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あうれおるすからかみじょーに謝らせるんだ。
本当は、私の親友のバカの謙吾からも頭を下げさせたいがそれはあいつが罪の意識を持ってから殺し合いに乗った事を後悔させたうえで謝らせるんだ。

それまで私は生きる。
弱い私だけど理樹のぶんも生きなきゃいけないから。

「鈴、そろそろ覚悟を決めた方が良い」

あうれおるすが辛そうに言う。
はて?なんの事だ?
あうれおるすの話は難しくて理解するのに時間がかかる。
これで本当に18歳なのか?

「時間なんだ」
「時間……?」

私は忘れていた。
本当に時間が過ぎていっている事。
このバトルロワイアルが始まってからはショックの連続だったのだから。

『ご機嫌いかがですか皆さん?』

定時放送。
あうれおるすはペンをと名簿を取り出し必死に死んだ者に印を付ける準備をしている。
私はただ呆然と聞いていた。
いや、多分聞き流していたんだと思う。

目を逸らしたかったんだと思う。

『直枝理樹』

「っ!?」

そして逃避していたと気付かされる。
嫌だ。
これ以上私からリトルバスターズの仲間を奪わないで。

確かに恭介は毎日毎日人に迷惑かけるし
真人は馬鹿で煩いし
謙吾も真面目な振りして馬鹿で頭のネジ飛んでるし
来ヶ谷は私をオモチャにしてくる。

でも、私はそんなみんなが好きなんだ!
好きなんだ、大好きなんだ。

『この結果にあなたは満足出来ますか?』

放送は終わる。
理樹以外のリトルバスターズはみんな生存していた。
そういえばあいつらみんな私や理樹より強い奴だったな。
それでも私は心配なんだ。



―――――



「…………」

14名、上条当麻以外は私の知り合いは居ない。
守りたかったあのシスターの少女も居ない。
今は守る対象は鈴に当てはまる。
この少女は私を成長させているのかもしれない。
歪んだ心を癒やしているのかもしれない。
彼女を見ていると生きたい気持ちがとても湧き上がる。

必然、とは言えないのだが。
不思議な感じだ。

今も彼女は強くなり続けている、1秒毎1秒毎と言っても過言ではないだろう。



そして私は気付く。





「鈴っっっ!?」
「な、なんだっ!?」

鈴の返事も聞こえていない。
無我夢中で私は鈴に駆け寄った。




◇◇◇◇◇




(サーヴァントのライダーが脱落か。サーヴァントがサーヴァントを倒したのならともかく一般人でサーヴァントを倒す者など居るのか?)

サーヴァントのアーチャークラスのエミヤもまた放送を耳にしていた。
先程武器を使って殺した少女の名前は知るはずもなく知る気もない。

アーチャーの目的は1つ。
自分を自らの手で殺す。

迷いも躊躇いもない正義の味方の果て。

(守るはずだったものを俺は壊す側か。ふん、考えるのも馬鹿らしい)

少し良心が疼くが一瞬。
今の彼は竜宮レナに弓を引いたあの目に戻る。
既に閉ざされた道に戻れるはずもないのだから。

(ふん、参加者か)

首輪をした男女が居た。

男は長身のオールバック。
衛宮士郎ではない。目的はここにはない。
女は身長が低い茶髪気味のポニーテールだ。

(見かける女は茶髪が多いな)

アーチャーはどうでも良い事を考える事をやめる。
目の前の2人は敵だ。

■せ、■せっ、■せ、■せ!
ころせ、ころせっ!コロセコロせコろせ
殺せっ、殺せ殺せ殺せ、殺せっ!殺せ!殺せ、殺せ!
殺せ!
殺せ、殺せ、殺せ殺せっ!
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!

