姉御肌の個性的な人物になるし、気になる男子に告白されれば心が揺らぐ、そんな普通の少女の一面だって持っている。 こんな風に殺し合いに身を投じ、進んで殺人を犯そうとするような人間ではないのだ。 しかし来ヶ谷唯湖はこうして狂人顔負けの行動をして、更には王の力―――ギアスさえ手に入れた。 科学の街の超能力者の高圧電流を受けてもびくともしないその姿は、化け物のようですらあったろう。 彼女がそんな人外じみた真似をやって除けたのはひとえに、彼女が信じていたからだ。 ――――この世界が『ユメ』であることを、ひた向きに信じていたから、たったそれだけの話。 夢の中で怪我をしたって、実際に身体が傷付くわけがない。 子供でも判るような当たり前を、彼女はこの立派な現実に当てはめてしまっていた。 狂った彼女にとってそれが幸運なのかはたまた不運だったのかは本人すら預かり知らぬ話だ。 だが来ヶ谷唯湖は確かにこの瞬間、動揺を見せていた。 所詮現実には届かない儚い夢だと信じているのに、それでも彼女の心を不気味な感覚が襲う。 こめかみに手を当てて目を見開くその姿は、つい数時間前に一人の少女を狂わせた狂人の動作とは到底思えない。 それは紛れもなく、予期せぬ悲劇に動揺する一人の少女の姿だった。 「唯湖。お前、どうしたんだ? えらい変わりようだぞ?」 C.C.が心配しているような言葉をかけてくるが、その声色にそんな優しさは欠片も見当たらない。 これが彼女の平常であったのだが、それを警告――共犯者としての――と受け取った来ヶ谷は、可能な限りの平静を装って応答する。 「いや、何でもないさ……少し意外な名前が呼ばれたものでな」 そうか、と表面上はつまらなげに答えるC.C.だが、その瞳は来ヶ谷を見透かしているかのようだ。 彼女は知っている。 世界へ反旗を翻した一人の少年、ルルーシュ・ランペルージ。 悪を名乗り、世界の敵意を一点に集中させて、絶好の好機を逃さずに全てを達成した改革者。 必要とあらばどこまでも非情になることの出来た彼でさえも、大切な人間の死には心を動かした。 人間という生き物は、結局のところ非情に徹することは出来ないのかもしれない。 このバトルロワイアルの世界を自らの『夢』と断じ、誰の目から見ても明確な『狂人』っぷりを見せていた来ヶ谷唯湖でさえも、狂いきることは出来ていないのだ。 (人間ってのは……わからないな) 不死故に、多くの人間を見てきた彼女でさえも、未だ人間という生物の本質は見抜けていない。 外道としか呼べないような所業を涼しい顔でやってのけても、一人の人間の死がそれを揺るがす。 逆に、つい先刻まで紛れもない善人だった人間だろうと、変貌するのは僅か一瞬。 彼女に『不死』を与えた一人のシスターの、突如豹変した表情が脳裏を過り、慌てて幻影を拭う。 とにかく人間はわからない―――負の思考に陥らぬ内に、緑髪の少女は結論付けた。 C.C.にそんなまどろっこしい思考を意図せず強いた来ヶ谷唯湖は、自分の記憶を手繰っていた。 この可笑しな夢に辿り着く前に見ていた、願望の塊の世界のことを、少しずつ思い出していく。 瞼の裏に再生される、見慣れた風景。 夏の日射しが燦々と照りつけ、爽やかな風が吹き抜けていく感覚が甦ってくる。 空はもうじきに暮れようとする頃を示す茜色、しかし日光の強さは未だ健在だ。 ここは、グラウンド。来ヶ谷の所属している野球チーム『リトルバスターズ』のホームグラウンド。 部活動のキャプテンが連合した化物チーム相手に見事勝利をもぎ取り、目標は達成された。 勝ち目はかなり低い勝負であったが、勝敗を分けたのは仲間との結束だとか、そんな少年漫画的要素だ。 何せここは来ヶ谷唯湖の夢。 夢の中でなら、どんな奇跡だって起こるのだから。 