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「何てこった」 一人の青年が、未だ漆黒に包まれた空を仰いで呟いた。 その言葉には恐怖の色などは微塵もなく、あるのは自嘲と諦めだけだ。 彼の名前は棗恭介。 小さな友人グループ―――『正義の味方』リトルバスターズのリーダーだ。 個性派揃いのメンバーたちだが、その全員から慕われているということから、彼のカリスマ性が伺える。そして彼もその期待に応えてきた、まさに『理想のリーダー』だった。 そう。どこまでも彼は、リトルバスターズのリーダーだった。 繰り返される一学期。 リトルバスターズの物語は、修学旅行道中のバス事故に収束する。 だが、妹の棗鈴と親友の直枝理樹の心は弱すぎた。『俺達の居ない世界』で生きていけるだけの強さを得てもらうために、ただただ延々と一学期を繰り返し(リフレイン)。 虚構の世界で、いずれ終わらせる物語を引き延ばして。 そうまでして、恭介は親友を守ろうとした。 しかし、世界は無情にも崩壊を始めたのだ。 一人の仲間の心を土足で踏み荒らし、大切な妹の心を壊した。 もう、駄目だ。 そう思わざるを得ないほど恭介は追い詰められていた。 だが、彼を救ったのは他ならぬ守るべき者・直枝理樹。 理樹が変えた。 彼が壊してきた仲間達を救い、最後に恭介を救う為に、世界を変えた。 ああ―――こいつらはもう、大丈夫だ。 全てを終わらせる筈だったのに。物語は更なる悪性によりかき乱される。 「バトルロワイアル………ふざけやがって………!!」 心の中はごちゃごちゃだ。 どうせ結末には破滅しか待っていないという諦めと、自分がもっと早く二人を前に進ませていれば良かったという激しい後悔。そして何より、とてつもない怒り。 自分のかけがえのない仲間達を殺し合いなどという悪趣味極まりないゲームの『駒』として扱う行為が彼には何より許せない。今の彼の頭には、主催者への確かな敵意があった。 直枝理樹も棗鈴も井ノ原真人も宮沢謙吾も来ヶ谷唯湖も、大切な仲間だ。 いずれ終わりの時には別れなければならないが、それでも守りたい。 いや、自分が守らなければならないのだ。 リトルバスターズのリーダーとして、虚構世界のゲームマスターとして。 ――――上等だ、シャルル・ジ・ブリアニア、郷田真弓、朝倉涼子。 ――――お前等は今から晴れてリトルバスターズの敵だ。 必ずこのふざけきったゲームを潰してやる、と心中で宣言する。 支給された一本の槍を携える。 『海軍用船上槍(フリウリスピア)』。 槍を扱った試しなどないしこれから扱う予定もないが、護身用には上等だ。 慣れない手付きで突く動作を数回、虚空に向けて行う。 彼は理解していないだろうが、彼の持つ槍には1500回もの樹脂コーティングが為されている。樹木の年輪を象徴し、『植物の繁殖力』により硬度は増幅を続けるという代物だ。 とある少女が怒りに任せて作り出したこの仕組み。 恭介のように不慣れな人物でも、最悪盾として機能してくれる。 「うっし、行くか」 『リーダー』としての顔つきにすっかり戻った恭介は前方を見据える。 建っているのはまだ真新しい学校。この中になら誰かしらいるだろう。 志を同じくするなら良いが、道を違えた人物ならかなり危険。しかしここで怖じ気づかないのが×恭介だ。むしろ敵は撃破して仲間にする、くらいの心構えだった。 彼は、校舎の中にゆっくりと足を踏み入れる。 □ 「やれやれ。本当に――――困ったものですね」 青年は誰にともなく呟く。 『困った』などと言いながらもその端正なマスクには微笑みが浮かぶ。 彼は古泉一樹。とある機関を創設して所属する、『超能力者』だ。 突拍子もない。 『超能力者』なんて話、普通の人間なら大概はその一言で切り捨て、古泉一樹という青年は頭が残念な痛い人、などと不名誉なレッテルを貼り付けるのがオチだ。 が、しかし。今彼の右腕に浮かんでいる赤い光球を、どう証明するのか。 手品でなければCGでもなく、立体映像などでもない。正真正銘本物の、常人の理解の範疇を超えた力・『超能力』により生み出された理解不能の物体だ。 こじつけた理論でなら説明できるかもしれないが、古泉一樹は『本物』。 涼宮ハルヒを原因として発生する『閉鎖空間』内に進入し、内部で破壊活動を行う『神人』と呼ばれるモノを倒す能力を持ち、とある『機関』に所属する能力者。 その彼は、不測の事態に頭を悩ませていた。 「(やれやれ……涼宮さんの力がこんな事を引き起こすとは……予測していませんでしたね、特に不可解な様子は見られなかったので………不覚でした)」 涼宮ハルヒ―――神にも等しい力を持つ、世界を無意識に狂わす少女。 彼の考察では、ハルヒの力がマイナスに働いた結果この『バトルロワイアル』が発生した、というのが結論だった。故にあの主催者、シャルル・ジ・ブリタニアと郷田真弓、そして朝倉涼子も仕立て上げた悪。 少なくとも既に長門有希に敗北し、抹消された朝倉の存在は有り得ない。 『朝倉涼子』がどういう経路を辿ってどうなったのかを涼宮ハルヒは知らない筈、つまり『いきなり転校した』ということになっている朝倉が適当に選ばれた。 他の二名が生み出された存在か彼女の見た・聞いた存在なのかは分からない。しかしとにかく、このバトルロワイアルは涼宮ハルヒが望んだ非日常が最悪の形で実現したということ―――だが、まさか異世界なんてモノを作り出すとはさすがに思っていなかった。 