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416 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/08(木) 01:28:48 ID:uPUX5pgY 「ふああ」 窓際でルイズが居眠りから目を覚まし、伸びをする。 右手をんー、と思い切り伸ばし、小さな涙の粒が目の端に光る。 その仕草は、子猫を連想させた。 春眠、暁を覚えず。 才人の脳裏を、そんな言葉がよぎった。 ルイズはじっと見つめるそんな才人の視線に気づくと、頬を染める。 「な、何見てんのよ!」 寝起きを見られた気恥ずかしさを隠すために、ルイズは思わず怒鳴ってしまう。 そんな仕草も愛らしく、怒鳴られてもなお才人は笑顔のままだ。 「いや、欠伸するルイズ可愛いなー、って」 思わず本音が出る。 才人のその台詞にルイズの顔面が火を噴く。 「なななななな、何言って」 照れるルイズが面白くて、才人は続ける。 「ルイズ可愛いな、って言ったんだよ」 赤くなったまま俯いて、ルイズはちらりと才人の方を伺って、言った。 「ほ、ほんとう…?」 「ほんとほんと」 二人の間に流れる、妙に甘い甘い空気。 昼間だというのにそのままコトに及びそうな雰囲気を、扉が開け放たれる音が蹂躙した。 ばたんっ! 勢いよく扉を開けて現れたのは、シエスタだった。 そして彼女はなんの脈絡もなく言い放った。 「『オハナミ』行きましょう!『オハナミ』!」 417 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/08(木) 01:29:58 ID:uPUX5pgY 荒れ狂うルイズをなんとかなだめると、話を聞く雰囲気になった。 「で、何よ『オハナミ』って!」 私とサイトのストロベリータイムを邪魔するだけの価値はあるんでしょうね、と心の中だけで突っ込みながらルイズはシエスタに尋ねる。 荒れ狂ったルイズの飛ばした枕やら机やらシーツやらを元の位置に戻しながら、シエスタはにこやかに言った。 「『オハナミ』っていうのは、タルブの春の行事なんですよ。  って言っても、ひいおじいちゃんが植えた、『サクラ』の樹の花を囲んで宴をする、っていうものなんですけど」 そしてちらりと才人を見る。 才人は、案の定懐かしそうな顔をしていた。 「花見かあ…」 たしかにシエスタの曾祖父は才人と同じ日本人だ。 彼が望郷の念に駆られてこのハルケギニアで桜を探し出し、タルブに植えたとしてもなんの不思議もない。 それが実際行事となっていて、シエスタの故郷タルブでは、花が見ごろになると必ず催されるという。 「行きたくないですか?『オハナミ』」 シエスタのその質問は、この部屋にいる全員に投げかけられたものだったが、その主なターゲットはほかでもない才人だった。 そしてその才人は、一も二もなく頷く。 「行くよもちろん!」 そうすると、残りの一人もこうなるわけで。 「しょ、しょうがないわね、犬が行きたいっていうなら行ってあげてもいいわよ」 ミス・ヴァリエールはさそってないんですけどぉー、と心の中だけで突っ込み、シエスタは微笑んだ。 「じゃあ、早速準備しますね!」 418 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/08(木) 01:30:45 ID:uPUX5pgY そして、仕立てられたタルブ行きの馬車の中には。 タバサとシルフィードがすでに乗っていた。 「ちょっと、アンタがなんでここにいるのよチビっこ」 半眼で黙々と本を読み続けるタバサを睨みつけ、ルイズは言う。 タバサは本から目を離さず、応えた。 「…サイトが行くなら私も一緒に行く」 そしてぱたん、と本を閉じると。 ルイズと同じように半眼で、殺気のこもった視線を、ルイズに返す。 その視線はこう語っていた。 出先でサイトといい雰囲気になろうったって、そうは行かないんだから。 ちなみにタバサの今読んでいる本は、『素直になれない女主人 〜史上最強の執事〜 第3巻『明けの海は嫉妬に燃えて』』である。 つい弾みで執事を追い出してしまった女主人が、執事に絡んでくる女どもを見てやきもきする、というあらすじである。 「…なによ、喧嘩売ろうっての?」 今にも一触即発な雰囲気に二人をなだめたのは、当の才人だった。 「まあまあ落ち着けよ二人とも。みんなで仲良く行けばいいだろ?」 「そうなのねー。