少しずつ生じている綻びは、近い内に致命的な崩壊へと繋がるだろう―――夢の終わりに。 そんな時、来ヶ谷唯湖は彼と出会った。 正確には、彼――直枝理樹という少年を、初めて恋愛対象として見た。 彼から告白されて、どこか達観していた彼女の心とて、確かに揺らいだのだ。 しかし無情にも、そんなにも幸せな夢は終幕を迎えようとしていた―――奇跡は起きなかった。 夢は終わり、自分は現実に戻る筈だった。しかし目を開いてみれば、今度は随分と趣味の悪い悪夢ときた。 夢なのだから、面白い夢は楽しまなければ損だ。 そう思って、きっぱりと『幸せな夢』に見切りをつけて『悪夢』に身を投じた。 電撃使い(エレクトロマスター)の少女だの、王の力(ギアス)だの、ファンタジックな要素も増えた。 自らも『強制狂人』のギアスを手に入れ、これからいよいよ本格的に殺し合いを楽しんでいこうと思っていた―――それなのに、放送で彼の名前が呼ばれた時、狂人の心が確かに、凍ったのだ。 たかが夢の世界の、それも『前回』の夢のキャラクターの死に、何かを感じた。 直枝理樹が死んだ報せを受けて、一瞬全てが馬鹿馬鹿しいとさえ思ってしまった。 (理樹くん、か) 個性派揃いのリトルバスターズの中では、一際普通で、だからこそ皆の中心にいた少年。 誰とでも別け隔てなく接することの出来る優しさこそ、彼が好感を持たれる理由だったろう。 来ヶ谷もまた、最初から彼を『面白い』と思った。 それが俗に『恋』と呼ばれる不可思議な感覚に変わってからも、その妙な感覚にどこか納得がいった。 そして今もまた、不可思議な感情に囚われている。 『夢のキャラクター』に向けるべきでない、恋ともまた違う攻撃的な感情が、来ヶ谷唯湖を苛む。 (ほほう―――私は今、怒っているのか) 理樹を殺した何処の誰とも知れない輩のことを考えるだけで、激しく感情が昂る。 表面上こそ出さないが、つい数分前までは狂人だった少女と同一人物とはとても思えない、無念の死を遂げた『好きな人』の死に憤る―――そんなごく当たり前の感情が、来ヶ谷を支配していた。 仲間に向けて嫌がらせが行われた時にも怒りを露にした来ヶ谷だが、今回はその比ではない。 殺意なんて生易しい言葉では表現しきれないほどの復讐心が、呪いのように沸騰している。 泥のように粘っこく、狂乱の心は悪意へと変わっていく。 (……ああ、認めよう。私は理樹くんが好きだ) こんな自分を愛してくれた、たった一人の男の子を、来ヶ谷唯湖も愛していた。 夢だとか現実だとか、そんなものはもうどうでもいい。 来ヶ谷唯湖という一人の人間の意思で、直枝理樹を愛することを誓う。 たとえ罪深い決断を強いられようが、畜生の身に貶められようが、絶対に見失うことはしない。 だから、来ヶ谷の役割は狂人なんかではなく――――彼の愛した世界の守護。 仮にこれが夢の世界だろうが、直枝理樹という少年はキャラクターの一人一人を、愛していた。 リーダー、棗恭介のことは頼れるリーダーとして。 その妹、棗鈴は放っておけない幼なじみとして。 筋肉馬鹿、井ノ原真人は大切な親友として。 硬派ながら本質は馬鹿である青年、宮沢謙吾もまた親友として。 来ヶ谷唯湖には愛を伝えてくれたが、きっと彼は誰一人として、貶められることを望まないだろう。 来ヶ谷だけを特別扱いするような人間でないことは、彼を知る者ならば誰もが知っている。 理樹を愛している。だからこそ、彼の願望をどんな手段を用いてでも守護すること。 「C.C.」 「………む? どうした、何かを決めた目をしているな。さっきまでとは大違いだ」 「ああ、少し思い出したものでね―――幸せな夢をな」 C.C.には、今の来ヶ谷の瞳に見覚えがあった。 質と覚悟こそ違えど、それは彼女の最初の共犯者、ルルーシュ・ランペルージのそれによく似ている。 