孤高の兵士と科学者


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私の名は木山春生。大脳生理学者で専攻はAIM拡散力場。学園都市の能力者が無意識下で周囲に放出している力の事だが…
これを読んでいる君たちにはいらぬ説明だったな。さて、そんな一介の脳科学者に過ぎないこの私が今回のとある大きな出来事についての語り部の一翼を担うことに
ついて読者諸君はどう思うのだろうか。まあ、一人ひとり抱く思いは違うだろうが、どうか最後まで見届けて欲しいものだ。

今私が何をしているかというと、研究室を出て、地方の小さな都市、冬木市という街に諸事情にて出張に出ているところだ。
私の愛車である青いボディのランボルギーニ・ガヤルドで高速道路を1時間弱走り、県道を30分くらいだろうか、走らせたところで目的の街、冬木市にたどり着く。
私の出張中の住まいは、冬木市の中心部に位置する6階建てのマンションということになっている。地図をもとに車を走らせ、そのマンションの位置を
確認したのち、図書館へと向かい資料集めへと取り掛かる。―冬木市中央図書館。県内でも有数の蔵書量を誇り、わざわざ市外からここに来る者も多い。
…と入り口すぐ近くの案内に記されてあった。まあ、仕事を進めるにあたって蔵書量が多いに越したことはない。

私は、図書館内に足を踏み入れると目的の資料を集めに、脳科学を扱った本を揃えているコーナーへと向かった。私の研究の参考になりそうな本を3,4冊見繕い
図書館中央のテーブルへと向かう。席についていた人数はまばらで、別にどこでもよかったのだが、ある一か所が私の目に留まる。
車椅子の少女ともう一人の少女が楽しそうに語らいながら勉強をしていたのだ。その光景にかつて私が学校で教鞭を振るっていた時のことを思い出し、
どこでもいいのならあそこにすればいいという結論に達し、その車椅子の少女の隣まで歩を進める。

「隣、座ってもいいかね?」
「あ、はい、ええですよ」

と、やんわり優しい関西弁で了承を得、私は隣に腰を下ろすと鞄からノートパソコンを取り出し、先ほど持ってきた資料を基に仕事を進める。
順調な滑り出しだな、一日目の進行度としては上出来だろう。しかし…

「なあすずかちゃん、この問題どうやって解いたらええんやろうか?」
「どれどれ…ん~、私にもちょっとわかんないなあ…ごめんね、はやてちゃん」

どうやら隣の少女たちはわからない問題に苦戦しているようだ。解らないことを解るようにしてきたからこそ今日の人類の発展があるのだが…
ここはそんな大層な規模の話を持ち出す場所ではないな。元教師として、ここは助け舟を出すことにしよう。

「君たち、困っているようだね。その問題は、こうすればいいんじゃないかね?」
「あ、そっか、お姉さん、ありがとな」
「なに、気にすることはないさ。これでも元教師だから。ときに君たちはいつもここで勉強してるのかね?」
「はい、よくはやてちゃんと二人でここで楽しくおしゃべりしながらやってますけど」
「そうか。私も出張中でしばらくはここで仕事を進めることになるからまた顔を合わすこともあるだろうな。その時はよろしく頼むよ」
「あ、はい。こちらこそ」



私は彼女たちに背を向けて手を振り、先ほど持ってきた本を返しに行く。あとは自室に戻り報告書をまとめるだけなのだが…
ここで妙なことに気付く。持って行ったときの本の隙間と、今返すにあたっての本の隙間の数が一致していない。一冊入れられないのだ。
脳科学などという難しい命題の本を先ほど席についていた客層が持っていったり、戻したりするとはとは考えにくいからここで考えられるのは一つしかない。
誰かが別のコーナーの蔵書を間違ってここにしまった、ということだろう。そういうことならば背表紙のタイトルでそれとわかる本があるはずだ。
そしてそれはすぐに見つかった。タイトルは『魔術師と聖杯戦争のあらまし』。

その本を棚から抜き取り、持っていた脳科学の本を出来た隙間にしまう。さて、この本は果たしてどのコーナーに持っていけばいいのか…
この本が本来あるべき場所を探すまでの間、私はその本を読みながら歩き続けた。かいつまんで言うと、魔術師たちが過去の英雄たちを英霊として召喚し、
それらを下僕として使役、戦わせることで最後に残った一組があらゆる願いを叶えられる聖杯を手にすることができ、この聖杯を巡る戦いを『聖杯戦争』といい、
数十年に一度、この冬木の地で行われるのだそうだ。

