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312 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/09(日) 20:29:57 ID:rkjsIcgH  「諸君らは、自分が何故魔法を使えるのか、考えたことがあるだろうか」  戦争前に比べて、コルベール先生の授業を真面目に聴くようになった学院生はかなり増えた。 私はもともとどんな授業も真剣に臨んでいたけど、彼のそれはしばしば魔法から逸脱するため、少々軽んじてる部分もあった。 今もそう、魔法学もそこそこに机の上に色々出して実験とやらを繰り返している。 右隣のキュルケは授業内容問わず暑苦しい視線を先生に向けてるし、左隣のサイトは魔法学は机に突っ伏して寝てたクセに、今はさらに隣のタバサに何か説明してる。たぶん、先生の実験とやらについてだろうが、とにかく後でお仕置きしよう。  そんなことを思いながらぼーっとしていた時だった。 「諸君らは、自分が何故魔法を使えるのか、考えたことがあるだろうか」 貴族だから。 最初に浮かんだのがコレ。私だけじゃなく、ほとんどの生徒がそう考えたはず。 でも、そんなことを言いたいんじゃないってこと位は (日頃空気を読めないと言われる) 私でも解る。 「もちろん、貴族だからです。ミスタ・コルベール」 頭の可哀想な金髪がやおら立ち上がり、左手で髪をかき上げ右手の薔薇を前に突き出してほざいた。 隣に座ってるモンモランシーが頭を抱えているのが見える。 314 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/09(日) 20:31:25 ID:rkjsIcgH 先生は目を閉じて数瞬、また開いて 「確かに、それは間違いではない。我々が常の解釈として魔法を使えるのが貴族、そうでないのが平民という区別をし、時に差別をしてきた」 サイトは今、何を思ってるのだろうか。横顔が少し固い。 「しかし勘違いをしてはいけない。魔法を使えるから貴族なのか、貴族だから魔法を使えるのか」 魔法を使えない貴族。私はだから、気概だけは、貴族たらんとした。 「諸君らが、魔法を使えない者を見下してしまうのは、ある意味仕方ないことなのかもしれない。しかしなればこそ、自分が魔法を使える意味を考えてもらいたいのだ」 私が魔法を、『虚無』を使える意味……。 「では、理論の側面で我々が魔法を使えるのは何故だね? ミス・ヴァリエール」 「はっ、ひゃい!!」 考え事をしてた時に限って当てられるのは何故なんだろう。 教室中からしのび笑いが聞こえる。 「魔法とは杖を介して、呪文を鍵(キー)に自己の意志を世界に表出させることです。その際に世界に影響を与えた分だけ術者から消費される『魔力』を体内で精製出来るのが魔法使いです」 理論は徹底的に叩き込んだが、当時はまったく身を結ばなかった。 どんなに念じても魔力は爆発して霧散するだけ。 そもそも、他のみんなのような魔力を自分から感じなかった。 『虚無』の系統に目覚めてからは、体内から外に向けて走る線の様なものが解ったし、そこに流れる魔力も想像を遥かに超えていた。 まぁ、ちょっと本気で使ったらすぐすっからかんだけど、と心中で呟く。 315 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/09(日) 20:32:19 ID:rkjsIcgH 「よろしい、では次は四系統についてだ。この世界の大気中には、我々が生きていくのに欠かせない成分とは別に、マナと呼ばれる魔力に非常によく似た要素がある。 マナは四種類、つまり我々が四系統と呼ぶ『火』『風』『土』『水』に分類される。また、マナが生産される場所はこの世界に数多くあるが、それを『スポット』と呼ぶ。 一つのスポットから生産されるマナは一種類で、その地域のマナはある特定のマナが非常に濃密になるため、我々人間や他の生物に大きく影響する。 例えば、代々スポットの管理を任されている貴族の属性は全て単一であったり、ミス・ツェルプストーの使い魔である火トカゲは『火』のマナのスポットである火山地帯に生息しているものだ」 昔、エレオノールお姉さまに同じような話をしてもらったことがあったような…… つまりは、学院の授業と言うよりは研究機関じみた講義になってる気がするけど、非常に興味がある議題なので考えないことに。 コモンマジックなら出来るようになったけど、『四系統』はいまだにゼロなのである。 