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がん死について:泊村の話題を起点に

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【続編ページ・議論をよろしくお願いします】
(ページを新しくしました)
(過去ログはこちら http://www18.atwiki.jp/ahr-people/pages/94.html 編集はロックしてます)



【Yasushi】

では、実際に平成18年時点からさかのぼって、泊村でのがん死者は何人いたのでしょうか?

がんの治療にはいまは部位ごとに様々な治療法があります。その治療の効果は治療をして少なくとも「5年生存率」など5年以上の経過でみていくものです。がん自体も、短期間に進行する場合もあれば、がんを持っていながら十年以上も普通に暮らしている人もいて、そのがん組織ごとに性質が違っています。

元の石狩NGOのソースは、がん死について遡った3年分しか計数しておらず、しかも単純に人口十万人当たりの死者数で全ての自治体を比較しているため、資料として何の参考にもならないと考えます。

では長期間集めればその方がいいかというと、それも、同条件のデータとして扱えない難しさが出てきます。つまりがん医療というものは、発見、治療の医療レベルが20年も30年も昔では、雲泥の差なので、一概に比較出来ません。

(昔の方が死者が多いかというと、そうもなりません。がん以外の病気で治療を受け続けていて、がんと別の基礎疾患が同時に悪化して亡くなっているケースが多かったからです。この場合、発見できなければ末期に開腹して手の施しようのないがんとして見つかることになり、その死因ががんになるか基礎疾患関係の方になるかはまちまちで、数字に表れてきません。ちなみに医師が書く死亡診断書にはもちろん死因が書かれますが、人が亡くなるというのは、どれか一つの病気のせいとは言い切れないため、死亡診断書上での死因は単一とは限りません。{{家人が訪問看護師で、その中には在宅のまま亡くなられるかたも少なくありません。かつては人が死ぬのは病院の白い病室というのが殆どでしたが、最近は、在宅看取りが増えています}}。死亡診断書に複数の死因が記載されているのは、ごく普通のことです)

まず前掲、http://www.hokkaidohealth-net.or.jp/ から得られる、1996年から2005年の10年間における北海道、各市町村のSMRデータから、すべての部位を合計したがん(悪性新生物)死者数を見てみます。ここから得られるデータはSMRのみで、信頼区間やp値の表記がなく、ここではSMRの道内比較で、泊の特異性が表れているのか検討していきます。

(※ 2011/08/26追記:今週に入り、ダウンロードサービスが停止しているようです。新しい年次のデータによるSMR7の準備に入っているとの記載がありました。以下、2005年までの統計によるSMR6をもとに、各疾患別の市町村別SMRを検討していきます)

男性。

泊村はSMRでは一番高く、期待値(全国平均であるとした場合に、この年齢層、この村人口で出ると考えられるがん死者数)が43人であるのに対し、81人で、全道一になっています。

次に女性。

あれ??泊村が1位ではない。京極町が全道でがん死1位になっています

それはともかく、女性の場合の期待値39に対して、実際の十年間の死亡数は59人となっています。


再掲しますが、泊村は、年々人口が減少していますが、1900人規模の村です。その村が、10年間で、男性81人、女性59人ががん死しています。これを原発が地元にあるために突出して多いといえるでしょうか?

[2011/08/25 22:32]


【Yasushi】
SMRで、その自治体の年齢構成から「年齢故の(普通は高齢者ほど)死にやすさ」は、標準化されています。

しかし、そのSMRであっても、数千人の自治体に対して、母集団(死者数)が二桁となると、統計上の誤差が入りこみます。
http://trustrad.sixcore.jp/risk_sense.html

のページでシミュレーションをしていますが、同じ死亡確率:1/100,000であっても、標本サイズが変わるだけで


というように、人口十万人当たりの死亡者数は上がります。
偶然の誤差(人間は、一人、二人というように、離散的に亡くなります。さらに、この一人、二人には、どういう医療を受けたか、本人や家族がどういう選択をしたかという個人事情がくっついてきます。これらはいずれも、統計上では偶然の誤差として表れます)が与える影響が、標本サイズが小さくなるにつれて大きくなることが分かります。

