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384 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 01:58:34 ID:rvYfeHEl  寝台の上でか細い寝息を立てるルイズの傍ら、憔悴した才人が椅子に座ったままじっとしている。 その背中に、シエスタはそっと声をかけた。 「サイトさん、そろそろお休みになってください。もう三日も、ほとんど横になっていないじゃない  ですか」  こんなことを言うのは、今日でもう何回目だろうか。そして、返事もやはり一緒だった。 「ダメだ、ルイズがまだ起きてない」  シエスタはそっと息を吐く。才人の気持ちは分からないでもないが、このままでは彼の方も参って しまうだろう。 (ミス・ヴァリエール)  眠り続けるルイズの顔を、シエスタは複雑な気持ちで見つめた。 (早く、またわたしたちに元気な顔を見せてください。サイトさんは、この一ヶ月、ずっとあなたの  ことばかり考えていたんですよ)  紆余曲折、様々な冒険を経て、コルベールが指揮するオストラント号は、ついに東方へと旅立った。 この船には才人とルイズ、そしてシエスタも同行し、他にもキュルケにタバサ、ギーシュにモンモラ ンシーなど、見知った顔が多数参加している。  だが、当初のどこか浮き立つような冒険気分に反して、この旅は実に過酷なものとなった。  東方のエルフは、予想以上にこちら……特に、虚無魔法を操るルイズに対して、強い敵意を持って いたのである。そのためにオストラント号も頻繁に襲撃を受け、シエスタ自身何度も危険な目にあった。  一度西方へ引き返した方がいいのではないかという声が上がり始めた頃、事件は起きた。オストラ ント号に急襲をかけてきたエルフ達の手によって、ルイズがさらわれてしまったのである。  当然、才人は半狂乱になった。すぐにでもルイズを探しに行くと一人で飛び出しかけた彼をなだめ つつ、一行は根気強くルイズの行方を追った。そして、彼女があるエルフの一団の本拠地に捕われて いることが知れたのが、四日ほど前。それを聞いた才人が止める間もなく突撃し、そのエルフの本拠 地を壊滅させ、無事ルイズを救出して戻ってきたのが三日前である。  以来、才人はほとんど一睡もせずに、ルイズのそばに付き添っているのだ。  ルイズの行方が知れなかった間の才人を思い出すと、シエスタは今でも胸が痛くなる。それは、才 人の苦しみを思っての痛みであり、才人がどれだけルイズを愛しているかを決定的に悟ってしまった、 女としての心の痛みでもあった。  だからと言って、「このままミス・ヴァリエールが帰ってこなければ」などとは考えなかった。シ エスタにとっては、自分が一番に愛してもらえないという悲しみよりも、ルイズを失った才人の苦し みの方がずっと重要だったのである。  それに、ルイズだって、恋敵とは言っても長い間共に過ごしてきた友人である。無事を祈る気持ち は、シエスタとて一緒だった。  戻ってきたルイズは、予想に反して無傷であった。体に拷問の跡などの外傷は見られなかったし、 意識を失っていることを除けば、体の方は至って健康と言ってもいい状態だ。今眠っている彼女の顔 を見ても、その寝顔は安らかであり、うなされたり苦しげに呻いたりといった様子は少しも見られない。 (後は、目を覚ましてさえくれれば)  シエスタが、祈るような気持ちでそう思ったとき。まるでその願いを神が聞き届けでもしたかのよ うに、ルイズが低いうめき声を上げながら、ゆっくりと目を開けた。 「気がついたのか」  憔悴しきって嗄れた声に隠しきれない嬉しさを滲ませながら、才人がルイズの顔を覗き込む。ルイ ズはしばらくの間虚ろな瞳で才人のことを見上げていたが、やがてぽつりと、呟いた。 「……サイト?」 「そうだ。俺だよ」 「……ここは?」 「船の中だ。お前、戻ってこれたんだよ。可哀想に、怖かっただろ。もう大丈夫だぞ」  声に優しさを滲ませて、才人がルイズの頭を撫でる。ルイズは一瞬詰まったような吐息を漏らした あと、頬を赤らめた。 「……夢じゃないの?」 「ああ。悪い夢はもう終わったんだよ」 「本当?」 「そうだって。信じられないのは分かるけどな、安心していいぜ」  才人がそこまで言ってやっても、ルイズは何故か疑うように、何度も何度も「本当?」と繰り返し た。あまり何度も繰り返すので、それが何かを待つような、あるいは期待するような態度にも思えて くる。シエスタは怪訝に思ったが、ルイズは十数回ほどで問うのを止め、安堵したように長く息を吐 いた。 385 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 01:59:23 ID:rvYfeHEl 「そう。わたし、戻ってこれたんだ」  自分がいる場所を確かめるように呟いたあと、ルイズは才人を見上げて微笑んだ。 「ただいま、サイト」 「ルイズ、ルイズ……!」  たまらなくなったように名を呼びながら、才人がルイズを抱き起こし、そのまま強く抱きしめた。 