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「阿良々木暦、戦場ヶ原ひたぎ、神原駿河、千石撫子……。知り合いが1人も欠けていないなんて結構な確率なんじゃないかな。何人知り合いが居るかによるけどね少なくともみんなが5、6人ずつ知り合いと考えるとね……」 「わからんがわかった。ワシにそんな確率だとか興味ないわい」 放送を聞き忍野忍が最初に言った言葉は「やはり主様は悪運が強いのぅ」であり、二言目は「ところで主様の知り合いをワシら含めて誰1人死なない確率はどのくらいなんじゃ」と聞いたのであり、羽川翼はそれに答えようとしたに過ぎない。 「主様の悪運が周りにでも感染したのであろう」 「良い事のはずなのになんでそんな悪いものみたいな言い方をするのかなー……」 苦笑。 やはり忍は阿良々木暦の吸血鬼と言っていたがその節は多分に見つかる。 「しかしエクストラゲームの存在は黙っていられんな」 忍が恐ろしそうな表情でワナワナとしている。 上から顔、腕、胴体、足全てを震わせている。 とても吸血鬼の見せる余裕さがない。 (忍ちゃん何にそんなに驚いているのかしら……?) 翼の目にもそれは何か嫌な予感を感じさせた。 最強の吸血鬼であった者の怯え。 人間である自分、半吸血鬼の阿良々木暦ですら凌駕する何かを感じ取っているのだと翼は直感した。 吸血鬼の勘はどのくらい信頼出来るかはわからないが。 「どうしたの忍ちゃん?何かエクストラゲームの事で何かあるのかな……?」 翼がボソッとビー玉の様な小さな声で刺激を与えない声で話す。 「…………」 だが忍は翼の小さな声に気付かなかったか無視したのか答える事も恐ろしい何かがあるのか返答はなし。 「忍ちゃん!」 耳元で出来るだけ大きな声を上げる。 はっとした忍の幼い声が漏れる。 何もない壁を凝視していた忍の目が翼に行く。 その目はまるで――。 吸い込ませる様な、引き込まれる様な、人間ではないとわかるくらい神秘的な目をしていた。 忍はぐっと息を飲み込む。 「よく聞くのじゃ小娘」 小さな幼女は制服を着た少女を小娘呼ばわりして大きな声を叫びながら言い放った。 「そのデイパックとやらにまたミスタードーナツが入っているかもしれんのじゃ!」 「…………」 あまりにも生き生きした笑顔と期待を込めた声、嬉しそうに細める目を見た翼はなんとも言えなかった。 「小娘、少しデイパック探しを手伝うのじゃ」 「ち、ちょっと!?まだ男の人目覚ませていないよ。またあの帽子の男が襲ってくるかもしれないし」 ベッドで気絶している高山浩太に視線を向ける。 まだ目覚める気配もなく、体も動いていない。 「なーに、そんなん安心せい。簡単にワシに手出しはせんじゃろうよ」 ズルズルと翼は忍に引っ張られていきバタンと扉が閉まる音が聞こえてから、周りは無音。 寝息をしないまま気絶した高山以外音を出すものも無かった。 もし、このまま誰かが侵入してきたら高山は大変危険な状況になる。 「ふふふ……、まさかダメ元で見張っていたが簡単に外に出るとは軽率じゃないかい吸血鬼の嬢ちゃんに眼鏡の嬢ちゃん」 手塚義光の目がシマウマの群れを襲い攪乱させ、殺して喰らうライオンの瞳で翼と忍の外出を眺めていた。 狙うは高山の首。 「日向君の出番だよ~」 バカにした声を出して振り向いた先には日向秀樹が縛られていた。 木にぐるぐるとロープで動けなくなって無様にもがく日向が哀れに見える。 「クソッ……バカにしやがって……」 手塚にそう吐き捨てたいが刺激するわけにはいかない。 銃、剣、注射器。 持っている武器全てを縛った日向の目の前で脅していた事が原因だ。 だから日向は呟きか口ぱくどちらかはわからないが悪態をつく。 「日向君に高山のおっさんの殺害お願いしても良いかなー?」 「ぐ……」 まだ日向が手塚から縛られただけで済んでいるのはとある話と条件からであった。 ◆◆◆◆◆ 「俺はさっき気絶させるというミスをしてしまってな。手荒なマネはする気はねーよ」 縛りながら手荒なマネはしない。 なんと信憑性のない話だろうか。 既に日向は縛られる前に数回蹴られて頬には貼られたばかりのかさぶたが数個出来ている。 「あんたはまだ抗うってのかよ」 「あん?