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第一回目の放送が鳴り響いてから数分後。
白い怪物は、静かに会場を闊歩していた。
純白の髪の毛と素肌の中でよく目立つ真っ赤な相貌は、嫌でも相手に恐怖を叩きつけることだろう。
しかし、何と因果なことだろうか―――この事件が無ければ、彼、一方通行(アクセラレータ)は、とある最終信号の少女と出会い不格好ながらも光の道へと歩み始めていたというのに。
絶対能力進化実験を止めるヒーローは既に没し、この死神を止める者は誰も居なくなった。
歴史が書き換わった。


「――――つゥかよォ」


一方通行は心の底から、もう既にこの『実験』に退屈と不満を覚え始めていた。
あれだけの時間があって、脱落した人間はたった十人弱ときた―――舐めているのか、と彼は思う。
学園都市最強の超能力者が本気を出せばこのゲームはたった数分で崩壊するというのに、他の実験動物はどこまで甘いのか。
まあ退屈な実験など慣れっこでもあった。一万人もの『妹達』を虐殺する実験に参加していた頃から感じていた。
最強の力があっても、退屈というものには勝てない。
しかもここまでの時間があって一方通行が出会えた他の実験動物はたった一人だけ。
何らかの能力者ではあったようだが、最強たる一方通行からすれば弱者もいいところの。
無敵に到達する為の実験を拒む理由はなかったが、それにしてももう少し手ごたえのあるやり方はないのか。
かつ、かつ―――と。
わざとらしく靴の音を響かせながら歩く怪物は、不満を抱いていた。

大体、この実験とはどんなものなのか。
学園都市が企画した『表沙汰に出来ない実験』であるとは理解していた一方通行だが、そんな彼でさえも今回の実験は理解不能な点が多い。

まず、何故こんなまどろっこしい手段を取るのか。
わざわざバトルロワイアルの建前を用意してまで、隠し通すことなのか。
これが実験である以上、最後に勝ち抜くのは一方通行だ―――ならば、焚き付ける必要はない。
『一方通行を殺せ』と指示して九十九の敵対分子を用意すればいい。
超能力者の頭脳で思考する少年は、訝しげに眉を顰めた。

参加者名簿にある知り合いの名は一つ、『第三位の超能力者』御坂美琴。
実際の所これも不可解なことである。
科学の街、異能の街である学園都市とはいえ、超能力者クラスの化物はそうそう生まれてこない。
現に超能力者とされる者は一方通行含めたったの七人―――二百三十万人の学生の中で、たったそれだけの人材。
もはや人間の枠を超えた、化物と形容するに相応しい力を振るうことの出来る、兵器にも相当するような貴重な存在。
まして第三位ともなれば、とんでもない逸材。


(オカシイよなァ、ああ、最高にオカシイぜェ、クソッタレ)


たった一人の『絶対』を作り出す為とはいえ、貴重な超能力者、それも汎用性の高い『発電能力者』を切り捨てるような真似をするか?
あの『統括理事長』が、そんな愚行を犯すとは思えなかった。
量産能力者計画に絶対能力進化実験と、傍から見れば頭のおかしいとしか思えない理論を考えるあいつらはそこまでの馬鹿ではない。
そしてもう一つの突っかかりは、主催者―――『シャルル・ジ・ブリタニア』の存在だ。

そんな人物は、聞いたことがない。
彼はまだ堕ちきっていないとて、学園都市の裏の話にも少しは精通している。
第三位を使うような実験ともなれば、一般の科学者クラスを使うとは思えない。
統括理事会のメンバークラスでなければ役不足なくらいなのだが―――シャルル・ジ・ブリタニアなんて統括理事は存在しないのだ。
郷田真弓、朝倉涼子の二名についても、聞いたことがない。
高位の、能力の便利さを買われたと見るが妥当だろうが、それでも何か腑に落ちなかった。


「ッ――――あァ、苛付くねェ」


怒りこそ現さなかったが、一方通行は内心かなりの苛立ちを覚えている。
上の連中の都合で勝手な実験に参加させられ、それでいてどうも何やら裏がありそうときたではないか。
そんな都合のいい話があるか、と一方通行は思う。