ルイズが短く悲鳴を上げる。頬が少し赤く染まった。  才人の激しい抱擁に、シエスタの胸がまた少し痛んだ。だが、耐えられないほどではない。 「サイトさん、サイトさん」  シエスタは苦笑気味に笑いながら、才人の肩に手をかける。 「ミス・ヴァリエール、今起きたばかりなんですから。もっと優しく扱ってあげてください」 「あ、悪い、つい」  才人が慌てふためきながらも、丁寧にルイズの体を横たえなおす。優しい手つきから、相手のこと を最大限労わろうとする気持ちが滲み出ているようだ。シエスタの胸に、痛みを覆い隠すような暖か さが生まれた。 (よかった。わたし、嫌な女にならずにすみそう)  内心ほっとしつつ、シエスタはふと、横たえられたルイズを見る。そして、かすかに眉をひそめた。  どうも、ルイズの様子がおかしい。顔が熱を帯びたように赤く染まり、瞳は焦点を失ったまま潤ん でいる。眉は悩ましげに下がり、半開きになった唇からは湿っぽい吐息がかすかに漏れ出しているよ うだ。それに、よく見ると、体が小刻みに震えている。 (……お風邪でも召されたのかしら)  だとすると、汗ばんだ服を着替えさせないといけない。シエスタは、椅子に座って一息吐いている 才人の両肩に手を置いた。 「ほら、サイトさん、ミス・ヴァリエールも目覚めたことですし、ひとまず安心できたでしょう。サ  イトさんにもお休みが必要ですし、わたしもミス・ヴァリエールのお世話をしなくちゃいけません  から、一度お部屋に戻られてはどうですか」 「でも」  才人は少し迷う様子だった。本当は、一時も離れずルイズのそばにいたいのだろう。  だが、「ミス・ヴァリエールのお世話」という単語を聞いて、気を遣ったらしい。彼は不意に大き く欠伸をした。 「いや、そうさせてもらうかな。なんか、ほっとしたら急に眠くなってきた」 「ええ、ゆっくり休んでください」 「じゃあルイズ、俺……っと」  才人はルイズに声をかけようとして、途中で止めた。彼女はもう、布団の中にもぐりこんでいたのである。 「また寝てしまったみたいですね」 「だな。無理もないか、精神的な疲れが半端じゃねーだろうし」  小声で話しながら、二人は部屋を出る。  シエスタが後ろ手にドアを閉めると、才人が疲労の濃い顔に真剣な表情を浮かべて見つめてきた。 「じゃあ休ませてもらうけど。シエスタ、何かあったらすぐ俺を呼んでくれな」 「ええ、分かっています。と言っても、何もないと思いますけど」  現在、オストラント号は西方に向けて帰還する針路を取っている。ルイズが奪還されたことを受け て、指揮者のコルベールが一度引き返すことを決定したのである。エルフ側にもかなり損害が出てい るはずだし、おそらく逃げる敵を追う余力は残っていないだろう。  それでも才人は、なおも不安そうな面持ちであった。 「でもな、やっぱ安心できねえんだ。またルイズに何かあったらと思うと、俺」  それから才人は少しの間目を閉じてから、決心したようにシエスタを見た。 386 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 02:00:01 ID:rvYfeHEl 「シエスタ。俺、君に謝らなくちゃならない」 「え、どうしたんですか、急に」  才人が言おうとしていることが何かはすぐに分かったが、シエスタはあえて分からない風を装って、 きょとんとした表情で首を傾げた。 「俺、今回ルイズがいなくなって、改めて思い知ったんだ」  才人は少し躊躇いながらも、力強い口調で言う。 「俺が、どれだけあいつのことを、その、好きなのか、ってことをさ」  また、胸に鋭い痛みが生まれる。 「ああ、そのことですか」  だが、シエスタは何でもないことのように、にっこりと笑って才人の言葉を受け取った。 「今更何を仰るんですか。そんなこと、わたしはずうっと前から知ってますよ」 「シエスタ?」  才人が驚いたように目を見開く。シエスタは唇に手をやって笑った。 「もう。急に謝らなくちゃ、なんて言うものだから、びっくりしちゃいましたよ」 「ええと、あのさ、それで」 「分かってます」  喋りにくそうに口ごもる才人の声を、シエスタはすまし顔で遮った。 「お二人のお邪魔をする気はありませんよ。ミス・ヴァリエールだって、ずっとさらわれてて不安  だったはずなんです。今、彼女の心をかき乱すようなことは絶対にしません」 「ごめん」 「謝らないでください。お二人とも、わたしにとっては大切なお友達なんです。ちゃんと、お二人の  幸せを祝福してあげますから」 「シエスタ。俺、なんて言っていいか」  才人が悔やむように俯く。シエスタは苦笑して彼の肩を叩いた。 「そんな顔しないでくださいよ。ミス・ヴァリエールのこと、全力で見てあげるって決めたんでしょ  う? だったら、そんな顔しちゃダメです」 「そうか。そうかな、うん」  才人の顔に、少しだけ元気が戻ってくる。シエスタは「そうですよ」と頷いてから、手を打ち合わせた。 「さ、そろそろミス・ヴァリエールのお世話をしなくちゃいけませんから。サイトさんはお部屋に戻って何も考えずにお休みになってください。