カルナス


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第4章:カルナス

戦のさなかに生まれしカルナス
夜の国よ
われらの敬礼を受け
その力もて世界を驚倒させたまえ!

カルナス国歌 『カルナス行軍曲』



 「諸王の生誕地」として知られる国カルナスは、戦争のさなかに生まれた。それゆえ、カルナス人たるもの男女を問わず誰しもが戦いの技術を生まれながらに身に着けており、それが体内を流れる血と夜毎に見る夢とに刻印されている。この地に初めて定住した人間は、ラザーの略奪者たちだった。彼らは荒涼たる海岸線に沿って前哨地をいくつも築き、そこからより住み心地の良い南部に襲撃を繰り返す。やがてこれらの前哨地は徐々に町や都市へと発展を遂げ、南進せずこの地に定住した人々は長く厳しい冬に耐えることで鍛えられていった。
 ラザーの略奪者の子孫たちは拡散を続け、やがて5つの独立国に分かれる。その1つ、カルナスで権力を握ったのは、かの征服王カルンであった。カルンはみずから治める大陸北東部を荒らす海賊や匪賊を糾合し、恐るべき軍隊に鍛えあげた。征服王の号令のもと、この軍隊はゴブリン類の残存勢力を国内から一掃し、次いで他の人間国に戦いを挑む。カルンの夢は巨大な王国の支配者として君臨することであり、その野望のおもむくまま、人間が治める地域のおよそ5分の2を征服した。無敵を誇ったカルンもしかし、最後にはコーヴェアの広大さそのものと、自分自身の嗜虐性向の前に敗れ去る。
 カルンの遺産は今なお形をとどめている。ただ、人々は彼がおこなった暴虐の数々を記憶の底に封印し、かわりに征服王のなした偉業ばかりを思い出す傾向がある。人間の国々の中原からゴブリン類の帝国の名残を一掃したこと。人々を奮い立たせ、文明化への道を歩みださせたこと。当時世界最強の軍隊をつくりあげたこと……等々。カルンはみずからの名を冠した国で生涯を閉じた。それから何世紀も経て、彼の子孫であり紛れもない“カルナスの子”であるガリファーが、征服王カルンの見た夢を引き継ぎ、五つ国の統一を果たす。
 ガリファーはみずからの王国を築くのにカルナスの軍事力を存分に活用した。それに太刀打ちできる勢力は皆無だったと言っていい。もちろん、ガリファーの戦争にはより良い社会を築くという夢と希望があった。だからこそ彼は、かつてカルンが果たせなかった野望を実現することができたのである。ガリファー王国成立後、全国から軍人たちが集まり、レッケンマーク・アカデミーで訓練を受けるようになった。そのためカルナス軍の伝統や訓練は王国全土に普及したが、戦いというものに対する熱意と熟達の程度においてカルナス人が他に抜きん出た存在であることは、依然として変わらなかった。こんにちに至るも、すべてのカルナス市民は一定期間兵役に就くことが義務付けられているし、普段は地元民兵組織に所属するのが当たり前になっている。
 カルナスは寒冷で厳しい風土の土地だが、そこに暮らす人々はそれに輪をかけて冷たく厳しい。最終戦争が勃発すると、カルナスの民はこぞって自分たちの国王を支持した。今まさに瓦解しつつあるガリファー王国のなかで、カルナスの軍事力に太刀打ちできる勢力がほかにあるとは考えられなかったからだ。しかし、いくら良い装備をそろえ兵の錬度を高めたところで、おのずと限界はある。彼らはアンデールとサイアリが駆使する秘術兵器をあなどっていた。また、スレインを支えるシルヴァー・フレイム教会の実力も見くびっていた。さらには、ブレランド人の士気と決意のかたさをも見誤っていたのである(開戦当初、ブレランドは五つ国のなかで最も与しやすい相手と思われていた)。

 カルナスは立て続けに屈辱を味わい、致命的と言ってもいい後退を何度も余儀なくされ、ついにカイウスⅠ世は“ヴォルの血”による協力の申し出を受け容れざるをえなくなる。死霊術の奥義を自在にあやつるヴォルの神官たちは、カルナスの戦没兵士を墓場から蘇らせ、このあまりにも長い戦争の後半戦をお膳立てした。疲れを知らないアンデッドの兵士たちは生者の部隊を強化するとともに、戦場にこの世ならぬ恐怖を持ち込んだ。ウォーフォージドが創造される以前、カルナスのアンデッドは戦いに投入された最も異様な兵力であった。
 最終戦争開戦と同時に軍事独裁制が敷かれたカルナスは、現在も軍法によって統治されている。おのずと外国人や冒険者の処遇が他国よりもやや厳しい点は否めないものの、だからといって旅行者を完全に閉め出しているわけではない。カルナスはガリファー法典の代わりにカイウス法を奉じている。これは古来の法典に基づいて編まれた厳格な規範と義務の体系だが、権利の多くが国防の名のもとに制限されているのを特徴とする。最終戦争に幕が下りると、さすがにあまりにも厳しすぎる法律は一部廃止されたが、それでも軍事体制による独特の重苦しい雰囲気は今もこの国全体を覆っている。
 こんにち、カルナスは国際平和勢力の一員たる立場に満足している。しかし、この国のあらゆる社会階層に流れる不穏な底流の存在を否定することはできない。例えるなら百戦錬磨の猛者からなる冷酷無比な戦隊の長とも言うべきカイウスIII世が和平を強く主張したとき、カルナス国内では驚きをもって迎えられた。将軍たち(カルナス貴族のなかで最も位の高い者たち)のほとんどは、いまだにそれを王のたんなる方便だと思っている。カイウスIII世は表向き講和するだけで、そのじつ疲弊した国力を再建しつつ反撃の隙をうかがうつもりなのだ、と。機が熟せばふたたび自分たちに出陣命令をくだし、ガリファー王の座を手中におさめるに違いない、と。ただ、将軍たちとその他の貴族の一部には、カイウスIII世が先代や先々代の王とは似ても似つかぬ性質惰弱な暗君であると決めてかかっている者もいる。彼らに言わせれば、スローンホールド条約こそはカイウスIII世の怯懦の象徴であり、“ヴォルの血”の勢力を縮小しようとする王の試みは、国民的信仰を根底から否定する暴挙にほかならないのである。以上のことから、もし現在の平和がいよいよ破綻するときが来るならば、王の願いもむなしく、そのとき真っ先に剣を振り上げるのはカルナスかもしれない。

