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X00-09 - (2008/02/18 (月) 03:36:51) のソース

ちょっと思いついたので書いてみました。
メインキャラ達が全然活躍していない・・・(笑)
長文の上駄文ですが、感想などいただけたら嬉しいです。
続く・・・かも?


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  ↓から本文です


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一台の馬車がラ・ヴァリエール家の前に停まった。
そこから降りてきたのは桃髪の少女を筆頭に、黒髪の少女と少年、
その後に高貴な雰囲気を漂わせた、3人よりも少し年上であろう少女だった。
「お待ちしておりました、お嬢様」
門番の衛士が頭を下げると、桃髪の少女が頷く。
言わずと知れた、ラ・ヴァリエール家の3女、
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールだ。
ちなみに後の3人とは、サイト、シエスタ、アンリエッタであった。
衛士が玄関の扉を開け、ルイズ一行が邸に踏み入れると、なんとそこには
ラ・ヴァリエール伯爵をはじめ家族全員が出迎えに来ていた。
「ようこそおいで下さいました、陛下」
「お招きに与り光栄ですわ」
アンリエッタと言葉を交わした公爵は次に『おかえり、私の小さなルイズ』とルイズと抱擁を交わす。
伯爵夫人はそんな2人をよそに、シエスタに『いらっしゃい』と声を掛けた後、サイトに向き直る。
その途端、サイトの頭には以前タバサを助けた帰りのアノ騒動が蘇った。
....こ、殺される
“烈風”のカリンと恐れられたカリーヌ・デジレである。
しかも、以前小舟の中での出来事をこの人にも見られているのだ。
....あの時のアレでチャラって訳にはいかないよなぁ
サイトはまるで蛇に睨まれた蛙の如くぶるぶると震えながら考えていたが、予想は大幅に裏切られた。
「サイトちゃん、良く来てくれたわね」
そんな台詞が聞こえたかと思うと、いきなり抱きしめられたのだ。
....へ?
その場に居た全員が目を点にして固まったのは言うまでも無い。

 
「カリーヌ殿・・・・?」
いち早く立ち直ったアンリエッタが声を掛ける。
当のサイトといえば、思考回路がオーバーヒートしたようで目を白黒させている。
カリーヌの抱きしめる力が強すぎたのも原因の一つだろう。
「お、お見苦しいところをお見せしました」
慌てて平静を装うカリーヌだったが、自分の腕の中でぐったりしているサイトに気付くと
「きゃーーー!サイトちゃんサイトちゃん大丈夫しっかりしてー!」
と取り乱し、肩をつかんでガクガクと揺さぶる。
「おばさん、つい興奮しちゃって・・・・」
目を覚ましたサイトにハニカミながら答えるカリーヌの後ろでは、ルイズの2番目の姉カトレアが
何故だか申し訳なさそうにしていた。