今後のことは、それからゆっくり話し合いましょう」 「そうだな。それじゃ、シエスタ、ルイズのこと……」 「大丈夫です。サイトさんの……いえ、わたしたちのお姫様は、ちゃんとお守りしてみせますから」  シエスタが自分の胸を叩いてそう言ってやると、才人はもう一度だけ「頼むな」と言い置いて、二 つほど離れた船室に戻っていった。  才人が船室に消えたあと、シエスタは長い吐息を吐き出した。同時にこらえていた感情が、胸の奥 からせり上がってきて、瞳の奥から涙を滲み出させた。才人に聞こえてはいけないと思い、シエスタ はしばらくの間その場にしゃがみ込み、声を押し殺して泣き続けた。 「大丈夫?」  と、不意に声をかけられた。慌てて涙を拭いながら顔を上げると、そこに見知った少女が立ってい た。小柄な体と、肩の辺りで切り揃えられた青い髪、そして湖のように静かな、青い瞳。 「ミス・タバサ」 「これ、使って」  タバサが差し出したハンカチを、シエスタは遠慮なく受け取った。それで完全に涙を拭ったあと、 小柄な少女に問いかける。 「あの。もしかして、さっきの会話」 「聞いてた。立ち聞きになってごめんなさい」 「いえ、それはいいんですけど」  その先を言うのは、少し躊躇われた。シエスタの知る限り、タバサもまた才人に恋焦がれていたは ずである。だとすれば、彼女も自分同様の胸の痛みを抱えているのではないかと思ったのだ。  だが、そんな気遣いなど無用と言うように、タバサは静かに首を振る。 「わたしは、サイトが幸せならそれでいい。ずっとそう思ってきたし、これからだってそう」  迷いのない声で断言されると、泣いていた自分が少し恥ずかしく思えてくる。「あーあ」と息を吐 き出し、シエスタは照れ笑いを浮かべながら立ち上がった。 「ダメですね、わたし。もうとっくに、諦めはついてたはずなのに」 「大丈夫?」 「はい、大丈夫です」  今度はちゃんと返事が返せた。泣いたおかげか、少しだけ心が軽くなっているように思える。 387 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 02:00:47 ID:rvYfeHEl 「あ、そうだ。ミス・タバサ、お願いがあるんですけど、聞いていただけますか」 「なに?」 「この部屋……ミス・ヴァリエールの船室の周りに、あの、音が聞こえなくなる魔法、かけていただ  けないでしょうか」  この冒険に参加し、間近で貴族と接することによって、シエスタも多少魔法のことを知るように なった。今タバサに頼んだ「サイレント」の魔法も、以前何度か見たことがあって、思い出したの だった。 「静かにしてあげたいの?」 「はい。ミス・ヴァリエールも、なんだか少し様子が変でしたし。もっとお休みが必要なのかもしれ  ません」 「分かった」  タバサが詠唱して杖を振る。見た目には分からないが、それで魔法がかけられたらしい。 「これで、部屋の中の音は外に聞こえないし、部屋の外の音は中に聞こえない」 「ありがとうございます」 「わたしは隣の部屋にいる。他にも、何か協力できることがあったらいつでも言って」 「はい、分かりました」  シエスタがお辞儀をすると、タバサは黙ってその場を去り、隣の船室に入っていった。 「さてと。ミス・ヴァリエールのお世話をしてあげなくちゃ」  気持ちを切り替えるように呟き、シエスタはルイズの船室に戻る。部屋に入った途端、航行中はい つも聞こえる風の音や、階上で誰かが歩き回る音なども聞こえなくなり、シエスタは感心した。 (これなら、ミス・ヴァリエールにもゆっくりと休んでもらえそうだわ)  そんなことを考えたとき、ふと、シエスタは部屋の隅から音が聞こえてくることに気付いた。  かすかな音であった。「サイレント」で部屋の外の音が遮断されていなければ、聞き逃していただ ろう。  聞こえてきた音は、小さな衣擦れの音。それに混じって、切ない喘ぎ声と、湿っぽい水音がかすか に聞こえてくる。 (え、なに?)  一瞬状況が分からず、シエスタは困惑する。喘ぎ声の主が寝台の上で寝ているルイズであることを 悟ると、その困惑はさらに大きくなった。 (どうしたのかしら。苦しくて呻いてる、って訳ではなさそうだし)  シエスタは息を潜め、出来る限り足音を立てないように注意しながら、部屋の隅の寝台に近づく。 だが、そこまで注意深くなる必要はなかったようだ。ルイズは寝台に横たわったまま、何かに夢中で 没頭しているようで、そもそもこちらが部屋に入ってきたことにすら気付いていないようだった。  近づくにつれ、音も大きく聞こえるようになる。やはり、衣擦れの音がする。寝台を見る限り、ル イズが布団の中で何やらもぞもぞと動いているようである。水っぽい音は、先程よりもさらに湿っぽ さを増しているように見える。 (……これ、ひょっとして)  シエスタの背筋に悪寒が走る。何か、猛烈におかしなことが起きているような気がする。  そして、ルイズの喘ぎ声がさらに明瞭に聞き取れるようになったとき、シエスタの悪寒は背筋から 這い出して全身を駆け巡った。 