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◇◇◇◇◇ 無言の探索であった。 別に仲が悪いわけではない。 だが考え事をしている最中であるし、静かな方が異常事態――参加者の接近にいち早く対処出来るだろう。 幸い骸も真アサシンも戦闘に関して高い技術に高いスキル持ちだ。 それが2人で固まってあるのだ、並大抵の不良なんか相手にすらならない。 だが問題は強大な敵がこの島にうじゃうじゃではないがそれなりの参加者が居る事だ。 そんな探索が始まって1時間から1時間半くらい経過したあとからだっただろうか。 『ふにゃああああああああ!』 猫の様な声のする少女らしき悲鳴か雄叫びか泣き声か。 状況が2人にとっても良くわからない展開に真アサシンは後ろを振り返り骸と顔を合わせたのであった。 「ムクロ殿」 「うむ、当然僕にも聞こえました」 ここから数十メートルぐらいの近さではないかと骸はわからない状況をわかる範囲で頭を巡らせた。 ではこれは何か。 根本的な事はまだ予想すら立てられていない。 「私が近寄ってみよう」 真アサシンは気配遮断を使って素早く近付こうとする。 「いや、ここは念には念を入れましょう。 参加者を集めさせ一気に殺そうと企む罠かもしれない」 「ムクロ殿がそう言うならば」 真アサシンは気配遮断を使用しつつにゆっくりと音源に近付く。 骸は当然気配遮断スキルなどあるはずもなく、真アサシンの進んだ先をなるべく音を立てずにコソコソ歩み寄る。 あれからは音は聞こえなかった為、現在は勘に頼った行動である。 (念には念を、なんて言いましたがあの声の主からは悪意は感じませんでしたね) 音の正体も声とは決まっていない。 しかし骸は誰かの声と確信していた。 もしかしたらこれが超直感というのかもしれない。 「むっ!?ムクロ殿小娘がおらまするぞ」 先に見つけたのは真アサシンであった。 骸はその方向へ向かった。 「というかハサン、僕に報告する前にその小娘とコンタクトを取りなさい」 「そうであったな」 そう言って真アサシンは地面に倒れ込んだ少女に駆け寄り声をかけた。 「小娘殿、一体何がありましたのかな」 「小娘殿ですか」 骸が真アサシンの横に来ていた。 そこで見た少女は骸にとって同じか少し上といった印象。 とても長い茶髪をポニーテールに鈴が付いてある元気そうな少女。 彼女が地面に倒れていたのであった。 「返事がない、……私がやってしまったのでしょうか?」 「まずは生死を確かめなさい」 骸は地面に座り込み少女の脈、呼吸を確認する。 力強そうな脈、弱々しい呼吸。 (気絶?寝ているのでしょうか?) 直前に悲鳴を上げたのはさっき。 このまま起こして良いのかどうか。 「大丈夫なのですか」 このまま寝ていて足手まといになるよりは可哀想だがこんなバトルロワイアル。 遠慮せずに殺されるよりはマシだろう。 「ぅう……りきぃー」 「りき?……直江理樹でしたか」 確かさっき放送で名前が呼ばれた名前だ。 この子の知り合いや親友であったならそれは残念であっただろう。 「お前理樹を知っているのかっ!?」 「……おぉ、驚かせるでない」 「ってうわ骸骨!?お前の顔に驚かされたわ!」 起きた早々に彼女、棗鈴の元気の声が響き渡る――いやこれは絶叫か? 「お前めっちゃ怖いな。仮面外したらどうだ?」 「この仮面を外すと顔がない故にな」 「顔無し!?」 中身のない話を見かねた骸が口を開いた。 「そろそろ自己紹介に入りましょう」 「うわっ、パイナップル!?」 「…………クフフ、クフフフフフフ」 「ムクロ殿、落ち着いて」 「パイナップルが壊れた!?」 ――――― 「僕の名前は六道骸、彼は真アサシンです。僕は呼びやすいハサンと呼んでいます」 (真アサシンが呼びやすいから『はさん』?よくわからん……) あえて鈴は突っ込まなかった。 「私は棗鈴だ。リトルバスターズと言えば伝わるな」 「伝わりません」 リトルバスターズ。 骸は事情によりマフィア界に詳しい。 ボンゴレファミリー、シモンファミリー、トマゾファミリー、ギーグファミリーなどなど。 リトルバスターズなんてファミリーはないし異名も聞いた事ない。 おそらくサッカーや野球のチームの名前だろう。 「この参加者の棗恭介とありますがこれは棗鈴の兄とかですか?」 「よくわかったな。お前エスパーだったのか」 「…………」 段々と疲れてきた――棗鈴と会話にため息が漏れる。 ため息をすると幸せが逃げると言われているがため息は幸せでない時にしか出るものではない。 ため息をして幸せが逃げる、幸せが逃げてため息が出る。 つまり無限ループにしかならなくなる。 「ここに来るまでリン殿は何をしていたのであるか?」 「うむ、あうれおるすと行動してたんだ」 「そのアウレオルス殿はどうしたのであるか?」 「あうれおるすはだなー……あ」 気絶していた影響で鈴はアウレオルスがアーチャーと戦っていて自分が誰かを助けに呼びに来ていた事を忘れていたのであった。 鈴の顔が青くなる。 アウレオルスはまだ生きているのか。 「お願いだ、むくろにはさん。あうれおるすを、あうれおるすを助けてくれ」 涙。 忘れていた自分、役立たずな自分、助けると見栄張って助けられた自分。 悔しさが鈴に襲い、小さすぎる自分の体ではとても耐えられなかった。 少女はとても弱くて、とても優しかった。 ◇◇◇◇◇ なんでそんなにみんなして殺し合うんだ。 そんなに他人が嫌いなのか。 仲良くすれば良いじゃないか。 なぁ、バカ兄貴? お前はリトルバスターズのリーダーとしてどっちの行動をしている? 