つまり、死者数が二桁というような小さな標本では、SMRでもさらにこの誤差を馴らす処理をしなければいけません。

この他、小さくて、医療実力の弱い過疎村では、医療を受ける拠点医療機関までの移動距離、遠い病院が複数ある時に、その人や家族がどういう選択をするかも、治療や予後に影響し、それが死亡数にも反映されます。上記の男女の死亡者数順位に挙がっている町村をよく見て下さい。地域の小村が上位を占めていることが分かります。

SMRの問題点


SMRは、地域医療体制の弱点や、何かの疾病と地域との関連性を検討する際に、伝統的に用いられる指標(比)です。

しかし、死亡数のように比較的希な確率事象はポアソン分布に従うという仮定を置いて、同じ分布に従っているであろう基準集団(ここでは全国)の期待値(年齢標準化された死亡数)とその地域の年齢標準化観測死亡数の比を取るのがSMRです。

とはいえ、SMRは標本サイズ(その地域の人口)の影響を受け、小人口村などでは、他の自治体との比較に使えないことが指摘されています。
http://www.niph.go.jp/toshokan/home/data/57-2/200857020002.pdf

この標本サイズに起因するブレを馴らす方法として、地域医療では http://homepage3.nifty.com/NPO/s_top/s_cont/tiiki/assess/bayes.html にあるように、ベイズ推定がよく用いられます。

地域医療にベイズ推定を当てはめるとなると、上記のリンク先のように、その自治体が属する二次医療圏の期待値と、実死者数を分子と分母に加えることになるのですが、原発との関連を疑っているこの場合、それはできません

●理由
  • 北海道を二次医療圏で取り扱うと、一つ一つが、他府県に匹敵するほど広い面積になる。(医療では、住んでいるところと治療を受ける場所の距離は、患者や家族にとって非常に大切な問題で、優秀な病院があっても、家族が通えない距離、あるいは、患者の心理として遠くて言葉も違う見知らぬ地域となると、それを選択するかどうかは、病気の状態とは必ずしも一致しないのです)
  • 指摘する側が、原発近隣に住んでいるためにがん死が多いという見解であるのに対し、二次医療圏によるベイズ推定では、原発と居住地の距離という因子が隠れてしまう

したがって、このややこしい問題では、もっときめ細やかに、検証していきます。

[2011/08/25 23:35]


【Yasushi】

アクセス履歴を見ても、誰も読んでないですね。

泊を中心とする後志の地域医療が抱えるジレンマは、ぼくにとっては、身近な問題です。

まして、泊村に泊原発ができてからの泊村の人々への謂われ無き非難。今回の「魂を売った泊村はがん死がダントツ1位」なんて、実際に泊に来たこともないだろうし、地域の人と話したこともないだろうに、数字だけ見て、何の関係も無い地域住民の死亡率を数字をいじくって批判するなんて、納得いきません。

ほんとにがん死が原発のせいで多いのか、地域医療の問題や、人の生のあり方も考慮して、それでもなお疑義が残るのか、考えてみましょう。

僕は、乳児期予防接種による慢性B型肝炎患者で肝がんハイリスク群で、他人事ではありません。また上述のように家人が病棟看護師、訪問看護師として、これまで千人以上の患者さんと関わってきています。身近な問題として、考えてみます。

次は、この問題の特殊性を考える上で外せない、泊村が属する二次医療圏について、書きます。

「魂売った」とか、石狩のソースを見ていうからには、和文流用協同組合の諸氏は、当然、泊の場所や、それがどんな地域くらいは、知ってるんですよね?