「(さて………案の定この殺し合いにはSOS団の皆さんも巻き込まれている。彼女が望む非日常には我々のような存在も含まれるのはもはや必然ですね。 ともなれば、彼らが死んでしまうことで涼宮さんがこの世界そのものを放棄してしまう可能性も無きにしも有らず。この殺し合いで彼らが死んでしまうことは避けた方がいい)」 特に、ある人物が命を落とすことだけはあってはならないだろう。 涼宮ハルヒが無意識に支えとする人物―――名簿の名を借りて『キョン』。 彼が万一命を落とすことがあれば、支えを失った彼女が暴走することも考えられる。何せ観測上これほどの事態は一度たりとも無かった。 この空間そのものが彼女の生み出した空間なのだ、閉鎖空間に限りなく近いこの空間内において『神人』を発生させられでもすれば終わりだ。――――いや、そこまでせずとも彼女がこの世界の『破滅』を望みでもすればそれだけで終わる。 厄介な力だ。本人が自覚していないだけに、尚更。 まあ自覚されたとしてもこれまた更に厄介な事態を生むだけだろうが。 「(キョン君が死ぬことはあってはならない。涼宮さんが『世界の破滅』を望まないように支えてくれる人物が現れればいいのですが、極少の可能性に賭けるのは少々気が引けますからね。とすれば、残念ながら解決策は一つしか残っていないようです)」 その甘いマスクをまた笑顔の形にして、古泉は決めた。 「(殺し合いに乗らせて貰いましょう。尤も、生き残るのは涼宮さんただ一人ですが。彼女が『殺し合いが起きなかった未来』を望むことを願って、ね)」 涼宮ハルヒを優勝させる。 それが、古泉一樹の本当につまらないいつも通りの決断だった。 だがもう二つ、彼は考えている。 『片手間』の策と『最悪の事態』の策。 まず、殺し合いをする片手間に。 殺し合いに乗っていない者に、涼宮ハルヒについて説明する。 そして、涼宮ハルヒ以外の参加者を殺させる。 殺し合いに乗るような野心家は賞金を欲するだろうが、殺し合いに反対する平和主義者は全てが救われる終わりを望むだろう。それは人間としてとても正しい。 無論、話に乗ってこなかったなら問答無用で殺害させて貰うが。 もう一つは、『涼宮ハルヒが万一何者かに殺害された場合』だ。 彼女は文武両道の優等生だが、自らの力を自覚しない限り普通の人間。 いざ彼女を殺害するとなれば、物陰からの狙撃で十分に事足りる。そう考えれば涼宮ハルヒという少女がこのバトルロワイアルで死亡する可能性は決して低くない。 そうなった時、古泉一樹はどう動くのか。そんなものは決まっている。 SOS団の人間以外を殺し、SOS団の団員のみで脱出する。 古泉は今、あのSOS団を『機関』に次ぐ自らの居場所と捉えている。 その『居場所』の人間を殺してしまうのはどうも忍びない。 第二の守るべき存在として、責任を持って彼らを守る。 最悪の事態が起きた時、古泉一樹は『機関』としてではなく、SOS団の人間として行動することを決意していた。あくまで『最悪』の場合であったが。 「さて、ではそろそろ行きましょうか」 殺し合いをしに、と付け足していつもの笑顔で彼は教室を出た。 ■ 話は打って変わって美術室。 ショリショリという木を彫る際の独特の音だけが静寂の中響いていた。 蛍光灯の明かりに照らされて、一人の少女が木を星の形に彫っている。 「失礼ですね、どこから見ても可愛いヒトデですよ」 ………失礼。一人の少女が木を本人曰くヒトデの形に彫っている。 その行為をバトルロワイアル中に行う意味が分からない人が大半だろう。 むしろその彫刻刀を武器にして護身なり殺人なりするのが普通か。 だが彼女―――伊吹風子にとってはその行動こそが『普通』だった。 まあそれは置いておいて、伊吹風子という人物にとってこの状況は異常だ。 本人は気付いていないが、今ここに居る伊吹風子は『実体』を持っている。 風子はいわば『昏睡状態』に陥っている人間だ。 高校の入学式に交通事故に遭ってから現在まで意識を取り戻していない。 風子の存在は幽霊に近かった。 それが今此処に実体を持って存在している―――不可解。 「………ちょっといいですか?」 「ひゃぁっ!?」 風子が椅子から転げ落ちる。 おやおや、と言って。声をかけた一人の青年は微笑む。 「な、なんですか貴方はっ!!風子に忍び寄る謎の男ですかっ!?」 「そこまで驚いて下さるとは、背後から近寄った甲斐がありました」 ははは、と頭を掻く。 ただし、右腕には真っ赤な光球を浮かべたままで。 青年・古泉一樹の中で、既に伊吹風子をどうするかは決まっていた。 『処分』―――つまり、利用価値が無い。 また古泉一樹には、罪のない少女を殺す事への躊躇いなど存在しない。 「突然ですがクイズです。僕は一体、何者でしょうか」 「わっ、クイズですか!風子こう見えてもクイズは大得意ですよっ」 だから、これはただの暇潰し。 圧倒的優位な状況で、ちょっと遊び心を出してみただけ。 籠の中に閉じこめた小鳥に話しかけるような気軽さで。 反逆も逃亡も出来ない相手に、余裕の笑みで。 たった一つの問いかけを。 正解しようがどうしようが、結末は決まっている問いを。 右手には絶対の力を。 伊吹風子を確実に抹殺するだけの力を。 振るえばこの愛らしい顔面を肉塊に変えられる力。 