アーチャーの体全体が殺意に包まれる。
敵を排除する為。
自らが剣となり、敵を裁く。

「恨みはないが――」

熟練スパナを投げつけて1人殺す。
上手くいかなくても怪我をして怯んだところをまた熟練スパナを拾って殺す。
熟練スパナを拾えなかったら剣を投影してしまえば良い。

こんなものはアーチャーにとって簡単な事だ。
1人で大勢を救う為に血塗られた自分に残されたのは戦闘の経験のみなのだから。

「――消えろっ!」

予定通り、計算と同じ動き、同じ筋肉の動き。
熟練スパナはアーチャーの戦士から離れ数メートル回転しながら名も知らぬ少女――棗鈴の脳みそを抉る様に吸い込まれていく。
あまりの吸い込まれていくキレイな動きは磁石で吸い付けられていくみたいに……。
これはドラマではない。
これは現実である。

つまりこの熟練スパナが頭に命中した瞬間人は簡単に死ぬのだ。

ただの無機質な死体へと成り果てる。

(今まで俺が見てきた光景となんら変わらない)

鮮血に染まるだけだ。




◇◇◇◇◇




「鈴っっっ!?」
「な、なんだっ!?」

アウレオルスはアーチャーの殺気、襲撃をいち早く気が付いた。
明らかに手慣れた強者の気。
それが戦闘経験のあるアウレオルスが気付く要因になっていた。

アウレオルスは鈴に駆けより2人同時に地面を転がる。
彼はともかく無防備かつか弱い少女は怪我をするかもしれないが、そこのスパナでグサリとやられるよりは100倍マシだろう。

ズサッ。

地面にはスパナが生えている様な光景が広がる。
しかもちょっとやそっとの力では抜けそうにない。
まるでセイバークラスのアーサーペンドラゴンの選定の剣を傍観させる。
断片的にだがセイバーの過去を知るアーチャーは懐かしさを思い出した。

(今のお前なら俺に何を言うんだろうな)

この地にセイバーが召喚されたらしいが、彼女という保証はどこにもない。
だが彼女なら間違いなく自分を非難するだろう。
関係ない人を巻き込むなと。

だがアーチャーは知らない。
その彼女は現在この世全ての悪に取り込まれ自らの手で2人の一般人を殺してしまっている事など。

「ちっ、外したか」

作戦は早速崩れた。
このまま逃げてしまっても構わない。
が、後々自分と衛宮士郎との決闘を邪魔される危険も無きに在らず。
それに……だ。

「粛然、何者だ貴様」

女と一緒に地面に倒れ込んだアウレオルスが顔を上げる。
そこには英雄といっても信じられるくらいの戦士が立っている。
明らかな人間を逸脱した様な存在。
アウレオルスには1人の狂戦士が想い浮かぶ。

自分の錬金術で編み出した武器を自らの手に触れた瞬間に所有権があちらに移ってしまう破綻した能力を持つ、バーサーカー。

見た目など似ていないが本能でアウレオルスは悟る。
あの騎士と同じ存在であると。

しかも、自らが扱う魔術が関わったとんでもない何かだ。

「見られてしまったな」

もはや引き返せない。
顔、姿を見られた以上始末するしか手段がない。
本格的に自分が戦場で決闘する最初のバトルに勃発した。

「ならば青年、この俺『アーチャー』がお前を全力で殺す。そこに転がった女共々な」
「誰が転がってるかー!」

シャーと鈴に怒りの表情が浮かんでいた。

「オイ、あうれおるす」

アウレオルスに対して。

「必然……、って私か!?」
「お前それ口癖なのか?必然とかなんたらって最初に『然』の付く言葉が?変な奴だな」
「いや、鈴その話はまずこの場をどうにかしてからだ」

アーチャーは蚊帳の外に居た。
あまりに呑気な態度とこれから戦闘が始まるのにこの緊張感のなさ。
殺意が加速させていく。

「大体お前」
「…………」
「お前だお前、無視するな」
「私か……?」


というか馴れ馴れ過ぎであった。
男はこちらを睨む様な表情、あちらも殺意やそれに近い視線だが、女はよくわからない表情だ。
そんなところや怖じ気づかない感じはマスターの遠坂凛に似たところがあるし、名前も同じく『リン』という名前らしい。


「ふざけた事言うところしてやるぞ」
「…………」

鈴が戦いの構えるポーズをしてアーチャーに対峙する。
しかしアーチャーにとっては無言になってしまうくらい彼女と自分の力量が離れているという表現すら疑わしいほど圧倒的に自分の方が圧勝している。
離れているどころが次元が違う。

