↓テンプレ 『タイトル』 (1)現在までの総話数、ジャンル、描写形式。 (2)あらすじ (3)描写と構成について (4)内容について雑感 『紙芝居師のいるところ【青春 ラブコメ?】』 (1)都合四話。いまのところ現代日常系。主人公による一人称。 (2)公園に集まる子ども達に駄菓子を売り、紙芝居を読んで聞かせる。そんな紙芝居師としての時間に至上の喜びを見出す主人公・小瀬川誠は、高校に通う傍ら近所の子どもたちを相手にその趣味を楽しんでおり、子どもらやその親からの信頼も厚かった。ある日の紙芝居のあと、同級生の文月紅璃に因縁をつけられたことから口論へと発展し、紙芝居とアニメのどちらがより優れた娯楽であるかを決める勝負をすることになる。紙芝居に命を懸けているとまで豪語する誠の信念の裏には、かつて紙芝居師として幼い誠に話を聞かせた祖父の存在と、病気で臥せっていた妹のために子どもながらも必死に紙芝居を読み聞かせた日々の記憶があるようだが。一方、紅璃から事の経緯を聞いた彼女の母は、誠が子供受けする紙芝居師だと知るとなにやら思うところがあったようで―― (3)文章はあっさり読みやすい。あまり説明過多にもならず、丁寧な語り。 (4)作品のメインテーマであろう「紙芝居」には新鮮さを覚えるが、日常的な学園風景に強気のヒロイン、メガネで優等生の親友などなど、テーマを取り巻く舞台の空気が非常にありふれている点とテーマそのものの地味さは今のところ不安要素。しかし一つ信念を持つ主人公には好感触の読み手が多いはず。現状は作中で提示された『勝負』の経過に期待といったところ。状況を鑑みるとまだ感想が少ないのもやむなしか。 『虫っ娘ぱらだいむっ! 〜布安布里 詩人の研究ノート〜【擬人化ほんのりコメディ・連作短編】』 (1)都合四話。昆虫擬人化の話。三人称。 (2)何処にでもいるような普通の生物部部長、布安布里 詩人は生物観察に凄まじい情熱を注ぐ学生である。ある朝、無粋にも彼の寝床に忍び込む可憐な狼藉者が現れ、誰何を問えばなんと彼女は自分を蚊であると言う。これを契機に彼の元には様々な『自称』昆虫少女が出没するようになるが、見た目が殆どヒト科の女の子であるそんな生き物の妄言を聞き入れ、彼女らが昆虫だなどと認めるわけにはいかない。詩人は生物部部長としての名誉と誇りにかけて、持ち前の知識でもって自称昆虫少女たちの認識の誤謬を片っ端から正しつつ、彼女らが真人間へ更正するよう尽力するのだった。 (3)現代的流行を強く反映した描写やもって回った比喩表現を多分に用いた、一部のライトノベルに見られるような語り口。明らかにキャラクターの記号的魅力に依存する物語構成であることも含め、タイトルで避けた読み手が試しに読んでみて意見を変えるといったことはあまりなさそうである。 (4)不安があるとすれば、今のところとくに表面化していないがマンネリ化の問題。もっと昆虫の特徴や性質に踏み込んで、それらを前面に押し出す擬人化のエピソードがあっても面白いかもと思う。しかし血を吸う蚊は妊娠している蚊であることを考えると、作中に登場する蚊の擬人化娘は子持ち人妻なのであり、メインヒロインが妹系妊娠人妻ということはつまりこれは始まったのではないかと思っていた矢先に想像妊娠扱いされたことに関してはなんというか寂寥感を覚えざるを得ない。  作品の雰囲気が好ましいと思う人なら安定して期待ができる作品。 『食物を愛するよりも誠実な愛はない』 (1)都合七話、未来へトリップ+異能、主人公による一人称。 (2)ごく普通の高校生である「俺」は、コンビニへと外出したその道で強烈な突風に襲われ、気が付いてみれば森の中にいた。空腹が限界に達し、あわや倒れてしまうかというところで発見した白蛇を食らいどうにか一命を取り留めた彼だが、今度は自身の体が食らった蛇に変容してしまう。少し時間をかけてこの特異な現象にも慣れ、蛇として動いたり人間の体に戻ったりとできるようになった「俺」は、見知らぬ少女が熊に襲われる現場に出くわす。再び蛇となり熊を食らった「俺」は、少女の自身に対する恐れを解き、二人は行動を共にすることになる。森を行くうち、額に角を生やした鬼の少女に出会った二人が事情を話すと、鬼の娘は二人を彼女の村へと招き、そこで「俺」はこの世界がはるか未来の日本であると聞かされることとなる。そして自分の体に起こった異変が、食うことを何よりの存在意義とする自分に芽生えた異能によるものだと知るのだった。 (3)主人公によるフランクな語り口は、好き嫌いが分かれそう。描写が単調で、いまいち盛り上がりに欠ける部分もある。 (4)タイトルには惹かれるものを感じるのだが、いかんせん話が淡白かつ盛り上がりなく進んでいてもったいないという感じ。少年ジャンプにも同じことをテーマにした漫画があったが、この話についてはなにか「喰らう」というテーマを生かす新鮮な設定がほしいところ。うまく転がれば化けそう。 『脱・超能力者連盟の友情』 (1)都合八話。題名どおりの超能力モノ。三人称混合型一人称。 (2)舞台は、およそ500人に1人の割合で超能力者が生まれるといわれる現代社会。だが文明の発展した社会の中で超能力の持つ優位性はとてもちっぽけなものでしかなかった。