「だめぇ、指なんかじゃ全然ダメなのぉ……もっと太いの欲しいよぉ……」  頭がクラクラした。何がなんだか分からないまま、不吉な焦燥に駆られて、シエスタは寝台の上の 布団に手をかけた 「何やってるんですか、ミス・ヴァリエール!」  叫びながら布きれを引っぺがすと、その向こうからルイズが現れる。その姿が悪い予感通りだった ので、シエスタはその場で卒倒しそうになった。  赤い頬と潤んだ瞳のルイズは、薄手の寝衣を激しく乱したまま、左手で小さな乳房を弄り、右手で 股間をまさぐっていたのである。陰裂深く二本の指が差し込まれており、その奥から水っぽい液が失 禁のようにあふれ出して、寝台の敷布を濡らしている。  要するに、自慰の真っ最中なのであった。 388 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 02:01:36 ID:rvYfeHEl (何やってんですかあなたは)  口に出しては何も言うことができず、シエスタはルイズを見下ろしたまま目を白黒させてぱくぱく と口を開く。  その間もルイズは指を動かし続け、露骨な視線を浴びながらも一向に自慰を止める気配を見せな かった。それどころか、その指使いはより一層激しくなっているようにも見える。 「シエスタぁ、どうしよぉ」  指で陰裂の奥をまさぐり、時折声を詰まらせながら、ルイズはぐずるように言う。あまりに常識を 超えた状況に頭がついていかなかったが、シエスタはかろうじて返事をした。 「どうしようって、何がですか」 「あのねぇ、さっきからこうやって指でたくさん弄ってるんだけど、どうしてもイケないのぉ」 (何言ってるんですかあなたは)  だが、やはり口に出しては何も言えない。シエスタは軽く現実逃避していた。  彼女が頭の中のお花畑で遊んでいる間にも、ルイズの自慰は休むことなく続けられていた。だがい つまで経っても絶頂にはたどり着けないらしく、ルイズはその内切なく啜り泣きを始める。そして、 一旦指を陰裂から引き抜いた。 (何やってるんだろこの人)  虚ろな意識で、シエスタはルイズの動きを見守る。陰裂から愛液で濡れそぼった指を引き抜いたル イズは、その手をそのままさらに下の方に持っていき、 「って、何やってんですかミス・ヴァリエール!」  さすがに今度ばかりはシエスタも声に出して叫んでいた。指を肛門に突っ込む寸前だったルイズの 腕を無理矢理引っつかみ、その常識外れの蛮行を何とか止める。すると、ルイズが狂ったように泣き 叫び始めた。 「やだ、離してよぉ、シエスタぁ!」 「離しません! なんてところに指をいれようとしているんですかあなたは!」 「だって、イケないんだもん、おマンコじゃイケないんだもん。だからケツ穴ホジホジするのぉ!」 「お、おま……けつ……」  ルイズの口から飛び出した卑猥な単語に、シエスタは絶句するしかない。 (い、一体何がどうなってるの……?)  さっきまで己の失恋について傷ついたり、泣いたりしていたところにこれである。この状況はほと んど非現実的であり、悪夢のようにしか思えなかった。  だが、これはまごうことなき現実なのだった。シエスタが才人との恋愛にケリをつけている背後で、 ルイズは夢中になって自分の性器をいじって、獣のように快楽を貪っていた訳だ。まるで悪い冗談の ようだが、重ね重ね、これは現実である。  未だ失恋のショックから立ち直りきれていないシエスタの前で、勝利を収めた恋敵は、自分の尻の 穴に指をいれたいと言って泣き叫んでいる。 (なんなのこれ。なんなのこれ)  答えてくれる者はいない。シエスタは呆然としつつも、まだ自分の指を肛門にいれたがってジタバ タ暴れているルイズを抑えるのだけは忘れなかった。 (落ち着いてシエスタ。ミス・ヴァリエールは、あまりにも状況が目まぐるしく動きすぎて、激しく  錯乱なさっているのかもしれないわ)  無理のある理論で心を落ち着かせつつ、シエスタはルイズを安心させるような笑みを浮かべた。頬 が引きつっているのが自分でも分かったが、さすがにそれはどうしようもない。 「ねえ、ミス・ヴァリエール?」 「やだぁ、離してよぉ」 「じゃ、お尻に指をいれようとするの、やめていただけますか?」 「いやぁ。ケツ穴で気持ちよくなるのぉ」  まるで異常者と会話しているような気分。「もうイヤ、何もかも忘れて逃げ出しましょう!」と叫 ぶ理性を根性で押さえつけて、シエスタはなおもルイズと会話を続けた。 「いやですわミス・ヴァリエールったら。いくらなんでも冗談が過ぎますよ」 「やだぁ、お尻ぃ」  話が全く通じない。仕方がないので、別のアプローチから攻めてみることにする。 389 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 02:02:26 ID:rvYfeHEl 「どうして、お尻をいじりたいんですか?」  よもやこんな質問を口にする日が来ようとは、予想もしていなかった。なんとなく泣きたくなりな がら、シエスタはルイズの答えを待つ。  ルイズは、「えっとねえ」と童子のように呟き、目をとろんとさせた。