「わ、私だって伊達に真人や謙吾と喧嘩なんかしてい、いないんだからな」

怯え。
意識していないのに鈴の体は震えが始まっていた。
人間としての危険予知。
逃げなくてはいけない本能が今更になって鈴に襲う。

(鈴の言う真人とはわからんが、宮沢謙吾は確かに強いかもしれないが人間としてだ。こんな化け物は比較にならない)

アウレオルスは鈴の一歩前へ出る。
自分は戦闘向けではないがそれでも錬金術師。
背を向けて逃げられない。

「当然、アーチャーとやら。鈴は君には勝てないだろう」
「だからとて君が戦うとでも?2人だから勝てるとでも思ったか」
「いや、……私だけで戦う」
「あうれおるすっ!?」

鈴の大声がアウレオルスのすぐ後ろから響き渡る。
あまりの大きさにすぐ前のアウレオルス、少し離れたアーチャーでさえ耳を塞ぐほどに。
だが、その大声の高さこそ鈴の『想い』であった。

1人が辛いから2つの手を繋ぐ。
これが鈴の兄のリトルバスターズの答えだ。
それが2人でも辛いのに1人でアウレオルスは抱えようとするのだ。

(なぁ、恭介……バカ兄貴、お前テレパシーとか使えないのか?それでアドバイスをくれないか?)

なんて普段は考えない事だ。
基本的に鈴はアドバイスをもらうなら理樹に頼む。
だが頼むべき相手はもう……。
考えるべきではなかった。

今は目の前の状況をどうにかしてからだ。

「鈴、わかってくれ。言いたくはないが足手まといなんだ」
「そうかもしれないけどそれはリトルバスターズの戦いじゃない」
「私はリトルバスターズじゃない」
「私と行動した時点でお前はリトルバスターズだ」
「入ってない」

あーだ、こーだ。
アーチャーと出会う前はあんなに協力し合っていたのに出会った途端から2人は言い争いばっかりになっている。
度々アーチャーの放置プレイである。

「お前らふざけているだろう」

熟練スパナを持つ手が怒りで手が震えていた。
その場面を見た鈴はようやく違和感がある事に気付いた。



―――――



なんだか変だと思っていたんだ。
なんだかおかしいと思っていたんだ。
どうして、って思っていたんだ。

恭介なら最初の最初で気付いていたかもしれないけど。


「お前、どうして私とあうれおるすの口喧嘩が終わるのを律儀に待っているんだ?」


確かにあいつ、名前はあーちゃん?
あーちゃん、あーちゃん?
寮長の顔しか思い出せないぞ。

とりあえずあーちゃん(仮)は怖かった。
怖かった奴を目の前で口喧嘩なんか出来るか?

私なら多分もう逃げるかあうれおるすの後ろに隠れていたかもしれない。

「おい、あーちゃん(仮)!」
「あーちゃん(仮)ではない、アーチャーだ」

あーちゃー?
なんか名前じゃないなそれ。
あーちゃんの方がめっちゃ可愛いのに。
新しいモンペチの話出来るのに。

「お前本当は良い奴だろう?
お前迷っているんじゃないか?
人を殺してまわるのに」
「ち、違う!」

焦り、なのか?
否定、なのか?
わからんが何かあーちゃーの心が乱れた気がした。
恭介の好きなゲーム風で言うなら隙だな。




「お前怖いけどおっかなくない。バカ兄貴みたいに『正義の味方』とか言っちゃうだろ」



―――――



正義の味方……?
正義、正義、正義?

『正義の味方になりたかったんだ』

これは誰の言葉だったか。
さっき会った、あぁ俺の尊敬する爺さんの言葉だ。


そして俺は正義の味方になった。
英雄……そしてサーヴァントとして過去に呼ばれた。

いつから俺は正義の味方になった事を後悔し始めたんだろうか。



――もう忘れてしまったよ。



「俺は……正義の味方なんかじゃない……」




◇◇◇◇◇




「オイ鈴」
「だな」

鈴はアウレオルスの言わんとした事がわかった。
口には出せないが同じ事を考えていた。

(俄然、地雷を踏んでしまったみたいだね)
(だな)

