「お主はなんだか悔しそうに見えるのぅ」

忍ちゃんが横目で私を見ていた。
その目は見透かした様な目。
とても見た目の8歳くらいの目ではなく、私の人生の何倍も生きていた様な鋭い目にも見える。
そこに重なるのは1人の吸血鬼の姿。

キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード。
私の住む街に現れた透き通る様な白い肌、誰もが目を惹く金髪と金眼の最強の吸血鬼。
私の親友の阿良々木君が吸血鬼になった原因で、私もその事件に巻き込まれた、――いや違うか。
巻きこまれに自ら足を踏み入れた春休みの事件であった。
吸血鬼ハンターのエピソード君に殺されそうになった事もあった。

「それは……、ただ見てるだけなんだもん……」

人助けをしたいわけではない。
ましてこのバトルロワイアルだ。
利用されかねない事であるのは承知である。
でも、あの様な人に好きにさせられているのをただ黙って見ているだけなのはとても悔しいのであった。
だが、もし阿良々木君なら自ら危険に飛び込むだろう。
赤の他人に近かった戦場ヶ原さんを含め、八九寺ちゃん、神原さん、千石ちゃんも助け出した。
忍野さんも協力したけど彼は「自分は助けない。君が勝手に助かっただけ」と突き放すのであろう。

「カカッ、ドーナツの恩もあるのぅ。よし、お主に力を貸そうではないか」
「え?」
「なぁに、ワシは吸血鬼じゃ。ただの人間には負けんわい」

にやぁと彼女は笑った。
いや、それより今彼女は吸血鬼と言った。
やっぱり阿良々木君の出していた吸血鬼の名前って……。



  ・◆・◆・◆・



「ちっ、ささっと目が覚めろよおっさん」

高山のおっさんの倒れた体を見てつまらなくて呟いていた。
既に30分近く目が覚めない。
わけもわからない変な注射をしたのだ。
当たり前ではあるのだが。

「つまらねぇ……」

おっさんが倒れて3本目のタバコに火を付ける。
やはりこのまま利用するだけ利用して足手まといならぶっ殺した方が良かったかもしれねぇな。

「なんでもかんでも上手く行き過ぎたら痛い目を見やすいものなのだからむしろこれぐらいの運で今は待機していた方が良いのかもな」

しかし最高だなここは。
遊ぶだけ遊んで金をくれるとは気前が良すぎだろシャルルの親父。

「ククク、クク……」

可笑しくて笑ってしまうね。
もう笑ったあとなんだけどな。

「クククククク……ん?」

と、そこで俺の目の前に金髪・金眼の幼女が見えた。
作られた様な美しさとはまさにこの様な女の子だろうか。
おそらく日本人ではないな。
参加者が捲かれているキラリと光る銀色の首輪が彼女に似合い過ぎた。

「どうしたんだい嬢ちゃん?」

タバコを地面に落とし、踏みつけて弱い火を消す。
子供と話す時のマナーに近いのかもしれない。

「カカッ、貴様に嬢ちゃん呼ばわりされる覚えはないわい小僧」
「オイオイ、小僧って……。明らかに目上の者に対する言葉遣いがなっていないじゃないか?
それとも俺が体で教えてやろうか?」
「ふん、ワシは500年を生きた吸血鬼じゃぞ。口がなってないのはお前様の方じゃろが!」
「ほぅ、吸血鬼ねぇ」

吸血鬼。
血を吸って生きる不死身の鬼。
でも確かに尖った歯や金髪を見る限りその容姿で吸血鬼と言われたら信じても良い。
男はつまらない世を生きるんだ。
夢が欲しいよな、やっぱりさ。

「その吸血鬼が何用だい?」
「その男を離してやってはくれんかのぉ?」
「何故?このおっさんは吸血鬼と知り合いなのか」
「いや、ワシもそんな小僧は知らん
が、ワシの目の前でその様な事をされると不愉快なのじゃ」

殺意に似た視線。
こんな幼女に怖じ気付くわけではないが確かに人間の出す殺意にしては重い。

「この男は俺の奴隷なのさ嬢ちゃん」
「今その男を逃がせばワシはお前を見逃してやる
……が、ワシは吸血鬼じゃ!
人間を食べてしまう事なんてあり得るぞ?」
「けっ!」

俺が高山のおっさんから離れる。
それを吸血鬼がおっさんの元まで歩き、担ぐ。
軽々、とまでは行かなくても普通の人間の様な力はあるらしい。

「…………」

あんまり女の子で将来有望なガキだか吸血鬼は知らんが殺したくはないのだがうざったらしいな。

「死ねっ!」

パン、パン。
吸血鬼に向かってブラックホールを二発発砲する。
目で追えないくらい素早い弾丸は嬢ちゃんの背中を狙う。











「そんなオモチャでワシは殺せんよ」
「な……?滅茶苦茶だなあの吸血鬼……」

吸血鬼は高山のおっさんの体を担いだまま5メートルぐらい高く跳んだ。
地面が抉られている。
純粋な力だなこれは。

「ちっ、しゃーねー。高山のおっさんはくれてやるよ
人間として活動出来るかどうかは保証出来ないけどな
だが、そいつは俺と出会う前は普通に俺を殺そうとした乗った人間だぜ!
扱いには気をつけな」