謙吾みたいにリトルバスターズの為に人を殺しているのか? 私みたいに昔みたいにリトルバスターズとして正義の味方として人を守っているのか? お前いつもわけわからんところから出るのにさ。 窓からとかひょこり出るじゃないか。 毎日引いていたが、今日ばかりはそんなバカが見たいじゃないか! そこの建物の中から 『おや?鈴じゃないか、何泣きそうになってんだ?理樹が居ないのは寂しいが必ず俺が脱出させてやるからな。まずは作戦からだ』 とか言って緊張感も何もない再会、街で出会った風に姿を現れてくれ。 私いつも邪険にしてるが別にお前が嫌いじゃないんだ。 恭介に聞こえていないから言うが好き――ではないな。 頼りにはしてるけどな。 「本当に100人も島に居るのか!?数え間違いで30人くらいしか居ないだろ!」 助けを求めているがあうれおるすから離れ過ぎたら助けが見つかっても間に合わない。 当てなんかもない。 謙吾は、難しいな。 まず別れてから結構時間が過ぎちゃっているし、頼れないな。 真人は殺し合いしてるのか? あいつバカだからそんなわけないか。 殺し合いしていても勝手に自滅しそうだ。 バカだからな。 くるがやはどうなんだろうか? 可愛い女の子相手にはぁはぁ萌えているんだろうか。 あいつはまったく行動がわからん。 「オーイ、お菓子あるぞー。めちゃくちゃうまいぞ。それはもうくちゃくちゃだ」 嘘だ。 嘘はよくない、みんなに嫌われる。 でもお菓子好きな奴が近くにいるかもしれない。 こまりちゃんみたいな奴だな。 「…………」 シーーーン、だ。 何も擬音なんか発せられないがシーーーンだ。 シーーーン。 シーーーン。 シーーーン。 シーーーン。 シーーーン。 セミの鳴き声みたいでうざいな。 なんか腹立ってくる。 でもシーーーンだ。 「いざとなったら私1人であうれおるすのところに行くからな」 でもあうれおるす生きてるかな? ケータイも無いから返事聞けないかー。 ケータイに出なかったらバトルしてるか死んでいるか。 不安材料でしかないな。 「歩いていたら時間がかかる」 よし、走って助けを探そう。 いきなり走ると体に悪いから準備体操からだ。 「いち、にっ。いち、にっ。いち、にっ」 軽く屈伸をする。 体があったまる程時間もないからすぐに準備体操を終わらせる。 「よーーーい、スターーーーート!」 猫の如く私は走る。 腕をかき、風を切れ。 前を向き、涙が滲むほどにまっすぐ。 この空を駆け抜けろ。 必ず私はあうれおるすを助けだすんだ! ぜーったいだ! 無理ならたいむすりっぷするからな! たいむすりっぷが無理ならもう諦めない! 何言ってんだか私もわからん。 でも本気なんだぁっっ! 「あ、」 やばい体が浮いてしまった。 なんかに躓いたか靴ひもを踏んだか。 地面が近い。 なんだ私死ぬのか……。 棗鈴死亡ってなるのか? 『ふにゃああああああああ!』 目の前が見えない。 我ながら情けない死に方だ。 まだ兄貴がロリコンの方がマシだ。 ……やっぱり無理。 ――――― 棗鈴の意識が途絶えた。 次に目を覚ますと死んでいない事に気付いた。 幽霊になったとかではないらしい。 そして見知らぬ2人が目に入った。 ――――― 「アウレオルスを助けるですか」 おそらく名簿のアウレオルス=イザードという者だろう。 さて、彼を助けるか助けないか。 選択権があるのはあくまで六道骸、真アサシン。 鈴は選択肢を渡す側に過ぎない。 「鈴殿に聞いて良いか?」 「ん、なんだ?あとお前見た目の割りに普通に話せるんだな」 「襲ってきた者はどんな者であったか?」 真アサシンの大事な事であった。 相手がもしサーヴァントであったなら殺さないといけない。 骸は黙って鈴の言葉を待つ。 「めちゃくちゃ強そうだった。いや本当にくちゃくちゃ強いだろう」 「そんな事はどうでも良い。名前とかわからないのか?」 「名前?あーっ、あったな!あった、あった」 鈴が思い出す。 名乗った名前が――。 「あーちゃんだ!名前はあーちゃん」 「あーちゃん?ムクロ殿、わかるであるか?」 「あーちゃんですか?篠崎あゆみのアダナでしょうか?でも確か死んでますね」 「男じゃー!しかもあーちゃんで終わりだ」 説明不足である。 しかしあーちゃんで終わり。 「ふむ」 骸は1つ該当した答えを見つけた。 「なる程、喜びなさいハサン」 「どういう意味であるか?」 「わかりませんかハサン、彼女は間違っています」 「間違ってない!」と鈴の声。 ふかーっ、と奇声を上げて怒っている。 「あーちゃんではありません。アーチャーですよ」 「おおっ、それだ」 怒りが冷めた鈴。 驚く真アサシン。 「早く向かった方が良いでしょうねハサン」 アウレオルスが生きている間に。 鈴の前でそんな不謹慎な事は言えなかったが。 「うむ、参ろうかムクロ殿、リン殿」 「いや、ハサン。あなただけで行きなさい」 「どうしたムクロ殿?」 真アサシンはてっきり共闘してくれるものと思っていた。 が、骸の答えは真アサシンを見捨てる事ではなかった。 「こんな怪我の棗鈴を歩かせるわけにはいきません」 「私怪我してるのか?」 鈴は自らの両足を見る。 赤く、黒い血液が足にこびりついていた。 傷口はグロテスクに皮を破いてかさぶたになりかけかどうかみたいであった。 「ふにゃああああ、足痛い。こんなの走れないぞ」 傷に気付いた瞬間から痛みが走り出す。 まるで今まで止まっていた新幹線が時間になり急発進するみたいに。 気付かなかったら痛みなどなかったかもしれない。 