締まりのない半開きの唇の 隙間から涎を垂れ流しつつ、だらしない口調で言う。 「ケツ穴ホジホジするとねえ、とってもいい気持ちになるのよぉ。わたし、おマンコも大好きだけど  ケツ穴も大好きぃ」 「そうですか」  頭が痛くなってきた。シエスタは歯軋りをしながら、何とかルイズを説得しようと試みる。 「いいですか、ミス・ヴァリエール。お尻の穴はね、とっても汚いんです。そんなところに指を突っ  込んじゃいけませんよ」  なんでこんなことを説明しなくちゃならないんだと、心の中で地団駄を踏む心境である。シエスタ は噛んで含めるような口調でルイズに言い聞かせた。するとルイズは、「そうよぉ」と、うっとりし た口調で呟く。 「わたしのケツ穴ね、とっても汚いの。わたし、汚いの。薄汚いメス豚の、精液便所なの。えへ、えへへへ……」  自分の言葉でさらに興奮してきたのか、ルイズは自由な左手をまた陰裂に突っ込んで、夢中で中を かき回し始める。  このまま発狂してしまいたいと思いながらも、シエスタは寸でのところで踏みとどまる。そして、 有無を言わさぬ口調でルイズに命令した。 「ミス・ヴァリエール! 今すぐ、そんなことをするのはお止めなさい!」 「どうしてぇ」 「どうしてって、考えれば分かるでしょう!?」 「えっとねぇ」  ルイズは唇に濡れた指を当てて、しばらく考えていたが、やがて何かに気付いたように、目を輝か せて叫んだ。 「分かった、シエスタが弄ってくれるのね!」 「は?」  予想だにしない答えに呆然とするシエスタのことなど全く気にせず、ルイズは寝台の上で四つんば いになって、こちらに尻を向けてきた。 「え」 「お願いシエスタ、わたしのだらしないケツ穴、たくさんいじめてぇ」 「ちょ」 「早く、早くぅ」  ルイズが待ちきれない様子で尻を振りながら、病的に紅潮した横顔でこちらを見つめてくる。  シエスタはそのルイズの横顔と、自分の目の前に突き出された小ぶりな尻を見比べた。幼い弟や妹 などを除けば、人の尻をマジマジと眺めるなど初めての光景である。ひくついている肛門を見ている と、この世の理不尽について滔々と考えたくなってくる。  だが、いつまでもそうしている訳にはいかなかった。もしも、才人が気まぐれでおきだして、再び この部屋を訪れたりしたら。 (破滅だわ……!)  凄まじい恐怖に駆られて、シエスタは思わず自分の左手でルイズの尻をつかまえる。肌と肌が触れ 合った瞬間、ルイズの体が大きく跳ねて、彼女の口から聞いたこともないような激しい嬌声が上がった。  その声を聞いた瞬間、シエスタの中で何かが切れた。 390 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 02:04:02 ID:rvYfeHEl 「ふふ、ふふふふ……」 「シエスタ?」 「わたしが真剣に真剣に悩みぬいて、サイトさんをあなたに譲り渡そうと決めた途端に、これですか……」  この一ヶ月間の苦しみと悲しみ、先程までの痛みが、一気に胸の中を駆け抜けていく。 (もう、どうにでもなれ)  シエスタは目を見開き、思いっきり右手を振り上げた。 「そんな悪い子には、たっぷりお仕置きして差し上げます!」 「してぇ、お仕置きしてぇ!」  シエスタの怒りの声に、ルイズがむしろ悦びの声を上げると同時。振り下ろされた平手が、小ぶり な尻を思いっきり打った。  ルイズが声にならない悲鳴を上げる。だが、シエスタは躊躇せずもう一度手を振り上げ、何度も何 度も憎い尻肉に向かって振り下ろした。そのたび乾いた音が鳴り響く。その響きがあまりにも快いも のだったので、シエスタはなおさら怒りを募らせる。 「この、いきなり変態になって帰ってきて、本当に、悪い子、悪い子、悪い子……!」 「ごめ、ゴメンなさいぃ、悪いメス豚でゴメンなさいぃ……!」  そうやって、十分ほどの時間が経過しただろうか。  すっかり精根尽き果てて、シエスタは寝台のそばに座り込んでいた。散々ルイズの尻を打った手の 平がひりひりと痛み、腕が痺れたような感覚に包まれている。  病的な怒りと興奮が去ったあとに残ったのは、凄まじい疲労と絶望感である。シエスタはのろのろ と首を巡らし、寝台の上を見る。  そこでは散々打たれて真っ赤になった尻をさらしたまま、ルイズが半ば白目を剥いて倒れ伏してい るのであった。尻を叩かれている途中で失禁まで始めたので、異臭と尿に包まれて、目も当てられな い状態である。  だが、何よりもシエスタの心を重くしたのは、そんな状態にあってもなお、ルイズの口元に締まり のない幸せそうな笑みが浮かんでいることであった。 「えへへぇ、お尻ぃ、気持ちいぃ……」  そんな、寝言だかうわ言だか分からない言葉まで聞こえてくる。 (どうしよう、これ……)  寝台の上を片付ける気にもなれないまま、シエスタは頭を抱えて長い長いため息を吐き出した。 420 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 22:56:31 ID:DThkf9y/  あまりのことに茫然自失となったシエスタだったが、残念ながらいつまでもその場に座り込んでは いられないのだった。