不死の魔女と呪われた箱


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第一話 「不死の魔女と呪われた箱」

聖杯戦争。
「万能の釜」また「願望機」とも呼ばれる、手にした者の望みをかなえる存在である聖杯をかけ、7人のマスターたちがそれぞれサーヴァントと呼ばれる英霊を従えて競い合う戦い。
サーヴァントのクラスはそれぞれ「セイバー」、「アーチャー」、「ランサー」、「ライダー」、「キャスター」、「アサシン」、「バーサーカー」に分かれる。
サーヴァントを使役し、その中で最後まで生き残った者が勝者となる。
来る時節である今宵もその戦いの火蓋が切って落とされようとしている。

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告白しよう。
      • 只の好奇心だった。
確か、好奇心は猫をも殺す、というイギリスの諺があったか。
よく言ったものだとは思う。
不死の私に対して随分と皮肉めいた言葉である。
もっとも、不死であるからといって何でもかんでも首を突っ込もうなどとは露ほども思わない。
以前に犯した大きな過ちもある。
だから、安易に何かに手を出すことはそれ以降控えてきたのだ。
      • まさか、こんな事になるなんて・・・。

「私をここに呼び寄せたのはお前か?」
「・・・・・・」

私は黙ってその女を見つめるフリをしつつ、浮世離れしたこの状況を今までの行動を回想しながら受け流した。

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あの男の計画、「ゼロレクイエム」が終わった後、私は放浪の旅に出た。
特に理由などない。
強いて理由を挙げるとするなら、「共犯者がいなくなったから」・・・か?
そんなこんなでどのくらいの時間が経ったろうか、とある骨董品の店先で私は「それ」を
見つけた。
「それ」はちょうど両手ですっぽり包めるくらいの大きさの立方体の形状をしていて、一つの面に9つの区切りが付いていた。
俗に言うルービックキューブというものなのだろう。
あいつも以前、私がこれと似た物に興じているときに勝手に取り上げて、ものの10分と経たないうちに6面全ての色をそろえてから「俺の話を聞け!」とか言っていたか。
      • 駄目だな。
どうしてもあいつの事を思い出してしまう。
そんな感慨に耽りながら「それ」を見つめていると、急に私は名状しがたい感覚に捕われた。
単純に言い表すことはできる。だが、原因が分からない。
「それ」を欲しいと思ってしまった。
あの時、解ききれなかったという燻った気持ちが再度燃え上がったわけじゃない。
単純に欲しいと思った。
「それ」に興味を持ってしまった。
だから、私は店主にこれをくれと言った。
その店主は言いにくそうな顔をして「それ」にまつわる話をし、それでも欲しいのかと聞いた。
私はそれをきいてもなお欲しいという思いを抑えきれなかった。
だから、私は店主の言葉に対して肯定の意をとった。
それを聞き、店主は緩慢な動作でそれを私に渡すと、「金は要らん」とだけ言った。
話はそれで終わり、私は不思議に思いつつその店を出た。


道すがら、私は店主の話した内容を反芻してみる。

―――「それは、いわくつきのオモチャでね。
    何でも、それを所持していた奴らは皆、発狂して死んでいるらしいんだ。
    しかも酷い死に方でね。
    死んだ時の状況は皆共通していて、それの所持者は必ずそれを側に置いて死んでいる。
    そしてそいつはそこでは常に血を被っているんだ。
    まるでそいつ自信が所持者を殺したかのようにね。」―――

おかしな話だ。
その話を聞く限りだと、まるでコイツが所有者を殺しているかのように思える。
店では「魅入られて」買っただけの「それ」を改めて見てみる。
      • やはり、以前興じた事のあるルービックキューブそのままのように見える。
血は付いていない。当然だ。
血のついた売り物なんかはブラックマーケットぐらいでしかお目にかかれないだろう。
エリア11ですら、そんな物は見かけなかったと思う。
ただ、注意して「それ」を見てみると、明らかな違和感を覚える。
血を被り続けてきたという品物の割には、やたらと綺麗すぎる。
血の痕跡自体が露ほども見当たらない。
      • 確かに不気味だ。
だが、そこまでの考えに至ってなお「それ」を捨てる気にはなれなかった。
変な話かもしれないが、「それ」が私を呼び寄せた、そんな気がしたのだ。
      • バカな話だ、とは思う。
でも、私は説明のつきにくいこの現象に覚えがある。

