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セシウムの人体への影響って?

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balsamicose

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だれでも歓迎! 編集

 【Yasushi】流通させた農家が猛批判を浴びて、また農家から犠牲者が出ないか心配ですが、それはそれとして、セシウムを含んだ今回の牛肉で、人体にどんな影響があると思います? [2011/07/22] [13:27]

【Yasushi】カリウム代謝に乗るからセシウムが体に廻るというのが定説なんだけど、具体的に、代謝反応を観察したペーパーとか読みたいです。カリウムは人体に必須で、カリウム・ナトリウムポンプで、細胞内外のカリウム、ナトリウムの濃度調節をしてますよね。量から行って、カリウムのほんのごく一部に入るんでしょうけど、この場合は、ナト・カリ調節には関与できないでしょうね。使えないカリウム代替元素として体内をめぐってほとんど他のカリウムと同じく排泄に回ると思うんですよね。セシウム比放射能×入ったセシウム量の回数だけ、体内で放射線を出して、それがどこに当たるか、ということ? [2011/07/23(土)] [10:02:30]

【Balsamicose】Kの同位体には放射性のものが多いので、CsとKが同じ挙動をするなら、むしろ安心かもしれません。しかし、K+と比べCs+のイオン半径はかなり大きく、細胞膜のカリウムチャネル(Kを選択的に透過するチャネル)を阻害する程だそうです(ただし非選択性のイオンチャネルは通ると考えられているそう)。従って、単純にK+とCs+が同じだという議論はできないように思います。植物や菌類において生物濃縮をする種はよく知られていますが、動物では顕著な例を私は知らないため、人体にどれほどの影響があるのかと思います。[2011/07/24(日)] [06:33:50] リンク追加[2011/07/26(火)] [11:44:25]

【nanashi】セシュウムの代謝は知りませんが、チェルノブイリの基準値以下なら取りあえず心配する必要はないのではと思っています。
参考;http://www.enup2.jp/newpage35.html
それよりも、福島でもチエルノブイリと同様、今後のスクリーニングの過程で「小児甲状腺がん」が多発するのではと心配しています。
参考;http://www.aesj.or.jp/atomos/popular/kaisetsu200701.pdf
ここの、「甲状腺がん多発についての疑問」が事実だとすれば、福島でも不要な手術をされてしまう子供たちが増えてしまうかもしれません。一日も早く「事実」が解明されることを祈っています。[2011/07/25(月)] [10:10:25]

 【Balsamicose】甲状腺ということはそれはヨウ素による影響ではないですか? ということはスレッド違いでは?[2011/07/25(月)] [12:16:21]

【Yasushi】[[甲状腺がん多発についての疑問]]というページを作りました [2011/07/25] [18:15]

 

【glasscatfish】放射性セシウム(Cs-137など)を用いた動物実験について少し調べてみました。

ヒトでは投与実験ができないので、因果関係がはっきりした報告としては、ブラジル・ゴイアニアでの事故の記録が最も参考になるのかと思います。

大量に投与した実験としては、ビーグル犬を用いた次の実験があります。
ここでの投与量は 36-160MBq と非常に多い量で、死亡率や癌の様子を調べています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7761585
Radiat Res.1995 Jun;142(3):347-61.
Biological effects of 137CsCl injected in beagle dogs.
癌はさまざまな臓器に出来ていると記述されています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8896580
Radiat Res.1996 Nov;146(5):536-47.
Biological effects of 137CsCl injected in beagle dogs of different ages.
こちらではいろいろな年齢の犬を使っていますが、子供より中年犬の方が死にやすいそうです。

投与した放射性セシウムのマウスでの体内分布を見たデーターはこちら。
20kBq/L, 20週投与。造血系への影響なし。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20157720
Radiat Environ Biophys.2010 May;49(2):239-48. Epub 2010 Feb 16.
Biodistribution of (137)Cs in a mouse model of chronic contamination by ingestion and effects on the hematopoietic system.

