白壇高校2年4組所属・刻命裕也。
普段は穏やかな物腰故人気者。
だがその彼の本音を知る者は少ない。
優等生の姉と兄にコンプレックスを抱き、物心がついた時から人間らしき感情が欠如し、問題ばかり起こし、親に見捨てられた。
それから良い子を演じる事になった。
『生命の終わる瞬間』に強い興味を抱くという歪んだ思考が彼にはあった。
だから、バトルロワイアルのこの出来事に彼はゲームに乗らないわけがなかった。
「はははっ、ようやく姉さんからも兄さんからも両親すら俺は解放されたんだ」
彼にとっては笑い話。
先に死んだ3人の事など彼にはどうでも良かった。
100人の参加者の中で誰よりもこのバトルロワイアルの参加に喜んだだろう。
殺しも許された世界。
それを考えるだけで今までの人生全ての事がこの瞬間の為に生き抜いてきたとさえ錯覚していた。
「知り合いはいないな……。殺りやすいこの上ないな」
『黒崎』という知り合いと同じ名字はあったが刻命の知る『黒崎』は『黒崎健介』であり、名簿の『黒崎一護』なる人物は知らなかった。
「じゃあ俺にはどんな武器が支給されているんだ」
ワクワクする気持ちが抑えられない。
緊張の一瞬。
優勝すれば20億という今後の生活には充分過ぎる賞金すら手に入る。
全てが彼にとって人生を変える出来事がそこにはあった。
「一気に出していったらつまらない。1つ1つ中身を見ずにデイパックから取り出していこう」
まだバトルロワイアルは始まったばかりだ。
ゆっくり楽しむのもまた一興だった。
―――――
「ん?なんだこのメガネ」
最初に見つけたのは普通のメガネだった。
なんの変哲もないただのメガネ。
俺は外れの支給品かと思ったがどうやら説明書がついていたからとりあえず読んでみた。
「『これは見た感じただのメガネですが実はすごい能力があります』……ふむふむ。暗視ゴーグルか!?」
なんだ暗視ゴーグルだとしたらすっげぇ当たりじゃないか。
俺は続きの文を続けた。
「『メガネかけると霧が晴れて見えます!』……いらねー」
まずこの島に霧なんかない。
霧がある舞台なら使えた支給品だが残念だがこの殺し合いには不向きだ……。
「一発目から銃なんか出たら出たでつまらないけどな」
自分で口にしてそう言い聞かせた。
「次は……ボードゲームか?」
どうやらすごろくらしい。
しかも手書き。
「『これはSOS団特製すごろくです。あの涼宮ハルヒと古泉一樹が頑張って1マス1マス手書きした世界に1つだけのすごろくです』…………その努力を俺に認めろと?」
そういえば古泉一樹なんて名前、俺の名前のすぐ下にあった気がする。
そういえば上が漢字で下がカタカナの名前に涼宮ハルヒも居た気がするな。
ゲーム参加者はすごろくを手書きする幼稚な奴しか居ないのか?
「無駄に『キョン』って奴だけの単体の嫌がらせマスが多いな。悪意しか感じない」
さて、メガネとすごろくなんかで2つの支給品を見てしまった。
武器なきゃどうすんだ俺?
それこそすごろくの『キョン』並みに悪意のある事じゃないか。
「クソッ!クールにCOOLにKOOLになれ刻命裕也!…………クールの英語ってあれ?CとKどっちだっけ?」
腹立ってど忘れしてしまった。
もう刻命のKでいいや。
「ふぅー……。次の1つで俺のゲームの進行度が変わる……」
武器が出れば晴れて殺人。
武器が出なければ生きる事すら困難だ。
「いざ!」
デイパックに手を突っ込む。
1つの希望が1つの形になる事を願って。
「これは……!?『探して下さい。わん、わん』……ふざけんな!」
犬を探して下さいという紙だった。
説明曰わく『秋月先輩』が約半年行方不明になった犬の捜索願いらしい。『秋月先輩』の趣味スイーツ作り、将来の夢はお嫁さん、挨拶はごきげんようらしい。
「もう誰か武器探して下さい」
最後に言えた皮肉だった。
KOOLになれ、刻命裕也!
