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重い瞼をゆっくりと開けた。
少女の意識が段々と覚醒していき、そして大きな怒りが脳裏に蘇る。
無惨に殺害された三人の人間。彼女よりもずっと小さい子二人と筋肉質の男が、まさに『見せしめ』として余りにも惨たらしく殺害された悪夢の光景。
許せない。許せない。許せない。許せない許せない許せない―――!!

「許して、たまるもんですか」

少女・涼宮ハルヒは胸の内の恐怖心を押し殺して、静かに呟いた。
それを皮切りに、次々と苛立ちがハルヒの中で沸き上がってくる。自分たちの楽しくて騒がしい、愛すべき仲間たちとの日々を奪い去った主催者達への激しい怒りが。
キョン、長門有希、朝比奈みくる、古泉一樹。
誰一人として欠けてはいけない、大切な仲間達だ。
そしてSOS団の団長として、彼らを守る義務がある、と彼女は思った。

涼宮ハルヒは決して化け物じみた戦闘能力など持っていない。
学力は高いし運動神経もかなり高いが、所詮それだけだ。
銃を出されれば成す術がないし、不意打ちでもされたらひとたまりもない。
―――彼女は自覚していないが、本来存在した『願望を実現させる能力』も今は制限され、働くことはまずない。今のハルヒはただの人間だ。
だが。バトルロワイアルという悪趣味な催しへのありったけの敵意と、仲間を守りたいという強い意志。この二つに限っては、一点の曇りも存在しない。


「………みんな、待ってなさい。このあたしが助けてあげるわ!」


殺し合いの場においては軽率ともいえる大声だった。
さすがの彼女も口を押さえて、やばっ、と声を漏らす。
改めて辺りを見渡してみる限り、ここはレンタルビデオ店のようだ。室内ということもあり、声が割と店全体に響いてしまった。非常にまずい。
しかし既に遅く、かなり近くから人の気配が感じられる。
ほら、足音が段々と近付いてきて―――――。

「………えっと、誰か居るのか?怪しい者じゃないんだけど」

どうしよう。ハルヒは迷っていた。
声の人物は声からして自分と同じ高校生、そして男子といったところか。
相手が信頼できる人物かは分からない。『怪しい者じゃない』なんて自己申告を信用してしまうのは危険だった。だが、仲間になり得る人物だったなら話は別。
一人より二人、二人より三人の方が良いに決まっている。

「………おっかしいな、確かに声がしたと思ったのに」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

ハルヒは声をあげていた。

それは半ば反射的なものでもあり、ヤケクソ気味なものでもあった。
とにかくここでの出会いを無駄にしてはいけない、そんな気もした。

少し驚いたような表情を浮かべている少年。黒髪にツンツンヘアーが特徴的な風貌をしている。というかここまでツンツンした頭の人間見たことない、とハルヒは少し暢気ながら思っていた。少年の制服は少なくとも北高のものではなく、ハルヒのことを知る相手ではないようだ。
涼宮ハルヒは彼女の通う高校では結構な有名人だ。まあそれはどうでもいい。
どうもツンツン頭の少年には敵意はないらしい。少し安堵する。

「あたしはSOS団団長涼宮ハルヒ!!名を名乗りなさいウニ男!!」
「ウ、ウニ男!?上条さんはれっきとした人間ですよーっ!?」
「いいからとっとと名乗る」
「……………上条当麻です」

上条当麻。
彼は名乗る。ハルヒが敵ではないかなどと疑う様子はまるでない。

―――あたしの判断は正しかった!最初からいい仲間に会えたわ!

さすがはあたしね!なんて、ハルヒは少々舞い上がる。
何にせよ、上条という仲間を得られたことは彼女の心の弱い部分を補うことにつながった。まだ弱い、一人の少女の決意を後押しする。

ハルヒが予期しないほどに、上条との出会いは彼女を安堵させたようだ。

「そうだ、ビリビリ―――御坂美琴、白井黒子、一方通行。誰か会ってないか?探してるんだ。みんな信頼できる、殺し合いには乗らない頼もしい奴等だからさ」
「………残念だけど会ってないわね、じゃああたしも聞くわ」