アーチャーの様子が変になった。
それは誰の目から見ても明らかな事であった。
狼狽え、決意、そして……。

「殺すっ!」

殺意。
口を出した瞬間には熟練スパナを振り上げていた。

「っ!?」

アウレオルスに向いた刃は一瞬反応が遅れたがなんとか避けられていた。
鈴ならおそらく運が無ければ命中していただろう。

「あーちゃん!」
「だから違うと言っている」

鈴に向き合う。
目標をアウレオルスから鈴に変えたか。
それともアウレオルスと鈴を同時に相手をするのか。

最低でも2人にとっては命の危険がある。
先程のバーサーカーと現在のアーチャーとの戦闘とは長所と短所がある。
バーサーカーの長所とアーチャーの短所。
それは圧倒的な強さだろう。
バーサーカーは戦闘能力だけならばサーヴァント中最強を誇る。
しかも言語が話せなく、会話が出来ないバーサーカーほどバーサーカークラスとしての能力が高い。
当然あのバーサーカーはランクも高い、真名ランスロットの英雄も高い能力だ。

アーチャーの長所、バーサーカーの短所。
それは敵に対しての執着心だろう。
バーサーカーもとある人物に対しては大きな執着心がある。
が、それ以外の敵にはほとんど暴れる様な戦闘しか行わない。
現にバーサーカーは鈴とアウレオルス以外にも涼宮ハルヒと黒崎一護とも戦闘を行ったが簡単に逃げられた始末だ。
が、アーチャーは違う。
敵を弓で狙い竜宮レナを、実際には庇った園崎魅音を一撃で仕留めた。
最低限の力でアーチャーは敵を殺せるのだ。
理性のあるアーチャーならば敵など簡単に逃がすはずもない。



「待て、君の相手は私がする……。鈴には手を出すな」
「……虫唾が走る」

昔の衛宮士郎ならば同じ事を言うだろう。
女の子には戦わせない。
そんな事を言ってセイバーに戦わせる事すら賛成しなかった自分だ。

その光景と今の光景が重なる。

(何故こんなにこいつらは俺を揺らぎさせる……?)

衛宮切嗣、棗鈴。
アーチャーの心がゲーム開始時から変化してきているがそれにはまだ気付かない。

「わかった、ならば彼女を逃がせ」

棗鈴が居なくなれば揺れなくなる。
彼女には早く消えて欲しかった。

「さぁ、鈴はここから早く逃げろ!君は足が速いんだから遠くへ、見えなくなるまで消えるんだ」
「だからっ、」
「私はリトルバスターズじゃない」

「ぐっ」と鈴が口を濁す。
そこでアウレオルスが続けた。

「私は守るべき者も帰りを待つ者も居ない」

インデックスの顔が思い出され消えた。


「なに、私は死ぬつもりはない。鈴また会おう」
「お前…………死亡フラグ建てんなバカ!」

鈴が思いっきりアウレオルスに蹴り上げた。

「ははは、指摘されたから死亡フラグなんて吹き飛んだよ。それにそんな元気なら大丈夫だ」
「そういう発言が死亡フラグなんだ」

逆に鈴は逃げなくなってしまった。

「では鈴に1つお願いしよう」



―――――



「では鈴に1つお願いしよう」

私は鈴に対して離れさせれば良い事に気付いた。
騙す事になるかもしれないが。
それでも鈴をここで死なせるわけにはいかない。
年齢はさほど変わらないが、自分は今まで悪い事をしてきたし、死と隣合わせの生活であった。