みんな仲良くすればごはんもおいしいの!きゅいきゅい」 才人の台詞に続けたシルフィードの声が、その場に満ちた闘争の気配を打ち消した。 …しょうがない、ここは。 …サイトに免じて、許してあげる…! 二人で全く同じことを考え、最後に視線で火花を飛ばし、その二人は馬車の席の対角線上に座ったのだった。 419 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/08(木) 01:31:16 ID:uPUX5pgY そして、一行の到着したタルブは。 なぜか、大騒ぎだった。 実家に着いたシエスタをまず襲ったのは、女王来訪の知らせ。 「えっ!?女王陛下が『オハナミ』にいらっしゃるんですかっ?」 シエスタは驚いて、自分も準備しなきゃ、と慌てて女王来訪に備える村の面々に加わった。 逆にルイズは冷静だった。 …やるわねあのわたあめ女王…!タルブの行事がサイト絡みだと踏んで、網を張ってきたか…! ルイズは、アンリエッタがタルブの『オハナミ』が才人の世界に関連する行事だと見るや、そこに才人が来るようなら自分も出かけるように網を張ったのだと予想していた。 そうなると、このタルブは戦場と化すだろう。 才人をめぐって、血で血を洗う争いが展開されるのは目に見えていた。 そして。 ルイズの視界に、同じように顔をしかめるタバサの姿が目に入った。 …シエスタはあんなだし。姫様に対抗するためには…。 そしてルイズは、そんなタバサに近寄る。 近寄ってきたルイズに、タバサは反射的に杖を構える。 そんなタバサに、ルイズはすっ、と手を差し伸べる。 「…気に食わないけど、休戦といきましょう」 そんなルイズに、タバサは満面に不審を露にしてルイズを見つめる。 ルイズははぁ、とため息をついて、タバサに語りかける。 「アンタも聞いたでしょ?  もうすぐここには、サイトを狙ってアンリエッタ女王陛下がやってくるわ。  …悔しいけど、私一人の力じゃ、サイトを守りきれそうにない」 この村の状況を見るに、アンリエッタはその権力の全てを使って、才人と『オハナミ』する気だろう。 彼女の『相応の覚悟』は、王族だけあってとんでもないものだ。 タバサはその答えに納得し、その手を握り返した。 「…サイトを想うのは、私も一緒」 こうして、雪風と虚無の二人は、手を組んだのである。 420 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/08(木) 01:33:09 ID:uPUX5pgY シエスタはなんと、タルブの入り口で女王陛下のお出迎えをするという役目を申し付けられた。 それは、唯一肉眼で女王陛下を見た者であるという、至極真っ当な理由からだった。 「どどどど、どうしよう…!」 しかしいくら生で見たことがあるとはいえ、シエスタにとってアンリエッタは天上の人である。 才人を狙っているとはいえ、仕えるべき人であることに変わりはない。 ないのだが。 「…サイトさん独り占めしようとされたりしたら、私手ぇ出しちゃうかも」 心配事はそっちであった。 恋愛の前に全ての人々は対等となる。恋する資格に変わりはなく、愛する想いが全てを決める。 たとえ女王陛下とはいえ、才人の前では対等な女と女。 もし理不尽に権力を行使されたりしたら、サイトさんを連れて逃げよう、とシエスタは考えていた。 そうしてシエスタがタルブの入り口で待ち構えていると。 護衛の騎士を従えたトリステインの旗を閃かせた六頭立ての馬車が、村の入り口にやってきた。 間違いない。女王の馬車だ。 シエスタは深々と頭を垂れ、その一団を迎える。 すると、女王の馬車が彼女の前に止まり、その馬車の扉が開いた。 そして降りてきたのは…他でもない、アンリエッタ女王その人だった。 あまりの展開にシエスタが驚いていると。 「やっぱり!あなたシエスタさんね!」 アンリエッタはそう言って笑うと、シエスタの手をとった。 シエスタの身体が緊張に強張る。強気なことを考えてはいたものの、やはりいざ本物を目の前にすると萎縮してしまうシエスタだった。 アンリエッタはそのままシエスタを馬車の中へ引っ張っていく。 「あなたには、聞きたいことがたくさんあるんです。  『オハナミ』のこと、タルブのこと。  そして、サイト様のこと」 最後の一言とともにウインクし、アンリエッタはシエスタを馬車に載せてしまう。 御者はそれを確認すると馬に活を入れ、馬車を進ませる。 