チェルノブイリ避難地域での飲料水に相当する 400-500 Bq/L という濃度で Cs-137 をラットに投与するとどうなるかという一連の報告があります。大体が、ある種のサイトカインの量が1.5倍になっとか、差がなかったとか、その程度の変化。これらの中には癌の報告はデーターでも本文でも見つけられなかった。
Toxicology 225 (2006) 75–80
Chronic contamination with 137 Cesium affects Vitamin D3 metabolism in rats

NeuroToxicology 29 (2008) 343–348
Neuro-inflammatory response in rats chronically exposed to 137 Cesium

Cardiovasc Toxicol (2008) 8:33–40
Chronic Contamination of Rats with 137 Cesium Radionuclide: Impact on the Cardiovascular System

International Journal of Toxicology 2006 25: 493
Chronic Contamination with 137Cesium in Rat: Effect on Liver Cholesterol MetabolismChronic Contamination with 137Cesium in Rat: Effect on Liver Cholesterol Metabolism

Cardiovasc Toxicol の論文では、血圧変動の日周リズムが無くなったとしているのが、興味を引きます。

こちらの論文でも20kBq/L, 20週投与。免疫系への放射性セシウム投与による影響なし。
Influence on the mouse immune system of chronic ingestion of 137Cs

J. Radiol. Prot. 2011 31: 25

 


最後の6報はいずれも低線量に相当する放射性セシウムを投与した実験ですが、いずれの論文にも発癌率についての記述はありません。差がないのか、報告準備中なのかは不明。

 

【Balsamicose】 英語が苦手なので理解できていないのですが、多分このスレッドで議論されているのは、ヨウ素に対する甲状腺のようなもの(器官とは限らない)が、セシウムにはあるのか? ということだと思います。これだけ多量だとセシウムでなくても同じ結果なのではないかと思ってしまいますね(血圧変動の部分を除いて)。でも考えてみると、このような実験から始めざるを得ないのでしょうね。安定セシウムを使った実験って無いんでしょうかね。[2011/07/28(木)] [04:24:36]

【 glasscatfish】

>Balsamicose さん

ヨウ素での甲状腺のような臓器はセシウムには無いと理解してよいと思います。

放射性セシウムの投与量はセシウム量としては少ないので、安定セシウム(放射性でないセシウム)を大量に投与した効果とは違います。あくまで問題にしているのは『放射性』の部分の影響です。最後の6報はいわゆる環境汚染レベルのセシウムを投与しています。

安定セシウムを抗癌剤として(民間療法的に)効果があると主張する人もいるようですが、循環器系への影響を調べた論文はたくさんあるようです。

 【Balsamicose】

>  glasscatfishさん

>ヨウ素での甲状腺のような臓器はセシウムには無いと理解してよいと思います。

の根拠を示していただけないでしょうか? 実験例などはあるのだとしたら安定セシウムを使ったものもあると思うのですが…。また、臓器単位でなく器官のどこか一部分でもセシウムが蓄積する部分があれば、放射線を強く被曝することになると思います。それらの実験事実が知られて無いが故に多くの人が不安を感じ、このようなスレッドが立てられる原因となったのだと解釈していますので。[2011/07/28(木)] [07:07:37]

 

> Balsamicose さん

確認の意味でごくごく始めのほうから簡単に。

甲状腺にヨウ素が集積するのは、分子内にヨウ素を含む形のホルモンを甲状腺が作っているから、というのが生物・医学分野の前提としている事実かと思います。

甲状腺ホルモン - Wikipedia http://bit.ly/qk7rJb

これに対して、このようにセシウムを積極的に利用している機構は知られていません。セシウムが蓄積する器官や臓器があるか、という点に対してはカリウムを取り込んだり輩出したりする機構にセシウムが乗っかる際の若干の効率の差に基づく濃縮があり得るくらいだと思います。これに関しては沢山の論文があるでしょうが、調べていません。筋肉に蓄積しやすい、という事になっているかと思います。

問題になるのは、そうやって取り込まれた放射性セシウムが生体に影響を引き起こすかということなのはBalsamicose さんがおかきになっている通りです。これに関して、調べて出てきたのが上記の論文です。

結論を繰り返すと、

・放射性セシウムを大量投与すると犬ではいろいろな臓器にガンができる。

・環境汚染レベルの放射性セシウムのラットへの投与では、いろいろな生体機能に若干の影響が報告されている。即、人体への影響を想定できるものではないが、興味深いものもある。

・環境汚染レベルの放射性セシウムでラットでの発癌性を報告したものはまだ見つからない。論文中で言及もしていないのは不思議。

・同様に環境汚染レベルの放射性セシウムをマウスに投与した実験では、最も影響が出やすいと考えられる免疫細胞・造血系の細胞に対する影響が認められていない。

・マウスの実験は最近報告されているので、この後、発癌性の論文が出てくるのかもしれない。

・動物実験は実験期間がせいぜい2年程度なので、ヒトでの長期間の安全性を保証するものではない。

 