よくわからん事を言うな坊主、抗うも何もこれがこのバトルロワイアルのルールってもんだろ」 手塚は右手の人差し指を日向に向けて親指を上に向けて――ピストルの形を作り日向のこめかみを狙う様にして笑う。 その目は楽しい笑いではなく、仮面の笑いだ。 殺人者。 彼の目は冗談の通じないそれに見えるのであった。 「もしかしてあんたわからないんじゃないか?」 「……言ってみろ」 「俺達はとっくに死んでんだよ、おそらくあんたもな」 「面白い事言う坊主だ。死んだ?ならこうして笑っている俺、縛られた坊主、気絶した高山のおっさん、人外の吸血鬼の嬢ちゃんとも俺は会ってんだよ」 死んだ。 そう言っても当然信じなかった。 確かに手塚が『死』に巻き込まれた殺人ゲームは存在した。 参加者の1人である御剣総一もそれに強制的に参加させられ手塚の死を知る1人だ。 あのゲームによってこのバトルロワイアルに参加する姫萩咲実、北条かりん、高山浩太、長沢勇治も亡くなっている。 彼がその世界から呼ばれたのなら納得したのかもしれないがこの手塚義光はそのゲームに巻き込まれる前の手塚義光だ。 日向の言葉は戯言と等しかった。 「ここは死んだ世界だ。俺は死んでいるし仲間だって全員死んでいる。このバトルロワイアルだって本当に生きている奴で開催したとしたら大問題じゃないか!死んだ人間で舞台があの世……地獄って事なんじゃないかよ……」 「ほぅ、そりゃあ確かに生きている奴でバトルロワイアルなんか確かに大問題だな。だからってあの世なんて厨二病なんじゃないかい?」 バカにしていた。 まるで頭の浮いたガキとでも言いたげな目で。 「知ってるか?死んだ世界では人間は死んでも蘇るんだぜ。バラバラになっても焼かれても、窒息してでもな。だからゲーム終了後に俺達全員蘇ってこのバトルロワイアルも無かった事になると思うぜ」 「矛盾は見当たらねえなぁ」 「参加者の仲村ゆりって奴に聞けば詳しく聞かせてもらえる。それに立華奏という女は天使だ。どうだ死後の世界みたいだろ」 仲村ゆり、立華奏。 日向の言っている事は信憑性はないが、嘘を言っているつもりはなさそうだ。 だから手塚は名簿を取り出しその2人の少女の名前にチェックを入れておいた。 念には念を。 このゲームで自分が優勝する為、手塚はどんな小さな情報でも逃すつもりはない。 (死んだら蘇るねぇ……、それはそれで興味深いな。ゲーム説明であんな大舞台を繰り広げておいて実は狂言でした、と。泣けてくるなそりゃあ) そこで手塚は1つ日向を騙してある事をさせようと思いつく。 これが手塚の日向をまだ生かしている条件に当てはまる。 「じゃあ日向君に頼みがあるわ」 縛られた日向はピクリと反応し頭を上げる。 そこで見たのは金髪の人間が見せた悪魔の微笑みであった。 「高山のおっさんを殺したら君を自由にしてあげよう。君のくだらない物しか無かったデイパックの中身は返せないがそこは空のデイパックなら返してあげよう。エクストラゲームとやらのデイパックを探せば良いよ」 手塚は悪魔のペルソナを被っていた。 いや、ペルソナに乗っ取られた悪魔、もしくは悪魔本人にも見えた。 「わ……わかった……」 日向は何も知らない人間を殺したいとは思っていない。 しかし、ここは死後の世界だから。 それで納得した。 いや、納得せざるを得なかった。 「俺はあんたが嫌いだ」 縛られたロープを剣で切り裂く瞬間日向は手塚にそう呟いた。 せめての悪態。 ここで文句1つ言えなかったら一生後悔するのではないかと考えたからだ。 一生などとっくに終わった自分なのに――だ、 「俺は日向君みたいな子は嫌いではないんだがな」 ――素直なバカな子は利用のしがいがあるからな―― 背中を向けた日向に気付かれない様にほくそ笑んだ。 ◆◆◆◇◇◇ 「まず高山のおっさんって顔わかんねーよ」 『高山浩太』という本名らしい。 特徴は高い身長、がたいが良い、短髪。 それぐらいしか手塚に教えられなかった。 「武器を収集しないとな」 いやいや武器を探す。 軽くて威力のある武器、それが理想だ。 普段オペレーションで使っている様な拳銃は見つからないだろう。 「俺は殺しなんか向いてねーんだよ……。野田や藤巻や松下五段とかなら適任なのかもしれないのだけれどな」 死んだ世界戦線メンバーにも戦いに向く者と向かない者に区分される。 このゲーム参加者の椎名なんかは戦線メンバーでも1、2を競えるぐらいの強さだ。 