421 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/08(木) 01:34:30 ID:uPUX5pgY 馬車の椅子の上で固まるシエスタに、アンリエッタは微笑む。 「ここは今、あなたと私の二人きりです。そんな硬くならなくてもよろしいですわ」 しかしそんなこと言っても。 「恋愛の前に全ての人は対等、ですもの」 その言葉に、シエスタははっとなる。 「そう、あなたも私も、サイト様を想う女同士。  でも、今彼の傍には、ルイズがいる」 そしてアンリエッタの目がぎらりと光る。 それは、トリステインを統べる慈愛に満ちた女王の顔ではなく。 嫉妬に狂う、アンリエッタという、ただ一人の女の顔であった。 シエスタは急に、この女王に親近感が沸いてきた。 「私にできることでしたら、なんなりと」 …正直私も、そろそろミス・ヴァリエールとは決着をつけたいと思っていましたし。 そして二人は、視線を合わせる。 「…あなたとは、いいお友達になれそうですわ…」 女王アンリエッタは、そう言って手を差し出す。 シエスタはその手を、しっかりと握り返した。 ここに、女王とメイドのタッグが誕生した。 523 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/10(土) 02:30:25 ID:HhDlCW0h 女王の馬車はまっすぐ、タルブの外れにある『サクラ』の樹が咲く丘へと向かった。 アンリエッタはシエスタから伝え聞いた『オハナミ』の作法に則り、まずは『サクラ』の木の下に、宴席が設けられるのを待つことにした。 準備が整い次第お呼びいたしますので、と騎士の一人が馬車の中のアンリエッタに告げる。 「さて、それでは…」 アンリエッタはそう呟くと、馬車の中から外界と通じる窓の鎧戸を閉め、目の前に座るシエスタに視線を移した。 「ご存知のとおり…今、サイト様の傍らには、ルイズがいます。  彼女がいたのでは…サイト様と一緒に、ゆっくり『オハナミ』を楽しむこともできません…」 そのアンリエッタの言葉に、シエスタが付け加える。 「いいえ、女王陛下。まだ一人、厄介な者がおりますわ」 シエスタの言葉に、アンリエッタははて、と首をかしげる。 ルイズとこの娘以外に、サイト様に執心な女性がいたのかしら? 「それは?」 促すアンリエッタに、シエスタは応える。 「タバサとかいう、青い髪の小さな女の子です」 「あの、ガリアの騎士ですか…」 幼いながらにして騎士の称号を持つあの娘。ルイズと同等か、それ以上に厄介な相手だ。 どうしたものか、とアンリエッタは思索する。 そしてすぐに、ある作戦を思いついた。 「ありがとうシエスタさん。あなたの『オハナミ』の情報、さっそく役に立つ時がきましてよ」 そう言って、アンリエッタは微笑む。 その笑顔は、勝利を確信した者のそれだった。 524 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/10(土) 02:31:00 ID:HhDlCW0h 「…何か、釈然としないわね…」 『オハナミ』の宴の席で、ルイズは憮然としていた。 おかしい。何かが変だ。 アンリエッタの計らいにより、『オハナミ』の席は華やかに設けられていた。 見事に咲き誇る『サクラ』の樹を囲んで、アンリエッタ一行の持ち込んだ酒やご馳走が振舞われている。 そして、平民も貴族も関係なく、同じく宴に興じている。 ルイズの指摘するのはそこではない。 これは、『オハナミ』特有の『ブレイコー』とかいう習慣で、『オハナミ』の宴に参加するものは、身分や齢に関係なく、対等に宴を楽しむ権利がある。 だから、アンリエッタお付の騎士がそのへんのおっちゃんに複雑怪奇な関節技をかけられていても、お付のメイドが村の男どもに女王のような扱いを受けていても、ぜんぜん問題ないわけで。 ルイズの感じている違和感はそこではない。 「どうしたんだルイズ?」 彼女の目の前には、才人がいる。 そう、才人が『単独で』そこにいる。 当然絡んでくるはずのアンリエッタが、そこにはいなかった。 それこそがルイズの感じる違和感の原因であった。 当のアンリエッタといえば、離れた場所でまるで給仕がごとく、あちこちのグラスに酒を注ぎまくっている。 それもまた、ルイズの違和感を加速させる原因となっていた。 ルイズはせっかくの才人の語りかけも無視し、アンリエッタをじっと見つめる。 …何を企んでいるの、姫様…!? そんなルイズの視線に気付いたのか、アンリエッタはにっこりと笑うと、人ごみを縫ってルイズの方へやってくる。 …な、なに…? 「あらー?ルイズ・フランソワーズ?グラスが空いてましてよー?」 みょーに高いテンションでアンリエッタがルイズの持つ空のグラスに酒を注ぐ。 頬がほんのりと赤い。 酔ってる。この女王酔ってやがる。 「酔ってますね姫様」 呆れたようにルイズは言い、アンリエッタの酌を受ける。 そんなルイズに、アンリエッタは半眼で反論する。 「女王が酔っちゃいけないっていう法律でもあるんですかー?  ええー?答えなさいよルイズ・フランソワーズぅー!」 しかも絡み酒だ。 ルイズが飲むはしから、グラスに酒を注ぐ。 ルイズは仕方なしにその酒を飲み干す。 そしてまた、アンリエッタが問答無用で酌をする。 何度かそれを繰り返すと。 「も、もう飲めない…」 ルイズは酔いつぶれて、バタンと倒れると、眠ってしまった。 アンリエッタはゆらりと揺らめくと、今度はすぐそばにあった空のグラスに目をつけた。 つまり、才人のグラスに。 「グラスが空いてましてよぉぉぉぉぉサイトさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 問答無用で酌をした。 525 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/10(土) 02:31:59 ID:HhDlCW0h そして、その反対側では。 「さあ村長、覚悟なさぁぁぁぁぁぁぁぁい」 「や、やめてくれシエスタ、これ以上はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 逃げようとする村長の首根っこをむんずと掴み、酔ったシエスタは黒光りするワインの瓶を構え。 村長の口に突っ込み、問答無用で流し込んだ。 「もう飲めっ、ごぼぉおぉぉぉぉぉぉ?」 瓶が空になったのを確認すると、シエスタは村長の亡骸(酔いつぶれ)を地面に放り投げる。 その周囲には、同じようにシエスタに酔い潰された屍の山が。 「任務…完了」 酔った振りのシエスタはそう呟くと、屍の山を後にした。 アンリエッタの計画はこうだ。 まず、火のつくような強さの酒を用意する。 それを、アンリエッタの水魔法でもって、飲みやすい味に加工する。 そしてそれを、『オハナミ』の席で問答無用で振舞う…。 片や、女王による絡み酌。 片や、メイドによる強襲酌。 これに抵抗できる者が、この宴にいるだろうか。いや、トリステイン広しといえどいないであろう。 そして、計画は実行に移され…。 アンリエッタとシエスタを除く全ての『オハナミ』参加者が、酔いつぶれて『サクラ』の木の下に倒れることになった。 余談ではあるが、これが後世に伝わり、『タルブのサクラの伝説』となるのである。 569 名前:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23:55:12 ID:pRs/OsHa 「…起きて、ルイズ」 酔い潰れて寝ているルイズを、ゆさゆさと揺り起こす者がいた。 その者は、酔い潰れた己の使い魔を介抱するために宴から離れていて、女王とメイドの魔手から逃れていた。 しかし、揺すられたルイズは。 「う、うぅ〜ん…」 眉をしかめて、唸るだけで起きようとしない。 どうやらまだ、酒が残っているようだ。 声をかけた主はルーンを唱える。 呪が完成すると、ルイズを青い光が包む。 『水』系統の呪文、『解毒』だ。 呪文の効果で、ルイズの体内のアルコールが毒物とみなされ、分解されていく。 「…っ!?何っ!?」 アルコールの抜けたルイズは、がばっ!と起き上がった。 その拍子に。 ごっちぃん! 顔を覗き込んでいたタバサにまともに頭突きをかましていた。 ルイズの目の前に火花が散り、地面に逆戻りする。 タバサは不自然な角度で仰け反り、倒れるのを堪えている。 「いった〜〜〜〜い!」 ぶつけたおでこをさすり、ルイズの意識は完全に目覚める。 そういえば私、姫様に無理やり酌されて…。 酔って寝てしまったんだ。 そしてルイズは、不自然な角度で上を向いているタバサに語りかける。 「チビっこ…アンタが助けてくれたのね…」 ルイズとてメイジの端くれである。この状況をみれば、自分が魔法で気付けされたことくらいは分かる。 タバサはルイズの声にゆっくりと体を立てる。 その赤くなった鼻から、つつー、と赤い筋が垂れた。 …あ。 