とういうあたりです。[2011/07/28(木)] 

 

【Balsamicose】 「セシウムを積極的に利用している機構は知られていません」は根拠になるのでしょうか。医学に関しての新事実のニュースをよく聞きますが、それは裏を返せば未だに完全に知られてないことになりませんか? であれば、その程度の知見で結論を出すのは尚早だと思います。 動物実験であれ投与した時に溜まる所があるかないかは調べないとわからないのではないでしょうか? [2011/07/28(木)] [10:25:20]

 

【いいな】セシウムは甲状腺に集積して、甲状腺癌を引き起こすのか?

http://d.hatena.ne.jp/buvery/20110701

結論から書くと、ある程度は集積するかもしれないが、極端に集積する訳ではない。ただし、小児甲状腺癌は引き起こさない。

なんだか歯切れが悪い結論ですが、この甲状腺や、内分泌器官に集積すると主張しているのは、私の知っている限り、バンダジェフスキーの論文しかなく、この論文は首尾一貫したデータを出しているとは言い難いからです。私がそう考える理由を説明します。

バンダジェフスキーの論文03:43バンダジェフスキーの論文を含むブックマークAdd Star

以前、汚染地域でのセシウム集積についての論文を読みましたが、近頃、セシウムが甲状腺に集積するという話が出てきています。その元となっている論文は、

ChronicCs-137 incorporation in children's organs

Y. I. Bandazhevsky

Swiss Med Wkly 133: 488, 2003

です。この論文をいつものように見てみましょう。この雑誌は、インパクトファクターが1ちょっとなので、マイナーな雑誌と言って良いでしょう。また、この内容で、単独著者というのも珍しい。この論文が書かれた特殊な事情は後で説明します。

この論文では、ベラルーシのゴメルで死亡した子供の遺体から標本をとってCs137を測ったと言っています。論文の発表は2003年ですが、データはその6年前の1997年のものです。

セシウムカリウムは似た挙動を示す。03:43セシウムとカリウムは似た挙動を示す。を含むブックマークAdd Star

最初に、復習します。

周期律上セシウムはカリウムと同じ仲間で、セシウムの体内の挙動はカリウムと似ていると考えられています。カリウムは細胞外液には乏しく、細胞内に貯留されるので、量としては体内の最大の実質臓器である筋肉がほとんどを占めることになりますが、全ての細胞に分布しています。カリウムは天然の同位体元素であるカリウム40があり、その同位体比率は0.012%で一定で あり、カリウム全体としては32Bq/gとなります。また、前にも書きましたが、人の筋肉は平均して、100Bq/kgのカリウム40を含んでいます。 従って、カリウムは筋肉中の0.3%(3g/kg)程度になります。カリウムの一日摂取量は、2-3g程で、その9割は尿に、その他は便などに排泄されま す。従って、人間の体は60-100Bq/日程度の放射性カリウムが通過していることになります。また、カリウム40とセシウム137は崩壊課程も似ています。従って、セシウム137の効果はカリウム40を基準に考えるのが良いと私は考えます。

1997年に行った10歳以下の6例の子供の検屍の結果は、心臓、甲状腺、副腎、膵臓に非常に高いセシウム137の集積を示す物がある。03:431997年に行った10歳以下の6例の子供の検屍の結果は、心臓、甲状腺、副腎、膵臓に非常に高いセシウム137の集積を示す物がある。を含むブックマークAdd Star

f:id:buvery:20110702035132j:image:w640

これが、表1に示されているものです。人の筋肉のカリウム40 が100Bq/kgであることを基準に考えると、非常に高い値であることが分かります。ただ、この表1のデータは、次に説明する図1と一致していないし、 (図1では甲状腺の平均は1200Bq/kg、この表1では、2863±2399Bq/kg)、表2とも一致していません(表2では甲状腺は 2054±288Bq/kg)。

よく見ると、個人間の差が著しい事が分かります。特に膵臓の個人差は激しく、膵臓の値の標準偏差を計算するだけで、この表1のデータは後に出てくる表2の52人のデータの一部ではない事が分かります(表2のデータでは、平均1359、標準偏差が350となっている。もし、この表1のデータが表2のデータの一部であれば、標準偏差は表1の4つの値だけで

