光と闇の邂逅


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――― 一年前、イギリス ―――

ブリタニア家。魔術に携わる者でこの家系の名を知らぬ者はいないだろう。
西洋魔術発祥の地とされる大英帝国にその根を培い、源流を辿れば王室にさえ繋がるという名家の中の名家。
視界に収めている相手に問答無用で魔術をかける【魔眼】研究の最高峰であり、その血統から優秀な魔眼使いを数多く輩出していることでも名を馳せている。


だが、それはあくまで表向きの話だ。
その実は弱肉強食を唱える実力主義者、現当主シャルルの元、兄弟姉妹間での次期当主をめぐる争いに裏切り、暗殺の頻発。
実力もなく、継承順位の低い者たちなどは、ブリタニア家が標榜する究極の魔眼【ノウブルカラー】到達のための実験台にまでされる始末だった。


ルルーシュ・ランペルージは、もう二度と踏み入れることはあるまいと思っていた生家に足を踏み入れる。
母を殺し、今また自分から妹を奪おうとする忌むべき父親、シャルル・ジ・ブリタニアとの謁見のため。

×  ×


「……来おったか、この愚息がァ。ワシを殺すとまでのたまった小僧が、よくもブリタニア家の敷居を跨げたものよ」
「私とてもう二度とこの家には帰らぬつもりでしたよ、シャルル公」


ルルーシュの立つ赤絨毯よりも、数段高い場にて玉座につくブリタニア家現当主、シャルル。
没落しかけたブリタニア家を一代で立て直し、今日の隆盛を築いたといってもいい傑物。
だが、ルルーシュに怖じる気持ちは毛頭ない。


「便りのひとつだけを残し、“ナナリーはもらっていく”とはどういうことですか? 家の名も替え、他人となったナナリーを今更連れ戻す権利など貴様にはないはずだぞ、シャルル」


殺しても殺し足りぬ相手を前に、冷静であろうとするルルーシュの声が無意識にささくれ立つ。
どこまでこの男は、自分の大切なものを奪っていけば気がすむのだ。
母を奪い、現当主を口汚く罵ったルルーシュを妹共々極東の地に幽閉し、長年放置していたと思えば今また妹を奪おうとする。


「バカ者がァ……元はと言えば貴様のせいよルルーシュ。ついに貴様を残し、我が家に【ギアス】の所有者は生まれなんだ。
 長子であるオデュッセウスもあの体たらく……。
 貴様がバカなことさえしなければ、我がブリタニア家の悲願にまた一歩近づけたというものを……」
「ブリタニア家が今更どうなろうと私にはまったく関係のないことですよ。
 ナナリーは返してもらうぞシャルル。さっさと居場所を教えろ。」




勘当したはずの愚息が、その後【ギアス】を発現するとは想定していなかったのだろう。
無理もない、これまでの【ギアス】所有者はみな出生時すでに何らかの兆候があった。
シャルル公にとってルルーシュは計算外のイレギュラーであった、ということだ。
己の過去の愚行から今では跡継ぎに不出来な長子を据えねばならない。
ルルーシュにとっては笑いの止まらぬ出来事ではあるが。


「……ふっ、ナナリーはなァ、ワシが嫁に出してやることにしたわ。
 目暗で、足もきかぬとあっては貰い手などおらぬだろう?
 しかしこれがまた奇特な家もあったものでなぁ、それでも構わぬという家があったわ。
 ……まぁ、胎盤、苗床としては使えるからのぅ。それが【魔眼】の血を受け継ぐ娘というなら大喜びよ。
 それであちらの研究成果三代分を提供するというのだから、安い買い物だろう?
 ブリタニア家悲願の礎になれるというのだ、ナナリーも本望であろう」


ルルーシュの全血液が沸騰する。激昂し、抑えきれぬ殺意を抑え努めて冷静であろうとするルルーシュの肩が震える。
今すぐにでもこの男を縊り殺してやりたい。殴打し、撲殺することでも構わない。
だがシャルルは現ブリタニア家の当主であり、歳を重ねたとはいえ強力な魔術師。
今のルルーシュでは、勝てない。まだ王を倒すには至らない。