この科学の世の中に魔術師だの英霊だの聖杯だの絵空事にもほどがあると一笑に付してしまう。このような荒唐無稽な内容の本まで置いてあるとはさすがというべきだ。
しかし、この類の本が置いてあるコーナーをしばらく彷徨ってみても一向にしまえそうな場所は見当たらない。
仕方なく、蔵書検索用パソコンにタイトルを入力し、検索をかけてみるのだが…検索結果に表示された数値は『0』だった。
タイピングミスかと思い、もう一度背表紙を確認したところで、この本が図書館の蔵書ではありえないことに気付いた。
本来図書館の蔵書には背表紙に識別番号が書かれたラベル、裏表紙には貸出記録を管理するためのバーコードなどが張り付けられているものだが、
この本はそれらしきものが一切見当たらなかった。つまりこの本は外部の人間が、何らかの目的を持ってこの図書館に持ち込んだということになる。
この本に対して得体の知れぬ何かを感じつつも、私はこの本を自室へと持って帰ることにした。

すでに生活様式が一通りそろえられたワンルームマンションの一室で、私はこの本を更に熟読する。
『通常、英霊を召喚する際にはその英霊に纏わる触媒が必要となる。それがない場合は、召喚者(マスター)の性質に最も近しい英霊が下僕(サーヴァント)として召喚される。
召喚が完了すると、召喚者の手の甲には令呪というサーヴァントに対する絶対命令権を宿した紋章が浮かび上がり、これが強大な力を秘めたサーヴァントを
人間が御する唯一のカギである』

なるほど…当初は荒唐無稽だと一笑に臥してしまったがここまで詳しく書かれていると現実味を帯びてくるというものだ。
そして私は次のページをめくったのだが、その刹那、ページに挟まっていたあるものが床に敷き詰められていたカーペットにはらりと落ちる。
これは…束ねられた獣の毛だな。色は…銀色に輝いている。それを手にした瞬間、私の頭の中にある考えがよぎる。
万に一つ、この本に書かれている内容がすべて真実だったとしたならばこの獣の毛を触媒とすることでサーヴァントを召喚できるのではないかと考えたのだ。
それが実現すれば、この本をあの図書館へと持ち込んだものの正体も大体の見当は付く。この本を最初に手にしたものにこの毛を触媒とすることで
サーヴァントを召喚させ、聖杯戦争へと参加させる腹積もりなのだろう。そして聖杯戦争を開戦させ、他のマスターとサーヴァントをすべて打ち倒し
聖杯を手にし、あらゆる願望を実現させる…面白い。どこの誰だか解らんが、君の仕掛けたその勝負、私が買おうじゃないか。


その本に記されていた通りの魔方陣を紙に描き、その中央に白獣の毛を置き、召喚のための呪文を詠唱する。

「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。
されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

瞬間、室内だというのに疾風が吹き荒れ、周囲の家具を大きく揺らす。その疾風は魔方陣の中央で一つの渦となり、その渦も一瞬で立ち消え、現れたのは…
髑髏をモチーフにしたエンブレムで前面部が装飾された大きな帽子と、口元まで覆い隠す様な大きな襟のついた白いコートを身に纏い、
腰のあたりには異常に銃身の長い拳銃を右と左に一つずつ下げた大男だった。

眼前で起きたあまりの出来事に私は言葉も出ないが、それと同じように眼前の大男も一言も発さない。すでに疾風も静まり、部屋の中を沈黙が支配する。
向こうはどうやら何もしゃべるつもりはないようだ。ならば仕方ない、こちらから行くしかあるまい。

「君が、私のサーヴァントなのかね?」

その男は、ただ無言でうなずくのみ。驚いた、どうやら本当にサーヴァントを召喚してしまったようだ。それならば次に確認すべきは…

「君のサーヴァントのクラスは、バーサーカーかね?」

やはり無言で一つ頷くだけ。やはりな。獣の毛を触媒とすることから召喚されるのはバーサーカーだと予想はしていたが…
おもむろに自分の手の甲に目を落とす。そこにはくっきりと浮かび上がった幾何学的な模様を取った痣、すなわち令呪があった。
これから先の聖杯戦争に打ち勝てばあらゆる願いを叶えられる。そう、『子供たち』を救うためにも、私はこの戦いに勝たなくてはならない―!
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