[2011/08/25 23:12]



【glasscatfish】
一般人の反応という点で少しコメントを。

この泊村の話を妻にどう思うか聞いてみました。
(医療や科学の背景知識は特に無い一般人です)
即座の反応が、「他の原発の近くもそうなの?」というもの。
同じような話は、玄海原発でも流れていましたね。確かあの場合はATLの因子がかぶってました。
この話が本当なら、全国どこの原発でも同じような話がないとおかしい、という事ですね。

もうひとつの反応が、「他では調べられていないだけとか?」
流石にそれはないだろ、と言ってしまったのですが、統計の取り方(くくり方)が広すぎたりして直接比較ができないというということはあるかもしれませんね。

統計はあまり詳しくないので、検証を読んで勉強させていただきます。

[2011/08/26(金)] [00:44:42]



【Yasushi】
→ glasscatfishさん
さすがに他の原発町村まで手が回りません。こういうデータは県単位で取りまとめられていると思います。ただ、がんを含む死因のデータは、各地の保健所で把握しているはずです。それが北海道のような、見易い形で用意されているかどうかは、財団法人のようなところ頼みでしょうね。

[2011/08/26 7:30]

【Yasushi】

■泊村の属する二次医療圏

泊村には大きな病院がありません。村立芽沼診療所という診療所が一つあるだけです。

診療所で処置しきれない病気の場合は、泊村のある二次医療圏内のどこかの市町の病院に転院することになります。

全国の医療圏に関するデータは、こちらのサイトから得られます。


さて、下記の地図が、泊村の属する後志二次医療圏です。


泊村からは、岩内町、余市町、小樽市に治療を受けに行くのが普通です。(地図を調べて貰えるとお分かりのように、岩内以南の日本海海岸には大きな町はありません)

●後志二次医療圏の特徴
  • 面積:4306km2 (山梨県、富山県、福井県、石川県と同程度の広さ)
  • 二次医療圏内の総人口:23万4千人
  • この圏内全ての医療機関での一般病床(療養、精神神経科病棟を除く)=1990床
  • 同・療養病床数=1159床
  • がん診療拠点病院=なし

○がん拠点病院は無いとはいえ、呼吸器、消化器等、専門医はいますので、この医療圏内にがんの治療を受けている人はいます。ただ、がんに充分な体制とは言い難いです。

○それと共に、この医療圏は、広大な面積に対し、市が小樽市一つしかなく、小さな町村が点在する、医療経営として成立しにくい環境にあるといえます。

○人口23万人に対し、一般病床1990床は非常に少ないことも、この医療圏の特徴に挙げられるでしょう。医療が充実している地域でも、一般病床が果たす役割は基本的に急性期(現在の病状の進行を食い止める、次の段階の目処が付くまでの医療処置をする)の患者さんしか入れません。

といっても、病床に余裕がある地域では、ベッドを空かすことを避けたいために、実際には急性期といえない患者の人も入院することが出来ます。しかしながら、この後志二次医療圏では、一般病床数は不足していると言わざるを得ません。これが何を意味するかというと、もっと重度の患者さんが来たら、入院していても退院させられる、ということです。

この先はそれぞれですが、隣の札幌二次医療圏も北海道全体の半分に達するほどの大人口を抱える巨大医療圏のため、受け入れ先が必ず補償されているわけではありませんし、泊村から札幌の医療機関に入院して治療を受けることを患者側が好んで選ぶかというと、そういうわけでもありません。

では、後志二次医療圏の一般病床から溢れた患者の人がどこへ向かうかというと、空きが合って条件が合致すれば、療養病床1159床のどこかに入り込むか、さもなければ、地元に帰り、地域の医院や診療所の医療モニター下のもとで、在宅医療(訪問看護などの地域医療)患者になって、状態が悪化したら一時的に圏内のどこかに短期の緊急入院しては、また在宅に戻るという形にならざるを得ません。

[2011/08/26 7:43]


