「こんなにも全力で戦える者がいるなんて私は嬉しいぞイカロス後輩!別に貴女が後輩かどうかはわからないがな!」
「……別に私は嬉しくなんかない。ただマスターの命令だから殺すだけ」

私の最初の同行者で仲間のめだかさんは原初の海という扇子の様な物を持ちながら、イカロスという参加者の持つ大きな刀相手に互角以上の力を見せていた。
おそらくこれが拮抗しているという状態なのであるのだろう。
どちらともあまり武器よりも素手で戦っているようなものだが……。

私、桂ヒナギクは本当であるなら仲間のめだかさん相手に助太刀したいのはやまやまだ。
私が乱入すれば少しは戦局を変えられるであろうか、足手まといになるかはわからない。
しかし私の横には気絶している椎名さんという参加者がいるので戦いの巻き添えや北条かりんさんや他の殺し合いに乗った人が現れた場合恰好の獲物になるだろう。
それだけはあってはならない。
それにあの御剣総一という少年は襲われているというのに戦ってはいなかった。
むしろ『護る戦い』という表現の方が合っている気がした。
対峙した時も催眠術にかかった感じの目をしていた。
……別に催眠術にかかった人の目など知らないが。
ただ大したダメージも与えてはいないのに、バッテリー切れのロボットの様に眠る様に気絶したのはなんだか妙なことではある。

「かりんさんならイカロスさんを止められると思うのだけど……」

かりんさんをマスターと慕い奉仕をして総一さんを刺したのであるから考えるのは容易だ。
ただそのかりんさんは行方不明だ。

「ハヤテ君……。あなたなら私の立場になったらどうするのかしら」

不幸体質なハヤテ君だ。
もしかしたら私以上の危険をこのバトルロワイアルで体験したかもしれない。
それでも私は聞きたい。

『ハヤテ君の声が聴きたい!』

だが、聞こえてきたのは違う声。
みんなの人生を狂わせた声。
私の人生を。
めだかさんの人生を。
椎名さんの人生を。
御剣さんの人生を。
かりんさんの人生を。
イカロスさんの人生を。
ナギの人生を。
マリアさんの人生を。
瀬川さんの人生を。
ハヤテ君の人生を。
他の参加者達の人生を。

郷田真弓の声の放送だ。
6時間毎に郷田真弓や朝倉涼子、シャルル・ジ・ブリタニアの声を聞くことになるのは苦痛だ。



◇◇◇◇◇




聞いた放送の内容を整理してみよう。
参加者の名簿とノートと地図、筆記用具を使ってまとめた放送の内容をチェックだ。
8時からの禁止エリアは【B-7】。
10時からの禁止エリアは【E-1】。
確かこの位置は【E-4】のはずだ。
8時からの禁止エリアはあまり私達には影響は少なそうだ。
だが10時からの禁止エリアは若干影響があるかもしれない。
少し頭に入れておこう。

次に追加されたエクストラゲームの存在は厄介ではないだろうか。
確かに参加者同士のデイパックの中身の差は激しいだろう。
めだかさんの支給された参加者全員の全身写真なんかは大当たりだろう。
これにより私達は椎名、御剣総一、北条かりん、イカロスの名前を知れたのであるから。
そして武器の存在。
私には山本のバット、めだかさんには原初の海、イカロスさんには刀、かりんさんには拳銃、椎名さんには天王州さんの家で見たサーベルをそれぞれ持っていた。
だが御剣さんの支給品はろくなものがなかった。
羽根の付いたランドセルにこけしだ。
武器なんてものが彼にはなかったのであろう。
それがゲームに乗った参加者であるなら喜ばしいことだがそんな好都合はそうそうないであろう。
だが武器ありの状態で更に強い武器がマーダーの手に渡るなら最悪だ。
そうなる前にも私が早く手に入れて悪用されない様にしなければ。

そして犠牲者は14名。
1/10以上の数の者達が亡くなった。
マリアさんの死は一緒に住んでいるハヤテ君とナギが心配だ。
特にナギは弱いからマリアさんの死に泣いているかもしれないわね。
ナギの悲しみを癒してくれる仲間を見つけられたら良いのだけれど。

それにしても殺し合いを止めると誓ったのにまだ何も成し遂げられない自分に嫌気がする。
所詮は口だけ。
既に目の前で御剣さんは殺され、放送を聞かずに未だ戦っているめだかさんの手助けも出来ないなんて。

自分の無力さを自虐しながら拳を作り木に1回拳をぶつけた。
とても痛い。
しかしこんな痛みは亡くなった14人に比べたら……。


「ぅ……。なんだというのだ……」

と近くから人が動く気配がした。
弱々しくよろよろとした動き。
頭痛がするのか頭を抑える手。
現状がわからないのか少し首を回して辺りを見渡す。
椎名さんの目覚めであった。
その目は狂った様な目ではなく、年相応な少女の目であった。



◇◇◇◇◇



どうして、この世界には救いはないの?