「棗鈴を手当て次第すぐに向かいます、ハサン」 「それでは仕方ない。先に私だけで行かせてもらう」 真アサシンは明らかに骸と行動していた時より脚が速かった。 目を離せば気配遮断スキルで見失ってしまうだろう。 そして真アサシンは走り去った。否、消え去った。 「では鈴、民家に入ります」 「ありがとうむくろ」 ここが街で幸いした。 民家や店がゴロゴロある。 (怖い顔に変な髪型だけど良い奴なんだな) 骸に対しての印象が少しだけ良くなった鈴であった。 ◇◇◇◇◇ 「なかなかしぶといな錬金術師」 「……あぁ」 アウレオルスは支給品の武器をはじめて使用していた。 テロリスト『ゼロ』が皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを殺した細い剣でアウレオルスは抵抗していた。 本当に抵抗にしかなっていなかった、とも言うのだろうか。 戦いとは言えない剣劇がずっとずっと続いていた。 だがアウレオルスは致命傷だけはすべて避けていた。 アウレオルスの意志でもなく、アーチャーがわざと外したわけでもない。 体が勝手に操作されていてアーチャーの動きよりわずかに早く対応するのだ。 アウレオルスはただ立っているかの如くな体験。 ただ、疲労はずっと溜まっていくだけであった。 「剣を未だ握る理由はなんだ?お前は苦痛と楽どちらが好きなんだ?」 「剣を握る理由?まだ私は負けていないからだ。 苦痛と楽どちらが好き?楽だな。『今私がお前の前に立っている』より『私が死んで鈴に延々と泣かれる』方が苦痛だ」 「くだらん言葉遊びだ」 アーチャーはあまりのバカバカしさに呆れ、彼を早く殺したくなった。 「くだらんだろう……。当然。私もそう思っている」 アウレオルスは反撃に興じる。 前に斬りつける為に剣を振るう。 が、剣の扱いに不慣れな攻撃を避けられない英雄など存在しないであろう。 「バカが、剣は突くものだ」 「ぐっ……」 アーチャーに疲労の色は見えない。 隠しているのだが疲労を見せない我慢強さはとてもである。 「何故倒れない?お前は生に興味の薄い人間だと思ったのだがな」 「確かにバトルロワイアル開始前まではな。でもね鈴と約束してしまったからな……」 「……」 「死ぬなよと、言われてしまってね」 体力はなく、傷だらけ。 いつ倒れてもおかしくない。 だが心は折れない。 倒れる自分は想像出来なかった。 また鈴と再会する光景しか想像出来なかった。 別に棗鈴の事を好きになったわけではない。 ただ、棗鈴から救われたかったのだ。 (正義の味方か……。ヒーローには出会ったけど正義の味方ははじめてだったな) アウレオルスはもう既に自分の不安を打ち消す鍼は必要なかった。 こんなに精神力が強かったなら上条当麻に負ける事もなかっただろう。 インデックスを我が物に悪者になったままの未来を創れただろう。 もし、そんな未来があったら永遠に彼は救われぬ人生を歩む事になったのかもしれないが。 正史では顔を変えて、記憶を失ってしまい、名前も変わり別人の人生を歩むアウレオルス=イザード。 だが、今の強き意志の錬金術師アウレオルス=イザードもまた別人であろう。 過去のアウレオルス=イザードが変わるという事だけは変わらない。 「おい錬金術師、スパナを砕いた時や武器を投影したりと錬金を使って戦え」 「ふふ、愕然。今はもう錬金術は使えないんだよ」 全然愕然した風には見えなかった。 それもそのはず、最後の黄金練金はまだ未使用であった。 「自然。君も武器の投影が出来ないんじゃないかい?それと同じさ」 「なかなか勘が鋭いようだな錬金術師」 つまり2人共、互いに能力が制限されているのだ。 「だからといって俺は負けん」 右手の干将を振り上げるアーチャー。 「それは――私もだっっ!」 ガキン。 干将に突く。 衝撃がビリビリと伝わる。 アウレオルスはアーチャーではなく武器に攻撃していた。 相殺させて隙をつくる為だ。 油断か疲労か。 アーチャーの剣の威力が衰えていた。 「もう一撃!」 ビギッ……。 破壊音が1つ干将から鳴る。 バラバラバラ……。 ヒビがヒビをつくり出し干将が崩れる。 「なんだと?」 「そんな強度の剣同じ位置にダメージを与えたら砕けるだろう」 「ぐっ……」 干将・莫耶は強度が高くない。 そしてアーチャー、衛宮士郎は壊れても壊れても次々と投影していく。 しかし今のアーチャーは本来の戦闘スタイルでは戦えないのだ。 「その左の剣も砕いてみせるっ!」 「ふっ」 熟練スパナは砕け、投影は未だに制限で使えない。 莫耶は攻略されたようなもの。 アウレオルスはアーチャーを挑発し誘っている。 「ならやってみせろ」 莫耶を振り回し、アウレオルスの心臓を一突き狙う。 アウレオルスの体がまた無意識に避ける。 心臓には当たらないが横腹に切り裂かれた痕が出来た。 これはアウレオルスがわざと付けた痕だ。 「はぁっ」 アウレオルスはアーチャーの左手に飛びかかり、左手を掴む。 「このっ――!」 剣で左手を突き刺す。 アーチャーにはじめて血が流れ、アーチャーの顔が歪む。 突き刺された左手の莫耶は重力に従い地面に落下していくのをアウレオルスがキャッチする。 そして思いっきり街の建物に投げつけ莫耶もまた干将の様に砕いた。 アーチャーの武器はすべて消えた。 (鈴、やっぱり君と再会する光景は現実になるかもしれない) 希望が湧いた。 そして――希望も砕かれた。 「…………さて」 「がっ……」 アーチャーの拳がアウレオルスに直撃して数メートル先でアウレオルスが倒れてしまう。 「第2ラウンドとでもしゃれこもうか錬金術師」 正義の味方は剣と弓だけが武器ではない。 