【Yasushi】

■食道がん

食道がんのデータを見てみます。

男性です

泊村は表れません

次に女性
ここでも泊村は表れません。泊が出てくるところまで表の下部まで示しましたが、14位になっています

食道がんでは、泊村のSMRは北海道の市町村の中で突出して高いとは言えません

[2011/08/26 7:52]


【Yasushi】

■膵臓がん

膵臓がんのデータを見てみます。

男性はこちら。


泊村が14位に表れています。といっても、期待値2.5人に対して5人です。(繰り返しますが、2005年からさかのぼった10年間で、泊村に住民登録していた人がどこかで治療を受けた結果です)

女性はこちら。

泊村は表れません。(欄外ではあるが、期待値3.1に対し、実死者5人)

膵臓がんに関して、泊村が道内で突出して高いとは言えません。男女とも、それぞれ10年間で5人が亡くなっているだけです。

[2011/08/26 12:58]

【glasscatfish】
九州の玄海原発でも同じような話が出まわってました。
こちらはブログで取りあげられてから togetter で解説がされています。

◯発端:ドイツ
http://janjan.voicejapan.org/world/0812/0812110292/1.php
「ドイツ連邦政府環境省・原発周辺で小児白血病の多発を立証 5km以内に住む5歳以下の子どもの発症に原発との相関性あり」
約6300人の子どもたちのデーター
原発から5km以内に住む子どもが小児ガン・小児白血病ともに他の地域と比べて高い発病率を示していた。
小児がんで1.61倍、小児白血病で2.19倍

このデーターに関しては、相関を認めるものの、原発由来の放射線量で因果関係を説明するには1000倍の線量が必要、とドイツ政府環境省はその後の調査で発表しています。タイトルはかなりふかし気味ですね。
これについて、あのバスビー氏がコメントしています。内容はよくわからない(理解しにくい)のですが、ベレー帽がお洒落です。

◯日本で
ウィンドファームという団体代表の中村種市さんという方がとりあげて広まったようです。地元の市議会でも取りあげられています。
http://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-4139
http://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-4269

このあたりの数字の出し方が、ちょっとトリッキーなのは次の togetter をみてください。誤ってしまう要因は二つ。
  • 10万人あたり数十人の死亡率を数千人の人工の地域に適用するとわずか数人。
  • 九州は ATL で知られるようにウィルス性の白血病が多い

(参考)
II.ATLとHTLV-I のQ&A
平成21年度厚生労働科学研究「HTLV-Iの母子感染予防に関する研究」(主任研究者:齋藤滋)報告書より抜粋
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken16/qa.html
ランキング県民性:白血病死亡者数 [ 2009年第一位 鹿児島県 ]
http://todo-ran.com/t/kiji/13739

で、この顛末についてブログでもさくっとまとめた方が既にいました。
(医療関係者ではありません。)
成人T細胞白血病(ATL)対策普及を願って:「玄海原発周辺で白血病が増加 全国平均の6倍」の真実
http://blogs.itmedia.co.jp/sakamoto/2011/07/atl-6-e032.html

あたまが痛くなるのが、こういう話をしていると
「数字を扱って人の気持を考えないのはケシカラン」
という罵倒が飛んで来るらしいこと。どうしようも無い気もしますが。
http://togetter.com/li/159326


[2011/08/28(日)] [11:31:56]



【glasscatfish】
大事なことを書き忘れていました。これは泊村にも共通するかもしれません。

上の togetter のコメントを見ていて思ったのですが、原発の立地している場所は決して医療的に恵まれた地域ではありません。私の田舎の方でもそう。これが直接的に死亡率を引き上げるような効果もあるのではないかという気もします。
もうひとつ、ATLのように感染予防がある程度できるとされている場合、地域の保健医療体制がどの程度機能しているかも見過ごせない要因になるでしょう。地域の広さや・対象人数に対して医療機関・保健機関がこなさなくてはならない業務の種類と量。
決して原発立地地域が好条件にあるとは思えないのです。