日向や音無はその中間くらいに区分されるだろう。 「出刃包丁ぐらいしかないよな……」 キッチンにて見つけた出刃包丁。 数本見つけた中でも一番研がれてあり切れ味の良い物を厳選した。 「この民家で寝ている奴を探さないとな。不用心にしたおさげメガネちゃんや金髪の幼女ちゃんに感謝したら良いのか悪いのか……」 不用心にした変わりに開放する条件をもらった。 変わりに自分は人殺しをしなくてはいけなくなった。 果たしてこれが正しい選択だったのか。 拒否していれば良かったのか。 ただの死んだ少年にわかるはずもなく、悪魔の手塚にも天使の立華奏にもわかるはずがないだろう。 「…………」 「この人が高山浩太って人か……?」 気絶した男性は手塚の特徴に一致していた。 もし目が覚めていたら負けていただろう。 鍛えられた筋肉には歴戦で付けられただろう傷が見える。 元傭兵という職業を日向は思い出す。 自分達も天使に対抗して抗ってきた。 だがそれは命ありきだ。 死んでも蘇るリセットボタンがオートで反応するからだ。 しかし、この男はそんなリセットボタンなどない状態で戦場で戦い抜いた。 銃の扱いをかじったぐらいの自分とはまるで違う次元の強さだ、 「だが寝ていたら関係ねーよな……、赤ん坊だろうが誰だろうが」 出刃包丁を眠る高山に刃を向ける。 喉元を一瞬で切り裂くイメージを作る。 「……これで、終わりだ」 強い力で振り下ろす。 もはや自分が制止しろと脳が命じてもこの腕は止められない。 ――カシュ。 喉元が切り裂かれ鮮血が真っ直ぐな直線を描きながら飛び散った。 ◆◆◆◇◇◇ 「はぁはぁはぁ……」 落ち着け。 落ち着け、俺。 息を整える。 周りの状況を見渡す。 横たわった喉を切り裂かれた死体。 いや、自分が握った出刃包丁で殺した死体だ。 血が飛び散っているが幸い自分は血で汚れていない。 これは幸いだ。 「くっ……、まだ手塚にやられたところが」 頭に痛くない痛みが走る。 違和感とでも言うか。 そうだ、俺は手塚に変な注射をされたのだった。 「この少年も俺同様デイパックがない。いや、俺には目の前に置かれた空のデイパックがあるがこいつにはない」 空のデイパックの中身は自分から手塚に渡してしまっていた。 おそらくこの少年も俺と同じく手塚からデイパックを取られたんだな。 「素人でまだやりやすかったな」 この少年は弱々しいが俺に殺気を見せた。 危険だと俺の本能が目覚めさせ、出刃包丁を持った少年の溝に俺が一撃の拳をぶつけて、その隙から出刃包丁を盗み喉を切り裂いた。 もし手塚だったなら銃で殺していただろうか。 とにかくバカな少年で助かった。 「こいつも手塚関係かっ」 手塚の野郎。 完全に俺を舐めていやかるな。 「殺してやるよ手塚、俺がこの手で手塚も参加者も主催者も全て殺してやる」 頭に手塚の野郎を思い浮かべて、歯を強く食いしばった。 ◆◆◆◇◇◇ 「ちっ、役に経たねえな日向め」 木に登り高山のおっさんと日向が争った戦いを眺めていた。 やはり高山のおっさんは人殺しに躊躇いもなく、技術も対したものだ。 間違いなく現代に生まれたのが間違っている野郎だ。 「しかしそれでこそ倒しがいがあるぜ高山さんよ。次また何かあったら会おうや」 ヒラリと木から飛び降りた。 今は吸血鬼の嬢ちゃんも高山のおっさんも殺すべきではない。 だが、機会なら俺が作っていくってもんさ。 【F-1 橋付近民家/朝】 【手塚義光@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】 【装備:舞の剣@Kanon、ブラックホール12/15@ペルソナ4】 【所持品:支給品一式×2、タバコ10箱@現実、ライター3本@現実、リフレイン×9@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブラックホールの弾丸30/30、嵐のボンゴレリング@家庭教師ヒットマンREBORN!、チーズ君のぬいぐるみ@コードギアス 反逆のルルーシュ、新聞紙ブレード@リトルバスターズ!】 【状態:健康、気分高揚】 【思考・行動】 1:優勝する為、全参加者を殺害する。 2:高山のおっさん、吸血鬼の嬢ちゃんはいずれ殺す。 3:今はここから離れる。 【備考】 ※本編開始前からの参戦です。 ◆◆◆◇◇◇ 俺はデイパックに出刃包丁を数本ぶち込み走って民家内から出た。 近くに居るはずの手塚を殺す為に探すが姿はない。 「逃げられたか」 民家内から持ってきた目覚まし時計を見る。 少し前に放送が過ぎた時間。 大事な情報を俺は聞き逃した事になった。 「くそっ、何もかも上手くいかないっ」 民家の入り口に置かれた植木鉢を蹴り飛ばした。 民家の壁にぶつかり植木鉢は割れ中から土や植物がばらまかれる。 「っ!?なんだこれは!?」 その植木鉢から有り得ない物が見つかった。 いや隠されていた。 「デイパック、だとっ!?」 誰のデイパック――? それはエクストラゲームの隠された見せしめのデイパックである。 北条沙都子のデイパックが高山浩太に見つけられた。 「中に3つの支給品がある。誰のかは知らんが助かった」 放送を聞き逃した高山は知るはずがないエクストラゲームの存在。 だがエクストラゲーム最初の恩恵を受けたのだった。 【高山浩太@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】 【装備:不明】 【所持品:北条沙都子のデイパック、出刃包丁×5@現実】 【状態:気絶】 【思考・行動】 1:手塚含めた参加者、主催者を皆殺しにする 2:誰のデイパックかは知らんがありがたい 【備考】 ※本編開始前からの参戦です。 ※リフレインを摂取しました。今後は過剰にリフレインを求めるようになるかも知れません。  あるいは、精神力により中毒を克服するかも知れません。詳細は後の書き手さんにお任せします。 ※第1回の放送の内容を知りません。 ◆◆◆◇◇◇ 「見つからないのぅミスタードーナツ……」 「ミスタードーナツが入っているの前提で探さないで忍ちゃん」 「だが考えてみよ小娘、もしミスタードーナツが入っていたとしたら」 「ダメだこりゃ……。阿良々木君どうにかしてよー」 高山浩太からも手塚義光からも離れた翼と忍は民家の惨劇は知らされていない。 こちらは至って平和にデイパック探しをしていた。 誰よりエクストラゲームのデイパックの隠し位置に近くに居た彼女達は見つけられなかった事も知らずに。 これから彼女達はどう動くのか。 日向秀樹の死体があるのを知るのは、あと――――。 【F-1 野原/朝】 【羽川翼@物語シリーズ】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、けろぴー@Kanon、ランダム支給品×1】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:殺し合いには乗らない。 2:おじさんが起きるのを待つ。 3:阿良々木君に会いたいけど……。 4:デイパックを探す。 【備考】 ※「つばさキャット」終了後からの参戦です。 ※ストレスが溜まれば、ブラック羽川が出現する可能性もあります。 ※帽子の男(手塚)を危険視しています。 ※知り合い達の参戦時期に不安を抱いています 【忍野忍@物語シリーズ】 【装備:スペツナヅナイフ@現実】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:やや血液不足】 【思考・行動】 0:ミスタードーナツ! 1:殺し合いなど詰まらん。 2:暦を探して血を吸わせて貰う。 3:儂を襲おうと言うのならば、覚悟をしておけ。 4:小娘と行動する。 【備考】 ※少なくとも「かれんビー」終了後からの参戦です。(明確な参戦時期は後の書き手さんに任せます) ※暦から吸血すれば、外見、能力などが戻る可能性があります。制限は後の書き手さんにお任せします。 &color(red){【日向秀樹@Angel Beats!  死亡】} 【出刃包丁@現実】 普通の切れ味の良い出刃包丁。高山浩太が民家で調達。 |[[騎神咆哮バーサーカー]]|時系列|[[That is the question]]| |[[騎神咆哮バーサーカー]]|投下順|[[語られなかった想い]]| |[[繰り返し]]|羽川翼|[[]]| |[[繰り返し]]|忍野忍|[[]]| |[[繰り返し]]|高山浩太|[[]]| |[[繰り返し]]|手塚義光|[[]]| |[[繰り返し]]|&color(red){日向秀樹}|&color(red){DEAD END}|