誰よりも強く正しくなる為に鍛え上げた肉体もまた武器なのだ。 どんな武器よりも扱いやすい武器だ。 「か、勝てるわけがない……」 ゼロの剣を杖変わりに立ち上がるアウレオルス。 先ほど見えた希望は幻だったのかなんだったのか。 アウレオルスの目に世界はどう映る――? ◇◇◇◇◇ 「アーチャー、か」 サーヴァントでもいきなりの大物がかかってしまった。 だがチャンスは掴まなくては消えるのだ。 「アウレオルス殿だったか」 アーチャー相手に一般人がいつまでも相手に出来るとは思えないが、そのアウレオルスを今は信じなくてはならない。 真アサシンは長身で目立つ姿格好。 しかし気配遮断のスキルでまったく気配がない。 気配無き暗殺者の到着まで、あと――。 ◇◇◇◇◇ 「まだ痛むが大分マシだな。よしむくろ、いざあうれおるすのところまで、オーッ」 「少し静かにしてください」 棗鈴は僕が治療している時も元気だった。 僕的には未来のヴァリアー所属の弟子のフラン並みでしょうか? とても煩く相手にしにくかった。 「むくろ、私を手当てした礼だ。喜べお前もリトルバスターズだ」 「喜びません、遠慮します」 ハサンはアウレオルス救出に間に合うか。 僕と棗鈴はハサンと合流出来るかどうか。 さて、これからどうなっていくやら。 「なにぃ、リーダーになりたいのか?しかしリトルバスターズのリーダーはバカ兄貴なんだ」 「聞いてません」 【H-4 街/朝】 【アーチャー@Fate/stay night】 【装備:なし】 【支給品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:『守護者』として行動する。 2:錬金術師を殺す。 3:参加者を殺し、最後には主催者たちも殺す。 4:衛宮士郎は必ず殺す。セイバー、切嗣には……? 【備考】 ※凛ルート、召喚直後からの参加です ※投影は一度の使用につき30分のインターバルが発生します。また、弓の射程距離が短くなっています ※固有結界は発動できますが、膨大な魔力を消費します 【アウレオルス=イザード@とある魔術の禁書目録】 【装備:ゼロの剣@コードギアス 反逆のルルーシュ】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:疲労(小)、黄金錬成使用残り1回】 【思考・行動】 1:鈴と再会する為、アーチャーをどうにかする。 2:レンタルビデオ店に行き上条当麻に謝る。 【備考】 ※上条当麻に敗れた直後からの参加です ※『黄金錬成』について ・5回の使用につき三時間のインターバルが発生する ・思うだけでの使用は出来ず口にする必要がある ・規模、威力が大幅に制限されている ・生み出した物は数分で消滅する ・相手の攻撃の軌道を逸らすことは出来ない 【棗鈴@リトルバスターズ!】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】 【状態:足に怪我(手当て)、強い決意】 【思考・行動】 1:理樹の強さを受け継いで、生きていく 2:ゲームを終わらせる為、私達リトルバスターズが主催者を謝らせる 3:あうれおるすと再会する 4:むくろと一緒にあうれおるすとはさんのところへ向かう 5:あうれおるすにかみじょーを謝らせる 【備考】 ※Refrain、虚構世界脱出直前からの参加です 【六道骸@家庭教師ヒットマンREBORN!】 【装備:ヘッジホッグ@家庭教師ヒットマンREBORN!】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:健康、疲労(中)】 【思考・行動】 1:主催者に対抗する。その為に仲間を集めたい。 2:ハサン、棗鈴とアウレオルスを救出する。 3:敵は躊躇いなく殺す。 4:棗鈴、少し煩くてフランに似てますね 【備考】 ※継承式編終了後からの参戦です。 ※六道輪廻の能力は使えますが普段より激しく負担が大きいです。 ※衛宮切嗣に用心。 ※聖杯戦争のある程度の知識を得ました。 【真アサシン@Fate/stay night】 【装備:ベルフェゴールの投げナイフ30/30@家庭教師ヒットマンREBORN!】 【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】 【状態:疲労(小)】 【思考・行動】 1:この聖杯戦争で優勝し、願いを叶える。 2:サーヴァントは皆殺しにする。 3:ムクロ殿とリン殿でアウレオルス殿を救出する。 4:アーチャーを始末する。 【備考】 ※桜ルートの真アサシンVSバーサーカー終了後からの参戦。 ※ダークは全て没収されています。 ※投げナイフは全て回収しました。 ※妄想心音は半日に1回しか使えません。 【ゼロの剣@コードギアス 反逆のルルーシュ】 テロリストゼロの姿をした枢木スザクが、皇帝ルルーシュを刺した細い剣。 |[[That is the question]]|時系列|[[奇跡――それはつくられた偶然―― ]]| |[[That is the question]]|投下順|[[ある日 森の中 球磨川さんに出会った ]]| |[[アーチャー時を越えた遭遇]]|アーチャー|[[]]| |[[たとえバラバラになろうとも]]|アウレオルス=イザード|[[]]| |[[たとえバラバラになろうとも]]|棗鈴|[[]]| |[[仮面は微笑む。]]|六道骸|[[]]| |[[仮面は微笑む。]]|真アサシン|[[]]|