『ギアス』

それは私と既に根源に還ったあの男が持つ、二つしかないコード保持者が与える異能の力。
その力のありようは人それぞれであり、どれ一つとして同じものはない。
かく言う私も以前は持っていた。
だが、ある一件以来私のギアスはコードへとなり変わり、引き換えに「不死」を得た。
      • 忌わしい記憶だ。これについては一旦考えるのをやめよう。
とにかく意識を再び「それ」に戻す。
      • まさか、ギアスの類なのか?
いやいや、無機物にギアスが宿るなんて聞いたことがない。
そもそも、私にギアスは通用しない。
      • だとしたら、まさか、私の知らない「何か」がまだこの世界にあるのか?
いずれにしても、「それ」を放っておくわけにはいかない。
私はそう自己完結をすると、「それ」をポケットに入れてマーケットを後にした。

マーケットを出てどのくらい経過したろうか。
既に日は天頂にさしかかり、日差しがますます強まってきた。
徐々に汗が湧いてくる。
次の町までは歩いて行けると言われ、それを素直に信じたのだが、これは失敗だった。
どこか木陰で休もうと森の小道をキョロキョロとすると、どこかから清水の湧く気配を感じた。
そこに向かってみると、案の定、泉を発見することができた。
手を入れてみると、心地よい冷たさが手に返ってきた。
汗もかいた事だし、どうせならと衣服を全て脱いで泉で沐浴をする。
体のある一部に触れないように、少し時間をかけて体を綺麗にする。
      • 唐突にあの光景がフラッシュバックする。


―――ある修道女が私を全裸に剥いて凄まじい形相で私を見る。
   その手には、ナイフ。
   私は、ただただ怯えるばかりだった。
   その時のそいつの言葉はあまりよく思い出せない。
   思いだせるのはそいつがした事。
   その女はナイフを私の左胸のすぐ下あたりに振り下ろす。
   激痛。
   さらに一撃。
   激痛。
   また一撃。
   激痛。
   もう一撃。
   鈍痛。
   その女は手を私の血で染めながら、なおもナイフを振り下ろす。
   私の意識は徐々に薄れ、目は霞み、視界が赤くなっていくのを第三者のような目で確認しながらゆっくりと気を失った。
   ・・・どのくらい経ったろう?
   私は起きた。
   目の前は血の海。
   自分の血。
   辺りを見る
   教会の中。
死体。
   私じゃない。
   修道女の死体。
   続いて自分を見る。
   裸。
   胸に傷。
   意識が鮮明になり、自分の状況を理解する。
   私は教会の教壇らしきところに寄りかかっていた。
   胸を抑える。
   傷口からは出血がなかった。
   しかし、私についた傷は未だに血を流す。
   信じていたのに。
   どうして?
   やるせない気持ちでいっぱいになる。
   虚しい。
   疲れた。
   そうしてまた私は眠りに就いた。―――


現実に意識を戻しながら、私は心でため息をついた。
      • 結局、あの記憶からは逃れられない、か。
そんな翳った気持ちを振り払っているとある事に気づく。
右手の甲に変な痣が出来ていた。

「・・・何だ、これは?」

いつの間に右手を傷つけたのだろう?
しかし、ここ最近右手を傷つけた記憶はない。
試しに泉の水でひたすらその部位を洗ってみるが、全く消える気配がない。
      • 何らかの病気の前兆だろうか?
たとえそれが致死性の物だとしても、私には意味がないが。
      • まあ、いいだろう。
次の町に着いたら、医者にでも見せるとするか。
そう考えると、泉から出て体についた水滴を払い、再び衣服を身につけて次の町を目指した。