「阿良々木暦、戦場ヶ原ひたぎ、神原駿河、千石撫子……。知り合いが1人も欠けていないなんて結構な確率なんじゃないかな。何人知り合いが居るかによるけどね少なくともみんなが5、6人ずつ知り合いと考えるとね……」 「わからんがわかった。ワシにそんな確率だとか興味ないわい」 放送を聞き忍野忍が最初に言った言葉は「やはり主様は悪運が強いのぅ」であり、二言目は「ところで主様の知り合いをワシら含めて誰1人死なない確率はどのくらいなんじゃ」と聞いたのであり、羽川翼はそれに答えようとしたに過ぎない。 「主様の悪運が周りにでも感染したのであろう」 「良い事のはずなのになんでそんな悪いものみたいな言い方をするのかなー……」 苦笑。 やはり忍は阿良々木暦の吸血鬼と言っていたがその節は多分に見つかる。 「しかしエクストラゲームの存在は黙っていられんな」 忍が恐ろしそうな表情でワナワナとしている。 上から顔、腕、胴体、足全てを震わせている。 とても吸血鬼の見せる余裕さがない。 (忍ちゃん何にそんなに驚いているのかしら……?) 翼の目にもそれは何か嫌な予感を感じさせた。 最強の吸血鬼であった者の怯え。 人間である自分、半吸血鬼の阿良々木暦ですら凌駕する何かを感じ取っているのだと翼は直感した。 吸血鬼の勘はどのくらい信頼出来るかはわからないが。 「どうしたの忍ちゃん?何かエクストラゲームの事で何かあるのかな……?」 翼がボソッとビー玉の様な小さな声で刺激を与えない声で話す。 「…………」 だが忍は翼の小さな声に気付かなかったか無視したのか答える事も恐ろしい何かがあるのか返答はなし。 「忍ちゃん!」 耳元で出来るだけ大きな声を上げる。 はっとした忍の幼い声が漏れる。 何もない壁を凝視していた忍の目が翼に行く。 その目はまるで――。 吸い込ませる様な、引き込まれる様な、人間ではないとわかるくらい神秘的な目をしていた。 忍はぐっと息を飲み込む。 「よく聞くのじゃ小娘」 小さな幼女は制服を着た少女を小娘呼ばわりして大きな声を叫びながら言い放った。 「そのデイパックとやらにまたミスタードーナツが入っているかもしれんのじゃ!」 「…………」 あまりにも生き生きした笑顔と期待を込めた声、嬉しそうに細める目を見た翼はなんとも言えなかった。 「小娘、少しデイパック探しを手伝うのじゃ」 「ち、ちょっと!?まだ男の人目覚ませていないよ。またあの帽子の男が襲ってくるかもしれないし」 ベッドで気絶している高山浩太に視線を向ける。 まだ目覚める気配もなく、体も動いていない。 「なーに、そんなん安心せい。簡単にワシに手出しはせんじゃろうよ」 ズルズルと翼は忍に引っ張られていきバタンと扉が閉まる音が聞こえてから、周りは無音。 寝息をしないまま気絶した高山以外音を出すものも無かった。 もし、このまま誰かが侵入してきたら高山は大変危険な状況になる。 「ふふふ……、まさかダメ元で見張っていたが簡単に外に出るとは軽率じゃないかい吸血鬼の嬢ちゃんに眼鏡の嬢ちゃん」 手塚義光の目がシマウマの群れを襲い攪乱させ、殺して喰らうライオンの瞳で翼と忍の外出を眺めていた。 狙うは高山の首。 「日向君の出番だよ~」 バカにした声を出して振り向いた先には日向秀樹が縛られていた。 木にぐるぐるとロープで動けなくなって無様にもがく日向が哀れに見える。 「クソッ……バカにしやがって……」 手塚にそう吐き捨てたいが刺激するわけにはいかない。 銃、剣、注射器。 持っている武器全てを縛った日向の目の前で脅していた事が原因だ。 だから日向は呟きか口ぱくどちらかはわからないが悪態をつく。 「日向君に高山のおっさんの殺害お願いしても良いかなー?」 「ぐ……」 まだ日向が手塚から縛られただけで済んでいるのはとある話と条件からであった。 ◆◆◆◆◆ 「俺はさっき気絶させるというミスをしてしまってな。手荒なマネはする気はねーよ」 縛りながら手荒なマネはしない。 なんと信憑性のない話だろうか。 既に日向は縛られる前に数回蹴られて頬には貼られたばかりのかさぶたが数個出来ている。 「あんたはまだ抗うってのかよ」 「あん?よくわからん事を言うな坊主、抗うも何もこれがこのバトルロワイアルのルールってもんだろ」 手塚は右手の人差し指を日向に向けて親指を上に向けて――ピストルの形を作り日向のこめかみを狙う様にして笑う。 