そんな超能力者の1人である男子高生・秋川振海は、片思いのクラスメート・市原樹理にひょんなことから興味を持たれ、彼女を家に招きいれる機会に恵まれる。しかしそこで発覚する彼女の特異な超能力とサイコな発言に、自身の恋心の見直しを余儀なくされていたところ、立て続けに性格にも難有りの娘だと判明してすっかり恋も冷めてしまう。しかし、悪女然とした狡猾な樹里の手腕によりどうにも縁を切りきれず、ついには成り行きで居候をも許して時を過ごすうち、振海はある事件から「超能力者をやめたい」と強く願うようになる。奇しくもそれは樹里の願いと全く同じもので、ここに『脱・超能力者連盟』が誕生した。 (3)淡々と起伏のない語り口で、物語を訥々と進めている印象。現状話に大きなヤマも見られない。物語序盤ということもありまだ作品がどうこうと判断するのは難しいが、しばらく目を離していても劇的に話が進んでいなさそうに思える進行速度は多忙な方には安心かもしれない。一話あたりの情報量を増やして話数を短く纏めたり、工夫のしようはあると思われる。 (4)よくある高飛車な性格のヒロインは、これを苦手とする読み手が多そう。恐らくマゾ的にも余り美味しくない類の罵倒(ヒロインのキャラもよく見えていない段階では感情移入できない)だと思うので、ヒロインの辛辣なご褒美おいしいですとは感じづらいところ。とりあえず今は最初の山場待ち。振海の超能力者に対する失望に加え、社会の持つ偏見のようなものも描写され、若干不穏な空気といった感じ。まだ全く明かされていない樹里のバックボーンや、いくつかの伏線を匂わせる振海の超能力についてが今後の話の主題か。今後の展開に期待。 『いちじんっ!(*美少女と一つ屋根の下暮らす話)』 (1)都合五話。現代が舞台の非日常系+α。基本一人称で語り手は複数(今のところ二人)。 (2)「俺」がふと目覚めると、そこは見知らぬ天井で、体は全く動かなくなっていた。自分の体にかけられた金縛りを解く代わりに取引に応じろという中性的な声の持ち主は、「俺」に有無を言わさず取引を実行。次に「俺」が目覚めたとき、そこは馴染みある自室で体もきちんと動いたが、彼の部屋には自身を『ドール』だと名乗る少女・ストレインが居た。彼は自分の持っていた『アーク』なる能力が失われていることに気づき、一連の事情の説明を求めて彼女と話すうち、彼女からひとつの願いを聞かされる。「貴方に私達を創ってほしい」と。一方、“なんとなく”今を生きているだけの人間だと自己評価する高校生・渋ヶ谷明日斗は、ある日謎の怪物に襲われるが辛くも逃げ切るという体験をする。このあまりに現実味のない経験を忘れようと努める彼のもとに、軽装の鎧を身にまとうファンタジー世界の住人ような美少女・リリアが訪ねて来た。彼女は問う、「真っ黒な怪物に襲われた経験はないか」。明日斗は訳も分からぬままに何かに巻き込まれようとしていた。 (3)まず場面転換の分かりにくさが読み手を敬遠させる恐れあり。場面の移り変わるタイミングにあまりにも突拍子がないことと、情景説明描写の不足が原因と思われる。以下冒頭の話の構成を大まかに記述する。  いきなり見知らぬ天井の部屋で目覚めた「俺」による、テンションの高いメタ要素満載の語り口で物語は始まる。「俺」のおかれた突飛な状態とその語りで既に話から追いていかれそうになるが、あらすじの通り話はどんどん進んでいって、後半では作中設定の説明が開始されて序章は終了。次の第一話は唐突に別のキャラクター「僕」が化け物に追いかけまわされるというシーンから始まる。その逼迫した状況がひと段落するとまた場面は唐突に変わり、『【習作】俺と屋根下ハーレム生活』が始まったと思いきやそれは何と「僕」の父親の書く小説であり、そこでようやくきちんと「僕」の情報が描写され、なんだいつのまにか語り手は変わったのかと理解できる。平凡な毎日に満足する「僕」についての描写がなされ一話は終了。二話の冒頭は、一話冒頭の「僕」と化け物の追いかけっこのくだりの後の話が唐突に始まり、その流れのまま新たなヒロインの登場。あれ前回の日常の話がどう非日常に繋がったのかと首を傾げるうちにも物語は進行していき、時折はさまれる「俺」の設定話――と、これでは読み手の混乱もやむなしである。  しかし一通り読んだ後見返せば、おそらくおよその構成や二種の場面の繋がりが何となく把握できるので、こんがらがりにめげない人或いはそういった構成が理解できないのは読み手の読解力や根気に問題があるとする見地に立つ人ならば、なにも問題視するようなことではないと思うかもしれない。考え方次第だが、少なくとも感想が付きにくくなるという程度の弊害は起こっているように思われる。個人的には、読み手が想像力を働かせるのは物語の内容に対してなのであって物語構成の複雑さに対してではないと思うので、いまのところ読者に不親切であると書かせていただく。 (4)だいたい(3)に含まれるので一部割愛。  いちど作品の世界観に慣れてしまえば特に問題なく読める作品なので、まだ明らかになっていない敵のようなものの全容や「俺」と「「僕」がどう繋がっていくのかという点には期待が持てる。