途方もない歳月が過ぎ、膨大な数の種が栄え、数多の文化圏が興り、亡び、忘れ去られたのち、現在ゼンドリックと呼ばれる大陸に巨人族の文明が誕生した。
巨人族は帝国の版図を拡大し、自分たちより小柄な人型生物の種族を奴隷化し、膨大な知識を集めて蓄えた。しかし、“ジャイアントの時代” が残した最も大いなる遺産は、今なおゼンドリックに点在する巨大遺跡である。そうした巨大な建造物は強力な魔法なしでは建てられなかっただろうと学者たちは主張している。おそらく巨人族はその魔法を、単独かあるいは複数の強大なクリーチャーから学んだに違いない、と。
巨人族の支配は数万年続いた。巨人文明が滅びた原因となると学者のあいだでも意見が分かれ、さまざまな説が流布している。いわく、ドラゴンが世界を守るために巨人族を滅ぼしたのだ。いわく、奴隷種族が反乱を起こし、帝国を崩壊に追いやったのだ。いわく―これは少数意見だが―他の次元界からやってきた恐るべきクリーチャーたちが巨人の帝国を滅ぼしたのだ……等々。
巨人族の時代はどうあれ、現在のゼンドリックは風土病と食肉植物と猛獣がはびこり、凶悪なユアンティと無慈悲なドラウが跳梁跋扈する蒸し暑いジャングルである。これまでに考古学的調査を目的とした探険隊がいくつもジャングルに分け入ったが、生還した隊はほとんどない。巨人文明が存在したことの確かな証拠は少なく、学者たちはさらなる情報に飢えている。ゼンドリックという名前が冒険と同義語になったのも無理はない。そこには大いなる危険と大いなる報酬と大いなる謎が埋もれており、数万年来人目に触れることのなかった場所や遺物やクリーチャーを見つけるチャンスが眠っているのである。
最終更新:2013年03月04日 05:23