戦後のカルナス



 カルナスは最終戦争を通じ、他国と交戦状態にあった期間がほかの4カ国のどこよりも長い。戦時体制を解くことはついに1度もなかったし、敵国との停戦が長続きすることもなかった。とりわけサイアリとの戦闘は凄惨で、ヴァラナーのエルフが傭兵としてサイアリに加勢したときなどはいよいよ酸鼻を極める戦いが展開された。アンデールとは大戦を通じてずっと敵対したが、カルナス‐アンデール戦線は長らく膠着状態におちいり、なかば惰性のような消耗戦が繰り返されるばかりであった。スレインおよびブレランドとはめまぐるしく変わる戦局しだいで敵にもなれば味方にもなった。
 “悲嘆の日”(デイ・オヴ・モーニング)当日、すでにサイアリの一部を手中に収めていたカルナス軍は、そこを拠点にしてブレランドに侵攻すべく準備に余念がなかった。サイアリがモーンランドと化したその日、犠牲者に数千のカルナス兵が混じっていたのはそれが理由である。 カルナスは大戦中、敵国の軍事行動による犠牲者に負けないほど大勢の自国民を飢饉と疫病のために失っている。最終戦争の火蓋が切って落とされてからまもなく、カルナスは伝染病と小麦枯れ病に見舞われ、かつて産業と軍事の伝統で知られたガリファー王国の1州は著しく衰えた。飢饉と疫病の二重苦がカイウスI世にとっても痛撃だったことは言うまでもない。なんとか国難を救いたいという一心から、彼は藁にもすがる思いで“ヴォルの血”の助けを借りる。これが、カイウスとカルナスを未来永劫変えてしまう決断となった。
 カイウスIII世として権力の座に返り咲いたカイウスI世が(『エベロン・ワールドガイド』のP.150を参照)、すぐに和平の算段を始めたことはすでに知られているとおりである。しかし、スローンホールド条約の締結から2年を経た今も、カルナスは依然として軍事社会であり、戦時体制を解くことに消極的である。将軍たちがカルナス貴族のなかで最も有力かつ影響力が大きいのも相変わらずだし、ほとんどの町は常設の大きな民兵組織を持ち、また国軍で兵役に就くことが国民の義務なのは戦時中となんら変わらない。げんに、今この瞬間にもカルナス兵は南東から侵入してくるヴァラナーのエルフたちと戦い、モーンランドとの境界でさまざまな幽怪妖異に立ち向かっている。そして、そうした戦いの1つひとつが新聞紙面をにぎわせ、また酒場の話題にされるのである。
 国境地帯の防備という点に関して、カルナスは比較的地の利に恵まれている。サイオン海峡がアンデールおよびスレインの脅威から守ってくれるし、北は海に面しているため、よほど気骨にあふれるラザーの海賊以外はまず攻めてこないと思っていい。歴史的に不安定だった南の国境も、サイアリが滅びた今は格段に安全になっている。モーンランドから断続的に押し寄せるモンスターはたしかに厄介だが、それでもサイアリ軍の侵攻に比べたらどれほどましか知れない。いっぽうカルナス北東部、レイクサイドとアイアンタウンには精強な部隊が駐留し、警戒にあたっている。カルナスとムロール・ホールドは国境線をめぐって依然係争状態にあるうえ、そもそもカルナス人の多くはドワーフの国を本来カルナス固有の領土だと考えているからである。
 カイウスは公式に“ヴォルの血”との提携を解消し、もはや国教にあらずとの詔勅も出した。しかし、国民の少なからぬ割合が血の教義をいまだに熱烈に信奉している。王はコースにかぎり“ヴォルの血”崇拝を禁ずる措置まで踏み切ったが、全国の町や村にある寺院は依然として信者を集め、またアターにあるクリムゾン修道院では折に触れて公開ミサが催され、敬虔な信徒たちで礼拝堂は立錐の余地もなくなるのである。
 いっぽう、翡翠爪騎士団の縮小は比較的成功したと言ってよい。カルナスは今、かつての愛国者集団(少なくとも騎士団創設当初はそういう触れ込みだった)を、もはやカルナスの国益さえ度外視した暴力的な過激派の集まりとしか見ていない。ただし、将軍や貴族の一部には、いまだ翡翠爪騎士団との協力関係を捨てない者もいる。
 カルナスは現在もアンデッド兵を国防に活用しているが、最終戦争に投入されたアンデッド兵の大多数は秘密の墓所に隠され、いつかまた彼らの力が必要になるときのために温存されている。この膨大な数のアンデッド軍団には、死霊大臣の指示により日々新たなアンデッドが補充されている。一朝有事の際にはカルナスの将軍たちが指揮する生きた兵士の部隊を瞬時に増強する予備兵として投入するためにほかならない。ただしその存在は、コーヴェアの諸国に対してほぼ完全に秘匿されている。カイウスは死霊大臣のもくろみを承知しているが、アンデッド兵の増強がどこまで進んでいるかは正確に把握できていない。
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