ルイズが今少し大人しくなっているとは言え、いつ才人が入ってきてもおかし くない状況は全く変わっていない。  シエスタは立ち上がり、後ろを向いた。乱れて一部が湿っている敷布、跳ね除けられた布団、その 上に半裸で白目を剥いてぴくぴくと痙攣しているルイズ。 (こんなところを見られたら、おしまいだわ)  慌てて寝台に取り付き、意識が混濁しているらしいルイズの肩を軽く揺さぶる。 「さ、ミス・ヴァリエール。起きてください。今から体をきれいにしましょうね」  ルイズからの反応はない。瞳は虚ろで、口は半開きになったままだ。少し待ってみたが、正気に戻 る気配はない。シエスタは部屋の隅の長櫃から長い布を取り出して、ルイズの体を拭き始めた。まず 彼女から綺麗になってもらい、敷布や布団の問題は後回しにするつもりだった。  汗と尿でぐっしょりと濡れた寝衣を脱がせ、ルイズの肌に直接布を当てて汚れを拭き始める。する と、先程まで無反応だったルイズが、突然奇声を上げた。その唐突さに驚かされ、シエスタは思わず ルイズの体から手を離してしまう。 「どうしたんですか?」 「もっと、もっとやってぇ」  呂律が回っていない声である。シエスタは嫌な予感を覚えたが、ルイズを汚れたまま放置しておく 訳にもいかず、嫌々ながら彼女の体を拭くのを再開する。  ルイズはシエスタが布越しに彼女の体を撫でるたびにいちいち淫靡な奇声を上げ、切ない喘ぎ声を 漏らした。その内小柄な体が火照って赤くなり始め、小さな乳首もぴんと突っ立って硬さを増してい くのが見て取れた。顔に視線を移すと、だらしなく舌を垂らした悦びの表情が浮かんでいる。シエス タはうんざりした。 「ふざけないでください、ミス・ヴァリエール」 「だって、シエスタが上手すぎるんだもん」  悩ましげな声で言ったあと、ルイズはこちらに身を乗り出してきた。あるかなしかの乳房を両手で 寄せて、ねだるような甘ったるい声で言う。 「ねぇ、もっと、この辺りをたくさんこすって」 「わたしはそんなつもりであなたの体を拭いているんじゃありません!」  怒鳴りつけてやると、「シエスタのいじわる」と拗ねた声が返ってきた。そして、ルイズはまた 黙って自分の股間に手を伸ばしかける。シエスタは慌ててその腕をつかんだ。 「ちょっと、何なさってるんですかミス・ヴァリエール」 「オナニー」 「そういうことを聞いてるんじゃありません。やめてください、お願いですから」  苛立ちを必死にこらえながらそう言うと、ルイズはいやいやするように体を強請りながら、切なく すすり泣き始めた。 「焦らしちゃやだぁ」 「焦らしてるんじゃありませんったら! もう。とにかく、黙って大人しくしていてください」 「いじわる」 「何とでもお言いなさい」  もうその辺りはすっぱり無視することに決めて、シエスタはルイズの体を乱暴に拭き始める。ルイ ズは相変わらず奇声や喘ぎ声を漏らし、「ダメ、もっと優しくしてぇ」「でも、乱暴なのも好きぃ」 だのとうわ言を呟いてシエスタの集中をかき乱したが、彼女はなんとか己の仕事を完遂した。 (自分で自分を褒めてあげたい気分)  だが、一仕事終えた達成感に浸っている余裕はなかった。次は寝台を片付けなければならない。 「ミス・ヴァリエール。一度寝台から降りていただけますか」 「うん」 「で、服を脱いでそこに置いてください」  もちろん、「汚れたので服を着替えてください」という意味である。だが、ルイズは何か別の意図 のように解釈したようだ。異様なまでに目を輝かせると、寝台から降りて待ちきれない様子でいそい そと服を脱ぎ捨てた。そして、一言。 「して」 「何もしません」 421 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 22:57:25 ID:DThkf9y/  もはや怒鳴る気力もない。シエスタは裸で待ち構えているルイズのことは無視して、汚れた布団を 完全に床に下ろし、敷布を寝台から引き剥がす。その途中で、小さな二つの腕が腰の後ろから伸びて きて、彼女の体に抱きついてきた。背中に火照った体の熱を感じる。 「何してるんですか、ミス・ヴァリエール」 「いじめちゃいや」 「いじめてませんから。いいから早く服を着てください」 「だって、まだ何もしてないのに」 「だから何もしませんってば」 「やだ、切ないの。ねえシエスタ、お願い。何でもするから、わたしのこといじめて」 「じゃあ服を着て大人しくしていてください」 「シエスタぁ」  幼子のような声で恥ずかしげもなく泣きながら、ルイズは自分の体を上下に揺すって、シエスタの 背中にこすりつけ始めた。主に胸の辺りを重点的に。 「んふぅー……気持ちいいぃ」  服の布地越しに湿りきった吐息を感じる。シエスタの背筋に悪寒が走った。 「ちょ、やめてください、ミス・ヴァリエール!」 「だって、シエスタがわたしのこと弄ってくれないんだもん。だからね、自分で気持ちよくなるの」  とろけるような声で言い、ルイズはさらに激しくシエスタの背中に自分の前半身をこすりつけ始め る。