その目は楽しい笑いではなく、仮面の笑いだ。 殺人者。 彼の目は冗談の通じないそれに見えるのであった。 「もしかしてあんたわからないんじゃないか?」 「……言ってみろ」 「俺達はとっくに死んでんだよ、おそらくあんたもな」 「面白い事言う坊主だ。死んだ?ならこうして笑っている俺、縛られた坊主、気絶した高山のおっさん、人外の吸血鬼の嬢ちゃんとも俺は会ってんだよ」 死んだ。 そう言っても当然信じなかった。 確かに手塚が『死』に巻き込まれた殺人ゲームは存在した。 参加者の1人である御剣総一もそれに強制的に参加させられ手塚の死を知る1人だ。 あのゲームによってこのバトルロワイアルに参加する姫萩咲実、北条かりん、高山浩太、長沢勇治も亡くなっている。 彼がその世界から呼ばれたのなら納得したのかもしれないがこの手塚義光はそのゲームに巻き込まれる前の手塚義光だ。 日向の言葉は戯言と等しかった。 「ここは死んだ世界だ。俺は死んでいるし仲間だって全員死んでいる。このバトルロワイアルだって本当に生きている奴で開催したとしたら大問題じゃないか!死んだ人間で舞台があの世……地獄って事なんじゃないかよ……」 「ほぅ、そりゃあ確かに生きている奴でバトルロワイアルなんか確かに大問題だな。だからってあの世なんて厨二病なんじゃないかい?」 バカにしていた。 まるで頭の浮いたガキとでも言いたげな目で。 「知ってるか?死んだ世界では人間は死んでも蘇るんだぜ。バラバラになっても焼かれても、窒息してでもな。だからゲーム終了後に俺達全員蘇ってこのバトルロワイアルも無かった事になると思うぜ」 「矛盾は見当たらねえなぁ」 「参加者の仲村ゆりって奴に聞けば詳しく聞かせてもらえる。それに立華奏という女は天使だ。どうだ死後の世界みたいだろ」 仲村ゆり、立華奏。 日向の言っている事は信憑性はないが、嘘を言っているつもりはなさそうだ。 だから手塚は名簿を取り出しその2人の少女の名前にチェックを入れておいた。 念には念を。 このゲームで自分が優勝する為、手塚はどんな小さな情報でも逃すつもりはない。 (死んだら蘇るねぇ……、それはそれで興味深いな。ゲーム説明であんな大舞台を繰り広げておいて実は狂言でした、と。泣けてくるなそりゃあ) そこで手塚は1つ日向を騙してある事をさせようと思いつく。 これが手塚の日向をまだ生かしている条件に当てはまる。 「じゃあ日向君に頼みがあるわ」 縛られた日向はピクリと反応し頭を上げる。 そこで見たのは金髪の人間が見せた悪魔の微笑みであった。 「高山のおっさんを殺したら君を自由にしてあげよう。君のくだらない物しか無かったデイパックの中身は返せないがそこは空のデイパックなら返してあげよう。エクストラゲームとやらのデイパックを探せば良いよ」 手塚は悪魔のペルソナを被っていた。 いや、ペルソナに乗っ取られた悪魔、もしくは悪魔本人にも見えた。 「わ……わかった……」 日向は何も知らない人間を殺したいとは思っていない。 しかし、ここは死後の世界だから。 それで納得した。 いや、納得せざるを得なかった。 「俺はあんたが嫌いだ」 縛られたロープを剣で切り裂く瞬間日向は手塚にそう呟いた。 せめての悪態。 ここで文句1つ言えなかったら一生後悔するのではないかと考えたからだ。 一生などとっくに終わった自分なのに――だ、 「俺は日向君みたいな子は嫌いではないんだがな」 ――素直なバカな子は利用のしがいがあるからな―― 背中を向けた日向に気付かれない様にほくそ笑んだ。 ◆◆◆◇◇◇ 「まず高山のおっさんって顔わかんねーよ」 『高山浩太』という本名らしい。 特徴は高い身長、がたいが良い、短髪。 それぐらいしか手塚に教えられなかった。 「武器を収集しないとな」 いやいや武器を探す。 軽くて威力のある武器、それが理想だ。 普段オペレーションで使っている様な拳銃は見つからないだろう。 「俺は殺しなんか向いてねーんだよ……。野田や藤巻や松下五段とかなら適任なのかもしれないのだけれどな」 死んだ世界戦線メンバーにも戦いに向く者と向かない者に区分される。 このゲーム参加者の椎名なんかは戦線メンバーでも1、2を競えるぐらいの強さだ。 日向や音無はその中間くらいに区分されるだろう。 