 
「母さま、いったいどうなさったの?」
食事を終え、ルイズが先ほどから気にしていたことを声にした。
しかし、カリーヌは何のことを言われているのか分からない様で、『何のこと?』と聞き返す。
「さっきのアレは一体なんだったのよ」
立ち上がり声を荒げ、サイトを指差すルイズ。
そこでやっと思い至ったらしく、コホンと咳払いを一つする。そして鋭い視線をルイズに向けると
「ルイズ、貴方・・サイト殿が帰れる方法、見つかったの?」
と聞き返した。
サイト、ルイズ、アンリエッタ、シエスタの4人は予想していなかったカリーヌの言葉に息をのむ。
(どうして母さまが知ってるの?)
サイトが別の世界から来たことを知ってるのは、この中ではカトレアだけのはずであった。
それが、何故だか家族全員が知ってしまっているようなのだ。
「どどどどうして母さまが・・・・」
「質問しているのは私です」
バンッとテーブルを叩きながら、それでも静かな、いや静か過ぎる声で言う母のけんまくに飲み込ま
れ俯く。『まだ・・・・』とルイズの答えを聞くとため息を吐き、目を閉じて何かを考える素振りを見せ
るカリーヌだったが、すぐさま目を開けて全員を見渡す。
「サイト殿が異世界から来られた方だという事はカトレアから聞きました。
 全く見知らぬ世界に呼び出され、それなのに事ある毎に貴方を助け、しかも前の戦では貴方達を
 逃がすために殿軍を引き受け1人で7万もの兵を止め、瀕死の状態だったにも関わらず再度貴方
 の下に戻り、貴方を護ってくださってる彼に対し、いったいどう思ってるの?」
一気にまくしたてジロリと睨みつける。
母の視線を受け、俯き頬を赤くしながら『だって・・使い魔だし・・』とボソボソと呟くルイズ。
ココに来ても素直じゃない。
まぁ本人が見てる前で、しかも家族全員とアンリエッタにシエスタまでもが見ているのだ。
ルイズの性格を考えると、それも致し方ない事なのであった。
だが、今日はその性格が災いした。
ルイズの呟きを聞いたカリーヌが今までとは比べ物にならない程、怒気を含んだ表情に変わったのだ。
その場に居た全員が凍りついたが、カリーヌは何とか堪えてニコリと微笑む。
「ルイズ、貴方想像して御覧なさい。自分がサイト殿と同じ境遇だったらと。
 魔法の使えない、貴族であるということすら通用しない世界、そんな所にいきなり連れて行かれた
 として、貴方にサイト殿の真似が出来るかしら?」
一呼吸置いて続ける。
「貴方だけじゃないわ。私を含めてここに居る皆が、サイト殿と同じ歳の頃に同じ目に遭ったとして
 も、彼のように振舞う事は出来ないんじゃないかしら」
カリーヌの言葉に、サイト以外の全員がハッとした。
「恐れながら陛下にお聞きしたい事がございます」
話に聞き入っていたアンリエッタは、いきなり自分に話を振られ少し慌てた様子だったが、感情を声
には出さずに『なんでしょうか』と先を促す。
「陛下は彼の事をご存知だったのですか?」
....彼の事・・サイト殿が異世界の人物だって事かしら?
「ええ、存じておりました」
アンリエッタの答えに、カリーヌは満足そうに頷く。
「では、シュヴァリエの爵位だけでは、彼の功績に対して少なすぎる気が致します」
その言葉にアンリエッタは侮辱を感じたが、次の伯爵夫人の言葉がそうではない事を語っていた。
「私共で勝手に決めた事なのですが、彼にはラ・ヴァリエールの性を名乗らせてあげて頂きたいのです」
そこに、コレまで黙っていたサイトが口を開いた。
「あの〜すいません」
皆がいっせいにサイトに注目する。
カリーヌは『どうしたの?』と視線に籠めサイトを見つめる。
「えっと・・その・・そこまでして貰わなくてもいいですよ。俺、別に今でも不自由なんかしてませんし・・
 それに、自分の名前、結構気に入ってますから」
その言葉にハッとするカリーヌ。
(そうだわ、彼にラ・ヴァリエールを名乗らせると言う事は、今の性を捨てさせると言う事。
 彼の世界やご家族との繋がりを断ち切らせてしまう事になるんだわ)
「そう・・よね、ごめんなさいね、おばさん貴方の気持ちも考えずに勝手なこと言ってたわね」
涙を浮かべながら言うカリーヌに、ルイズやシエスタ、アンリエッタにはない魅力を感じてしまうサイト。
ドキドキしながら照れたように頬を掻く。
「いえそんな・・嬉しかったです。ほら、俺家族と離れてるじゃないですか。だから・・こっちの世界にも
 父さんや母さんが出来るのかと思うと・・正直嬉しかったです」
サイトの言葉にポンと手を叩き『じゃぁ、こうしましょう』とカリーヌは言い出した。
「貴方がハルケギニアに居る間、私達を本当の家族と思って頂戴。
 それならいいでしょ?こっちに居る間は、貴方が帰るべき家はここよ」
「サイト、わしは君を本当の息子の様に扱うからな。甘やかしはしないぞ」
カリーヌに続き伯爵までもがそう言ってくれた事に対して、サイトの中で今まで抑えていたものが溢れ出した。
「あ・・ありがとう・・ございます・・」
ついに泣き出してしまったサイトを、エレオノールとカトレアが優しく抱きしめるのだった。
 
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