さあ後は答えを待つだけ。 そしてその小さな口が緩やかに開いた―――― 「―――その子から離れろ、超能力者!!」 ダァン!!という破裂音。 熱い。 そう思った時には、古泉一樹の左肩から血が溢れ出していた。 「くっ!!」 光球を襲撃者に向けて放つ。しかしその時にはもうその座標には居ない。 古泉一樹に向けて―――ではなく、伊吹風子を逃がす為に、走っていた。 尤も素直にそんな事を許す古泉ではない。 再び出現させた光球を、美術室の入り口に向け放つ。 激しい音がした。一時的ではあるが、逃げ道を塞ぐことが出来た。 「参ったな………お前は何だ?何故こいつを狙う?」 「そうですね……何故、と問われれば世界の為、と言う他ない」 古泉はいつも通りの、普段と何も変わらない柔和な笑顔でこう言った。 「お察しの通り、超能力者です。そう呼んだ方がいいでしょう」 襲撃者・棗恭介は間髪入れずに古泉一樹に発砲した。勿論同じ手を二度食う古泉ではない。机と椅子を巧みに利用して弾丸をかわすことに成功する。 海軍用船上槍を用いるのはこの場では適切ではない、という理由で、もう一つの支給品を使うことにした。 次には彼が再び光球を出現させ―――また、放つ。 風子の手を引いて転がるようにそれを避けるが、まさにギリギリだった。 長期戦に持ち込ませれば明らかに分が悪い、と恭介は悟る。 更にこちらには風子が居る。守りながら戦うには限界があった。 「何が起きてるんですかっ!?」 「黙ってろ、舌噛むぞ!!」 慣れない銃、FN Five-seveNを古泉の方向に向ける。 しかしそこには既に古泉一樹は―――居ない。 「遅いですよぅっ!!」 完全に不意。光球の爆発がすぐ近くで起き、銃が吹き飛ばされる。 チェックというところですか、と古泉が言い、再び光球を生む。 恭介は顔をしかめる。そして、渾身の力で風子を突き飛ばした! きゃっ、という短い悲鳴。 「とにかくここから離れろ!!お前の命まで保証できねえ!!」 未だに状況を理解していない風子の反論を遮り、古泉に向き直る。 圧倒的な不利。あの破壊力を連発されては生身の恭介がジリ貧になるだけだ。 速やかに銃を回収し、最悪射殺も止む無し。恭介には古泉一樹という人間が話し合いに乗り、共に主催を打倒しようとする未来がどうしても浮かばなかった。 こいつには、躊躇いがない。 恐らくあの場、発砲するのがあと数秒遅ければ風子の頭は弾けていた。 だから、こいつはここで倒す。 「さあ、続きを始めましょうか!!」 赤い光球が古泉の掌に浮かぶ―――しかし。 古泉一樹は、一つの可能性を完全に失念していた。『逃した獲物』を。 気付くのが遅すぎた。 「使ってくださいっ!!」 カラン、という音。床を滑って丁度恭介の足元に、光沢を放つ物が現れた。 その意味を理解した時恭介はそれを掴み取り、古泉は光球を放つ。 足元の床が抉れたが、抑えられた威力は恭介を殺すには至らない。 掴み取った『それ』は長かった。 長さ五尺余りにして、歴史的価値のある代物だと誰もが理解する。 刀。日本元来未だ誰も成し遂げぬ秘技を生み出した無名の剣士の愛刀。 名を物干し竿。 「っ、この!!」 「お前の力は確かに上等だ。だがな、それが必ず勝利をもたらす訳じゃねえ」 リトルバスターズ。日々幼い頃から繰り広げてきた『遊び』『ミッション』の中で鍛えられてきた戦いの経験。長刀など扱ったことはないが、彼の身体能力はそれを使いこなすに足る。 『ありとあらゆる日常をミッションにするリーダー・棗恭介』にして『学園で暗躍する闇の執行部部長・時風瞬』。虚構の世界を創り出した彼は、肉体的にも精神的にも強い。 物干し竿を振るう。古泉が光球を放つが、絶妙な間合いが当たらせない。 厄介なのは物干し竿の扱いにくさを象徴するその長さだ。 間合いを読み違えればその時点で致命傷になりかねない。 不味い。 今更になって科されたこの制限とやらを呪う。せめて本気の十分の一の力が出せれば、たとえ当たらなくとも棗恭介の命を奪うことくらいは容易かった筈である。 仕方ない―――古泉一樹は、静かに右のポケットから何かを取り出した。 「残念ですが不利な戦いを何時までも続ける道理はありません。それでは」 次の瞬間、恭介と古泉の頭上で激しい光と爆音が解き放たれた。 スタングレネードか――やられた、恭介は視界不良の中刀を闇雲に振るう。 しかし手応えはない。逃げられたか、距離を取られたか。 が、攻撃が来る気配はなく、古泉は逃げたらしかった。 「はぁ……ったく、疲れたぜ本当……」 痛み分け、そんな言葉が頭に浮かぶ。 美術室の、ドアと床が抉れた入り口から自分が逃がし、そして助けられた少女が駆け寄ってくる。恭介はそれに、爽やかな笑顔で応じることにするのだった。 ◇ 「ふぅ……まさかいきなりの事実上敗戦になるとは」 撃たれた左肩が熱い。血の量は大したことないし腱も切れてはいないようだ。 だが処置をせずに化膿されてしまうのも面倒なので、彼は保健室を目指している。 あの局面。 視界を封じたのだし攻撃する選択もあった。 しかし、彼は攻撃をしなかった。別段情けをかけた訳でもないのに。 『古泉一樹』本人の意思で、攻撃しないことを選んでいた。 まるで、棗恭介との戦いを続けることを恐れたかのように。 「(………全く、僕も堕ちたものですね)」 自嘲じみた心の声を漏らした時、古泉は一人の人間をまだ眩む視界に捉えた。 