少年は、無敵になりたかった。
誰も傷付けぬことを望み、誰も向かってこない―――そんな理想を実現したかった。
だからわざわざ狂気の実験に身を落とし、言われるがままに同じ顔をした少女たちを虐殺した。
奴らは人形だと言った。
単価十数万、ボタン一つで製造可能な紛い物の少女。
実験過程で彼女らの『お姉様(オリジナル)』の第三位とも戦った。

彼女は激昂していた。
必殺の雷撃も、十八番の超電磁砲も通らなかったが。


幼い自分を取り囲む駆動鎧と兵器の数々。

この力を不用意に使えば、いつか世界を滅ぼしてしまうかもしれない。
だけど『無敵』へと進化すれば何かが変わるはずだった。
圧倒的な力が争いを生むのなら、戦う気も起きなくなるほど強くなればいい。

そうすればもう誰も傷つけない。

最初はそんな望みから始まったのだと、一方通行は潜在的ながら記憶している。
無敵になればいい。
最強の意識の片隅の記憶が彼に苛立ちをもたらしていた。



――――その時、音を最強の鼓膜が捉えた。


何かが周囲を破壊するような音。
不良集団が暴れているかのようなそれ。
巻き起こす本人の苛立ちが窺えるような、暴力的な破壊音。
その音に一方通行は目を細め、そして直後に口を三日月のような笑顔の形に歪めてみせた。


白い怪物は、実験遂行の為に、今度こそ逃さずに始末すると決めて音の中心に向かう。
自分の苛立ちを発散させてくれる相手には―――案外、力の無い三下が丁度良いのかもなァ、と考えて。
純白の死神が、暴れる少年の元に近付いていく。





「はぁ、はぁ、っ、ふざけんなよ」


長沢勇治は、再び破壊行動に戻っていた。
日本刀を振り回して、またも町中の物を壊して、壊して、壊して、壊す。
そんな使い方をしていればすぐに駄目になってしまうことくらいは流石の彼でも察し、ボロボロのバットで物を破壊し、日本刀を誰に威嚇するでもなく振り回す、なかなか器用な真似をしている。

告げられた死人の数は十数人。
しかし長沢が殺せた人数は零―――役立たずの、殺人者もどき。
その事実を認めたくなくて、許せなくて、長沢勇治はやり場のない怒りを再び発散する。
先程とある少年に暴力を振るったばかりだというのに、彼の中の衝動はどんどん蓄積していき、そろそろ限界を超えようとしていた。


「次だ……次に会った奴、北川の兄ちゃんと同じなんかじゃ済ませない……ぶっ殺してやる!!」


自分の居場所を知らしめてしまう危険性にも気付かぬまま、長沢は叫び、壊す。
むしろ参加者がやって来てくれれば、その分彼の衝動が発散される時が近付くとさえ考えていた。
言ってしまえば、危機感が足りなかった。
このバトルロワイアルを、彼もまた舐めていたのだろう。
自分でもすべてを殺せると、楽観視していた。
一番してはいけない、慢心。
自分の常識の中でしか物事を考えず、そう、まるでこれが『ゲーム』と同じであるかのように、彼は驕っていた。
そんな彼の為には、良かったのかもしれない。


かつ、かつ、かつ、かつ。


足音が響く。
破壊に勤しむ長沢は気付かない。
遠くからでも分かる、触れれば折れてしまいそうな華奢なシルエット。
男性か女性かも一目では分からない中性的な容姿をしているが、その相貌に宿るぎらぎらとした光は、優しさというものが無い。


「あは」


押し殺した笑い声が漏れる。
その音を聞いてやっと長沢は一方通行の接近に気付き、彼もまた野獣のような笑みを浮かべるのだった。


「へへっ、運が悪いね。今の俺は機嫌が悪いんだ」
「おォ、そォか。じゃあ存分に発散してみろ」
「―――ッ」


完全に自分を舐めた、馬鹿にするようなその態度―――長沢勇治を激昂させるには十分だった。
訳のわからない絶叫をしながら、日本刀を掲げて白い少年に突撃していく長沢。
走りながら彼は考える。
あの華奢な体をどうやって痛めつけようか。
直ぐには殺すものか。痛めつけて、泣き叫ぶ面を眺めて愉しんで、じっくりと嬲り殺しにしてやる。
舌なめずりさえして、長沢は日本刀を、微動だにしない一方通行の右肩に向けて振り下ろし―――