この中の誰かに会ってないかしら?と言い、ハルヒは参加者名簿の名前を指差していく。残念ながら上条はここまでハルヒ以外に会っていないらしく、有益な情報は得られなかった。
互いに殺し合いに乗るような人達ではない、という点は合致していたが。
アクセラレータ、綴りは『一方通行』とは随分凄い名前だ。
興味を持って上条に聞くと、滅茶苦茶に強い奴だ、との返答。
扱いが難しい奴だけどな、と上条は頭を掻いて苦笑した。
そしてその後に、力強く付け足す。


「今のアイツはこんなふざけた殺し合いになんて絶対に乗らねえ筈だ。俺も負けてはいられねえ、必ずこの殺し合いを潰して、シャルルのクソ野郎をぶっ倒してやる」


ハルヒは初めてここで、この少年を頼もしいと思った。
自らの都合など省みず、他者の為に、悪を正す為に行動できる男。

彼女の知らない話。
彼は一つの世界を幾度となく救っている。
その右腕に宿る正体不明の異能を殺す力『幻想殺し』によって。
先の学園都市最強の怪物・一方通行に打ち勝ち。
イギリスの第二王女のクーデターを防ぎ。
『神の右席』―――ローマ正教20億人の信徒たちのトップとも戦った。
神話級の大天使に突撃し―――――上条の記憶はそこで終わっている。
本来なら魔術組織『明け色の陽射し』に拾われる筈だったのだが、不幸にもその直前にバトルロワイアルに招かれてしまった。しかし、上条当麻は何も変わらない。
いつも通りに巨大な力に立ち向かい、いつも通りに誰かを守る。
偽善使い(フォックスワード)の詐欺師と蔑まれようが構わなかった。

英雄(ヒーロー)。人は彼をそう呼ぶ。
きっと彼はいつも通りに、哀れな参加者たちの希望となるのだろう。
シャルル・ジ・ブリタニア達は運が悪い。
よりにもよって彼を呼んでしまったのは、策の誤りだったろう。

「んじゃ行くか、涼宮」
「そうね、上条くんも知り合いを探したいだろうし」

二人は歩き出す。ごく、普通の行動。
バトルロワイアルのスタートとしておよそ最高の形でスタートを切ることができた二人は普通に仲間を探す。
しかし、物語は。


「―――――――――涼宮っ!!」


いつも通りの、普通の展開を嫌った。






「…………え?」

何が起きたのか理解できなかった。
上条当麻が不意に涼宮ハルヒを突き飛ばした。
続いて、渇いた粗末な音が響いた。
上条当麻の足元に、真っ赤な雫がこぼれ落ちた。
上条はよろめきながらも、倒れずに両腕を広げてハルヒに背中を向けている。

―――――――――ああ。理解した。

脳は理解することを拒否しているが、本能は確かに理解している。
ここはバトルロワイアル。そして参加者達には武器などが支給される。
もう逃げられない。涼宮ハルヒは、理解してしまった―――。


上条当麻は、涼宮ハルヒをかばって銃撃された。


「…………行け、涼宮。俺が『こいつ』を食い止める。お前は殺させない」

呻きに似たものが混じっていたが、上条はしっかりとそう言った。
ハルヒは首を横に激しく振る。逃げるなんて出来るわけがない。自分を守るために傷ついた男をみすみす死なせて生き延びるなど、ハルヒは認められない。
逃げるなんて出来ない。
上条の前方に見える銀髪に袴姿の青年はまだ銃を下ろしていないから。
上条は殺される。

ダァン!!と、二度目の破裂音が大気を揺さぶる。
上条の肉体がまたよろけ、また元の通りに青年に立ちはだかる。

「早く、行け――――涼宮!てめえには大切な奴が居るんだろうが!!」

怒号。とても肉体の二箇所を弾丸に抉られた人間とは思えない。
足元の血溜まりがだんだん広がっていく。青年がもう一度引き金に指を掛ける。
ハルヒは震える足で静かに立ち上がった。
もう上条当麻は助からない。ハルヒ程度の技術では弾丸の摘出や銃創の処置、破損した内臓の処置などは出来ないのだ。たとえここに残っても、それは彼の遺志に背くことになる。自分は生きなくてはいけないのだ。無様に走り回ってでも、生きなければならない。
それでも、一言言わなければ気が済まなかった。

「上条君……。あたし、生きるから」
「ああ、そうしてくれ」

涼宮ハルヒは走り出した。
上条当麻は確かに笑っていた。
振り返りはしない。そんな暇があるなら、より遠くに逃げなくてはいけない。
涙を流しながら彼女はレンタルビデオ店を飛び出した――――。