何かを守り、何かを得るために何かを犠牲にして戦う―――そんな瞳だ。 「これから私は少しばかりやり方を変える。『目的』を目指すことにした」 「ほう。聞かせてみろ」 「リトルバスターズ―――私の"ユメ"を守る。その為に私は誰でも殺す。いくらでも殺す」 狂人の瞳から、確かな覚悟を秘めたそれに変化していた。 来ヶ谷唯湖の出した答えは、結局のところ鮮血の舞い散る殺人鬼の道。 最後に行き着くところこそ変わっているが、本質的には然程変わっていないのだ。 だが、彼女は変わっている。 夢―――非現実の世界で、非現実の恋人の望みを成就させるために、非現実の存在を殺す。 全く以て無意味な話かもしれないが、これが来ヶ谷の出した結論だった。 「……随分な変わりようだな、唯湖。ただしお前は分かっているのか?」 思い出されるのは、予想もしない奇策・謀術で不利を覆していった少年の姿。 彼の台詞を、使う。 「――――――撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ、ということを」 引き返すことなどありえない。 C.C.の言葉には確かに重みがあったし、ただの小娘に過ぎない来ヶ谷よりも、彼女の方が世界を知っている。 だがしかし、来ヶ谷はその言葉を敢えて―――振り切った。 「そのくらいのこと、この夢が始まった瞬間から弁えていたさ。私は、このバトルロワイアルが始まった瞬間から――、この世の全ての悪を担うくらいの覚悟をしていたのだからな」 口から出任せだった。覚悟なんてつい先刻したばかりだし、バトルロワイアル開始直後は確かに狂人だったのだから。 それを見抜いたのかどうかは定かではないが、険しい顔をしていたC.C.は、笑いを溢した。 来ヶ谷唯湖のあまりの変わり様に。 まるでどこかの誰かさんのように、本当に高校生か分からなくなるほどの決意の速さに。 笑わずにはいられなかった。 「いいぞ、乗ってやる、来ヶ谷唯湖―――お前はなかなか、面白い」 「誉め言葉として受け取っておこう、魔女」 狂人を脱して、守護するための殺人鬼。 流れ行くままに、身を委ねる魔女。 少しだけ距離の近付いた二人は、やはり歪んだ方向でバトルロワイアルを馳せる。 ――――朝霧が、心地好い。 【E-4 森/朝】 【来ヶ谷唯湖@リトルバスターズ!】 【装備:宗像形の日本刀@めだかボックス】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:リトルバスターズの面々を生還させ、理樹くんの望みを叶える 2:C.C.と行動し、人々を惑わしつつも人数を減らしていく 【備考】 ※来ヶ谷ルート、夢が覚める前からの参加です ※御坂美琴、鳴上悠の容姿のみを把握しました ※直枝理樹への恋心を思い出し、狂人思考から脱しました 【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:このゲームを傍観する 2:唯湖を傍観する 3:ただし、唯湖から何か指示された場合は可能なら従うのも吝かではない 【備考】 ※本編最終話後からの参戦。 ※来ヶ谷唯湖に漠然とした興味を抱きました |[[The Butterfly Effect]]|時系列|[[主催者のバカ野郎共に大いに抵抗して脱出するための素晴らしき仲間達]]| |[[一人じゃないから]]|投下順|[[HEROES]]| |[[堕ちないネイロ]]|来ヶ谷唯湖|[[ある日 森の中 球磨川さんに出会った]]| |[[堕ちないネイロ]]|C.C.|[[ある日 森の中 球磨川さんに出会った]]|

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