      • 全く、あのセリフは嘘だったのだろうか?
それとも、あの町の住人は皆、健脚なのだろうか?
歩いているうちに日が暮れてしまった。
未だに次の町の姿は見えない。
いくら沐浴をしていたとはいえ、ここまで時間がかかるとは・・・
      • 仕方ないが、今日は野宿をしなければ。
そう思い、再び辺りを見回す。
すると、偶然にも廃屋と化した教会を見つけた。
正直入るのはイヤだが、背に腹は代えられない。
そこを今日の野宿先と決め、早速中に入る。
中には人の気配はなく、ここ最近人が使用した痕跡も見当たらなかった。
中は意外と綺麗になっていて、椅子などの備品も朽ちてはいない。
これは運がいい。
そう思い、私は適当に寝床を作ろうとした。
その時、ポケットから「それ」が落ち、教壇の方まで転がって行った。
私はそれを確認して、「それ」を拾いに行こうとした。
その瞬間、「それ」は目をそむけたくなるほど青く輝きだした。
私はとっさに目をかばう。
光はなおも強くなり、自分が確認できなくなりそうになった時、光はゆっくりと収束を始めた。
同時に右手にわずかな痛みが奔る。
右手を見た。
右手の痣が赤く輝いていた。
そうこうしているうちに赤と青の光は収まり、辺りは先ほどと同じ静謐さを取り戻す。
「それ」のあった方を再度見ると、どこのとも知れない服装に身を包んだ、銀髪で赤い瞳の少女が立っていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
意識を現実へと戻し、とりあえず今の状況を受け入れる。
改めて周囲を見渡すが、教会には穴もなければ、隠し入口の類も見受けられない。
もちろん、入った当初は人の子一人いなかった。
それがさっきの光を合図にしたかのように唐突に現れた。
それにしてもさっきの光は本当に何だったのだろうか?
そう考えていると、目の前の少女は再び喋りだした。

「私をここに呼んだのはお前かって聞いているんだぞ!」
「・・・・・・・・・。」
「無視するな!呪うぞ!」
「うるさい。黙れ。」

少し腹に力を込めて言う。
すると、その少女はビクッとすると少したじろいだ。
丁度いいので、私はそいつに名を尋ねる。

「おい、お前。いったい何者だ?」
「た、尋ねてるのは私のほ―――」
「いいから答えろ。」

睨みつけながら再度言う。
また喧しくなりそうなので、機先を制した。

「な、何なんだ、お前は・・・。いくらマスターだからって私の質問を適当にあしらうなんてあんまりじゃないか・・・。」
「うざい。さっさと言え。」

意味のわからない状況に少し腹が立ってきたので、やや八つ当たり気味に怒鳴る。
少女は先ほどまでの威勢はどこへ行ったのやら、シュンとして話しだす。


「・・・私はお前のサーヴァント、アサシン。その真名をフィアと言う。」
「・・・で、暗殺者が私に何の用だ?」
「・・・お前に呼ばれたから来たんだぞ。」
「呼んだ覚えはない。」
「?、そんなはずはないぞ。だって―――」

そう言うと、その少女――フィア――は音もなく、かなり素早い身のこなしで私に近づき、右手をとった。
      • なるほど、アサシンと言うだけの事はある。
これほどの身のこなしなら暗殺者としては十分かもしれない。

「ほら、ここに令呪があるだろ?これが私を呼んだっていう証明だ。そして私のマスターであるという証明でもある。」

私の右手を指しながら、フィアは言った。

「・・・そうか。で?それが何なのだ?」
「つまり、お前は聖杯戦争の参加者となり、聖杯を手に入れる刺客を得たのだぞ!」
「・・・聖杯戦争?聖杯?」

この女は何をアホな事を言っている?キチガイなのか?
私が何か言おうとする前に、フィアは突然声音を変えてしゃべりだした。

「そう。お前が真に叶えたい望みを叶える存在、聖杯を賭けた殺し合い。それが聖杯戦争だ。」
「・・・・・・・・・。」

殺し合い、という単語を聞き、私は今まで湧いてきた感情が引いて行くのを感じた。

「・・・どういう事だ。」
「そのままの意味だ、マスター。」

真に叶えたい願い・・・。やはりアレか?
アイツにも言われた、「真に愛される事」か?
私が考えようとすると、フィアはいきなり私に手を差し出してきた。
先ほどまでの雰囲気はなりを潜め、初めの時のような少し明るげな感じであった。

「行こう、マスター。」
「・・・あ、ああ。」

ついうっかり返事をしてしまった。
少しバツが悪くなる。

「そういえば、マスターの名前をまだ聞いてなかったな。」
「ん?」
「教えてくれないか?」
「・・・そうだな。C.C.、だ。」
「シーツー?変な名前だな?」
「やかましい。」

そう怒ると私は教会のステンドグラスを仰ぎ見る。
願い。願い。願い。
      • 本当に叶うのならば、それもいいかもしれない。
私はそう思うと、新しくできた道に向かって進んだ。
そこでは、いかなる運命が待ち受けているのだろうか。
私は、枯れかけていた好奇心を再び起こすとフィアの手をとった。
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