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エピローグ <ご機嫌麗しゅう、お嬢様>
聖暦3353年 -霜月 十七日-
晴れた日のブリュッセン城。
ある少年がブリュッセンの一室で、通信によってツォング議員を呼び出していた。
「なるほど……それで、ラングフルクの事件は、結局どうなりましたか?」
少年の問いに、壁に映し出された立体映像のツォングが答える。
<<そりゃ、教会にとっては大変だったわよ。教祖様に重用されていたカッシュ議員が大犯罪起こした末に消えちゃったからね。
ワタシとしてはざまぁ見ろアイツ。って感じだけど。もう本当に助かったわ、レラちゃんのおかげで。意外と大事になってないの>>
「ほほう。レラのおかげ、ですか」
<<ええ。彼女と、うちのヒトミが力を合わせたらしくてね。被害が最小限に抑えられて、一人の死者も出なかったのよ。
事件自体も覚えていない人のほうが多くって。医車の力って記憶の操作もできるらしいの。彼女が意図的にそれをやってくれたとは
思わないんだけど>>
少年は満足げに笑った。
「ところで、カッシュ……いや、クゥライドはどうなったのですか?」
<<分子レベルまで分解されて、MSCの中を彷徨っているのよ。
自分を物扱いするように設定していたらしくて、ほんと自業自得だわ>>
「となると……彼の復元は可能?」
<<ご心配なく!彼を構成する要素は、タイピング検定のグレードに関わらず、
一般人も議員もダウンロードすることは出来なくしてあるから。
権限は教祖様が持ってるし、これでアイツは無期懲役も同然よ>>
ツォングは豪快に笑った。
「そうですか。ならば、あとは彼の信者となるような人間をマークしておけば問題ありませんね」
<<まあ。そんな輩、いるわけないと思うけど!>>
「一応、念には念を入れておくといいですよ。僕から言えるのは、こんなところまでです」
<<分かったわ。いつもワタシに連絡くれてありがとうね。お父様にもちゃんと伝えておくから、また連絡してよね。ロキくん>>
「分かりました」
少年は苦笑すると、通信をきった。
そして、メイド服に着替えると、笑顔で料理の支度を始めるのだった。
不意に部屋の扉が開き、パジャマ姿で寝ぼけ眼の少女が入って来た。
「あ、お嬢様。おはようございます。今日は早いんですね」
「ふぁぁ……ご飯、まだ?」
「いま作ってますから、もうちょっと待って下さいよぅ。いま、お兄さんのぶんと一緒に作ってますから」
「早くしてね、マロン」
それだけ言って、レラは部屋から出て行った。
何とも素っ気ないが、マロンは幸せだった。
ブリュッセンも、教会も、どこも平和なことに。
「ふう。さぁて、今日も頑張らなくっちゃ!」
フライパンに油を入れて熱し、炒め始めます。
今日の料理も、気に入ってもらえるといいな。
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