なにも考えられない。
人の死とはこんなにも気持ちが悪かったものだったなんて……。
私に救いを渡してくれたあの男の人を直接じゃないにしても『皆殺し』なんてことをイカロスに軽はずみに命令した私が馬鹿だったのだ。
人に絶望した自分をこんなにも信じさせたのに……。


『またあの人が私の事を助けてくれるって元気な姿で言ってくれたらいいのに……』


虫のいい話だ。
誰もこんな私を助けてなんかくれない。
忠誠してくれたイカロスだって私は見捨ててしまったのだから。


もう私は人殺しの道しか歩めない。
もう私は汚れてしまった。
服にべたりと浸食するそれはとても朱くて、とても鉄のにおいがして、
とても重かった。
これが人1人分の命の重さと尊さなのだろう。

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

今にも倒れてしまいそうな程、この命の大きさはとても大きく私独りで抱え込むには多分無理なのではないだろうか?

しかも既に14人の犠牲者。
放送からはどのくらい経ったのか既に覚えていないがそれでも1人ぐらいの犠牲者は出ているのではないか?

郷田真弓が先ほど参加者に問ったあの言葉を思い出す。

『脱出を目指しているあなたに問います。
あなたは大事な人を失ってでもその理想を掲げられますか? 』

私にはかれんの居ない世界はありえない。
そんな事になるなら私が死んで変わりになっても良い。


『ゲームに乗っているあなたに問います。
この結果にあなたは満足出来ますか? 』

けれども私にはもうこのゲームは耐えられない。
ごめんねかれん。
お姉ちゃんはもう……。

私は渡すことすら出来なかったあの武器を取り出す。

S&W M37エアーウェイト。
最初は想像していた拳銃の重さよりも軽いと思っていたのだがとんでもない。
狂っていたのは私。

最初に私自らが殺す相手は、
誰より私を知っていて、
誰より私を知らなかった、
――北条かりん。



◇◇◇◇◇





「椎名さん、あなたはどうして御剣さんを襲っていたのですか?」

椎名さんはぼーっとした態度で私の話を聞いているのかどうかよくわからない。
元々あまり話すのが好きというようには見えないのだが。

「…………御剣?」

ぼそっと呟く。
何が起きていたのか一部始終を知っている椎名さんだけが頼りなのだ。

「あの目を見てから……、それから思い出せないとは」

彼女は私にではなく自分で自分に言い聞かせているらしい。
あの目とは気になるがあまり非現実なことが関わっているとは考えたくはないものだ。

「浅はかなり……」

悔しそうに呟く椎名さん。
彼女は今無防備な私を襲おうとしたり、殺気は全く見せない。
彼女はゲームには乗ってはいないだろう。

ガンガン。
それから10メートル先ぐらいで行われているめだかさんとイカロスさんの決闘は未だ熱い叫び声とよく響く殴り合いは終わりそうにない。
その2人からまた椎名さんへ向き直った。

「椎名さん、あなたはゲームに乗ってはいないと思うのでこのサーベルを返します」

丁寧に両手に持ち、怪我をさせないように刃を向けずにそれを渡した。

「ん、あぁ……」

見知らぬ私からそんなものを返されたのだから少し警戒していた。
少しずつ、少しずつと手を伸ばしそれから素早くこのサーベルを持っていた。
なんだこの人4の動き?
全く私には取られたのがわからなかった。

「ここで何があった?」

それからは鋭い顔と目つきになり私に詰め寄る。
私の勘がそこで告げた。
さっきは操られたのかはわからないが、意志のある今のこの素でオリジナルの彼女が一番遥かに強いと。
放送前に戦った時にこの椎名さんが相手だったら瞬殺だったかもしれない。
この彼女がゲームに乗っていない人で心底安心した。