「チクショー……、絶対生き残ってやる!主催者も参加者も全員俺が片付けてやる!……それより武器だな」
引っ張るが武器がなきゃやってられない。
「まずは行動第一!安全第一?そんなのは不要!」
若干頭がおかしくなりはじめたが、キャラを直すにはちょうど良い。
デイパックを担ぎ立ち上がる。
時間は有限。
力はそれなりにあるが所詮は高校生だからな。
「あのー……」
「うわっ!?ビックリした!?」
いつの間にか女子高生が後ろに居た。
「……痛い1人突っ込み芸人?」
「違います……、あの……どこから見てました?」
もしこいつが「主催者も参加者も全員俺が片付けてやる!」っていうのを聞かれていたら……?
両手の手を見る。
首締めて――殺る。
「『まずは行動第一!安全第一?そんなのは不要!』っていうところからです」
「……」
それは痛い。
この女子高生は口調がゆったりした人であった。
薄い茶髪の長い髪でリボンが目立つ。
こう、なんていうか周りには居ない感じの優しそうな美人の人だった。
「見苦しい事をお見せしてすいません。僕は刻命裕也です。高校2年生です。よろしくお願いします。ゲームに乗る気は0で主催者に対抗したいと考えているところです」
「私は遠野美凪です。刻命さんとは同い年です。私もあんな可愛い子を殺した主催者に対抗するおつもりです」
ゆったりとした口調は変わらなかった。
「お米券進呈〜」
「……え?」
「したかったんですが生憎没収されてしまいました……。仲間のお近づきにと思ったんですが……」
残念です、と呟く遠野。
こいつには全くといって良いほど敵意がない。
殺すのは容易いな。
「遠野さん、頑張って僕や他の参加者の皆さんと脱出しましょう」
「そうですね刻命さん」
容易いな。
1人や2人俺に泳がせるのなんか楽勝だぜ。
心の中の俺はあまりの楽しさに大笑いしていた。
―――――
私は隣で仮面を被る刻命さんを知っていた。
支給品確認前からずっと見てました。
1人の時は一人称は『俺』、私と出会った瞬間から『僕』に変わっていました。
いつから見ていたか聞いた時に彼は自分の両手を見ていた時は、私を締めようと考えていた事でしょう。
人を殺す事に躊躇いもないでしょう。
とても怖いです。
怖いですがそれ以上に可哀想な人です。
刻命さん。
あなたの歪んだ心を治してあげたい。
そう思わずにはいれませんでした。
「暗い内に襲われたら怖いですね。僕結構怖がりなんですよ」
「そうなんですか?でも私は仲間の刻命さんといるだけで安心してしまいます」
本性を知ってしまうと演技ってバレバレですね。
国崎さん、神尾さん。
あなた達を探す前にこの刻命さんの心を入れ替えないといけないみたいです。
【C-7 野原/未明】
【刻命裕也@コープスパーティー】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 テレビの世界のメガネ@ペルソナ4 SOS団特製すごろく@涼宮ハルヒの憂鬱 犬の捜索願いの紙@めだかボックス】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:優勝する。
2:人を殺すのに躊躇いはないが武器がない。
3:遠野を利用する。
4:クールになれ、刻命裕也!
【備考】
※本編開始前からの参戦。
【遠野美凪@AIR】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:刻命さんの歪んだ思考を治したい。
2:国崎さんと神尾さん、他仲間と脱出。
【備考】
※美凪ルート確定寸前からの参戦。
【テレビの世界のメガネ@ペルソナ4】
テレビの世界の霧を晴れた様に見せるメガネでパーティーメンバー全員にクマが渡していく。特に名称がない為こんな名称になった。
【SOS団特製すごろく@涼宮ハルヒの憂鬱】
涼宮ハルヒの動揺に収録された短編猫はどこに行った?にて涼宮ハルヒと古泉一樹が作った1マス1マス手書きしたすごろく。特にキョンにだけ格別に悪意がある。
【犬の捜索願いの紙@めだかボックス】
目安箱に投書された依頼。依頼人は秋月先輩。
最終更新:2014年05月18日 21:36