だからここで■んでしまっても。



「君は助けを呼んでくれないか?もちろん殺し合いに乗っていない者をチョイスするんだ」
「助けを……呼ぶ?」

鈴の体がピクリと動く。
おそらくその考えがなかったのだろう。

「1人は辛いから2つの手を繋いだ
2人は寂しいから輪になって手を繋いだ
それがリトルバスターズだ!」

だから私はリトルバスターズではない。

「わかったあうれおるす、そのミッション必ず成功してみせる」

鈴は簡単に私から離れた。
単純過ぎて将来が心配だが、その単純さが幸いした。

「絶対、絶対、ぜーったい死ぬなよあうれおるす!」

鈴が足を早く進め――走り出した。

「ミッションスタートだ!」




◇◇◇◇◇




「すまないね、待たせてばっかりで」
「別に待ってはいないさ」

鈴さえ離れてくれればアーチャー的にはそれで良かった。
これで全力で戦える。

「とにかく私は全力で君を倒そう。本当は死ぬ気だったがまだ生きなくてはまた鈴に蹴られそうだ」
「どうにもならない差を見せてやろう」

熟練スパナを構えてアーチャーは微笑む。
だが、アーチャーはまだアウレオルスの切り札を見せていない。

「――そのスパナよ、砕けろ」
「なんだお前は?ついに頭でもおかしくっ!?」

そこでアーチャーの右手から熟練スパナが砕け散ってしまい握っていた手はグーからパーに変わる形に変わっていた。

「なん、だと……?」
  アルス=マギナ
「『黄金練金』、私をただの一般人と思ったな」

アウレオルス=イザード。
元ローマ清教所属の錬金術師。
魔法名Honos628。
我が名誉は世界のために。

「10の暗器銃を両手に連続回転射出!」

口に出して右手に5本、左手に5本の計10本の暗器銃が出現する。
そしてアーチャーの体を切り刻み、血を奪おうと10本の剣が襲う。
不規則な回転。
それがまた避けられない事に拍車をかけている。

丸腰。
アーチャーがエミヤでなければサーヴァントとて大ダメージが与えられただろう。
しかしバーサーカーといいアーチャーといいアウレオルスは運が悪かった。



「武器を投影出来るのがお前だけだと思ったか?」

アーチャーの腕に握られているのは白と黒。
干将・莫耶。
アーチャーと衛宮士郎の愛用の剣。
その2つの短剣で襲いかかる10の剣をはたき落とされた。
アーチャー、弓と剣を操る戦士である。

「なんだと」

黄金練金。
普段なら無意識にでも発動出来るのだが制限がかかっていた。
5回使用後に30分のインターバルの発生していた。
先程宮沢謙吾の襲撃の際。
銃を避けさせる為に鈴を伏せさせた。
謙吾の動きを止める為に謙吾を倒れ伏せた。
そして今。
アーチャーの武器熟練スパナを砕いた。
暗器銃を造りだして射出した。
残り1回。

残り1回の黄金練金でどうにかアーチャーを倒さなくてはならない。
それは可能か。



「無理かな、鈴」




◇◇◇◇◇




「……………………」
「……………………」
「…………クフフ、沢田綱吉が逝きましたか」
「ムクロ殿」

放送が終わってからの暫くの無言から六道骸の第一声であった。
真アサシンはその骸に遠慮して声をかけるのを遠慮してしまっていた。

「ハサン、現在僕はどんな顔をしていますか?」

骸には感情がわからなかった。

邪魔な沢田綱吉の死。
彼に負けたせいで自分は復讐者に捕まってしまったのだ。
喜べないわけがない。

だが沢田綱吉が死んだら自分の野望、沢田綱吉の体を乗っ取る事は出来ない。
それに奇跡の様な沢田綱吉の成長をもう見る事はないのだ。

もう、伝説となったボンゴレⅩ世。
ボンゴレはどうなるか、そんなもの霧の守護者の自分であるが興味はない。

(僕はどこかで期待をしていたみたいです。沢田綱吉が死ぬ気になってシャルル・ジ・ブリタニアを倒してゲーム自体を壊してしまい英雄となる事を……)