「ご、ごめん!」 ルイズは慌てて懐からハンカチを取り出し、タバサの鼻血を拭く。 タバサはその手からハンカチを奪い取り、憮然とした顔で鼻を拭いて、言った。 「…一個貸し」 それが頭突きの貸しなのか、魔法による解毒の貸しなのかは分からなかったが。 ルイズはぽりぽりと頬を掻いて視線を逸らす。 そして気付く。 「サイト!サイトはどこっ!?」 見渡す周囲には、ルイズの求める姿はなかった。 570 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23:55:55 ID:pRs/OsHa 「アンタっ!サイトどこ行ったか知らないのっ!?」 頼みの綱は酒の席から逃れていたであろうタバサであった、が。 自分の両肩を乱暴に掴んだルイズの手を振り払い、タバサは首を振る。 「知らない」 タバサがここにやってきたとき、既に才人はおらず、累々と横たわるお付の者たちと村人たち、そしてルイズがいただけだった。 ルイズは悔しさに親指の爪を噛む。 やられた…! 酔った振りで、酒を盛って…! わたあめのクセに!乳牛のクセに! やるじゃないの…っ! 悔しがるだけのルイズに対し、タバサは冷静だった。 累々と横たわる酔っ払いどもの上から、周囲を見渡す。 そしてすぐに、目的のものを発見する。 タバサは杖を手にして、すっくと立ち上がった。 「…見つけた…!」 その瞳はその二つ名のごとく冷たく澄み、目標を捕らえる。 タバサの視線の先には。仲よさそうに寄り添って、腕を組んで森の入り口に入っていく、アンリエッタと才人がいた。 タバサの異変に気付いたルイズも、その視線を追う。 「あっ…!」 ルイズも慌てて立ち上がり、そして。 「こら犬、何やってんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 ものすごい勢いで、タバサを置いて走り出した。 「…静かにしないと気付かれる…」 タバサの忠告も虚しく、ルイズは土煙をあげて二人の消えた森へとかっとんでいった。 そしてタバサも、その後を追う。 愛する人を、取り戻すために。 571 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23:56:54 ID:pRs/OsHa 「…うまくいったわね」 「はい、大成功です」 二人の消えた森の入り口の見える村の外れの空き家で。 横たわる才人を脇目に、女王とメイドの二人は、お互いの手を合わせて作戦の成功を祝った。 そう、森に消えた才人とアンリエッタは、スキルニルである。 そのスキルニルには、しばらく逃げ回った後、適当な木陰で元の人形に戻れと命令してある。 ルイズとタバサは森の中を散々連れ回された挙句、二人を見失う、という算段だ。 タバサが酒を飲まないであろうことを見越した、二人の作戦であった。 「さて、それじゃあ…」 アンリエッタが、酔って眠る才人を一瞥する。 「ええ」 同じようにシエスタも、才人を見つめる。 二人の瞳は、すでに獣欲に曇っていた。 「楽しみましょうか、シエスタさん…」 「ええ、女王陛下…」 572 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23:57:46 ID:pRs/OsHa 目を覚ますと。 俺は全裸で椅子に縛り付けられていた。 え?コレどういう状況?? 辺りを見渡す。 どうやらここはどこかの部屋の中みたいだ。 窓から差し込む光の加減から、お花見開始からけっこう時間がたってるみたいだ。 そういえば俺、姫様の注いだ酒のんで酔っ払って、寝ちゃったんだっけか。 …で、なんで裸か? とりあえず記憶を探ってみるけど。 何も出てくるはずはずがなく…。 と、とりあえずこの縄外さないと。逃げることもできやしない。 で、俺ががたごと暴れていると。 いきなり背後から白いものが伸びてきた。 でもって、それは俺の首に絡みつくと。 むにゅ。 後頭部にやーらかいものが押し当てられる。 この。耳の後ろに当たってる突起物と、目の前の白い手から察するに。 生おっぱいぱ-------------------------------!? 「え、なにこれどういうことこれっ!?」 俺は後ろから俺を抱きしめているであろう人に疑問をぶつける。 その人は、俺のよく知った声で答えた。 「無駄な抵抗はおやめなさい♪サイトさん」 「え?シエスタ?」 その声はシエスタだった。 