√(1/51)*[(11000-1359)^2+(12500-1359)^2+(1329-1359)^2+ (2941-1359)^2)]=2074.94になり、全体ではこれ以上でなければならないが、これですらすでに350を越えている。)この6例のデー タをどうして全体を纏めた表2のデータと分けてだすのか、私には理解できませんし、その理由は説明されていません。なぜ理解できないかと言えば、この6例 のデータは、膵臓の値が表2の52人のデータとかけ離れていることから、全体を代表するような例ではなく、ある特異なグループを選んでいると言っているの に等しいからです。


幸い個々では個別の計測値が載っているので、検算してみます。

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この6例の子供の場合、標準偏差が大きい事もあって、心筋と比較して測定されたBq/kgが有意に差があるのは、肝臓が有意に低いというだけです。これだけでは、心筋と比較して内分泌器官に集積していると結論できません。

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この個人差が内部被曝の程度が個々人によって大きな差があることが理由であると考えて、内部被曝の程度を心筋で代表できるとします。教科書的 には骨格筋なのですが、この表1には骨格筋のデータがありません。そこで、心筋と比べて、どの程度蓄積されるかを比をとってみます。これが個別の全ての比 の値です。

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平均と標準偏差をとって、心筋の値とt検定を行うと、心筋より低くて有意なのは、肝臓と腎臓、高い方は膵臓で、甲状腺を含め、他の臓器は有意差はありません。だから、どうしてこういう形でデータを切り分けるのか私には分かりません。

1997年のゴメル地域での検屍でのセシウム137は各臓器において小児の方が多い。03:431997年のゴメル地域での検屍でのセシウム137は各臓器において小児の方が多い。を含むブックマークAdd Star

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ゴメルはベラルーシで、チェルノブイリ事故でのセシウム汚染が最も高い地域です。図1に示されているように、調べられた全ての臓器で、セシウム137は小児の方が多い。この事自体は、子供の内部被曝の危険性が高いということを示唆しています。

ただし、この図に使われたデータは、平均を示しているだけで、大人と子供をどう定義したのか、何例測ったのか、標準偏差はどうだったのか、何も示されていません。従って、これだけで有意であるとは結論できません。

ちなみに、標準偏差を書いていないグラフを認めるのは、私は普通ではないと思います。だいたい、平均の棒グラフを書いて、16個中7つの値が丁度100で割り切れるなんて、データを100単位で四捨五入でもしない限り、ありえませんね。これだけで、私の場合、頭の中で火災報知器が鳴っているような気になってしまいます。

また、先にも述べたように、この最も高い甲状腺の値、1200Bq/kgは、この論文に載っている表1にも表2にも一致しません。ということは、別のデータ集団としか考えられませんが、測った検体がどう同じなのか、違うのか、そのことについては何も述べられていません。

1997年のゴメル地域での52人の10歳までの子供の検屍で測定した各臓器のセシウム137は甲状腺、副腎、膵臓に多い。03:431997年のゴメル地域での52人の10歳までの子供の検屍で測定した各臓器のセシウム137は甲状腺、副腎、膵臓に多い。を含むブックマークAdd Star

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これは表2に載っているものです。この表の説明には52人と書いてありますが、本文中は51人と書いてあるのは、ご愛嬌です。

13臓器の測定の平均と標準偏差を載せていますが、この13臓器は表1のものと違って、骨格筋が入っていて、胃が抜けています。この表では、標準偏差は表1の時程大きくはなく、甲状腺にある程度集積しているようにみえます。ただし、その場合でも骨格筋の2倍程度です。

以上が論文のデータです。

著者は、要旨で『セシウム137は内分泌器官、特に甲状腺、副腎、膵臓で最も高い蓄積を示した。*1』 と述べています。甲状腺と副腎は確かに内分泌器官ですが、膵臓での蓄積が外分泌腺か内分泌腺かを示していないので、内分泌器官一般にセシウムが集積すると は言えません。切片を切ってオートラジオグラフィをとれば分かる筈です。また、論文の結論として『経済的理由で、毎年行っていたサナトリウムに子供が住む期間が短くなり、汚染地域は「汚染なし」と分類され、汚染されていない無料の食物の供給が停止された。*2』と書いていますが、もちろんそんなことはこのデータからは言えません。著者がこういう論文を、データと関係のない社会的なスローガンを発表する手段と考えているとすれば、私が論文だと思っているものとは大分違います。