316 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/09(日) 20:33:49 ID:rkjsIcgH 「その大気中のマナを自身の魔力で結合させて一所に集め放つのが系統魔法の基本になる。諸君らはまだ『ドット』が多いだろうが、同じ系統の同じ呪文でも効果に差があることを知っているだろう」 確かに。 以前サイトの提案で、タバサに騎士団連中の魔法をみてもらった時に、マリコルヌがあの子と同じ呪文をぶつけあって吹き飛ばされていたことを思い出した。 「これは、マナに魔力を乗せて作った一塊のサイズが、術者の実力によって大きく異なるからであり、基本的にドットよりもラインの方が大きく、またトライアングルはさらに大きい。 つまり、より強いメイジは、同じ呪文でも低い魔力消費量で大きな効果が得られるということだ。」 そりゃあ、マリコルヌもぶっ飛ぶわけだ。 317 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/09(日) 20:35:32 ID:rkjsIcgH 「しかし、ここにはデメリットも存在する。系統魔法にはマナに加え、自身の魔力による結合が重要だ。 だが、メイジにはそれぞれ生まれつき結合が得意なマナとそうでないマナがある。結合が得意なマナの属性をそのメイジ自身の属性等と言ったりするわけだ。 一般的に『火』の結合が得意な魔力と『水』のマナは相性がよくない。にも関わらず、火と水のラインマジックを使うなら、同じサイズの塊を作らねばならない上に、さらにその二つを融合させねばならないのだ。 もちろん、鍛練を積んだり、その他の補助呪文を併用することで問題は克服できるだろうが、できれば諸君らにはまずはしっかりと自系統を極めてもらいたい。なぜなら、それが苦手な属性でなくとも違う種類のマナは結合させるのは簡単ではないからだ」 ってことはタバサってやっぱ凄いのね……キュルケはトライアングルだけど『火』しか使えないみたいだし。あれ? 私ってば何メイジなんだろ? ドットなのかな……。なんかイヤね……前は何でもなかったから考えたことなかったけど。 318 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/09(日) 20:37:15 ID:rkjsIcgH 「恥ずかしながら、私も『火』以外はさっぱりでね。ドットクラスの『土』ならばなんとかなるんだが」 キュルケに聞いた所によると、先生の『火』はその威力も制御も桁違いとか。やっぱりスクウェアなのかな 「あの……『虚無』はどんなマナを……その……」 声のした真後ろを振り向き見上げれば、何かが。脳が理解することを拒否した何か二つが。それは顔がなく、何か二つが喋ってるとかそんなアレである。 「いや別にっ…それは誰かが虚無の使い手とか……そんなんじゃなくて…えっと……」 ソレがあたふたするとたゆんたゆんと揺れる揺れる。 「んぎぃやぁぁぁいあああああああああッ!!!!!!」 取り出した杖をこちらに半身になってだらしない顔で後ろを見上げていた犬の股間に突き立てた。 机に突っ伏してビクンビクンしてる。気持悪い。 タバサがサイトの背中をぽんぽん叩いているが、しばらくは小宇宙から帰ってこれなさそうだ。 サイトの悲鳴で(どこからか、人が溺れるような音もした)落ち着きを取り戻した先生は 「正確にはよくわかっていない。全てのマナを種類に関係なく使っていたと記された書物もあったが」 先生は少しためて 「何せ、失われた系統だからね」 319 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/09/09(日) 20:38:23 ID:rkjsIcgH サイトはまだ帰ってきてない。タバサは腰の辺りをぽんぽん叩いている。 「そろそろ時間か。今日も少し本来の授業からは横道逸れてしまったが、一番言いたかったのは、魔法は強い、強くなる力だということ。それと、強い力を何のために使うかということだ。 諸君らはいずれも才あるメイジだ。力はおのずの手にはいるだろう。だからこそ、君達は自分が何故魔法を使えるか考えねばならない。魔法を使うその時、その時に私の言葉を思い出してくれたら、幸いである。 では、今日はこれまで」 はかったように鐘がなる。 キュルケは猛スピードで先生の方に走っていった。ティファニアはおともだちと約束があるとか。そして何故か隣にサイトの姿がない。 一緒に消えたタバサが目下、一番怪しい訳だが。 見つけしだい『爆発』で吹っ飛ばすか、と考えたところで席を立つ。 いや、でも今日は、 「あー、姉さまにもらった新しい鞭があったわね」 END

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