「実は椎名さんが御剣さんを襲っていて……」
「私が御剣に……?」

私は御剣とは敵対してはいないぞ?
そんな事を思っている気がする。

「結局私とめだかさんが助けたんだけど、あのイカロスさんに御剣さんは殺されたわ」

視線の先の羽根が生えている方がイカロスさんだと伝えた。


「御剣の死体はどこだ?」
「え?」

よくわからない。
だが次の言葉で真意が理解出来た。

「仲間に挨拶ぐらいはな」

そうかと納得してその御剣さんの遺体が置いてあるところへ移動した。
だがそこには想像のしていなかった光景が目に広がった。

「どうして……?」

あれ?
惨劇のあと。
惨劇の傷痕は嫌でも残る。

だが足りない。

「御剣総一さんの、遺体がない……」



◇◇◇◇◇



「だから人殺しなんてやめてくれって頼んだだろう北条かりんさん」
「なんで……?」

私の握る拳銃に臆することなくその人は私の腕を掴んで私の自殺を静止させた。
なんでこんなにもこの人は私が求めていること全てを口にしてくれるのだろう。
その懐かしさなのか、悔しさなのか、嬉しさなのか、彼の瞳にはどんな心境が混ざっているのだろうか。

死んだはずなのに、私を助けてくれた。
幽霊ではなく実体で。
貫かれた跡もなく、私のヒーローの様に。

「俺……、御剣総一は絶対に君を救うから。今の君にはわからないとは思うけどさ……。二度と君を孤独にはさせないよ」



【E-4 森/朝】

【イカロス@そらのおとしもの】
【装備:フランベルジェ@とある魔術の禁書目録】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(小)】
【思考・行動】
1:マスターの命令に従う。
2:命令通り参加者の皆殺し。
3:めだかを殺して、マスターと合流。
【備考】
※本編開始前からの参戦。
※桜井智樹ではなく北条かりんがマスターです。
※武器は没収、羽根で飛ぶ事は制限です。
※馬鹿力は制限されていません。


【黒神めだか@めだかボックス】
【装備:原初の海@ペルソナ4】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×1】
【状態:疲労(小)】
【思考・行動】
1:桂二年生と行動。
2:主催者から参加者全員に謝らせる。
3:イカロスを捕える。
【備考】
※オリエンテーション開始直前からの参戦。
※参加者全員の顔と名前を一致させています。
※乱神モードは3時間待って10分、改神モードは制限で1日1回の制限です。


【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
【装備:山本のバット@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式×2、羽根の付いたランドセル@Kanon、こけし@そらのおとしもの、
参加者全員の全身写真@その他、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(小)】
【思考・行動】
0:御剣さんの死体は?
1:めだかさんと行動。
2:このゲームを止める。
【備考】
※アテネ編終了後からの参戦です。
※めだかの知り合いの事を教えてもらいました。
※参加者のある程度の顔と名前を一致しました。
※北条かりん、イカロスを危険視しています。


【椎名@Angel Beats!】
【装備:サーベル@ハヤテのごとく!】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(大)】
【思考・行動】
0:御剣の死体は?
1:殺し合いはしない。
2:ゆりと合流する。
【備考】
※ユイ消滅前からの参戦。
※ギアスは解けたようです。


【北条かりん@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:S&W M37エアーウェイト3/5@現実】
【所持品:支給品一式、S&W M37の弾丸45/45@現実、ランダム支給品×2】
【状態:健康、精神的ショック】
【思考・行動】
0:どうして?
1:かれんの元に帰る
2:この御剣さんは本物?
3:イカロスと参加者を皆殺し?
【備考】
※本編開始前からの参戦。
※黒神めだかの名前と容姿を記憶しました。


【御剣総一@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:なし?】
【所持品:なし?】
【状態:???】
【思考・行動】
1:???
【備考】
※何者なのか、本人なのかは不明です。


撫子の唄 時系列 シャングリラ
朝霧の幻影殺人鬼 投下順 アケルソラヘ
運命は、英語で言うとデスティニー 北条かりん 奇跡――それはつくられた偶然――
運命は、英語で言うとデスティニー イカロス 奇跡――それはつくられた偶然――
運命は、英語で言うとデスティニー 黒神めだか 奇跡――それはつくられた偶然――
運命は、英語で言うとデスティニー 桂ヒナギク [[]]
運命は、英語で言うとデスティニー 椎名 [[]]
START? 御剣総一? 奇跡――それはつくられた偶然――

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最終更新:2012年08月15日 17:44