この論文には三つのデータの整合性がない。03:43この論文には三つのデータの整合性がない。を含むブックマークAdd Star

この論文の出しているデータとして、それぞれなりにセシウム137の蓄積は見られるものの、二つの表と一つのグラフに載っているデータは同じ物ではなく、平均ですら大きく異なります。私が査読をしているのなら、この段階で、実際の個々のデータを要求して、自分で検算します。

また、『セシウム137を測っている』なら、同時にセシウム134とカリウム40が測れる筈です。従って、私なら、セシウム134とカリウム40のデータを要求します。なぜカリウム40が大事かというと、以前に読んだオーストリアでの実測例をみれば分かるように、カリウム40の値はだいたい100Bq/kgでセシウム汚染などに関わらず一定だからです。逆にこれが一定であれば、測定している値が現実と合っているという証明になります。セシウム134は半減期4年なので(オーストリアの例では実質半減期はもっと短い)、事故後11年経っているこの時点ではずっと減っているはずだと予測できます。また、この論文では測定自体はフランスでも行った*3と言っているので、そちらからでもデータは出せる筈です。以上まとめると、『こういう報告がある』としか言えません。

ユーリ•バンダジェフスキーとはどういう人か。03:43ユーリ•バンダジェフスキーとはどういう人か。を含むブックマークAdd Star

英語のWikipediaによれば、もっとも有名なのは、チェルノブイリの実験の結果を発表したとして、ベラルーシの当局に逮捕され投獄された、と言われていることです。当局の主張では、学生の親から賄賂を受け取ったという罪で投獄したことになっています。2001年に8年の禁固刑を受け、2005年に仮出所しています。アムネスティ•インターナショナルなどは、良心の囚人としています。

今中さんのところにも、2000年頃の手紙があります。手紙の中で『英語の論文を用意しているところだ』というのが、表題からしてこの論文だと思います。

ベラルーシでは、ソ連崩壊後もルカシェンコ大統領がソビエト式の独裁体制を続けているので、うるさい学者を投獄するのはありえます。バンダジェフスキーは、大統領令21号『テロリズムと戦うための緊急措置』で逮捕されています。それでいながら起訴が学生から賄賂をもらったという、テロリズムと関係のない容疑で、しかも軍事法廷で裁かれているので、状況は真っ黒と言えます。

上に述べたようにこの論文には色々な欠点があり、また、『当局に都合の悪い事実』は『科学的な事実』を証明する訳ではありません。この事は日本でも同じです。ただ、ここまで異常な状況の中で、獄中から論文を出すだけでもバンダジェフスキーは偉いと、そこは認めるべきだと私は思います。ただ、ちゃんとした論文を書いていないことは残念なことです。

以上が、セシウム137は甲状腺にも若干蓄積する可能性はあるが、飛び抜けて多いわけではない、という論文でした。

このセシウム137は小児甲状腺癌を引き起こさない。03:43このセシウム137は小児甲状腺癌を引き起こさない。を含むブックマークAdd Star

セシウム137が甲状腺に集積するかの方の歯切れは悪いのですが、セシウム137が小児甲状腺癌を引き起こさない、こちらは明白です。

Cancer consequences of the Chernobyl accident: 20 years on

J Radiol Prot 26: 127, 2006

によると、小児甲状腺癌は、ベラルーシでの小児甲状腺癌(14歳以下)は事故4年後から顕著に増加し、事故後9年後の1995年にピークを迎えた後、事故16年後の2002年には事故以前の状態に戻っています。

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これは、持続的な被曝ではなく、事故直後の短い時期に(おそらく半減期8日のヨウ素131で)被曝したことを意味し、半減期30年のセシウム137がたとえ甲状腺にいくらか蓄積されていったとしても、そのことで小児甲状腺癌は増えていません。言い換えれば、福島で今から生まれてくる子供は、セシウムによる被曝があっても放射能による甲状腺癌になりません。*4

また、この被曝による甲状腺癌の増加は被曝時年齢にはっきりと依存し、明らかに15歳以下のリスクが高い。そして、成人での甲状腺癌の顕著な増加は認められていません。以上が、セシウムが甲状腺に若干蓄積するとしても、甲状腺癌を引き起こさないという話でした。

*1:The highest accumulation ofCs-137 was found in the endocrine glands, in particular the thyroid, the adrenals and the pancreas.