「出刃包丁ぐらいしかないよな……」 キッチンにて見つけた出刃包丁。 数本見つけた中でも一番研がれてあり切れ味の良い物を厳選した。 「この民家で寝ている奴を探さないとな。不用心にしたおさげメガネちゃんや金髪の幼女ちゃんに感謝したら良いのか悪いのか……」 不用心にした変わりに開放する条件をもらった。 変わりに自分は人殺しをしなくてはいけなくなった。 果たしてこれが正しい選択だったのか。 拒否していれば良かったのか。 ただの死んだ少年にわかるはずもなく、悪魔の手塚にも天使の立華奏にもわかるはずがないだろう。 「…………」 「この人が高山浩太って人か……?」 気絶した男性は手塚の特徴に一致していた。 もし目が覚めていたら負けていただろう。 鍛えられた筋肉には歴戦で付けられただろう傷が見える。 元傭兵という職業を日向は思い出す。 自分達も天使に対抗して抗ってきた。 だがそれは命ありきだ。 死んでも蘇るリセットボタンがオートで反応するからだ。 しかし、この男はそんなリセットボタンなどない状態で戦場で戦い抜いた。 銃の扱いをかじったぐらいの自分とはまるで違う次元の強さだ、 「だが寝ていたら関係ねーよな……、赤ん坊だろうが誰だろうが」 出刃包丁を眠る高山に刃を向ける。 喉元を一瞬で切り裂くイメージを作る。 「……これで、終わりだ」 強い力で振り下ろす。 もはや自分が制止しろと脳が命じてもこの腕は止められない。 ――カシュ。 喉元が切り裂かれ鮮血が真っ直ぐな直線を描きながら飛び散った。 ◆◆◆◇◇◇ 「はぁはぁはぁ……」 落ち着け。 落ち着け、俺。 息を整える。 周りの状況を見渡す。 横たわった喉を切り裂かれた死体。 いや、自分が握った出刃包丁で殺した死体だ。 血が飛び散っているが幸い自分は血で汚れていない。 これは幸いだ。 「くっ……、まだ手塚にやられたところが」 頭に痛くない痛みが走る。 違和感とでも言うか。 そうだ、俺は手塚に変な注射をされたのだった。 「この少年も俺同様デイパックがない。いや、俺には目の前に置かれた空のデイパックがあるがこいつにはない」 空のデイパックの中身は自分から手塚に渡してしまっていた。 おそらくこの少年も俺と同じく手塚からデイパックを取られたんだな。 「素人でまだやりやすかったな」 この少年は弱々しいが俺に殺気を見せた。 危険だと俺の本能が目覚めさせ、出刃包丁を持った少年の溝に俺が一撃の拳をぶつけて、その隙から出刃包丁を盗み喉を切り裂いた。 もし手塚だったなら銃で殺していただろうか。 とにかくバカな少年で助かった。 「こいつも手塚関係かっ」 手塚の野郎。 完全に俺を舐めていやかるな。 「殺してやるよ手塚、俺がこの手で手塚も参加者も主催者も全て殺してやる」 頭に手塚の野郎を思い浮かべて、歯を強く食いしばった。 ◆◆◆◇◇◇ 「ちっ、役に経たねえな日向め」 木に登り高山のおっさんと日向が争った戦いを眺めていた。 やはり高山のおっさんは人殺しに躊躇いもなく、技術も対したものだ。 間違いなく現代に生まれたのが間違っている野郎だ。 「しかしそれでこそ倒しがいがあるぜ高山さんよ。次また何かあったら会おうや」 ヒラリと木から飛び降りた。 今は吸血鬼の嬢ちゃんも高山のおっさんも殺すべきではない。 だが、機会なら俺が作っていくってもんさ。 【F-1 橋付近民家/朝】 【手塚義光@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】 【装備:舞の剣@Kanon、ブラックホール12/15@ペルソナ4】 【所持品:支給品一式×2、タバコ10箱@現実、ライター3本@現実、リフレイン×9@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブラックホールの弾丸30/30、嵐のボンゴレリング@家庭教師ヒットマンREBORN!、チーズ君のぬいぐるみ@コードギアス 反逆のルルーシュ、新聞紙ブレード@リトルバスターズ!】 【状態:健康、気分高揚】 【思考・行動】 1:優勝する為、全参加者を殺害する。 2:高山のおっさん、吸血鬼の嬢ちゃんはいずれ殺す。 3:今はここから離れる。 【備考】 ※本編開始前からの参戦です。 ◆◆◆◇◇◇ 俺はデイパックに出刃包丁を数本ぶち込み走って民家内から出た。 