白い髪。横顔からでも分かる紅く輝く瞳。 そして何より、肉体から放たれる突き刺すような殺気。 形容するなら『堕天使』『破滅』。 古泉一樹を滅ぼすか、もしくは恩恵をもたらすか。 学園都市230万人の学生の頂点・『一方通行』がそこにいた。 【G-5 中学校、保健室付近/未明】 【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:疲労(小)、左肩に銃創】 【思考・行動】 1:涼宮さんを優勝させる。 2:対主催思想持ちの強者は上手く利用していきたい 【備考】 ※『涼宮ハルヒの暴走』終了後からの参加です ※超能力は使えますが、威力が抑えられています 【一方通行@とある魔術の禁書目録】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:????? 【備考】 ※????? ◆ 「ってことは、棗さんは風子を狙ったロリコン男ですね!!最悪ですっ!!」 「うるせえ!!俺はロリじゃないやいっ!!」 いきなりの口喧嘩が勃発していた。 事の発端は、恭介が風子を小学生と間違えたこと。そこから風子が高校生と発覚し、『小学生らしき少女にどさくさに紛れて抱きついていた疑惑』が浮上。 それを否定する恭介と、一人想像を始める風子……後は分かるな。 「まあ待てよ伊吹。知ってたか……(21)って寄せ気味に速攻で書くと……どうだ、『ロリ』って見えるんだぜ。………っておい何だその目は。そんなに驚いちまったのか、玉筋に……無言で後ずさりすんじゃねえ!?」 「そんな事より、最初はこれからどうするかの話でしたよっ!!」 風子を知る者なら『風子が珍しくまともだ……』と驚いたろう。 暴走した恭介のノリは俗に言う『バカ』さえ凌駕する。 やれやれと呟き恭介は参加者名簿を取り出し、支給された赤ペンでいくつかの名前を囲む。最後に『伊吹風子』の名前を赤マルで囲み、その名簿を床に置いた。 「今丸をつけた奴等は安全だ。間違っても殺し合いなんかしない。今度は、伊吹が信頼できる奴の名前を囲め」 岡崎朋也。 春原陽平。 古河渚。 坂上智代。 の順で名前を囲み、これくらいです、と呟いた。 「良し。じゃあこれから名前を囲んだ奴等を探すぞ。………いや、出会った奴はたとえどんな奴でも仲間に出来ないか誘ってみるくらいの心構えだ」 名簿をデイパックにしまい、転がっていたFN-Five seveNを風子に持たせる。護身用だ、と付け足して、恭介は物干し竿を背負う。海軍用船上槍よりも、どうもこちらの方が向いているようだ。 やがてすっ、と立ち上がり、風子の方を見て言うのだった。 「打倒バトルロワイアルに向けて、まずは信頼できる連中でチームを組もう」 白い歯をにやり、と見せて。 いつかと同じように、棗恭介は言うのだった。 「チーム名は、リトルバスターズだ」 【G-5 中学校、美術室/未明】 【棗恭介@リトルバスターズ!】 【装備:物干し竿@Fate/stay night】 【所持品:支給品一式、海軍用船上槍@とある魔術の禁書目録、ランダム支給品×1】 【状態:疲労(小)、視界不良(小)】 【思考・行動】 1:リトルバスターズを結成して、バトルロワイアルを打倒する。 2:理樹と鈴は優先的に保護したい。 【備考】 ※Refrain、理樹たちが助けにきた直後からの参加です 【伊吹風子@CLANNAD】 【装備:FN Five-seveN(6/10)@現実】 【所持品:支給品一式、FN Five-seveN予備弾薬(20/20)、ランダム支給品×2】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:棗さんについていく。 2:岡崎さんたちを探す。 【備考】 ※風子ルート終了後からの参加です ※実体で存在しています 【スタングレネード@現実】 古泉一樹に支給。 起爆すると激しい光と音で近くに居たものの視界と聴覚を封じる。 今回の威力は小さめ。 【物干し竿@Fate/stay night】 元は伊吹風子に支給。 五尺余りの刀で、アサシンこと佐々木小次郎の主武装。 【FN Five-seveN@現実】 元は棗恭介に支給。 SS90を用いるFN社の自動拳銃。 【海軍用船上槍@とある魔術の禁書目録】 棗恭介に支給。 ヴェネツィアの隣にあるイタリア北東部の都市国家フリウリで生まれたコルセスカの一種。 15〜17世紀のヴェネツィアやフリウリなどの海洋都市国家の海軍で使用されていた。 1500回ほど樹脂のコートを重ねることにより『植物の持つ繁殖力』の術式を付加し、 更に刃先に『冷たい夜気』を利用した術式を付与することで、 聖人のメイスによる一撃に耐えるほどの耐久力を持ち、その一撃が破壊的な攻撃力を撒き散らす霊装へと変貌した。 |[[幻物語]]|時系列|[[散りゆく者への子守唄]]| |[[ラブコメディは突然に]]|投下順|[[生徒会の一存]]| |&color(cyan){START}|棗恭介|[[「ミッションスタートだ」]]| |&color(cyan){START}|伊吹風子|[[「ミッションスタートだ」]]| |&color(cyan){START}|古泉一樹|[[とある最強の一方通行]]| |&color(cyan){START}|一方通行|[[とある最強の一方通行]]|
