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#center(){&color(blue){&size(20){&u(){&bold(){流血少女エピソード-カップ焼きそば-}}}}} ---- 妃芽薗学園購買部の新商品開発室には鈍重でドロドロとした空気が充満している。 開発班の班員たちの苦悩と難渋から生まれ出る呻吟がその原因だ。換気扇と空気清浄機は フル稼働しているのにも関わらず、一向に空気が良くならない理由がそこにある。 班員の一人、夜岬深雪(やみさきみゆき)は既に極限状態だった。 三日前から授業も出ずに開発室にこもり続けているせいか、目許には隈があり、頭垢だらけのうえに髪は荒れている。 制服はシワと汚れだらけで、洗濯もしていないためどことなく異臭を放っている。 このような惨状は彼女に限った話ではない。他の班員たちも同等若しくはそれ以上に陰惨な状態になっている。 専用の机の周りは菓子パンや弁当の食いカスが散らかっており、鼠や蟻、ゴキブリなどが床に跋扈している。 もし彼女らの精神が尋常であれば、悲鳴の一つでも上げたことだろう。そんな余裕など存在しない程度には心が壊れていたのだが。 新商品開発班は現在、新商品の開発期間にある。開発期間では開発班員がそれぞれ試作品を作り期間終了後に試作品の品評会を開催する。 コスト・味・生産効率などの総合評価を元に販売する商品が決定される、というものだ。 つまり、単に美味いだけではなく、量産化前提で作る必要があるのだ。 その期限が翌日に迫っている。 班員たちは最終日まで試行錯誤し、よりよい商品づくりに励む。その追い込みのために、一週間前から開発室に篭った者もいるほどだ。 この新商品開発は、決して特別な賞がもらえたり、報酬がもらえたりするわけではない。 それでも、班員たちが血眼になって商品開発に臨むのは、彼女らのプライド故であろう。 そして、品評会当日。当日の参加者は三人だけだった。開発班は班長を除いて五人いる。内二人は体を壊し、保健室で療養中だ。 根を詰めすぎてしまったことが原因とされている。 欠席した二人の商品については、評価の対象外になった。体調管理は自己責任なのだから当然である。 品評会では、開発班班長、購買部部長、購買部顧問の三人が審査員となる。 先の二人が発表し終わり、深雪の番が回ってくる。深雪が作ったのが、このカップ焼きそばだ。 無論、ただのカップ焼きそばではない。仕上げのソースは深雪が試行錯誤の末に生み出したオリジナルソース。 麺は特殊な揚げ方によりカロリーはぐっと押さえられている。味は市販のカップ焼きそばより格段に上である。 いや、むしろレシピ通りの焼きそばより美味いといっても過言ではない。コスト面では他の二品より圧倒的に優れている。 結果、満場一致でこのカップ焼きそばが新商品に選ばれた。 商品が購買部に陳列されるのは、その翌日からだ。初日こそ所詮インスタント食品と鼻で笑われ売上は芳しくなかったが、 二日目からは爆発的に売り上げが上昇し始める。口コミで広がったのが原因らしい。 購買部側も急ピッチで生産に取り掛かるが、一日百食を超えるペースでの生産は即座には不可能だった。 すぐに売り切れるカップ焼きそばの需要過多は、消費者側の生徒たちによっても対策がなされていた。 それが「カップ焼きそばの共有」である。 一つのカップ焼きそばを複数の生徒で食べることで、この需要過多を満たそうと考えたのだ。 無論、生徒一人あたりの取り分は減少するが、平等精神のもと皆がそれで満足していた。否、満足せざるを得なかったのだ。 発売六日目の夜、カップ焼きそばの開発者である夜岬深雪にある異変が起こった。体の奥から湧き出てくる不快感。 胸のむかつきが表していること。それは、体がカップ焼きそばを求めているということだった。 どうしたらいい? どうすればこのむかつきが収まる?深雪がそっと頭に手を伸ばす。 開発室に篭っていた時とは違う、キューティクルのある手入れが施された髪を掴む。掴んだ髪を、雑草を引きぬくかのように引きちぎる。 何度も、何度も引きちぎる。頭部の中央に寄っている髪だけを残し、全てを毟りとった。残った髪をワックスで固めて真っすぐ伸ばし、深雪は大声で叫ぶ。 「ヒャッハー! カップ焼きそばをよこせ―!」 深雪のモヒカンザコ化は、あまり大々的に取り上げられなかった。開発のし過ぎで頭がおかしくなってしまった、としか受け取られなかったからだ。 だが、七日目には品評会でカップ焼きそばを食した開発班班長、購買部部長、購買部顧問の三人がモヒカンザコ化していたのだ。 八日目もまた、少人数ではあるがモヒカンザコ化した生徒が確認されている。九日目、遂にその異変が表面化した。百人近くの生徒がモヒカンザコ化したのだ。 そのモヒカンザコ化した生徒の詳細を風紀委員会が調査したところ、全てがカップ焼きそばの発売二日目にカップ焼きそばを食した者だった。 この調査結果を受けて、生徒会は購買部にカップ焼きそばの生産・販売を中止させた。 だが、既に時遅し。 日に日に増えるモヒカンザコは、とどまるところを知らない。カップ焼きそばを少量でも食した生徒は須らくモヒカンザコになっていた。 モヒカンザコ化が広まり、妃芽薗学園は大パニックに陥った。如何にしてこの学園をもとに戻すかということを考えても、妙案は何一つとして出ない。 時間ばかりが無為に過ぎていく。一方のモヒカンザコ達は、学園の破壊活動を行なっていた。 元々はカップ焼きそば販売中止に対するデモ活動だったのが、いつの間にか、というよりモヒカンザコたちの必然により暴動と化しているのだ。 事態を重く見た生徒会は、購買部にカップ焼きそばの再生産と再販売を命じた。 これは、このモヒカン化事件に対する白旗であり、暴動の沈静化に失敗したということでもあった。 カップ焼きそばの再販により、妃芽薗学園の暴動は沈静化された。だが、カップ焼きそばの摂取によりモヒカンザコ化した生徒は九割を超えている。 モヒカンザコ化した生徒を元に戻す手段も見つかっていない。全ての元凶、夜岬深雪でさえもモヒカンザコとなってしまった。 いずれにせよ、真相は全て闇の中である。 ----

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