近くに居るはずの手塚を殺す為に探すが姿はない。 「逃げられたか」 民家内から持ってきた目覚まし時計を見る。 少し前に放送が過ぎた時間。 大事な情報を俺は聞き逃した事になった。 「くそっ、何もかも上手くいかないっ」 民家の入り口に置かれた植木鉢を蹴り飛ばした。 民家の壁にぶつかり植木鉢は割れ中から土や植物がばらまかれる。 「っ!?なんだこれは!?」 その植木鉢から有り得ない物が見つかった。 いや隠されていた。 「デイパック、だとっ!?」 誰のデイパック――? それはエクストラゲームの隠された見せしめのデイパックである。 北条沙都子のデイパックが高山浩太に見つけられた。 「中に3つの支給品がある。誰のかは知らんが助かった」 放送を聞き逃した高山は知るはずがないエクストラゲームの存在。 だがエクストラゲーム最初の恩恵を受けたのだった。 【高山浩太@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】 【装備:不明】 【所持品:北条沙都子のデイパック、出刃包丁×5@現実】 【状態:気絶】 【思考・行動】 1:手塚含めた参加者、主催者を皆殺しにする 2:誰のデイパックかは知らんがありがたい 【備考】 ※本編開始前からの参戦です。 ※リフレインを摂取しました。今後は過剰にリフレインを求めるようになるかも知れません。  あるいは、精神力により中毒を克服するかも知れません。詳細は後の書き手さんにお任せします。 ※第1回の放送の内容を知りません。 ◆◆◆◇◇◇ 「見つからないのぅミスタードーナツ……」 「ミスタードーナツが入っているの前提で探さないで忍ちゃん」 「だが考えてみよ小娘、もしミスタードーナツが入っていたとしたら」 「ダメだこりゃ……。阿良々木君どうにかしてよー」 高山浩太からも手塚義光からも離れた翼と忍は民家の惨劇は知らされていない。 こちらは至って平和にデイパック探しをしていた。 誰よりエクストラゲームのデイパックの隠し位置に近くに居た彼女達は見つけられなかった事も知らずに。 これから彼女達はどう動くのか。 日向秀樹の死体があるのを知るのは、あと――――。 【F-1 野原/朝】 【羽川翼@物語シリーズ】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、けろぴー@Kanon、ランダム支給品×1】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:殺し合いには乗らない。 2:おじさんが起きるのを待つ。 3:阿良々木君に会いたいけど……。 4:デイパックを探す。 【備考】 ※「つばさキャット」終了後からの参戦です。 ※ストレスが溜まれば、ブラック羽川が出現する可能性もあります。 ※帽子の男(手塚)を危険視しています。 ※知り合い達の参戦時期に不安を抱いています 【忍野忍@物語シリーズ】 【装備:スペツナヅナイフ@現実】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:やや血液不足】 【思考・行動】 0:ミスタードーナツ! 1:殺し合いなど詰まらん。 2:暦を探して血を吸わせて貰う。 3:儂を襲おうと言うのならば、覚悟をしておけ。 4:小娘と行動する。 【備考】 ※少なくとも「かれんビー」終了後からの参戦です。(明確な参戦時期は後の書き手さんに任せます) ※暦から吸血すれば、外見、能力などが戻る可能性があります。制限は後の書き手さんにお任せします。 &color(red){【日向秀樹@Angel Beats!  死亡】} 【出刃包丁@現実】 普通の切れ味の良い出刃包丁。高山浩太が民家で調達。 |[[騎神咆哮バーサーカー]]|時系列|[[That is the question]]| |[[騎神咆哮バーサーカー]]|投下順|[[語られなかった想い]]| |[[繰り返し]]|羽川翼|[[]]| |~|忍野忍|[[]]| |~|高山浩太|[[]]| |~|手塚義光|[[]]| |~|&color(red){日向秀樹}|&color(red){DEAD END}|

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