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プロローグ・白河一サイド①




■プロローグ1
此処は闇。此処が何時であるか何処であるかは誰も分からない。
―――此処が、始まりなのか果てなのか。何時か、原初なのか終末なのか。
しかし、知らずとも問題はない。此処へはその世界の主から“召集”がかけられれば来られるのだから。
“現在”この闇には二つの存在しかいない。

「―――ハルマゲドンの強制、ですか」
闇の中で声が空間を震わせる。その音に感情の色はなく、ただの確認のためのものである。
音の主は背は高めだが、その顔は幼さが残る。全身を白の衣装で身を包んだ少女。
―――名を白河一と言う。

『―――キミなら容易いものだろう』
白河の復唱に応えるように声が返ってくる。その声は男か女か判別がつかない、果たして人間のものかすらも。
声の主は闇が深いためか、この空間にいないのか分からないが―――その姿は見えない。
しかし、その存在は声のみにも関わらず圧倒的なまでの存在感を放っていた。
そう、この存在こそ“十束学園”の“学園長”に他ならない。
―――そしてこの闇の世界の主である。

『―――元妃芽薗学院の生徒であり、“時の導き手-クロックアーム-”の担い手であるキミならば』
白河は自分の右手を覆っている黄金の篭手を見る。

“時の導き手-クロックアーム-”
それは白河の右腕の肘の辺りまでをすっぽりと覆っている防具。
それは手の甲の辺りにアナログ時計を模した意匠が施されている黄金の篭手。
それは単体で“時間”に干渉出来る能力を秘めた“十束学園”戦力の一つ。

白河一はその“時の導き手-クロックアーム-”の所有を許されている“ストレングス・テン”の一人である。

「そうですね、問題はないでしょう」
「今回の目的も魔人の回収と見てよろしいでしょうか」

『―――ああ、私の目的は魔人の観測以外にありえない』
『―――めぼしい存在は規定の“時間”に送れ、それ以外はその“時間軸”に存在する有象無象に任せろ』

他にも白河は幾つかの確認事項を“学園長”に確認する。そのどれもは白河にとって問題のないものばかり。
そして最後の確認に移る。

「はい、了解しました。では最後に」
「私は“何時”の妃芽薗に?」
“時の導き手-クロックアーム-”の所有者である、白河一には“時間”による枷は存在しない。
故に白河の仕事はありとあらゆる時間軸へと移動し、その時間軸で“めぼしい存在”を回収すると言うものだ。

よってこれは白河にとっていつもの確認だった。
普通なら心が動かされる事などないのだが―――

『―――2014年、キミが入学した年だ』
声はそれを告げた。2014年、と。

「―――」
白河は思わず息を飲む、それは無意識のものだっただろう。
妃芽薗だけでは心は動く事はなかったが、その時間だけは白河にとって特別だった。
其処は“白河一”にとって全ての始まりであり、“彼女”の全てが終わった時間。

―――白河は思い出そうとする、そのハルマゲドンがどう終わったのかを。

しかし、悠久の時間旅行を続けていた白河は思い出すことは出来なかった。
主観にして膨大な過去が、有限にして無限と錯覚しかねないほどの過去が、それを許さなかった。

―――答えが出ない事が分かると白河は考える事を打ち切り、任務へと意識を移す。それは十秒にも満たなかった。

「では、これにて失礼します」
白河がそういうと闇からその姿が消える。
後に残ったのは闇と強大な存在だけ。


―――これがこの事件のはじまり。

―――そして事件の終わりである。