シエスタは楽しそうにそう言うと、おっぱいを俺のアタマに押し付けたまま、上から俺の顔を覗き込んできた。 柔らかく歪むおっぱいの向こうから、笑顔のシエスタが俺を見下ろしている。 そして心底楽しそうに説明する。 「サイトさんは今、囚われの身なんです。  私とある人を満足させないと、解放してあげません♪」 え?なにそれどういうこと? いやまあこのおっぱい帽子は重きもちいいんですけど。 ってかある人ってダレ!? とか思っていると。 俺から見える扉が開いて、とんでもないものが姿を現した。 573 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23:58:15 ID:pRs/OsHa そこから現れたのは、真っ白な、下着姿の姫様。 「って何やってんすか姫様ーーーーーーーーーーーっ!?」 思わず叫ぶ俺。 そんな俺に、姫様はにっこり笑って近寄ってきた。 そして俺の顎をそっと指でなぞると。 いきなりキスしてきた。 そしてすぐに身体を離すと。 「まだ、立場というものがお分かりでないようですね?サイト様…?」 へ?立場?立場ってナニ? 俺が混乱していると、姫様はガーターベルトに吊るされた、白いストッキングに包まれた脚を持ち上げて…。 シエスタのアタックですでにクライマックスの俺の電撃イライラ棒を踏みつけた。 ちょ、ちょっとまてちょっとまって! うらがわあしのゆびでこすらないでええええええええ! 「ちょ、ひめさまっ」 俺の必死の呼びかけに、姫様は。 「そうじゃないでしょう?サイト様…?」 なんかものすんごいいやらしい笑顔で、俺を見つめて。 コスっていた脚を、椅子に引っ掛けて止めた。 ちょ、そこで止めないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 「女王様と、お呼びくださいまし♪」 ギンギンになった俺のきかん棒に支配された俺の理性は、即時降伏の道を選んだ。 「じょ、女王様っ」 そんな俺に、姫様は一瞬身体を震わせると。 「よくできました…。ご褒美を、さしあげてよ。サイト様」 後ろに控えるシエスタに、目配せした。 574 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/11(日) 23:59:22 ID:pRs/OsHa シエスタはアンリエッタの指示に、才人の前に立つ。 彼女はアンリエッタとは違い、全裸だった。ただ、頭にだけ、いつものカチューシャを付けている。 アンリエッタはそっとシエスタの背中から押しながら言った。 「まずは、メイドを差し上げますわ…。  さ、シエスタ」 「はい」 シエスタは頷くと、身動きの取れない才人の首筋にそっと手を絡ませ、身体を密着させる。 才人のモノと腹の間に腰を落として、言った。 「サイトさん、どうして欲しいですか?」 淫靡に笑いシエスタは、才人に発言を促す。 才人はちょっと考えていたが、股間で飢えを訴える己の分身の欲望を、そのまま口にした。 「シエスタの中に…入れたい」 その言葉に、シエスタは嬉しそうに微笑むと、応えた。 「わかりました…旦那様」 シエスタは腰を浮かせ、才人の肉棒にそっと白魚のような指を絡ませると、ひくひくと蠢いて牡を待ち構える己の裂け目に、才人を導いた。 くちゅっ 湿った音をたて、シエスタの秘唇が才人の先端に当たる。 「それでは…失礼します、サイトさん…」 ぐにゅっ 柔らかい弾力をもって、シエスタは才人を根元まで飲み込んだ。 「ああっ!サイトさんのがっ、奥までぇ…!」 「くっ、キモチいいよ、シエスタっ…!」 575 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00:00:45 ID:pRs/OsHa そんな二人の接合を後ろで見ていたアンリエッタは、おもむろに後ろからシエスタの胸を揉みしだいた。 「あっ、へいかぁっ、なにすっ」 シエスタの言葉に、アンリエッタは応える。 「女王を放っておいて、自分だけ気持ちよくなろうなんて、いけないメイドですわね」 言って、その手に力を込める。 シエスタの胸が歪にゆがみ、その喉から苦痛を伴った喘ぎが漏れる。 「へいかぁっ…いたいっ…」 「うふふ…痛がっている割に…」 アンリエッタはシエスタの耳元でそう囁くと、右手を胸から離し、才人とつながっている股間へと伸ばした。 ぐちゅ… シエスタのそこは、感じている証である淫らな水音をたてた。 「この潤いようといったら。