「ムクロ殿は、」

骸は気付く。
真アサシンが自らの問いに答えようとしている事を。
表情のわからない、いや表情のない仮面が骸を観察する様に。

「わからない表情をしている」
「わからない……ですか」
「実際わからないのであろうムクロ殿」

真アサシンの言っていた事が的を射ていて納得する。

どうやら自分は沢田綱吉が嫌いではなかったらしい。

「さて、協力してくれる相手探しは振り出しからみたいです」

骸の知り合いは残り2人。
雲雀恭弥と古里炎真。
雲雀恭弥は強い実力があるが一匹狼で我が道を歩む者。
しかも自分は彼に狙われる側。
協力は難しいだろう。

古里炎真は沢田綱吉に似たダメダメなシモンファミリーリーダーだ。
いくら沢田綱吉と和解したからといって信じられるかと言われたら難しい。

つまり骸の仲間探しは真アサシン同様名簿に淡々とだけ並べられた参加者から選ばなければならない。

「ハサン、少し整理しましょう」
「うむ」

骸は現在出会ったのは2人。
真アサシンと衛宮切嗣。
だが衛宮切嗣はゲームに乗った参加者、協力は不可能。

真アサシンが現在出会ったのは3人。
六道骸、ライダー、北川潤。
だがライダーは殺した相手で北川潤も襲った相手。これも協力なんか無理だろう。
しかもサーヴァントはセイバー、ランサー、アーチャー、バーサーカー、キャスター、ライダー、アサシン全員が敵同士。
骸と争った衛宮切嗣の息子、衛宮士郎も真アサシンと敵対関係だ。

仲間候補は0に対し、敵対候補はうじゃうじゃ居る。
正直最悪な状況に近い。

「お互い悪さはあまり出来ませんな」
「クフフ、これは仕方ありませんよ」

しかしこのゲームを終わらせる事を考える者、殺し合いに乗らない者は半分以上は居るだろう。
その者達に協力を持ちかけるとおそらくは仲間になれるだろう。

それにはやはり参加者との邂逅しなくてはならない。

「しかしこの島は広い。100人が閉じ込められるのだから当然ですが……」
「うむ、こんなに地図は小さいのだがな」

移動手段は徒歩しかない。
島1周でどのくらいかかるか。
こればかりはわからないし、歩く体力に襲われた際逃げる体力に戦う体力。
体力がどれだけ必要か図り知れない。

「しかし願いを叶えるですか」
「それが聖杯ですぞ」

殺し合いで優勝した者の特権。
死者を蘇らせる事なども可能なのかもしれない。
これがあるから参加者への信頼が取り辛いネックになる。
現に真アサシンはそれでライダーを殺しているし、サーヴァントは皆殺しするつもりなのだから。
骸はその時は真アサシンに協力するつもりではある。

「ではまずは歩いてみましょう、いつまでも悩んでいたら重要な事を逃してしまうかもしれません」
「わかった」


骸、真アサシンは立ち上がる。
暗闇だった空は明るくなり始め光が見えてきた。
この光が希望の光になれば良い。
骸は目にこの光を収めた。



―――――



しかしどんな奴があの沢田綱吉を殺したのでしょうか?
興味がありますね。

ダメツナと呼ばれる普通の状態の彼だったら誰でも殺せるでしょう。
年下であっても小学生でさえ容易いでしょう。
頭も悪ければ運動神経もない、運もない。
にも関わらず優しいし、お人好し過ぎる。
そんな少年だからボンゴレⅨ世は彼を気に入ったのでしょう。

だが彼の本気、死ぬ気モードであった沢田綱吉が負けたとしたらそれは大変な事態である。
アルコバレーノであるリボーンの弟子、ボンゴレの血、無限の成長力。
そんな彼を倒せる強大な敵が居るとしたら。

「サーヴァント、ですかね」

真アサシン、真名ハサン・サーバッハをちらりと見る。
僕の呟きには気付かずに護衛をする様に前を歩いている。

「とにかく僕も用心深く行きましょう」

クロームの体ではなく僕本体の体であるのに関わらずに幻覚を使うだけで疲労感がいつもより酷いのだから。

「でもそんな強い相手ですか」

僕は雲雀恭弥ではありませんが……。

「是非手合わせ願いたいものですね、クフフ」

でも、死ぬのは嫌ですかね。
あくまで僕はあの世界に帰らなくてはいけない。

僕のマフィア風情への復讐が果たされていないのだから。



―――――



ムクロ殿は考えておられる。
私にはよくわからない。

しかしサーヴァントでの脱落は私が殺したライダーのみ。
やはり一筋縄ではいかないか。

私ではない謎のアサシンを含めサーヴァントを殲滅しなければ聖杯は得られない。
ムクロ殿は知能も高く、戦闘力も高い。
彼に着いて行く事は私にとってもプラスであろう。
正規なマスターではないが、彼をマスターと認めても良いぐらいだ。

「必ず、成し遂げる」

呪いの右手ではなく、左手で拳をつくる。
必ず聖杯を我が手中に収める為に。




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