「シャルル……取引だ。俺の【眼】をくれてやる。だから今すぐナナリーを解放しろ」
「ふっ、今更そんなものなどいらぬわ。三代にも渡る研究成果ぞ? 貴様の【眼】ひとつ程度で払えきれるものではないわ。
 まぁ、かの『聖杯』を持ち帰る――というならば話は別だがなぁ……?」


それが目的か……。ルルーシュが幽閉された極東の地、冬木市。
そこで行われる魔術師同士の殺し合い『聖杯獲得』。
過去ブリタニア家も度々参加し、そして敗北を重ねていた悲願へと至れる奇跡獲得の戦い。
来年に迫るそれに、今ブリタニア家から出せる駒はない。
長子オデュッセウスを筆頭に、現在残っている兄弟たちの出来はあまり良いとは言えない。
唯一可能性があるとすれば第二子シュナイゼルか? だが奴はシャルルに信用されていなかったはずだ。
クソッ……だから人質が効き、【ギアス】を持つ俺にこの役目が周ってきたのかッ!


「――二言はないな? シャルル」
「くくっ……物分かりのいい愚息よのぉ。そうだな、貴様が“万が一”聖杯を持ち帰ることができれば、ナナリーを解放してやろうではないか。
 『聖杯』が手に入ればすぐにでも悲願に手が届くのだからなぁ」


思えば、全てがシャルルの手のひらの中での出来事だったのだろう。
俺を冬木に送りその地に慣れさせ、裏では秘かにナナリーを人身御供とした研究成果獲得のための交渉を進める。
俺が聖杯を獲得できてもよし、例え俺が失敗してもナナリーと引き換えに三代もの研究成果が手に入る……どう転んでもブリタニア家の利に繋がる長年に渡る策。
ああ、乗ってやろう。乗ってやろうじゃないかシャルル・ジ・ブリタニア。
だが、全てが貴様の思うがままに動くと思うな。
俺は必ずナナリーを取り戻してみせる――そしてお前を倒し、俺は母さんの仇を討つ……!

一年後、ルルーシュの右手にはくっきりと3つの令呪が刻まれていた。
ルルーシュの想いの強さと、魔術師としての実力が聖杯にも認められたのだろう。
この日のためにやれるだけのことはした。
依代となる触媒の獲得。冬木に来るであろう敵マスターの入念な調査。


「――――告げる。
 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」


敗北は許されない。自身の敗北はナナリーの一生を終わらせてしまうものとなる。
どんな手段を使ってでも、ルルーシュは勝たねばならない。
絶対遵守の魔眼【ギアス】の使用も辞さないつもりだが、もし魔術師を相手どれば当然ルルーシュの魔眼に対策を打っているだろう。
今は縁を切ったとはいえ、それほどまでにブリタニア家の家名は重い。


「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。
 汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」


ルルーシュが求めていたのは忠臣だった。
悪逆を行うであろう自分を決して裏切らず、尚且つ強力な戦力を秘めるサーヴァント。
彼の用意した触媒は、数限りなく存在する平行世界を行き来する第二魔法の使い手、シュバインオーグが残したとされる指輪の断片。
異世界において、人々に希望と勝利をもたらしたと謳われる騎士の縁の品。

輝く黄金の髪と純白の外套をはためかせ、かくしてそれは降り立った。
大地と空の力を借り、異世界に招かれ勇者と成った、人の身でありながら人々に語られ、夢によって編まれた清純なる英雄。


「――主からのお喚びに預り、『勇者シンク』ライダーのクラスを持って現界しました。 これからよろしくお願いします、マスター!」


少年の屈託のない笑顔に、ルルーシュは喜悦の笑みを浮かべた。
―――さぁ、夜が始まる。謀略が支配するルルーシュの戦場が。
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