◇◇◇◇◇ 無言の探索であった。 別に仲が悪いわけではない。 だが考え事をしている最中であるし、静かな方が異常事態――参加者の接近にいち早く対処出来るだろう。 幸い骸も真アサシンも戦闘に関して高い技術に高いスキル持ちだ。 それが2人で固まってあるのだ、並大抵の不良なんか相手にすらならない。 だが問題は強大な敵がこの島にうじゃうじゃではないがそれなりの参加者が居る事だ。 そんな探索が始まって1時間から1時間半くらい経過したあとからだっただろうか。 『ふにゃああああああああ!』 猫の様な声のする少女らしき悲鳴か雄叫びか泣き声か。 状況が2人にとっても良くわからない展開に真アサシンは後ろを振り返り骸と顔を合わせたのであった。 「ムクロ殿」 「うむ、当然僕にも聞こえました」 ここから数十メートルぐらいの近さではないかと骸はわからない状況をわかる範囲で頭を巡らせた。 ではこれは何か。 根本的な事はまだ予想すら立てられていない。 「私が近寄ってみよう」 真アサシンは気配遮断を使って素早く近付こうとする。 「いや、ここは念には念を入れましょう。 参加者を集めさせ一気に殺そうと企む罠かもしれない」 「ムクロ殿がそう言うならば」 真アサシンは気配遮断を使用しつつにゆっくりと音源に近付く。 骸は当然気配遮断スキルなどあるはずもなく、真アサシンの進んだ先をなるべく音を立てずにコソコソ歩み寄る。 あれからは音は聞こえなかった為、現在は勘に頼った行動である。 (念には念を、なんて言いましたがあの声の主からは悪意は感じませんでしたね) 音の正体も声とは決まっていない。 しかし骸は誰かの声と確信していた。 もしかしたらこれが超直感というのかもしれない。 「むっ!?ムクロ殿小娘がおらまするぞ」 先に見つけたのは真アサシンであった。 骸はその方向へ向かった。 「というかハサン、僕に報告する前にその小娘とコンタクトを取りなさい」 「そうであったな」 そう言って真アサシンは地面に倒れ込んだ少女に駆け寄り声をかけた。 「小娘殿、一体何がありましたのかな」 「小娘殿ですか」 骸が真アサシンの横に来ていた。 そこで見た少女は骸にとって同じか少し上といった印象。 とても長い茶髪をポニーテールに鈴が付いてある元気そうな少女。 彼女が地面に倒れていたのであった。 「返事がない、……私がやってしまったのでしょうか?」 「まずは生死を確かめなさい」 骸は地面に座り込み少女の脈、呼吸を確認する。 力強そうな脈、弱々しい呼吸。 (気絶?寝ているのでしょうか?) 直前に悲鳴を上げたのはさっき。 このまま起こして良いのかどうか。 「大丈夫なのですか」 このまま寝ていて足手まといになるよりは可哀想だがこんなバトルロワイアル。 遠慮せずに殺されるよりはマシだろう。 「ぅう……りきぃー」 「りき?……直枝理樹でしたか」 確かさっき放送で名前が呼ばれた名前だ。 この子の知り合いや親友であったならそれは残念であっただろう。 「お前理樹を知っているのかっ!?」 「……おぉ、驚かせるでない」 「ってうわ骸骨!?お前の顔に驚かされたわ!」 起きた早々に彼女、棗鈴の元気の声が響き渡る――いやこれは絶叫か? 「お前めっちゃ怖いな。仮面外したらどうだ?」 「この仮面を外すと顔がない故にな」 「顔無し!?」 中身のない話を見かねた骸が口を開いた。 「そろそろ自己紹介に入りましょう」 「うわっ、パイナップル!?」 「…………クフフ、クフフフフフフ」 「ムクロ殿、落ち着いて」 「パイナップルが壊れた!?」 ――――― 「僕の名前は六道骸、彼は真アサシンです。僕は呼びやすいハサンと呼んでいます」 (真アサシンが呼びやすいから『はさん』?よくわからん……) あえて鈴は突っ込まなかった。 「私は棗鈴だ。リトルバスターズと言えば伝わるな」 「伝わりません」 リトルバスターズ。 骸は事情によりマフィア界に詳しい。 ボンゴレファミリー、シモンファミリー、トマゾファミリー、ギーグファミリーなどなど。 リトルバスターズなんてファミリーはないし異名も聞いた事ない。 おそらくサッカーや野球のチームの名前だろう。 「この参加者の棗恭介とありますがこれは棗鈴の兄とかですか?」 「よくわかったな。お前エスパーだったのか」 「…………」 段々と疲れてきた――棗鈴と会話にため息が漏れる。 ため息をすると幸せが逃げると言われているがため息は幸せでない時にしか出るものではない。 ため息をして幸せが逃げる、幸せが逃げてため息が出る。 つまり無限ループにしかならなくなる。 「ここに来るまでリン殿は何をしていたのであるか?」 「うむ、あうれおるすと行動してたんだ」 「そのアウレオルス殿はどうしたのであるか?」 「あうれおるすはだなー……あ」 気絶していた影響で鈴はアウレオルスがアーチャーと戦っていて自分が誰かを助けに呼びに来ていた事を忘れていたのであった。 鈴の顔が青くなる。 アウレオルスはまだ生きているのか。 「お願いだ、むくろにはさん。あうれおるすを、あうれおるすを助けてくれ」 涙。 忘れていた自分、役立たずな自分、助けると見栄張って助けられた自分。 悔しさが鈴に襲い、小さすぎる自分の体ではとても耐えられなかった。 少女はとても弱くて、とても優しかった。 ◇◇◇◇◇ なんでそんなにみんなして殺し合うんだ。 そんなに他人が嫌いなのか。 仲良くすれば良いじゃないか。 なぁ、バカ兄貴? お前はリトルバスターズのリーダーとしてどっちの行動をしている? 謙吾みたいにリトルバスターズの為に人を殺しているのか? 