「何てこった」 一人の青年が、未だ漆黒に包まれた空を仰いで呟いた。 その言葉には恐怖の色などは微塵もなく、あるのは自嘲と諦めだけだ。 彼の名前は棗恭介。 小さな友人グループ―――『正義の味方』リトルバスターズのリーダーだ。 個性派揃いのメンバーたちだが、その全員から慕われているということから、彼のカリスマ性が伺える。そして彼もその期待に応えてきた、まさに『理想のリーダー』だった。 そう。どこまでも彼は、リトルバスターズのリーダーだった。 繰り返される一学期。 リトルバスターズの物語は、修学旅行道中のバス事故に収束する。 だが、妹の棗鈴と親友の直枝理樹の心は弱すぎた。『俺達の居ない世界』で生きていけるだけの強さを得てもらうために、ただただ延々と一学期を繰り返し(リフレイン)。 虚構の世界で、いずれ終わらせる物語を引き延ばして。 そうまでして、恭介は親友を守ろうとした。 しかし、世界は無情にも崩壊を始めたのだ。 一人の仲間の心を土足で踏み荒らし、大切な妹の心を壊した。 もう、駄目だ。 そう思わざるを得ないほど恭介は追い詰められていた。 だが、彼を救ったのは他ならぬ守るべき者・直枝理樹。 理樹が変えた。 彼が壊してきた仲間達を救い、最後に恭介を救う為に、世界を変えた。 ああ―――こいつらはもう、大丈夫だ。 全てを終わらせる筈だったのに。物語は更なる悪性によりかき乱される。 「バトルロワイアル………ふざけやがって………!!」 心の中はごちゃごちゃだ。 どうせ結末には破滅しか待っていないという諦めと、自分がもっと早く二人を前に進ませていれば良かったという激しい後悔。そして何より、とてつもない怒り。 自分のかけがえのない仲間達を殺し合いなどという悪趣味極まりないゲームの『駒』として扱う行為が彼には何より許せない。今の彼の頭には、主催者への確かな敵意があった。 直枝理樹も棗鈴も井ノ原真人も宮沢謙吾も来ヶ谷唯湖も、大切な仲間だ。 いずれ終わりの時には別れなければならないが、それでも守りたい。 いや、自分が守らなければならないのだ。 リトルバスターズのリーダーとして、虚構世界のゲームマスターとして。 ――――上等だ、シャルル・ジ・ブリアニア、郷田真弓、朝倉涼子。 ――――お前等は今から晴れてリトルバスターズの敵だ。 必ずこのふざけきったゲームを潰してやる、と心中で宣言する。 支給された一本の槍を携える。 『海軍用船上槍(フリウリスピア)』。 槍を扱った試しなどないしこれから扱う予定もないが、護身用には上等だ。 慣れない手付きで突く動作を数回、虚空に向けて行う。 彼は理解していないだろうが、彼の持つ槍には1500回もの樹脂コーティングが為されている。樹木の年輪を象徴し、『植物の繁殖力』により硬度は増幅を続けるという代物だ。 とある少女が怒りに任せて作り出したこの仕組み。 恭介のように不慣れな人物でも、最悪盾として機能してくれる。 「うっし、行くか」 『リーダー』としての顔つきにすっかり戻った恭介は前方を見据える。 建っているのはまだ真新しい学校。この中になら誰かしらいるだろう。 志を同じくするなら良いが、道を違えた人物ならかなり危険。しかしここで怖じ気づかないのが×恭介だ。むしろ敵は撃破して仲間にする、くらいの心構えだった。 彼は、校舎の中にゆっくりと足を踏み入れる。 □ 「やれやれ。本当に――――困ったものですね」 青年は誰にともなく呟く。 『困った』などと言いながらもその端正なマスクには微笑みが浮かぶ。 彼は古泉一樹。とある機関を創設して所属する、『超能力者』だ。 突拍子もない。 『超能力者』なんて話、普通の人間なら大概はその一言で切り捨て、古泉一樹という青年は頭が残念な痛い人、などと不名誉なレッテルを貼り付けるのがオチだ。 が、しかし。今彼の右腕に浮かんでいる赤い光球を、どう証明するのか。 手品でなければCGでもなく、立体映像などでもない。正真正銘本物の、常人の理解の範疇を超えた力・『超能力』により生み出された理解不能の物体だ。 こじつけた理論でなら説明できるかもしれないが、古泉一樹は『本物』。 涼宮ハルヒを原因として発生する『閉鎖空間』内に進入し、内部で破壊活動を行う『神人』と呼ばれるモノを倒す能力を持ち、とある『機関』に所属する能力者。 その彼は、不測の事態に頭を悩ませていた。 「(やれやれ……涼宮さんの力がこんな事を引き起こすとは……予測していませんでしたね、特に不可解な様子は見られなかったので………不覚でした)」 涼宮ハルヒ―――神にも等しい力を持つ、世界を無意識に狂わす少女。 彼の考察では、ハルヒの力がマイナスに働いた結果この『バトルロワイアル』が発生した、というのが結論だった。故にあの主催者、シャルル・ジ・ブリタニアと郷田真弓、そして朝倉涼子も仕立て上げた悪。 少なくとも既に長門有希に敗北し、抹消された朝倉の存在は有り得ない。 『朝倉涼子』がどういう経路を辿ってどうなったのかを涼宮ハルヒは知らない筈、つまり『いきなり転校した』ということになっている朝倉が適当に選ばれた。 他の二名が生み出された存在か彼女の見た・聞いた存在なのかは分からない。しかしとにかく、このバトルロワイアルは涼宮ハルヒが望んだ非日常が最悪の形で実現したということ―――だが、まさか異世界なんてモノを作り出すとはさすがに思っていなかった。 