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887 :ゼロじゃないキモチ ◆JCgO7iTKKc :2007/07/02(月) 23:14:09 ID:DVvDbmzh 「こんの犬! 犬、犬、犬ぅ!」  ちゅんちゅんっと早朝の鳥の鳴き声の替わりに、ピッシーン! バシィー! と鞭の音が響く。  このあたりの住人の目覚ましになっていることは、鞭を振るルイズには知らない。   「昨日寝ぼけて、ベットに入っただけだろうが!」  ルイズに叩かれている少年、サイトは大声で言い訳をする。  だがその言い訳も、鞭が答えるだけ。  鞭が答える度に、ぎゃわん! と犬らしい悲鳴がでるだけだ。  ルイズはサイトのご主人様であって、サイトはルイズの下僕もとい使い魔である。   上下関係もルイズが当然上で、サイトは下の下。  この関係をわかりやすく言うと、普段が一緒に遊んでいる犬が、自分のものを毛だらけにする。  だから追い払う。まったくそれと一緒だ。 「もうやめてくだしゃい。もう二度とはいりましゃん」  土下座をして謝るサイトに、うっとあとずさる。  ポーカーは鞭で破れているところもあるし、肌が露出するところはミミズバレがある。    流石にやりすぎちゃったかな…。  だだだだだだだけど、ベットに入るのは別!  使い魔のくせに、平民のくせに、馬鹿なくせに!  貴族のベットに寝ぼけて入ったなんて、許せない!  …それにしても、赤いわね。 888 :ゼロじゃないキモチ ◆JCgO7iTKKc :2007/07/02(月) 23:15:04 ID:DVvDbmzh  土下座するサイトの腕には、真っ赤になった線がいくつもある。  つい先ほどまで自分でつけた鞭の後。  …ガンダールヴなんだから、こんな鞭避けられるのに…。  ギーシュのゴーレムの攻撃も避けられる、何で私は避けないの?  ………。ま、さ、か。マゾっていうやつ?  ぞぞっと身を震わせる。肌には鳥肌がふつふつっとできてきた。  き、きもち、悪い…!  一歩二歩っとサイトから離れていく。  十分離れてから恐る恐るサイトを見た。  ふるふるっと震えているサイトの体があった。  まるで本当の犬みたい。顔だけ隠してお尻隠さないなんて。  …マゾではないと思うけど、てか思いたくもないけど、たぶんマゾじゃないと思う。  だってサイトは何度も私を守ってくれた。  ボロボロに荒んだ私の名誉も、価値のない体も、サイトは守ってくれた。  それをなんで私は、サイトを守ってあげないのだろう。  主人が使い魔を守る話は別に普通だ。別にイヤラシイことじゃない、そもそも相手は獣だ。  だから私は召喚した使い魔には、精一杯守ろうと思った。  そう、私でも守ることができるのなら、何もないゼロじゃないと証明できると思ったからだ。    だけども結果は平民だった。  絶望した。  自分がゼロだという証明を手に入れたと思ったから。  だから自分の怒りをサイトにあたったのだ。  サイトがいるせいで、私がゼロだと言われるからだと。    散々自分がゼロだと馬鹿にされ続けた怒り。  それを何も知らないサイトにあたるのは、単なる八つ当たり。  …私はそんなもつりで召喚したつもりはなかった。  だけどどうして、なんで、こんなことをしているの?  サイトは、『ゼロのルイズ』と馬鹿にされていた私を、唯一否定してくれた人なのに。 889 :ゼロじゃないキモチ ◆JCgO7iTKKc :2007/07/02(月) 23:17:46 ID:DVvDbmzh 「ごめん、ごめんなさい」  ぽたぽたっと涙が溢れてきた。  けしてどんなに馬鹿にされてきても、人前では泣かなかった涙。  私はサイトを馬鹿にした。  馬鹿にされることがどんなに辛いのか、一番自分がわかっていたんじゃないの?  そう思うと、涙が溢れる。止められない。   「る、ルイズ? おい?!」    ぼやけた黒いものが、私の肩を掴んで揺らせしている。  誰? 誰ですか? 「私なんかを、気を使わなくてもいいんですよ?」  そう、だって私は、 「何もない、ゼロですから」  そう、心も体もいらない。  もう人を思う気持ちすらもないのなら、何もかもゼロでいい…。 890 :ゼロじゃないキモチ ◆JCgO7iTKKc :2007/07/02(月) 23:18:37 ID:DVvDbmzh  パン!  乾いた音がなった。  頬が痛い…。 「なにがゼロだ! お前はゼロじゃないだろ! ゼロのルイズだぁ?! クソくらえだ! お前はルイズだろ!!!」  さ、い、と? 「お前が召喚したのはガンダールヴだ! 虚無の使い魔ガンダールヴ! そんなすごいの呼んだのにお前がゼロ?! ふざけんな!」  ぜ、ろ、じゃな、いの? 「それに! 好きなやつが、何もないゼロなんて、認めねえぞ!」  え、好きなやつ…? 「な、な、ななななななによそれ!?」 「へ? なにって?」 「すすすすすすす好きなやつって、何?!」 「あ。あーあーあーあーーー。うん、そのまんまだ」 「!!!!!!!」  私は声にならない声を出す。  スキ? スキ、すきぃ?!  なによそれ! 「だ、だからよ。そんなこと言うなって」 「う…うん…」  思わず返事をしてしまう。  うつむいてサイトの顔が見えない。  いつのまにか涙が止まって、変わりに顔が熱い。  たぶん耳まで真っ赤に染まっているだろう。 「私、がんばる。ゼロのルイズっと二度と言わせないように、がんばる」 「ああ。俺もそうなるようにルイズを守るよ」  ぎゅっとサイトは私の体を自分の胸に引き寄せた。  それだけで顔どころか全身が熱くなっていく。  触れることも許したくなかったはずなのに、なんで?  スキって言われたから? ききききキス、されたことがあるから?  この胸にある、暖かいものは、なに?  …私はまだ、サイトに守ってばかり。  だけど私は、いつかサイトを守ろうと思う。  それは遠くて長い年月がいるかもしれない。  もしかしたら一生無理かもしれない。  だけど、守りたいと思う気持ちだけは、無理だとは絶対に言わない。  それだけはゼロじゃないと、胸を張って生きたいから…。

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