私みたいに昔みたいにリトルバスターズとして正義の味方として人を守っているのか? お前いつもわけわからんところから出るのにさ。 窓からとかひょこり出るじゃないか。 毎日引いていたが、今日ばかりはそんなバカが見たいじゃないか! そこの建物の中から 『おや?鈴じゃないか、何泣きそうになってんだ?理樹が居ないのは寂しいが必ず俺が脱出させてやるからな。まずは作戦からだ』 とか言って緊張感も何もない再会、街で出会った風に姿を現れてくれ。 私いつも邪険にしてるが別にお前が嫌いじゃないんだ。 恭介に聞こえていないから言うが好き――ではないな。 頼りにはしてるけどな。 「本当に100人も島に居るのか!?数え間違いで30人くらいしか居ないだろ!」 助けを求めているがあうれおるすから離れ過ぎたら助けが見つかっても間に合わない。 当てなんかもない。 謙吾は、難しいな。 まず別れてから結構時間が過ぎちゃっているし、頼れないな。 真人は殺し合いしてるのか? あいつバカだからそんなわけないか。 殺し合いしていても勝手に自滅しそうだ。 バカだからな。 くるがやはどうなんだろうか? 可愛い女の子相手にはぁはぁ萌えているんだろうか。 あいつはまったく行動がわからん。 「オーイ、お菓子あるぞー。めちゃくちゃうまいぞ。それはもうくちゃくちゃだ」 嘘だ。 嘘はよくない、みんなに嫌われる。 でもお菓子好きな奴が近くにいるかもしれない。 こまりちゃんみたいな奴だな。 「…………」 シーーーン、だ。 何も擬音なんか発せられないがシーーーンだ。 シーーーン。 シーーーン。 シーーーン。 シーーーン。 シーーーン。 セミの鳴き声みたいでうざいな。 なんか腹立ってくる。 でもシーーーンだ。 「いざとなったら私1人であうれおるすのところに行くからな」 でもあうれおるす生きてるかな? ケータイも無いから返事聞けないかー。 ケータイに出なかったらバトルしてるか死んでいるか。 不安材料でしかないな。 「歩いていたら時間がかかる」 よし、走って助けを探そう。 いきなり走ると体に悪いから準備体操からだ。 「いち、にっ。いち、にっ。いち、にっ」 軽く屈伸をする。 体があったまる程時間もないからすぐに準備体操を終わらせる。 「よーーーい、スターーーーート!」 猫の如く私は走る。 腕をかき、風を切れ。 前を向き、涙が滲むほどにまっすぐ。 この空を駆け抜けろ。 必ず私はあうれおるすを助けだすんだ! ぜーったいだ! 無理ならたいむすりっぷするからな! たいむすりっぷが無理ならもう諦めない! 何言ってんだか私もわからん。 でも本気なんだぁっっ! 「あ、」 やばい体が浮いてしまった。 なんかに躓いたか靴ひもを踏んだか。 地面が近い。 なんだ私死ぬのか……。 棗鈴死亡ってなるのか? 『ふにゃああああああああ!』 目の前が見えない。 我ながら情けない死に方だ。 まだ兄貴がロリコンの方がマシだ。 ……やっぱり無理。 ――――― 棗鈴の意識が途絶えた。 次に目を覚ますと死んでいない事に気付いた。 幽霊になったとかではないらしい。 そして見知らぬ2人が目に入った。 ――――― 「アウレオルスを助けるですか」 おそらく名簿のアウレオルス=イザードという者だろう。 さて、彼を助けるか助けないか。 選択権があるのはあくまで六道骸、真アサシン。 鈴は選択肢を渡す側に過ぎない。 「鈴殿に聞いて良いか?」 「ん、なんだ?あとお前見た目の割りに普通に話せるんだな」 「襲ってきた者はどんな者であったか?」 真アサシンの大事な事であった。 相手がもしサーヴァントであったなら殺さないといけない。 骸は黙って鈴の言葉を待つ。 「めちゃくちゃ強そうだった。いや本当にくちゃくちゃ強いだろう」 「そんな事はどうでも良い。名前とかわからないのか?」 「名前?あーっ、あったな!あった、あった」 鈴が思い出す。 名乗った名前が――。 「あーちゃんだ!名前はあーちゃん」 「あーちゃん?ムクロ殿、わかるであるか?」 「あーちゃんですか?篠崎あゆみのアダナでしょうか?でも確か死んでますね」 「男じゃー!しかもあーちゃんで終わりだ」 説明不足である。 しかしあーちゃんで終わり。 「ふむ」 骸は1つ該当した答えを見つけた。 「なる程、喜びなさいハサン」 「どういう意味であるか?」 「わかりませんかハサン、彼女は間違っています」 「間違ってない!」と鈴の声。 ふかーっ、と奇声を上げて怒っている。 「あーちゃんではありません。アーチャーですよ」 「おおっ、それだ」 怒りが冷めた鈴。 驚く真アサシン。 「早く向かった方が良いでしょうねハサン」 アウレオルスが生きている間に。 鈴の前でそんな不謹慎な事は言えなかったが。 「うむ、参ろうかムクロ殿、リン殿」 「いや、ハサン。あなただけで行きなさい」 「どうしたムクロ殿?」 真アサシンはてっきり共闘してくれるものと思っていた。 が、骸の答えは真アサシンを見捨てる事ではなかった。 「こんな怪我の棗鈴を歩かせるわけにはいきません」 「私怪我してるのか?」 鈴は自らの両足を見る。 赤く、黒い血液が足にこびりついていた。 傷口はグロテスクに皮を破いてかさぶたになりかけかどうかみたいであった。 「ふにゃああああ、足痛い。こんなの走れないぞ」 傷に気付いた瞬間から痛みが走り出す。 まるで今まで止まっていた新幹線が時間になり急発進するみたいに。 気付かなかったら痛みなどなかったかもしれない。 「棗鈴を手当て次第すぐに向かいます、ハサン」 「それでは仕方ない。先に私だけで行かせてもらう」 真アサシンは明らかに骸と行動していた時より脚が速かった。 