「(さて………案の定この殺し合いにはSOS団の皆さんも巻き込まれている。彼女が望む非日常には我々のような存在も含まれるのはもはや必然ですね。 ともなれば、彼らが死んでしまうことで涼宮さんがこの世界そのものを放棄してしまう可能性も無きにしも有らず。この殺し合いで彼らが死んでしまうことは避けた方がいい)」 特に、ある人物が命を落とすことだけはあってはならないだろう。 涼宮ハルヒが無意識に支えとする人物―――名簿の名を借りて『キョン』。 彼が万一命を落とすことがあれば、支えを失った彼女が暴走することも考えられる。何せ観測上これほどの事態は一度たりとも無かった。 この空間そのものが彼女の生み出した空間なのだ、閉鎖空間に限りなく近いこの空間内において『神人』を発生させられでもすれば終わりだ。――――いや、そこまでせずとも彼女がこの世界の『破滅』を望みでもすればそれだけで終わる。 厄介な力だ。本人が自覚していないだけに、尚更。 まあ自覚されたとしてもこれまた更に厄介な事態を生むだけだろうが。 「(キョン君が死ぬことはあってはならない。涼宮さんが『世界の破滅』を望まないように支えてくれる人物が現れればいいのですが、極少の可能性に賭けるのは少々気が引けますからね。とすれば、残念ながら解決策は一つしか残っていないようです)」 その甘いマスクをまた笑顔の形にして、古泉は決めた。 「(殺し合いに乗らせて貰いましょう。尤も、生き残るのは涼宮さんただ一人ですが。彼女が『殺し合いが起きなかった未来』を望むことを願って、ね)」 涼宮ハルヒを優勝させる。 それが、古泉一樹の本当につまらないいつも通りの決断だった。 だがもう二つ、彼は考えている。 『片手間』の策と『最悪の事態』の策。 まず、殺し合いをする片手間に。 殺し合いに乗っていない者に、涼宮ハルヒについて説明する。 そして、涼宮ハルヒ以外の参加者を殺させる。 殺し合いに乗るような野心家は賞金を欲するだろうが、殺し合いに反対する平和主義者は全てが救われる終わりを望むだろう。それは人間としてとても正しい。 無論、話に乗ってこなかったなら問答無用で殺害させて貰うが。 もう一つは、『涼宮ハルヒが万一何者かに殺害された場合』だ。 彼女は文武両道の優等生だが、自らの力を自覚しない限り普通の人間。 いざ彼女を殺害するとなれば、物陰からの狙撃で十分に事足りる。そう考えれば涼宮ハルヒという少女がこのバトルロワイアルで死亡する可能性は決して低くない。 そうなった時、古泉一樹はどう動くのか。そんなものは決まっている。 SOS団の人間以外を殺し、SOS団の団員のみで脱出する。 古泉は今、あのSOS団を『機関』に次ぐ自らの居場所と捉えている。 その『居場所』の人間を殺してしまうのはどうも忍びない。 第二の守るべき存在として、責任を持って彼らを守る。 最悪の事態が起きた時、古泉一樹は『機関』としてではなく、SOS団の人間として行動することを決意していた。あくまで『最悪』の場合であったが。 「さて、ではそろそろ行きましょうか」 殺し合いをしに、と付け足していつもの笑顔で彼は教室を出た。 ■ 話は打って変わって美術室。 ショリショリという木を彫る際の独特の音だけが静寂の中響いていた。 蛍光灯の明かりに照らされて、一人の少女が木を星の形に彫っている。 「失礼ですね、どこから見ても可愛いヒトデですよ」 ………失礼。一人の少女が木を本人曰くヒトデの形に彫っている。 その行為をバトルロワイアル中に行う意味が分からない人が大半だろう。 むしろその彫刻刀を武器にして護身なり殺人なりするのが普通か。 だが彼女―――伊吹風子にとってはその行動こそが『普通』だった。 まあそれは置いておいて、伊吹風子という人物にとってこの状況は異常だ。 本人は気付いていないが、今ここに居る伊吹風子は『実体』を持っている。 風子はいわば『昏睡状態』に陥っている人間だ。 高校の入学式に交通事故に遭ってから現在まで意識を取り戻していない。 風子の存在は幽霊に近かった。 それが今此処に実体を持って存在している―――不可解。 「………ちょっといいですか?」 「ひゃぁっ!?」 風子が椅子から転げ落ちる。 おやおや、と言って。声をかけた一人の青年は微笑む。 「な、なんですか貴方はっ!!風子に忍び寄る謎の男ですかっ!?」 「そこまで驚いて下さるとは、背後から近寄った甲斐がありました」 ははは、と頭を掻く。 ただし、右腕には真っ赤な光球を浮かべたままで。 青年・古泉一樹の中で、既に伊吹風子をどうするかは決まっていた。 『処分』―――つまり、利用価値が無い。 また古泉一樹には、罪のない少女を殺す事への躊躇いなど存在しない。 「突然ですがクイズです。僕は一体、何者でしょうか」 「わっ、クイズですか!風子こう見えてもクイズは大得意ですよっ」 だから、これはただの暇潰し。 圧倒的優位な状況で、ちょっと遊び心を出してみただけ。 籠の中に閉じこめた小鳥に話しかけるような気軽さで。 反逆も逃亡も出来ない相手に、余裕の笑みで。 たった一つの問いかけを。 正解しようがどうしようが、結末は決まっている問いを。 右手には絶対の力を。 伊吹風子を確実に抹殺するだけの力を。 振るえばこの愛らしい顔面を肉塊に変えられる力。 さあ後は答えを待つだけ。 そしてその小さな口が緩やかに開いた―――― 「―――その子から離れろ、超能力者!!」 