優しい俺からの忠告。
奴隷は失ったが手に入れたのは支給品一式、銃、炎の出る指輪、完全に違法な注射器。
大収穫じゃねーか。

「出来れば次は嬢ちゃんとは出会いたくはないもんだよ」
「ならワシはまた絶対貴様の邪魔をしてやるぞ」

吸血鬼は追っては来なかった。
強い上に幼女だから手を出しにくい。
相手が悪すぎるな。
でも吸血鬼なんて興味があるなぁ。

「ククク、世の中は不思議だらけだよ」

未知なる力。
吸血鬼。
次はネッシーとか現れたら笑いもんなんだけどな。



  ・◆・◆・◆・



「ふむぅ、助けてきたぞ小娘」

忍ちゃんが気絶している男の人を担ぎながら一仕事終えた達成感が見える表情で私の目の前に男を寝かせた。
デイパックの中身はやはりあの金髪の男に奪われていたが、空のデイパックのみは残されていた。

とりあえず寝かせておかないとと思い、布団をおじさんにかけてあげる。
そこで忍ちゃんが金髪の人と交わした会話の話をここで話してくれた。
内容はこのおじさんがゲームに乗った人という事であった。

「それでも私は人を見捨てておけないから」

そう答えると忍ちゃんは私を「お人好し」と称した。
忍野さんや阿良々木君に比べれば私なんてお人好しに入るのかな?

「ところで忍ちゃんってもしかして阿良々木君のところの吸血鬼じゃないのかな?」
「ん?阿良々木?あぁ、なんじゃお主はやはり主様のお気に入りの委員長か」

『メガネに戻っていて髪が伸びていて気付かなかったわ』と謎の言葉を私に残した。
コンタクトレンズにしたつもりも髪を切った事もないのだけれど……。
でも1つ驚いた事がある。
私はこれからメガネをはずし、コンタクトにして髪をばっさりと切る予定をしていた。
しかも私の知る忍ちゃんはもっと無口なはず。
未来、もしくはパラレルワールドの忍ちゃんなのかな?
確かにそういった事は絶対に起こらないわけがないし、そういった怪異も存在するかもしれない。
そういえばシャルル・ジ・ブリタニアさんとルルーシュさんがそういった世界観のズレの言い合いをしていたのを思い出す。

そう考えると恐ろしくなるのは知り合い達だ。
阿良々木君達が私を知っている時系列の人達かということだ。
未来の阿良々木君だとしたらどんな阿良々木君なのだろう?
それは良いとして、もし春休み以前の阿良々木君だとしたら私の事は優等生だと皮肉に語る男の子となる。
……もし、友達だと思われていなかったとしたら……。



ソレハ、
  コ ワ イ ナ 。


「猫が再発する気配がするな……」

忍ちゃんが小さく聞こえない声で何かを呟いた。
口の動きから見ると『猫』という単語が出た気がした。



【F-1 橋付近民家内/早朝】

【羽川翼@物語シリーズ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、けろぴー@Kanon、ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:殺し合いには乗らない。
2:おじさんが起きるのを待つ。
3:阿良々木君に会いたいけど……。
【備考】
※「つばさキャット」終了後からの参戦です。
※ストレスが溜まれば、ブラック羽川が出現する可能性もあります。
※帽子の男(手塚)を危険視しています。
※知り合い達の参戦時期に不安を抱いています


【忍野忍@物語シリーズ】
【装備:スペツナヅナイフ@現実】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:やや血液不足】
【思考・行動】
1:殺し合いなど詰まらん。
2:暦を探して血を吸わせて貰う。
3:儂を襲おうと言うのならば、覚悟をしておけ。
4:小娘と行動する。
【備考】
※少なくとも「かれんビー」終了後からの参戦です。(明確な参戦時期は後の書き手さんに任せます)
※暦から吸血すれば、外見、能力などが戻る可能性があります。制限は後の書き手さんにお任せします。


【高山浩太@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:なし】
【所持品:空のデイパック】
【状態:気絶】
【思考・行動】
1:???
【備考】
※本編開始前からの参戦です。
※リフレインを摂取しました。今後は過剰にリフレインを求めるようになるかも知れません。
 あるいは、精神力により中毒を克服するかも知れません。詳細は後の書き手さんにお任せします。






「なかなか殺しがいのありそうな嬢ちゃんじゃないか!」

俺はわくわくした衝動を笑いながら橋から離れた。
さて、高山さんの変わりの奴隷を見つけないとなぁ。

「体力の有り余っていそうな学生なんか欲しいなぁ」

見つけた参加者の男の背中に蹴りつける。
コソコソと俺を遠まわしに見つけてからすぐに逃げて隠れていた男だ。
頭はバカそうだが、体力だけはありそうな普通の少年だ。

「ち、ちくしょー!やっぱりお前はゲームに乗った奴だったのかよ!?」
「遠くから見ただけのおじさんをゲームに乗った奴なんて言わないでくれよ少年~。
俺はただバトルロワイアルに巻き込まれた普通の会社員さ」

さて、この少年をどうしようかね?



【F-1 川付近/早朝】

【手塚義光@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:舞の剣@Kanon、ブラックホール12/15@ペルソナ4】
【所持品:支給品一式×2、タバコ10箱@現実、ライター3本@現実、リフレイン×9@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブラックホールの弾丸30/30、嵐のボンゴレリング@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【状態:健康、気分高揚】
【思考・行動】
1:優勝する為、全参加者を殺害する。
2:この少年を?
3:吸血鬼の嬢ちゃんに興味。
【備考】
※本編開始前からの参戦です。


【日向秀樹@Angel Beats!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 チーズ君のぬいぐるみ@コードギアス 反逆のルルーシュ 新聞紙ブレード@リトルバスターズ!】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:クソッ!?どうする俺!?
2:バトルロワイアルって本当だったのかよ!?
【備考】
※奏と和解後からの参戦。
※セイバーを危険視。



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最終更新:2012年11月25日 11:49