[2011/08/28(日)] [11:54:50]



【Yasushi】

全部のがんのSMRを挙げていくときりがないので、よく話題になるがんを取り上げて、まとめに入っていきます。

■肺がん

放射性核種は、もし、常時、微量存在するとするなら呼吸を介して人体に影響するでしょう。(人間は吸った塵やダストの殆どを、吐く息や免疫で体外に出していることは http://www.yasushi-studio.com/tweet/2011/05/315-c437.html#dranage で取り上げています)

肺がん、男性


泊村のSMRが1位になっています。十年間の期待値9.7に対し実死亡数が24人。

次に、女性


泊村は上位に表れません。 仮に、長年、大気に微量の放射能が漏れているとして、肺がんで男女差が表れるでしょうか?

男女で肺がんに差が現れる因子として必ず指摘されるのが喫煙率の違いです。

女性の肺がんで1位になっている羅臼町(北海道の東、知床半島にある町です。北海道の西と東の端のほうで、泊村からは、500km以上離れています)でも、女性がたくさん亡くなっているわけではありません。羅臼町の実死者数をみてみると、女性16人、男性29人です。すなわちSMR比較では女性が全道1位になっても、実際の肺がん死者数は男性のほうが多くなっています。

男性のSMR1位の泊村でも同じことがいえます。実死者数を見ると、泊村、男性29人、女性6人と、男性の死者が女性より多くなっています。

男性の肺がんのSMRが高いことと原発の地元であることを関連付けるのは困難です。

[2011/08/28 11:47]

【Yasushi】

■乳がん

フォールアウトや原発近隣で乳がんが増えるというのは、肥後舜太郎氏やJ.M.Gould が主張していることで最近知られています。

(「(これに関してひとこと。Gouldの著作、"The Enemy Within" がよく引用されていますが、Gouldのこの本を読むと
  • 原発との距離と死亡率を計数するだけで、がんの交絡因子(食習慣、出産経験など)を全く考慮していない
  • 原発周辺の町村について、年齢標準化はおこなっているが、単純な死亡率比較を行っており、このページで挙げている「統計的に小人口ほど数値が高くなる」現象に、なんら修正をしていない
という問題があり、非常にミスリードを起こしやすい資料だと考えます
))

乳がん女性(今回のSMRデータでは、男性の乳がんはありませんでした。極めて希なため、統計を取っていないのかも知れません)


泊村は上位には表れてきません。

[2011/08/28 11:59]


【Yasushi】

なぜ泊村は全がん(悪性新生物)のSMR比較では男性全道1位、女性2位になるのか?


ここまで見てきたように、個別のがんを、さらに男性、女性に分けて調べていくと、泊村が「がんの突出して多い村」ということはできないと思います。それでは、なぜ全てのがんを合わせると男1位、女2位になるのか、考えて見ます。

下記に、個別の疾患ごとにSMRの北海道内順位を記した表をあげます。


オレンジ色=SMRが全道10以内に入っている
緑色=SMRが全道20位以内に入っている

泊村の、10年間で男性81人、女性59人というがん死者が、個別がんでは、このように、平均して上位に入っている、言い方をかえると、例えば肺がん死者の多い自治体でも、その分、消化器がん死者数が少なければ全がんにまとめたときに、上位には来ません。部位別の医療で、どこか充実しているなら、その自治体は、全がんには表れてこないのです。