「は?」
「あァれェ~? どォしたのかなァ」


日本刀が、綺麗なまでに中心で砕け散っていた。
これには長沢も、怒りも何もかもを忘れてしまう。
何が起きた。
日本刀を振り下ろしたのに、どうしてこんなに簡単に、壊れた?


「は………っ、死ね!!」
「無駄なンだねェ、それがよォ」


折れた日本刀を槍のように突き出すが、それもまた一方通行の華奢な身体に触れた瞬間に砕け散る。
バットに持ち替え、なりふり構わずその頭に向けて薙ぎ払っても、砕けるのはバットの方だ。
何が起きているのか分からないといった様子の長沢の首根っこを掴むと、一方通行はその肉体を近くの建物に向かって投げつける。
勿論ベクトル変換込みの、しかし『人体を死には至らしめない』レベルの威力で。
その貧弱な身体からは想像も出来ない威力の投げ。
長沢の体はあっさりと建物の外壁に衝突し、鈍い激痛が走る。


「………おいおい、無能力者かよ。ったく、ますます意味が分かンなくなってきたねェ」


はァ、と溜め息を吐いて空を見上げる一方通行―――今なら、隙がある。
相手に気付かれぬように攻撃すれば、あの不可解な能力は働かない筈―――そう踏んで、長沢が持ったのは注射器。
H173―――雛見沢症候群を引き起こす悪魔の薬品を、あのムカつく野郎にぶち込んでやる。
クロスボウでも良かったが、矢を装填している時間があれば対策されてしまうかもしれない。
そんな暇を与えず、驚愕しているところを叩く。
長沢の暗い瞳が、一方通行を見据え。
一方通行が視線を長沢に戻す間も与えずに、注射器片手に駆け出した。

もはや振り下ろすように、乱暴に注射器をその柔肌に突き刺そうとして――少年は絶望を知る。
注射器は、その肉体に触れる間もなく破砕した。
これで、長沢勇治の命運は今度こそ尽きる。


「なっ」
「おォ悪ィ悪ィ、言ってなかったっけな」


悪魔の腕が、長沢の首に触れる。
それが、死刑宣告だった。


「――――なぁンでか能力が抑えられてンだけどな、こちとら一万回はこンなこと繰り返してンだよ―――舐めんなよ、チンピラ」


びちゃっ。
大量の血液が長沢勇治の肉体から吹き出し、断末魔の悲鳴をあげる間も与えずにそのちっぽけな生命に終止符を打つ。
血流操作―――全身の血流を逆流させ、相手を殺す術。
只触れただけで、生命は散る。
口元に付着した返り血を拭い、一方通行は笑う。

「っく、あはははァ」

最強の超能力者の前に散った、衝動に身を任せた少年。
その屍には見向きもせずに、彼は笑う。嗤う。


「あぎゃははははははははははははははははァ!!!!」



【長沢勇治@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-  死亡】

【G-8/街/朝】


【一方通行@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康、返り血(中)】
【思考・行動】
1:不本意だがこの実験に付き合う
2:何を隠してやがる……舐めやがって
【備考】
※このバトルロワイアルを絶対能力進化実験だと思い込んでおります。
※能力は制限されています。反射はデフォルトは出来ません。
※反射の威力に関しては普通通りですが、建物を投げつける、気流操作で会場全体に攻撃する、などは出来ません
※この『実験』の裏には何かあると気付きました



輝きのトモキ 時系列 アケルソラヘ
光と絶望の境目 投下順 主催者のバカ野郎共に大いに抵抗して脱出するための素晴らしき仲間達
とある最強の一方通行 一方通行 [[]]
中二病でも殺したい! 長沢勇次 DEAD END
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