*2:For reasons of economy the annual sanatorium stay has been shortened, and communities in some contaminated areas have been classified as “clean”, thus ending the supply of clean food from the state.

*3:ただし、フランスのどことは書いていない

*4:このチェルノブイリでの小児甲状腺癌はベラルーシで4000人の発症で死亡が20人程度と、死亡率は低い。また、少しずれますが、小児甲状腺癌が減少したことをもって、検査バイアスがないことの証明にはならない、というのが私の意見です。

 【Balsamicose】 信頼性はさておき、データ提示ありがとうございます。KとCsについては、物理的・化学的に似ていることは同意いたしますが、イオン半径が大きく異なるため上でも述べたように細胞膜での挙動の違いに疑問を持っています。また「検屍」とのことですが、死因についての記述はあるのですか? [2011/07/28(木)] [15:31:47]

【glasscatfish】いいなさんが詳しく書いたので書くことがあまり無くなってしまったのですが、Balsamicose さんが疑問に思っている K と Cs についての細胞膜透過性の違いが若干の(動物実験でも1―4倍くらい)組織の蓄積性に現れているのではないのでしょうか。ちなみに、甲状腺へのヨウ素の蓄積は100倍くらいだそうです。

死因についての記述は Table 1 の上部にあります。

sepsis (敗血症)、premature malform (先天異常)、sepsis bleeding (敗血症、出血)、cerebral malform (大脳形成異常)、cardiac (心臓病)sepsis(敗血症)

 【Balsamicose】 glasscatfishさん、死因につきまして解説ありがとうございます。スレッド違いですが、「甲状腺へのヨウ素の蓄積は100倍」は何に対して100倍なのでしょうか? また、教科書的には骨格筋にCsが多いとのことですが(魚のニュースでもそれは聞いていますが)、その知見はどうやって調べたものなのでしょうか? K+濃度分布からの類推ですか? それともセシウムの安定同位体で調べたデータがあるのでしょうか?それと放射性物質を一番心配されているのは妊婦の方だと思いますが、(ヒトでなくとも良いので)胎児への影響を調べたものはありますか?(上記の死亡原因が先天異常というのもそれに含まれるでしょうが) [2011/07/28(木)] [21:40:36]

【glasscatfish】

組織への蓄積は、重量あたりの放射性物質量で比較したデーターです。骨格筋での値や濃縮も同じように出していると思います。

セシウムの安定同位体では調べられないのではないかな。あくまでトレーサーレベルの微量の(たとえ数十MBqでも化学物質としては微量)放射性物質でないと、化学物質としてのセシウムが生体に影響を与えて何を見ているのかわからなくなると思います。

先のマウスの論文では、妊娠中から与えていた実験があったと思います。低線量レベルのセシウムで特に影響があるとの記述は無かったはずですが、離乳前のような甲状腺の活性が盛んな時期では甲状腺組織中の濃度が他の臓器の2―4倍というデーターはありました。ただ、前に述べたように、この論文では放射線感受性が高いと思われる造血系・免疫系の細胞への影響はありませんでした。

一般に、低線量の発癌性を調べる動物実験は、自然の発癌率への微妙な上乗せを検出しなければならないので、とてもお金がかかります。しきい値云々が言われていますが、それをはっきりさせようとすると、マウス代だけで数億円というレベルになると実験を計画した先生が話していました。

[2011/07/28(木)] [23:44:13]

【Balsamicose】 ここでお聞きしたいのですが、皆様の見解として「A.セシウムはカリウムと似ているので線量だけ気にしていれば良い」なのでしょうか。それとも「B.ヨウ素における甲状腺のような部位や未知の現象がセシウムに無いとは言い切れないから安心してはいけない」なのでしょうか(もちろん他の物も挙げていただいて結構です)。他スレッドですがglasscatfishさんは「低毒性のものの毒性を研究することは大変だ」と仰られましたが、私は上記記事を書かれた皆様が確証めいたものを持っておられAの意見をお持ちなのだと思っておりました。私は未だにBの意見なのですが、皆様は実際いかがなのでしょうか? [2011/07/29(金)] [14:02:41]

【Yasushi】横から失礼します。Balsamicoseさんが提示されているAとBは、意味的に対峙するものではなく、一般的論として、BはAを含んでいる、とぼくは考えています。したがって、「Aと問われたら現段階でYes、Bと問われたら現段階でやはりYes」という見解になる人がでてきてしまうと思うのですが。[2011/07/31 16:30]