とんでもない淫乱メイドね」 言ってシエスタの耳の中に舌を差込み、嘗め回し始めた。 「やぁっ、らめっ、へいかぁっ、らめれすぅっ!」 アンリエッタの責めに、シエスタは動いてもいないのに高みへと持っていかれる。 そして才人もまた、目の前で繰り広げられる淫靡なショーに、内なる獣を抑えられずにいた。 「あ、ひ、らめ、いく、いくのぉっ」 「シエスタ、俺もっ…!」 二人は軽く痙攣し、絶頂に達する。 繋がったままの二人の間から、溢れた才人の子種が零れた。 零れた才人の液体を見たアンリエッタは、ぐったりと才人にもたれかかるシエスタを、いつの間にか持っていた杖で魔法をかけ、宙に浮かせる。 そのまま脇の床に横たわらせると、言った。 「主人のお情けをこぼすなんて、躾のなっていないメイドですわね…。  失礼いたしましたサイト様。お詫びといってはなんですが」 言ってアンリエッタは、ルーンを唱える。 そして現れた小さな氷の刃が、才人を椅子に縛り付ける縄を切り裂き、自由にする。 「あなたに、自由を授けましょう…」 576 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00:02:35 ID:pRs/OsHa 才人は、縛られていた両腕をさすり、椅子から立ち上がった。 「ふう、酷い目にあった…」 口ではそんなことを言うが、そんなことは毛頭思っていない。 アンリエッタは、そんな才人の前に立ち、そっとその胸板に身を預けた。 才人は慌ててアンリエッタに問う。 「で、でで、今度はナニをすればいいんで?」 才人のその素っ頓狂な質問に、アンリエッタはくすりと笑うと。 シエスタに教わった、ある台詞を口にした。 「あなたの思うやり方で、この私に…奉仕、なさい」 そして才人は、その言葉を受けて。 アンリエッタを抱きしめ、その唇を奪った。 サイト様は、私の言葉に、優しくキスをしてくださった。 してださったんだけど。 その後、いきなり、私を後ろ向きにさせると。 後ろから、押し倒してきた…。 私は慌てて両手をつく。 すると。 私はいつのまにか四つんばいにされていた。 「え…?」 驚く私のお尻を、サイトさまの、サイトさまの手がぁっ! 「じゃあ、たぁっぷり『奉仕』させていただきますね、女王様?」 ショーツの中まで入り込んで、お尻を撫で回してきた…! まるで形を確かめるみたいに、ショーツの中をサイト様の手が這い回る。 でも。 肝心な所には、一切、その、触ってくださらない…。 わ、私が命令してるのにぃ…! 「あれえ、おかしいなあ。こんなに奉仕してるのに、女王陛下は濡れてらっしゃらないぞぉ?」 だ、だって、そこは、濡れるようなところじゃあっ…! 私はサイト様に抗議する。 「そんなところっ…。濡れませんっ…!」 私の言葉に、しかしサイト様は。 「では、濡れている場所を仰ってください、女王陛下」 …うー…!いじわるぅ…! 私は恥ずかしいのを必死で堪えて…言った。 「お、おま…です」 しかし、サイト様は意地悪に返してきた。 「声が小さくて聞こえませんでした。もう一度、大きな声でお願いできますか?」 …サイト様のっ…へんたいっ…! 577 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00:03:44 ID:fMr/JWmC 「おまた…です…」 その言葉に、何故かサイト様は驚いたような顔をしたけど。 「承りました、女王様♪」 やっと、いじってくれるんだ…。 私が期待に胸を膨らませていると。 サイト様は、私の履いていたショーツの横の結び目を解いて、脱がせると…。 ちゅっ 直に、いきなり口付けてきた…! や、だめ、ゆびでひろげないでっっ! じゅるるるるるるっ! 「やぁっ!だめぇっ!」 響いた淫らな水音に、思わず私は叫んでしまう。すると。 サイトさまが、止まった…。 「…え…?」 思わず呆ける私に、サイト様が信じられないことを言ってきた。 「女王陛下がダメと仰るなら、ここでやめるしかないなあ」 振り返ると、サイト様はいやらしい笑顔を貼り付けていた。 …うー、もう、この人わぁ…。 私は必死に恥ずかしいのを堪え、サイト様に、『お願い』した。 「命令です、やめないで…。  私が何を言ったとしても、奉仕を止めては、な、なりません…」 そして、サイト様は。 「承りました、女王様♪」 満面の笑顔で、そう応えた。 