泊村は一次医療圏として診療所を一つ持っているだけですし、それを支える後志二次医療圏の弱さが、ここに表れていると、ぼくは考えます。

その裏付けが、上記の表の下段(紫色で示した部分)の、がん以外の疾病による死因です。循環器、呼吸器とも、相対的に北海道内でSMRの高い村だということが分かります。

(※ なお、肺炎で死亡、というと、肺の病気だけのように見えますが、そうとは限りません。高齢者によくありますが、色々な病気を長く患ってあちこち悪くなっていくと入退院を繰り返すうちに免疫が落ちて感染症にかかりやすくなる時があります。こうなると肺炎に陥りやすく、それは普通の人がたまたまかかる肺炎とはリスクの大きさが違い、命取りになります。この場合、肺炎が命取りになるような体になっていった原因は別の疾患をずっと患っていたからですが『直接死因=肺炎』として記録に載ります。もちろん、先に書いたように、死亡診断書の死因は一つではなく悪化していた基礎疾患も併記されることがあり、それは医師の判断です。そのどれか一つが計数されるのか、亡くなった人ひとりについて、データ上の死因が複数になるのかは、ここでは不明です。いずれにしても、肺炎による死者は肺以外の病気が元になっている人がたくさん含まれています)

  • 人口の少ない小村
  • 高齢化率の高い過疎村
  • 二次医療拠点から遠く、急性期を越えた後は、その人や家族の個別事情で、二次医療拠点で家から遠い受け入れ先を転々と求め歩くか、地元に帰り地域医療を選ぶか、というキツい選択がある
  • 泊村をかかえる後志二次医療圏自体、医療体制に層の薄さがいなめない

これらの要因が、がん死を含む泊村の地域としての医療の問題としてあげられると考えます。これらはまた交絡因子になっていることは、がん以外のSMRの順位も高いことから、うかがえます。

このように泊村の個別のSMRを他の市町村と比較していくと、「原発を抱えるためにがん死が多い」と言えません。

仮にここで「原発の近くに住んでいるために、ある部位のがんの男性、別の部位では女性のリスクが高くなり、同時に、原発に近いために、脳血管疾患、心疾患、肺炎による死亡のリスクも高くなる」という(まったく聞いたことがないですが)仮定をたてるなら、泊村の各SMRに対して別の解釈もできるでしょう。しかし、それなら、類似の過疎村で二次医療圏内の拠点までの移動距離や、医療環境が同じ対照群を集めてきて、改めて比較する必要があります。普通に考えると、荒唐無稽な仮定だと思いますよ。

以上、北海道内で個別のSMRを比較すると、「泊村は原発があるためにがん死が多い」は、統計上の問題と地域医療の実態を無視した、風評であると思います。

北海道の遠隔地域町村では、いずれも、そこで病気になったり、老いていくことは、大都市に比べるとはるかに医療の選択肢が少ないのです。それは暮らしている人がひしひしと感じています。それでも、ずっと住み続けてきたところに最後まで居たい、という思いは強いです。そういう思いで暮らしている人のことを考えてほしいです。

原発の是非を議論するために、泊の人達の表面的な数字だけ取り上げて「魂を売った」などと中傷し、架空の危険性を煽るようなことは、やめていただきたいです。

[2011/08/28 12:56]

【Owly】
「素人」にコメントを求められたので、なんとか何か書こうとおもっていてもなかなかデータ自体が読み解けず、
一色さんに満足いただけるようなことが書けるかどうか解りませんがすみません…。
とりあえず、煽りのブログなどを拝見して、
確かに「なにもわからない」素人なら、結構怖くなると思います。
そういう意味で私は、(正常な)九州の原子力発電所周辺での白血病の多さなども、もともとの要因もあるとか、いくつか今まですでに教えてもらっているので、そういう意味で本当の素人とは少し違ってしまっているかもしれません。
ただ、あくまで知識のない人間としてみても、それが原発を誘致(あるいは設置を許した)その地域の人が悪いだとか「魂を売った」なんていう表現はあまりに的外れだと思います。
ごく良識的な一般人はそんなふうには思わないはずです。

ただ、最近出てきたデータを見ていると、
どうしても原発周辺の放射線量は、ないところに比べれば「若干」高いですよね。
この「若干」が、本当に人体に影響を及ぼさないのかどうかについては、素人の見方はかなり分かれてしまうと思います。
[2011/08/28(日)] [21:37:34]

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