金髪の小柄な学生の男が野原を走っていた。
その走っている姿は移動している為でも、誰かを追っている為のものでもなかった。
逃げている走りであった。
だが彼を追う者は居ない。
では何から逃げているのか?
人を殺してしまった少女の罪からであった……。
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僕の視界は今、ぐにゃぐにゃしている。
走って駆けている野原の草、地面、全てが曖昧で歪に見えてしまっている。
それの原因は僕の目から溢れている涙のせいである。
後悔はないと誓ったのに。
大事な妹の為なのに。
――たった1人の人間を殺しただけで精神が落ち着かない。
これから何人も殺さなくてはいけないのに、今くよくよしていたらいけない。
「くそっ、だから僕は岡崎にバカにされるんだ!」
制服の袖で涙を拭く。
袖が涙を染み込み視界が直る。
だが完全な視界にはなっていなく、まだ歪みがある。
まるで僕が佳乃ちゃん殺しの罪を認めるまで視界を奪ってやるという神の意志に感じてしまう。
「はぁ、はぁ、はぁ……。佳乃ちゃんの死体からは遠く離れたかな……?」
辺りを見渡す。
そこには真っ直ぐなはずの地形がぐにゃぐにゃと狭い視界しか見せない。
佳乃ちゃんの姿はないが、もしかしたら不自然に途切れた視界の境目に倒れているのかもしれない。
正直走った距離なんかわからない。
全力疾走で走ったつもりでも、普段の歩くスピードより遅く感じてしまっていた。
「落ち着け陽平。僕は走った、間違いない。僕の体感時間がズレただけなんだ」
言い聞かせる。
だがそれはただの自分の励ましにしか聞こえなかった。
どんなに真実を並べても嘘に塗り替えられている様だった。
全てがおかしかった。
「おかしいのはこの状況だ……。おかしいというのならここに連れて来られた時点でおかしいんだ」
もっと言うなら僕がこのサバイバルナイフを持った瞬間からだ。
「僕は正しい人間じゃない!今までだって不良の春原とか言われてきたじゃないか」
自分が悪者なのはさっきから始まったわけじゃない。
あの高校のサッカー部を辞めさせられた瞬間から色んな人から嫌われてきた。
それと同じだ。
「なんで自分で自分を説得してんだよっ!」
支離滅裂。
僕の脳みそにその4字が思い浮かんだ。
「そうだ……。僕は犯罪を犯しているわけじゃない。これは緊急避難とかに適用されるはずだ」
たまたま公民の時間に授業が終わらないかと時計を見ながら聞いた話にそんな話があった気がする。
民法の第何条とかなんとか。
そうだ!
僕は赦されるんだ!
これは認められた正義なんだ!
―これが彼にとっての吹っ切れる魔法の言葉―
―歪んだ正義の在り方を見つけた―
―全て赦された事―
「それに僕は死にたくない……」
首輪に手を付けて思い浮かぶは悪魔の15分。
一生で一番長く、気持ち悪い濃密な時間。
「……そっか。芽衣の為?確かにそうだ。表向きだなこれは」
今自分で演技していたところに『素』が出てきたな。
僕は今『死にたくない』と口にした。
「うん。死にたくない。所詮自分の為だな」
自己中だ。
智代が居たらバカだと言って思いっきり蹴られるだろう。
僕はバカだ!
否定はしない。
自分で認めてすらいる言葉。
「ヘタレを直すチャンスだ、これで僕はもう杏にだってヘタレ扱いされない。むしろあいつをヘタレ扱いをしてやれるぐらいさ」
今の僕には全てが上手くいく気がする。
- まだ見ぬ参加者の心臓に突き刺すナイフ。
- 騙して頭を撃ち抜く銃。
- 優勝し、芽衣の元に帰って兄貴として見守る自分。
「その為には僕は親友をも裏切らなくてはならないな……」
出来れば自分で手をかけたくない。
あいつらだけは他の参加者の手にかかる事を願うしかない。
「最低だ……。渚ちゃん、智代、それに岡崎の死を考えている僕……」
最低な僕にも優しく接してくれた渚ちゃん。
僕が悪い事をする度に怒ってくれる智代。
僕の高校の悪友で最高の親友、岡崎。
「僕はあいつらにすら情けをかけられないのかっ……」
既に佳乃ちゃんに手をかけた。
全ての参加者に平等でなければならない。
それが正義の責任だろ?
「ボンバヘッ!」
僕が大好きなヒップホップの一言を叫んでやる気を起こす。
迷ってはいけない!
必ず生きて帰るんだっ!
―春原陽平―
―彼の視界は元の世界を映す正常な物になっていた―
―それが出した結論であるなら信じた道を歩めと言ったメッセージが込められてある様であった。―
【G-1 野原/黎明】
【春原陽平@CLANNAD】
【装備:サバイバルナイフ@現実】
【所持品:支給品一式 赤いビー玉@Kanon 便座カバー@現実 そうめん@AIR 鍋@現実 ベレッタM92(15/15)ベレッタM92の弾丸×15@現実】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:優勝してこの島から帰る。
2:生き残る為ならどんな事だってする……が親友に対して迷いがある。
【備考】
※渚ルート終盤からの参戦。
最終更新:2015年03月15日 17:00