ダァン!!という破裂音。 熱い。 そう思った時には、古泉一樹の左肩から血が溢れ出していた。 「くっ!!」 光球を襲撃者に向けて放つ。しかしその時にはもうその座標には居ない。 古泉一樹に向けて―――ではなく、伊吹風子を逃がす為に、走っていた。 尤も素直にそんな事を許す古泉ではない。 再び出現させた光球を、美術室の入り口に向け放つ。 激しい音がした。一時的ではあるが、逃げ道を塞ぐことが出来た。 「参ったな………お前は何だ?何故こいつを狙う?」 「そうですね……何故、と問われれば世界の為、と言う他ない」 古泉はいつも通りの、普段と何も変わらない柔和な笑顔でこう言った。 「お察しの通り、超能力者です。そう呼んだ方がいいでしょう」 襲撃者・棗恭介は間髪入れずに古泉一樹に発砲した。勿論同じ手を二度食う古泉ではない。机と椅子を巧みに利用して弾丸をかわすことに成功する。 海軍用船上槍を用いるのはこの場では適切ではない、という理由で、もう一つの支給品を使うことにした。 次には彼が再び光球を出現させ―――また、放つ。 風子の手を引いて転がるようにそれを避けるが、まさにギリギリだった。 長期戦に持ち込ませれば明らかに分が悪い、と恭介は悟る。 更にこちらには風子が居る。守りながら戦うには限界があった。 「何が起きてるんですかっ!?」 「黙ってろ、舌噛むぞ!!」 慣れない銃、FN Five-seveNを古泉の方向に向ける。 しかしそこには既に古泉一樹は―――居ない。 「遅いですよぅっ!!」 完全に不意。光球の爆発がすぐ近くで起き、銃が吹き飛ばされる。 チェックというところですか、と古泉が言い、再び光球を生む。 恭介は顔をしかめる。そして、渾身の力で風子を突き飛ばした! きゃっ、という短い悲鳴。 「とにかくここから離れろ!!お前の命まで保証できねえ!!」 未だに状況を理解していない風子の反論を遮り、古泉に向き直る。 圧倒的な不利。あの破壊力を連発されては生身の恭介がジリ貧になるだけだ。 速やかに銃を回収し、最悪射殺も止む無し。恭介には古泉一樹という人間が話し合いに乗り、共に主催を打倒しようとする未来がどうしても浮かばなかった。 こいつには、躊躇いがない。 恐らくあの場、発砲するのがあと数秒遅ければ風子の頭は弾けていた。 だから、こいつはここで倒す。 「さあ、続きを始めましょうか!!」 赤い光球が古泉の掌に浮かぶ―――しかし。 古泉一樹は、一つの可能性を完全に失念していた。『逃した獲物』を。 気付くのが遅すぎた。 「使ってくださいっ!!」 カラン、という音。床を滑って丁度恭介の足元に、光沢を放つ物が現れた。 その意味を理解した時恭介はそれを掴み取り、古泉は光球を放つ。 足元の床が抉れたが、抑えられた威力は恭介を殺すには至らない。 掴み取った『それ』は長かった。 長さ五尺余りにして、歴史的価値のある代物だと誰もが理解する。 刀。日本元来未だ誰も成し遂げぬ秘技を生み出した無名の剣士の愛刀。 名を物干し竿。 「っ、この!!」 「お前の力は確かに上等だ。だがな、それが必ず勝利をもたらす訳じゃねえ」 リトルバスターズ。日々幼い頃から繰り広げてきた『遊び』『ミッション』の中で鍛えられてきた戦いの経験。長刀など扱ったことはないが、彼の身体能力はそれを使いこなすに足る。 『ありとあらゆる日常をミッションにするリーダー・棗恭介』にして『学園で暗躍する闇の執行部部長・時風瞬』。虚構の世界を創り出した彼は、肉体的にも精神的にも強い。 物干し竿を振るう。古泉が光球を放つが、絶妙な間合いが当たらせない。 厄介なのは物干し竿の扱いにくさを象徴するその長さだ。 間合いを読み違えればその時点で致命傷になりかねない。 不味い。 今更になって科されたこの制限とやらを呪う。せめて本気の十分の一の力が出せれば、たとえ当たらなくとも棗恭介の命を奪うことくらいは容易かった筈である。 仕方ない―――古泉一樹は、静かに右のポケットから何かを取り出した。 「残念ですが不利な戦いを何時までも続ける道理はありません。それでは」 次の瞬間、恭介と古泉の頭上で激しい光と爆音が解き放たれた。 スタングレネードか――やられた、恭介は視界不良の中刀を闇雲に振るう。 しかし手応えはない。逃げられたか、距離を取られたか。 が、攻撃が来る気配はなく、古泉は逃げたらしかった。 「はぁ……ったく、疲れたぜ本当……」 痛み分け、そんな言葉が頭に浮かぶ。 美術室の、ドアと床が抉れた入り口から自分が逃がし、そして助けられた少女が駆け寄ってくる。恭介はそれに、爽やかな笑顔で応じることにするのだった。 ◇ 「ふぅ……まさかいきなりの事実上敗戦になるとは」 撃たれた左肩が熱い。血の量は大したことないし腱も切れてはいないようだ。 だが処置をせずに化膿されてしまうのも面倒なので、彼は保健室を目指している。 あの局面。 視界を封じたのだし攻撃する選択もあった。 しかし、彼は攻撃をしなかった。別段情けをかけた訳でもないのに。 『古泉一樹』本人の意思で、攻撃しないことを選んでいた。 まるで、棗恭介との戦いを続けることを恐れたかのように。 「(………全く、僕も堕ちたものですね)」 自嘲じみた心の声を漏らした時、古泉は一人の人間をまだ眩む視界に捉えた。 白い髪。横顔からでも分かる紅く輝く瞳。 そして何より、肉体から放たれる突き刺すような殺気。 