578 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00:04:17 ID:fMr/JWmC 才人に後ろから獣のように貫かれ、アンリエッタは歓喜の言葉を囀っていた。 「あっあっあっあっ、いいですっ、いいですぅっ」 その表情は淫らに崩れ、口の端からは女王にあるまじきだらしなさで、涎を垂らしている。 「サイトさまのっ、サイトさまがぁっ、いいのぉっ」 リズミカルに叩きつけられる腰からは、清貧女王のイメージからは程遠い、溢れんばかりの淫汁が飛び散っている。 才人を受け入れているその裂け目は、まるで娼婦のように才人を咥え込み、快楽を才人に送り込んでいた。 「サイトさまのぉっ、おちんちんがぁっ、おくにぃっ、あたってるのぉ!」 奥の奥まで犯され、アンリエッタはもう、完全に雌の本能に支配されていた。 喉が淫らに囀り、胸が卑猥に揺れ、腰が貪欲に牡を貪る。 やがて、その淫行は限界に達する。 「あ、あ、あ、あ、あ、あ、いく、いく、いっちゃう、サイトさまぁっ、いっちゃうのぉ!」 「だ、出しますよ女王様っ!」 二人はほぼ同時にビクビクと痙攣し。 才人は、ぎゅうぎゅうと最後の締め付けを行うアンリエッタの淫壷の中に、己の欲望をぶちまけた。 「あ、ひ、ひぁ…」 熱い熱い迸りで意識までも灼かれ、アンリエッタは床に崩れ落ちた。 579 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00:04:53 ID:fMr/JWmC さて、と。 俺はゆっくりと立つと、目の前で満足しきって眠っている二人の女性を見下ろした。 さーて、ここまで好き勝手やられてましたけど。 こっからが本番さね? 俺はゆくりと眠るシエスタに歩み寄って、近くにあった細いロープでその両手を後ろで縛った。 そこまですると、さすがにシエスタは目を覚ました。 「あっ…な、なにしてるんですかサイトさんっ?」 なにってー?し・か・え・し♪ 「まぁだ立場ってもんがわかってないみたいだね?シエスタ?」 「え?」 俺は呆けるシエスタの股間の小さなお豆を、指でつまんだ。 「やぁんっ!」 「シエスタは捕まったんだよ?つまり、俺のされるがまま」 俺は言って、シエスタのあそこを、指でこれでもかと蹂躙した。 「やぁっ、あんっ、そんなっ、かきまわさないでぇっ、あっ…?」 そして、シエスタからおつゆが垂れ始めてきたころを見計らって手を止める。 「え、なんで…?」 途中で放置されたシエスタは、抗議を込めた視線を俺に向ける。 まあ当然だけど。 でも俺の逆襲は始まったばっかりで。 「さてシエスタ。きちんと『お願い』できたら、続きしてあげるよ?」 俺の言葉に、シエスタは恥ずかしそうに俯く。 そして言った。 「お、お願いします…。  だ、旦那様のお情けを、お情けを、シエスタにください…」 よく出来ました♪ 580 名前:サクラ前線異常アリ ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/03/12(月) 00:05:29 ID:fMr/JWmC 「今はアナタは女王陛下じゃないんですよ?わかってます?」 「あっ、わかりましたぁっ、アンリエッタは、アンリエッタは、サイトさまのぉっ」 「俺の、何?」 「サイトさまのぉっ、ドレイですぅっ」 「よくできました♪」 ……。 アンリエッタ女王とサイトを見失ってから、私たちは村に戻ってきたんだけど。 聞きなれた声に誘われて、私たちは『サクラ』の丘のそばにあった家の扉の前にいた 扉の向こうからとんでもない声が聞こえる。 隣では、ルイズが拳を握り締めて震えてる。 めき…。 樫の樹でできたとんでもなく硬いはずの私の杖が、悲鳴を上げる。 …たぶん、私も震えてる。 ていうか、なんでこんなに落ち着いてるんだろ?私? 目の前でサイトが、他の女とアレしてるのに。 でも、心とは裏腹に、喉は勝手にルーンを唱え…。 どかぁん! 全力の『エア・ハンマー』が、その家の壁をきれいに吹き飛ばした。 そこには、両手両足を拘束された裸のアンリエッタ女王と繋がっているサイトがいた。 ……。 ………………。 ………………………………………………………………。 「いっぺん、死んでみる?         犬         」 ルイズが私の心情を代弁して。 逃げようとしたサイトを、私とルイズの魔法が吹っ飛ばした。〜fin

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