【H-4 レンタルビデオ店近辺/未明】

【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:疲労(中)、強い決意】
【思考・行動】
1:SOS団の皆を守り、バトルロワイアルを打倒する
2:生きる為に出来るだけ遠くに逃げる。
3:上条くんの知り合いも探す。
【備考】
※『涼宮ハルヒの暴走』終了後からの参加です。
※『願望を実現する能力』は完全に封印されています
※御坂美琴、白井黒子、一方通行の名前を記憶しました





「何故、お前は倒れない」

袴姿の青年、宮沢謙吾は困惑したような顔で上条当麻を睨んでいた。
おかしい。上条の胴体には既に四発の弾丸を撃ち込んでいる。
それなのに、上条は倒れずに手を広げたまま謙吾に立ちはだかっていた。
血塗れの体で、途切れ途切れに上条は言う。

「……俺、は、倒れねえさ。ここで倒れちまったら、てめえに負けたことになるんだから、よ。」
「何を言っている………お前が倒れれば、お前は楽になるんだぞ」

そうかよ、と笑い飛ばした。

「でも、な。てめえには、悪ぃが、男ってもんには、意地がある」

謙吾にだって意地はある。彼は何も自らの保身のために殺し合いに乗った訳ではない。命を賭してでも、達成しなければならない目的があった。
折れる訳にはいかない。たとえどんなに悲しい悲劇があっても、止まれない。
絶望の未来に一石を投じる為に、戦わなければならない。

「俺は、涼宮を生かしたかった。だから、あいつが少しでも遠くに逃げられるように、ここで俺が、てめえを食い止める」
「………すまない。俺には、目的があるんだ」

とても悲しそうな顔で、謙吾は彼の胸に銃口を向けた。

乾いた音がした。上条当麻の肉体は今度こそ仰向けに倒れる。
もうその体は動かない。最期まで誰かの為に生きて、上条は死んだ。

「…………俺は、恭介を生き残らせなければいけない」

棗恭介―――彼の所属する『リトルバスターズ』のリーダー。そして、『繰り返される一学期』のゲームマスター。彼さえ生きていれば、リトルバスターズは終わらない。
たとえ彼以外全てが死そうと、彼さえいればまた繰り返せる。
自分は間違っていない。そう言い聞かせるその顔は、ひどく悲しそうだった。



【H-4 レンタルビデオ店内/未明】

【宮沢謙吾@リトルバスターズ!】
【装備:S&W M19(0/6)@現実】
【所持品:支給品一式、S&W M19予備弾薬×18、ランダム支給品×2、上条当麻のデイパック】
【状態:健康、強い決意、悲しみ】
【思考・行動】
1:恭介を優勝させる為に殺し合いに乗る。
2:理樹たちには会いたくないな………
【備考】
※Refrain開始直後からの参加です
※涼宮ハルヒの外見を記憶しました。
※上条当麻のデイパックの中身は後の書き手さんに任せます




これは、走馬燈か。
ははっ。こうして見ると俺、かなり面倒事に首突っ込んでるな。
ああ、これは一方通行と初めて戦った時か。

御坂。お前と小競り合いすることももう出来そうにねえや、ごめんな。
だけど、お前と喧嘩したりするの―――そんなに嫌いじゃなかったぜ。

一方通行。お前は変わったな。守りたいものを得てから変わったよ。
今度はお前が、こんな下らねえ幻想をぶち殺してやってくれ。

これは白井を助けた時。結局敵はやられちまってて、何が起きたかいまいちよくわからなかったんだっけ。
白井は御坂を守ってやれ。あいつ、背負い込む所あるからな。

アウレオルス=イザード。
お前は多分俺たちと戦ったときとは違う人間になってるんだろうさ。
今度は、幸せになってくれ。

おっと、時間だ。
じゃあなみんな。―――――楽しかったぜ……。


【上条当麻@とある魔術の禁書目録  死亡】


※上条当麻の遺体は、H-4レンタルビデオ店内に放置されています。

【S&W M19@現実】
装弾数6、予備弾薬18のリボルバー拳銃。


036:天城雪子は笑えない 時系列 024:神のみぞ知るセイカイ
008:Melodia〜僕に捧げるIの歌〜 投下順 010:その男ら、凶暴につき
START 涼宮ハルヒ 041:僕は/俺は友達が少ない
START 上条当麻 DEAD END
START 宮沢謙吾 065:朱く染まれ、すれ違い綺羅の夢を
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