形容するなら『堕天使』『破滅』。 古泉一樹を滅ぼすか、もしくは恩恵をもたらすか。 学園都市230万人の学生の頂点・『一方通行』がそこにいた。 【G-5 中学校、保健室付近/未明】 【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:疲労(小)、左肩に銃創】 【思考・行動】 1:涼宮さんを優勝させる。 2:対主催思想持ちの強者は上手く利用していきたい 【備考】 ※『涼宮ハルヒの暴走』終了後からの参加です ※超能力は使えますが、威力が抑えられています 【一方通行@とある魔術の禁書目録】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:????? 【備考】 ※????? ◆ 「ってことは、棗さんは風子を狙ったロリコン男ですね!!最悪ですっ!!」 「うるせえ!!俺はロリじゃないやいっ!!」 いきなりの口喧嘩が勃発していた。 事の発端は、恭介が風子を小学生と間違えたこと。そこから風子が高校生と発覚し、『小学生らしき少女にどさくさに紛れて抱きついていた疑惑』が浮上。 それを否定する恭介と、一人想像を始める風子……後は分かるな。 「まあ待てよ伊吹。知ってたか……(21)って寄せ気味に速攻で書くと……どうだ、『ロリ』って見えるんだぜ。………っておい何だその目は。そんなに驚いちまったのか、玉筋に……無言で後ずさりすんじゃねえ!?」 「そんな事より、最初はこれからどうするかの話でしたよっ!!」 風子を知る者なら『風子が珍しくまともだ……』と驚いたろう。 暴走した恭介のノリは俗に言う『バカ』さえ凌駕する。 やれやれと呟き恭介は参加者名簿を取り出し、支給された赤ペンでいくつかの名前を囲む。最後に『伊吹風子』の名前を赤マルで囲み、その名簿を床に置いた。 「今丸をつけた奴等は安全だ。間違っても殺し合いなんかしない。今度は、伊吹が信頼できる奴の名前を囲め」 岡崎朋也。 春原陽平。 古河渚。 坂上智代。 の順で名前を囲み、これくらいです、と呟いた。 「良し。じゃあこれから名前を囲んだ奴等を探すぞ。………いや、出会った奴はたとえどんな奴でも仲間に出来ないか誘ってみるくらいの心構えだ」 名簿をデイパックにしまい、転がっていたFN-Five seveNを風子に持たせる。護身用だ、と付け足して、恭介は物干し竿を背負う。海軍用船上槍よりも、どうもこちらの方が向いているようだ。 やがてすっ、と立ち上がり、風子の方を見て言うのだった。 「打倒バトルロワイアルに向けて、まずは信頼できる連中でチームを組もう」 白い歯をにやり、と見せて。 いつかと同じように、棗恭介は言うのだった。 「チーム名は、リトルバスターズだ」 【G-5 中学校、美術室/未明】 【棗恭介@リトルバスターズ!】 【装備:物干し竿@Fate/stay night】 【所持品:支給品一式、海軍用船上槍@とある魔術の禁書目録、ランダム支給品×1】 【状態:疲労(小)、視界不良(小)】 【思考・行動】 1:リトルバスターズを結成して、バトルロワイアルを打倒する。 2:理樹と鈴は優先的に保護したい。 【備考】 ※Refrain、理樹たちが助けにきた直後からの参加です 【伊吹風子@CLANNAD】 【装備:FN Five-seveN(6/10)@現実】 【所持品:支給品一式、FN Five-seveN予備弾薬(20/20)、ランダム支給品×2】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:棗さんについていく。 2:岡崎さんたちを探す。 【備考】 ※風子ルート終了後からの参加です ※実体で存在しています 【スタングレネード@現実】 古泉一樹に支給。 起爆すると激しい光と音で近くに居たものの視界と聴覚を封じる。 今回の威力は小さめ。 【物干し竿@Fate/stay night】 元は伊吹風子に支給。 五尺余りの刀で、アサシンこと佐々木小次郎の主武装。 【FN Five-seveN@現実】 元は棗恭介に支給。 SS90を用いるFN社の自動拳銃。 【海軍用船上槍@とある魔術の禁書目録】 棗恭介に支給。 ヴェネツィアの隣にあるイタリア北東部の都市国家フリウリで生まれたコルセスカの一種。 15〜17世紀のヴェネツィアやフリウリなどの海洋都市国家の海軍で使用されていた。 1500回ほど樹脂のコートを重ねることにより『植物の持つ繁殖力』の術式を付加し、 更に刃先に『冷たい夜気』を利用した術式を付与することで、 聖人のメイスによる一撃に耐えるほどの耐久力を持ち、その一撃が破壊的な攻撃力を撒き散らす霊装へと変貌した。 |014:[[幻物語]]|時系列|025:[[散りゆく者への子守唄]]| |020:[[ラブコメディは突然に]]|投下順|022:[[生徒会の一存]]| |&color(cyan){START}|棗恭介|052:[[「ミッションスタートだ」]]| |&color(cyan){START}|伊吹風子|~| |&color(cyan){START}|古泉一樹|063:[[とある最強の一方通行]]| |&color(cyan){START}|一方通行|~|

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