その内息がさらに荒くなり、体の動きも速くなってきた。 (早く、片づけを終わらせないと)  シエスタはメイドとしての半生で得た経験をフルに活かし、素早く寝台を整えた。そのまま、未だ 体を揺すり続けているルイズを引き剥がし、乱暴に寝台の上に放り出す。 「いやぁ、シエスタぁ」 「いい加減にしてください、ミス・ヴァリエール。こんなことがサイトさんに知れたら……」  脅し文句として多少は有効かと思って才人の名を口にしてみる。ルイズはその名前を聞いた途端、 きょとんとした様子で目を瞬いた。 「サイト?」 「そうです。サイトさん。ミス・ヴァリエールがこんなことしてるってサイトさんに知られたら、ど  うなると思いますか?」  ルイズは目を輝かせた。 「たくさんしてもらえる」  逆効果だった。虚脱感のあまり腰砕けしそうになるシエスタの前で、ルイズは夢見るように唇を緩ませる。 「サイト、すごくえっちだもん。わたしもえっちになったの知ったら、きっとわたしのこといっぱい  愛してくれるわ。わたしたちね、昼も夜もずーっと愛し合うの。動物みたいにずぼずぼするの」  淫靡な想像がどんどん膨らんでいくらしく、ルイズの瞳がまた焦点を失い始める。 (これはお手上げだわ。とてもわたしの手には負えない)  シエスタは心の中で白旗を上げた。こうなれば、誰かに助力を求めるしかない。 (でも、こんなこと誰に相談したらいいのかしら。サイトさんに言うのは論外だし、だからって、他  に頼れる人も……あ、そういえば)  タバサの顔が頭に浮かんだ。協力するから何でも言ってと言ってくれたし、彼女は口が堅そうだ。 と言うかそもそもあまり喋らない。それに何より、冷静沈着な知識人である。その知識欲が性的な分 野にまで及んでいるかは定かでないが、とにかくいい助っ人になってくれるはずである。 (よし、ミス・タバサに相談してみよう)  そう決めたものの、シエスタは少し迷う。タバサは隣の部屋にいる。呼びに行くと言っても、部屋 を離れる時間はせいぜい数十秒ほどのはずである。だが、たとえその程度の時間でも、今のルイズか ら目を離すのは不安だった。 「ミス・ヴァリエール」 「なぁに」  ぼんやりと首を傾げるルイズの眼前に、シエスタは指を突きつけた。 「いいですか、わたしは今からほんのちょっとだけ部屋を空けますけど、その間にさっきみたいなこ  としちゃダメですよ」 「さっきみたいなことって?」 「ええと」  さすがに卑猥な単語を口にするのは躊躇われたので、シエスタは曖昧に説明した。 「だから、自分の指を、その、そこにいれたり、とか」  股間を指差されたルイズは、少しの間何やら考えていたようだったが、やがてにっこり笑って頷いた。 「分かったわ。何もしないで待ってる」 422 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 22:58:38 ID:DThkf9y/ 「本当ですよ。絶対ですよ」  何度も念を押しつつ、シエスタは部屋を出ると、滑稽なほど急いで隣の部屋の扉をノックした。 「誰」  静かな声が返ってくる。シエスタが「わたしです」と答えると、中に入るよう促された。  船室の中に足を踏み入れたシエスタは、机に向かって本を広げていたタバサのそばに一直線に歩み 寄り、言った。 「ミス・ヴァリエールが大変なので来てください」  あまりにも適当すぎる説明ではあるが、上手く説明できないので仕方がない。幸い、こちらの様子 から何かがあったことを察してくれたらしい。タバサはすぐに本を閉じ、杖を手にとって立ち上がった。 「こちらへ」  シエスタはタバサの部屋の扉を開け、すぐにまた隣のルイズの部屋に戻ろうとする。  そして、扉を開けて絶句した。 「ああ、サイト、サイトの太いのぉ」 「何やってるんですか!」  寝台の上でまた陰裂の奥を弄っていたルイズのそばにすっ飛んでいって、無理矢理彼女の腕をつか み止める。先程「自慰は絶対しないように」と厳命してから、一分と経っていない。いくらなんでも 早すぎである。 「こういうことは止めてくださいって言ったでしょう!?」 「そうです」  と、ルイズは何かを期待するかのように目を輝かせた。 「ルイズ、変態なので約束を破っちゃいました。お仕置きしてください」  そう言って、自分から股を広げてみせる。最初からそれが目的だったことは明らかである。シエス タはため息を吐いた。 「なるほど」  背後から納得したような声が聞こえてくる。振り返ると、タバサが後ろ手に扉を閉めたところで あった。 「そういうこと」  何やら、確認するように何度も頷いている。変わり果てたルイズの痴態を見ても、全く動揺した様 子が見られない。やっぱりこの人は凄い、とシエスタは内心感心した。 「こういうことなんです」 「いつから」 「起きたときにはもう様子がおかしくて」 「そう」  そんなことを喋っている間にも、ルイズはまた自慰に没頭し始めている。背後から聞こえてくる喘 ぎ声と絶え間ない水音を、シエスタはあえて聞こえない振りで流した。 