目を離せば気配遮断スキルで見失ってしまうだろう。 そして真アサシンは走り去った。否、消え去った。 「では鈴、民家に入ります」 「ありがとうむくろ」 ここが街で幸いした。 民家や店がゴロゴロある。 (怖い顔に変な髪型だけど良い奴なんだな) 骸に対しての印象が少しだけ良くなった鈴であった。 ◇◇◇◇◇ 「なかなかしぶといな錬金術師」 「……あぁ」 アウレオルスは支給品の武器をはじめて使用していた。 テロリスト『ゼロ』が皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを殺した細い剣でアウレオルスは抵抗していた。 本当に抵抗にしかなっていなかった、とも言うのだろうか。 戦いとは言えない剣劇がずっとずっと続いていた。 だがアウレオルスは致命傷だけはすべて避けていた。 アウレオルスの意志でもなく、アーチャーがわざと外したわけでもない。 体が勝手に操作されていてアーチャーの動きよりわずかに早く対応するのだ。 アウレオルスはただ立っているかの如くな体験。 ただ、疲労はずっと溜まっていくだけであった。 「剣を未だ握る理由はなんだ?お前は苦痛と楽どちらが好きなんだ?」 「剣を握る理由?まだ私は負けていないからだ。 苦痛と楽どちらが好き?楽だな。『今私がお前の前に立っている』より『私が死んで鈴に延々と泣かれる』方が苦痛だ」 「くだらん言葉遊びだ」 アーチャーはあまりのバカバカしさに呆れ、彼を早く殺したくなった。 「くだらんだろう……。当然。私もそう思っている」 アウレオルスは反撃に興じる。 前に斬りつける為に剣を振るう。 が、剣の扱いに不慣れな攻撃を避けられない英雄など存在しないであろう。 「バカが、剣は突くものだ」 「ぐっ……」 アーチャーに疲労の色は見えない。 隠しているのだが疲労を見せない我慢強さはとてもである。 「何故倒れない?お前は生に興味の薄い人間だと思ったのだがな」 「確かにバトルロワイアル開始前まではな。でもね鈴と約束してしまったからな……」 「……」 「死ぬなよと、言われてしまってね」 体力はなく、傷だらけ。 いつ倒れてもおかしくない。 だが心は折れない。 倒れる自分は想像出来なかった。 また鈴と再会する光景しか想像出来なかった。 別に棗鈴の事を好きになったわけではない。 ただ、棗鈴から救われたかったのだ。 (正義の味方か……。ヒーローには出会ったけど正義の味方ははじめてだったな) アウレオルスはもう既に自分の不安を打ち消す鍼は必要なかった。 こんなに精神力が強かったなら上条当麻に負ける事もなかっただろう。 インデックスを我が物に悪者になったままの未来を創れただろう。 もし、そんな未来があったら永遠に彼は救われぬ人生を歩む事になったのかもしれないが。 正史では顔を変えて、記憶を失ってしまい、名前も変わり別人の人生を歩むアウレオルス=イザード。 だが、今の強き意志の錬金術師アウレオルス=イザードもまた別人であろう。 過去のアウレオルス=イザードが変わるという事だけは変わらない。 「おい錬金術師、スパナを砕いた時や武器を投影したりと錬金を使って戦え」 「ふふ、愕然。今はもう錬金術は使えないんだよ」 全然愕然した風には見えなかった。 それもそのはず、最後の黄金練金はまだ未使用であった。 「自然。君も武器の投影が出来ないんじゃないかい?それと同じさ」 「なかなか勘が鋭いようだな錬金術師」 つまり2人共、互いに能力が制限されているのだ。 「だからといって俺は負けん」 右手の干将を振り上げるアーチャー。 「それは――私もだっっ!」 ガキン。 干将に突く。 衝撃がビリビリと伝わる。 アウレオルスはアーチャーではなく武器に攻撃していた。 相殺させて隙をつくる為だ。 油断か疲労か。 アーチャーの剣の威力が衰えていた。 「もう一撃!」 ビギッ……。 破壊音が1つ干将から鳴る。 バラバラバラ……。 ヒビがヒビをつくり出し干将が崩れる。 「なんだと?」 「そんな強度の剣同じ位置にダメージを与えたら砕けるだろう」 「ぐっ……」 干将・莫耶は強度が高くない。 そしてアーチャー、衛宮士郎は壊れても壊れても次々と投影していく。 しかし今のアーチャーは本来の戦闘スタイルでは戦えないのだ。 「その左の剣も砕いてみせるっ!」 「ふっ」 熟練スパナは砕け、投影は未だに制限で使えない。 莫耶は攻略されたようなもの。 アウレオルスはアーチャーを挑発し誘っている。 「ならやってみせろ」 莫耶を振り回し、アウレオルスの心臓を一突き狙う。 アウレオルスの体がまた無意識に避ける。 心臓には当たらないが横腹に切り裂かれた痕が出来た。 これはアウレオルスがわざと付けた痕だ。 「はぁっ」 アウレオルスはアーチャーの左手に飛びかかり、左手を掴む。 「このっ――!」 剣で左手を突き刺す。 アーチャーにはじめて血が流れ、アーチャーの顔が歪む。 突き刺された左手の莫耶は重力に従い地面に落下していくのをアウレオルスがキャッチする。 そして思いっきり街の建物に投げつけ莫耶もまた干将の様に砕いた。 アーチャーの武器はすべて消えた。 (鈴、やっぱり君と再会する光景は現実になるかもしれない) 希望が湧いた。 そして――希望も砕かれた。 「…………さて」 「がっ……」 アーチャーの拳がアウレオルスに直撃して数メートル先でアウレオルスが倒れてしまう。 「第2ラウンドとでもしゃれこもうか錬金術師」 正義の味方は剣と弓だけが武器ではない。 誰よりも強く正しくなる為に鍛え上げた肉体もまた武器なのだ。 