【いいな】

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001cyyt-att/2r9852000001cz7c.pdf

のp15~p19にセシウムの生体内での動態が載ってます。

http://kaken.nii.ac.jp/en/p/12576005

に、チェルノブイリ原発事故による放射能被爆住民における膀胱がんの発生 が載ってます。そこからの論文をみると、

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1349-7006.2003.tb01441.x/pdf

137Cs levels in urine 6.47±14.30 (Bq/liter)

つまり、6.47 Bq/L =102 μSv/yearのセシウムが膀胱にたまる状態を16年間続けると、70%くらいがなんか膀胱がおかしくなるよ。と書いてある。でも、そこの住人は煙草も吸うし、セシウム汚染された野菜を食べてるし、いろんな外因が関係してるかもよとも書いてある。

福島県でも同様の事が起こるのか?というと、起こらないと思うよ。【2011/07/29】

【Balsamicose】 いいなさんが最後に書かれたのは、私がその上に書いた質問への回答なのでしょうか? だとしたら、はぐらかされているとしか思えません。モデル計算というのは新しい事実が見つかれば覆るものだと思いますが。専門家が「わからない」と言うのを恥だと思っているのなら、一般人に嫌われる理由はそこかもしれませんね。私への回答でないとしたら、「起こらない」と考えられた根拠は何ですか? また「思う」が付いているのは何故ですか? [2011/07/31(日)] [13:01:10]

【glasscatfish】

僕の書いたことについても納得出来るところと出来ないところを書いてもらえると、僕もはぐらかされた感じがしなくて嬉しいのですが。

今回、専門家は「たぶん大丈夫だけど分からない」ってことを丁寧に言う専門家は嫌われていますね。お気楽だとか何とか。根拠はないけど分からないから最大限気をつけろ!って言う方が受け入れられやすい。

[2011/07/31(日)] [18:09:0

【Owly】いい塩梅に原点に戻ってきました。(笑
今朝もそれについていくつかTweetしたんですが、やっぱり不安や恐怖への心理的なアプローチっていうのを一つ作りますか。
[2011/07/31(日)] [18:27:40]

「じっくり考えていく話」の中に「不安の心理的構造にせまる~データは無力なのか?!~」を作りました。

 

【glasscatfish】そうそう、原点、原点。

尿中セシウムについて、分かりやすく解説しているブログを2つ見つけました。

http://happysmileniko.blog10.fc2.com/blog-entry-311.html

>私たちは日々、生命維持の為に“カリウム”を摂取しています。よって、尿中には誰でも放射性カリウムが1ℓあたり30~50ベクレル程度出ています。

http://sallas.blog109.fc2.com/blog-entry-115.html

福島で細胞生物学を研究している方のブログ

>福島市の子供の尿中の放射性物質について市民団体が調べてくれて、放射性セシウム(Cs137かな?)が尿1Lあたり1ベクレル程度、ということが今日(30日)のニュースで出てました。尿の中には普通、誰でも放射性カリウムが1リットルあたり30-50ベクレル程度出ているので(IAEAのInternational Nuclear Information Systemの中の報告書XA9745835など)、それに比べるとずっと少ない値。

問題となる小さなお子さんでは、放射性カリウムK-40の方がシーベルト換算率が高い、つまり同じ、ベクレル数でも人体への影響は数倍高いことがわかります。ま、でもだからといってカリウムを食べないようにすると確実に死にます。ともかくこれらのレベルの値は現実的な健康リスクにはなりません。

 【Balsamicose】  glasscatfishさん 「僕の書いたことについても納得出来るところと出来ないところを書いてもらえると、僕もはぐらかされた感じがしなくて嬉しいのですが」とのことですが、納得できないのは私はAかBかそれ以外かを尋ねているのに、その回答をしていただいていないと思われることです。私は長野在住ですし、子どももおりませんので、正直な話、今回の事故による影響はどうでも良いのです。単に知識としてCsが生体に与える影響を知りたいのです。例えばMRIのような装置を用いて、Csの挙動を調べたりできないのでしょうか? Csが核磁気共鳴するかどうかは知りませんが、癌発生の有無だけのデータでは「セシウムが生体に与える影響」という観点において私にはどうにも納得はできないです。[2011/08/01(月)] [12:03:33]

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