「どうなってるんでしょうか」 「ある程度、推測はつく」  答えは期待していなかったが、タバサは静かにそう返答する。シエスタは驚きに目を見張った。 「え、それってどういう」 「多分」  と、タバサが何か言いかけたところで、シエスタは不意に背後から服の裾を引っ張られた。 「ねえ、シエスタぁ」  振り向くと、床にしゃがみ込んだルイズが、左手でこちらの服の裾を引っ張っていた。右手はもち ろん股間に潜り込んでいる。 「無視しちゃイヤ。ね、わたし、シエスタの言いつけ破った、悪い雌犬なの。早く、躾けて。ねえ、  躾けてよぉ」 「何バカなこと言ってんですかあなたは」 「ああ、いい、もっと、もっと口汚く罵って!」  ルイズは目を閉じて大きく体を震わせる。何を言っても興奮の材料になってしまうようだ。こんな 風に邪魔をされては、いつまで経っても話が進まない。 (どうしましょう) (任せて)  シエスタの困惑の視線に、タバサは小さく頷いた。こちらに歩み寄ってきて、しゃがみ込むルイズ を無表情に見下ろす。 423 名前: ヴァリエール家の雌犬 [sage] 投稿日: 2007/09/11(火) 22:59:22 ID:DThkf9y/ 「ルイズ」 「ああ、タバサ。タバサもいじめてくれるの」 「分かった、いじめてあげる」  言うが早いか、タバサは小柄な体には似合わない力で、ルイズの体を抱え上げた。そのまま寝台に 相手の体を横たえて、ゆっくりと覆いかぶさる。 (え、何を)  驚くシエスタの前で、タバサは躊躇いなくルイズの唇に自分の唇を押しつけた。舌を突き入れ、吸 い上げ、ねっとりとした水音を響かせる。ルイズもまたうっとりと頬を染め、タバサの激しい接吻に 応じている。  そうして激しく唇と舌を絡ませつつ、タバサは同時に腕も動かしていた。左手でルイズの頭を押さ えながら、右手は滑るように相手の肌を這い回り、要所要所を指先でくすぐったりつねったりしなが ら、相手の反応を窺っている。 「あ、ああ、そこぉ」 「ここ?」  ルイズの唇を攻め立てながら、タバサはルイズの左胸の辺りを指でなぞる。ルイズの体が小さく跳 ねた。 「そこ。いい、いいの」 「そう」  タバサの唇がルイズの唇から離れ、混ざり合う唾液の跡を残しながら、彼女の体を這い下りる。顎 を伝い首を通り、やがてルイズが最も敏感に反応するスポットに到達する。タバサはその辺りを、舌 と唇で重点的に攻め立てた。甘噛みを交えながら、舐め、吸い寄せ、音を立ててキスをする。そのた びにルイズはむせび泣くような喘ぎ声を上げ、何度も何度も小さく体を跳ねさせる。 (……凄い)  シエスタは、その光景に淫靡さと同じぐらいの美しさを感じていた。タバサは刻々と変化するルイ ズの反応を敏感に感じ取り、次々に場所を変えながら、滑らかに相手の体を刺激していく。そのたび、 ルイズは長く、あるいは短く悲鳴を上げて体を震わせる。タバサの洗練された指使いと相まって、そ れはまるで一流のピアニストが素晴らしい旋律を生み出しているようにも見えるのだった。  そうやってシエスタが見入っているうちに、二人の情交は終わりを迎えつつあった。  タバサの指がルイズの陰裂に潜り込み、休みなく中をかき回している。ルイズは全身を上気させ、 身悶えしながら切なげな喘ぎ声を漏らし続けている。正気を失った顔は、先程自慰していたときより もさらに崩れ、まさに快楽を貪る獣の表情である。開きっぱなしのその目を、タバサは静かに見つめ ている。 「そろそろ?」 「うん……ああ、もう、もう……!」 「そう」  小さく呟くと、タバサは最後の仕上げとばかりに、ルイズの陰核を軽く摘み上げる。その瞬間、ル イズの体が弓なりに反り返った。大きく開かれた口から長い長い悲鳴が上がり、やがて小柄な体が寝 台に崩れ落ちる。半ば白目を剥きかけているルイズの口元から、唾液が一筋流れ落ちて、取り替えた ばかりの敷布をまたも濡らしていた。 「これで黙った」  ぽつりと言い、タバサは少しだけ乱れた着衣を軽く直す。その言葉どおり、ルイズは荒い呼吸を繰 り返すだけで、もう何も言わなかった。時折痙攣しているものの、もう先程のように興奮して自慰に 没頭することもない。完全に意識が飛んでいるようである。 (ううん、飛ばされたんだわ。この人に、指と唇だけで)  性に関する知識が豊富とは言えないシエスタにも、今目の前で披露されたタバサの手腕が並外れて いたことだけはハッキリと分かる。  しかも、完全に正気を失くしているルイズに比べ、タバサの方はあれほど激しく相手を弄んだと言 うのに、息一つ乱していない。事前と事後で全く様子が変わらない静かな佇まいに、シエスタはただ ただ呆然とするしかなかった。 「あの、ミス・タバサ」 「なに」 「ええと、何というか、とてもお見事でしたけど……一体、どこであんな技術を?」  タバサはそっと目をそらすと、ルイズの愛液に塗れた自分の指先を見下ろして、小さく呟いた。 「そういう任務もあった」  なんだかいろいろ怖かったので、シエスタは深く追及しなかった。

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