どんな武器よりも扱いやすい武器だ。 「か、勝てるわけがない……」 ゼロの剣を杖変わりに立ち上がるアウレオルス。 先ほど見えた希望は幻だったのかなんだったのか。 アウレオルスの目に世界はどう映る――? ◇◇◇◇◇ 「アーチャー、か」 サーヴァントでもいきなりの大物がかかってしまった。 だがチャンスは掴まなくては消えるのだ。 「アウレオルス殿だったか」 アーチャー相手に一般人がいつまでも相手に出来るとは思えないが、そのアウレオルスを今は信じなくてはならない。 真アサシンは長身で目立つ姿格好。 しかし気配遮断のスキルでまったく気配がない。 気配無き暗殺者の到着まで、あと――。 ◇◇◇◇◇ 「まだ痛むが大分マシだな。よしむくろ、いざあうれおるすのところまで、オーッ」 「少し静かにしてください」 棗鈴は僕が治療している時も元気だった。 僕的には未来のヴァリアー所属の弟子のフラン並みでしょうか? とても煩く相手にしにくかった。 「むくろ、私を手当てした礼だ。喜べお前もリトルバスターズだ」 「喜びません、遠慮します」 ハサンはアウレオルス救出に間に合うか。 僕と棗鈴はハサンと合流出来るかどうか。 さて、これからどうなっていくやら。 「なにぃ、リーダーになりたいのか?しかしリトルバスターズのリーダーはバカ兄貴なんだ」 「聞いてません」 【H-4 街/朝】 【アーチャー@Fate/stay night】 【装備:なし】 【支給品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:『守護者』として行動する。 2:錬金術師を殺す。 3:参加者を殺し、最後には主催者たちも殺す。 4:衛宮士郎は必ず殺す。セイバー、切嗣には……? 【備考】 ※凛ルート、召喚直後からの参加です ※投影は一度の使用につき30分のインターバルが発生します。また、弓の射程距離が短くなっています ※固有結界は発動できますが、膨大な魔力を消費します 【アウレオルス=イザード@とある魔術の禁書目録】 【装備:ゼロの剣@コードギアス 反逆のルルーシュ】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:疲労(小)、黄金錬成使用残り1回】 【思考・行動】 1:鈴と再会する為、アーチャーをどうにかする。 2:レンタルビデオ店に行き上条当麻に謝る。 【備考】 ※上条当麻に敗れた直後からの参加です ※『黄金錬成』について ・5回の使用につき三時間のインターバルが発生する ・思うだけでの使用は出来ず口にする必要がある ・規模、威力が大幅に制限されている ・生み出した物は数分で消滅する ・相手の攻撃の軌道を逸らすことは出来ない 【棗鈴@リトルバスターズ!】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】 【状態:足に怪我(手当て)、強い決意】 【思考・行動】 1:理樹の強さを受け継いで、生きていく 2:ゲームを終わらせる為、私達リトルバスターズが主催者を謝らせる 3:あうれおるすと再会する 4:むくろと一緒にあうれおるすとはさんのところへ向かう 5:あうれおるすにかみじょーを謝らせる 【備考】 ※Refrain、虚構世界脱出直前からの参加です 【六道骸@家庭教師ヒットマンREBORN!】 【装備:ヘッジホッグ@家庭教師ヒットマンREBORN!】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:健康、疲労(中)】 【思考・行動】 1:主催者に対抗する。その為に仲間を集めたい。 2:ハサン、棗鈴とアウレオルスを救出する。 3:敵は躊躇いなく殺す。 4:棗鈴、少し煩くてフランに似てますね 【備考】 ※継承式編終了後からの参戦です。 ※六道輪廻の能力は使えますが普段より激しく負担が大きいです。 ※衛宮切嗣に用心。 ※聖杯戦争のある程度の知識を得ました。 【真アサシン@Fate/stay night】 【装備:ベルフェゴールの投げナイフ30/30@家庭教師ヒットマンREBORN!】 【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】 【状態:疲労(小)】 【思考・行動】 1:この聖杯戦争で優勝し、願いを叶える。 2:サーヴァントは皆殺しにする。 3:ムクロ殿とリン殿でアウレオルス殿を救出する。 4:アーチャーを始末する。 【備考】 ※桜ルートの真アサシンVSバーサーカー終了後からの参戦。 ※ダークは全て没収されています。 ※投げナイフは全て回収しました。 ※妄想心音は半日に1回しか使えません。 【ゼロの剣@コードギアス 反逆のルルーシュ】 テロリストゼロの姿をした枢木スザクが、皇帝ルルーシュを刺した細い剣。 |[[That is the question]]|時系列|[[奇跡――それはつくられた偶然―― ]]| |[[That is the question]]|投下順|[[ある日 森の中 球磨川さんに出会った ]]| |[[アーチャー時を越えた遭遇]]|アーチャー|[[]]| |[[たとえバラバラになろうとも]]|アウレオルス=イザード|[[]]| |[[たとえバラバラになろうとも]]|棗鈴|[[]]| |[[仮面は微笑む。]]|六道骸|[[]]| |[[仮面は微笑む。]]|真アサシン|[[]]|

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