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51 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:04:50 ID:Z+5utJQs それは突然だった。 「ルイズ」 「何?」 「豆とかってないか?」 「…は?」 ルイズは一瞬何考えてるんだ?という顔をした後にまた聞き返した。 「…豆?」 「うん、豆。」 「豆、ね…調理室に行けばあるんじゃない?」 「そうか、ありがとう」 そう言うとサイトは厨房に向かって何故か嬉しそうに走っていった。後には何であんな質問をサイトがしたのかわからないままのルイズが取り残された。 調理室に着くと夕食を作っている途中で、いいにおいがしてきた。 覗くとシエスタが夕食のスープのなべをかきまわしてるところだった。 「シエスター」 サイトが呼ぶとシエスタは鍋の火を止め振り向き、サイトの姿を確認すると小走りでサイトのところにかけてきた。 「どうしたんですかサイトさん?」 「シエスタ、豆ってない?」 「豆……ですか?」 「うん」 ルイズと同じ反応である。そりゃそうだろう。いきなり「豆ない?」なんて聞かれた日には「え?」とぐらいしか返せないに決まっている。それでもシエスタは脳をフル回転させて答える。 「えーと、豆なら多分保管庫にありますけど」 そう言った途端、サイトの目が輝いた。本当に分からない。 「本当!?見せてくれる?」 「え、ええ…いいですけど」 そういってシエスタはサイトを調理室の奥の保管庫に連れていった。 「これは・・・」 「ここには豆以外にも料理に使う食材が保管されてるんですよ。もしものときのために1週間分ぐらいはあるんじゃないでしょうか」 52 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:07:15 ID:Z+5utJQs 「へぇ、そうなんだ」 「ほら、豆ならここにありますよ」 そういってシエスタは棚のようになった保管庫の中から豆のはいった箱を取り出した。 「これが・・・ありがとうシエスタ、ちょっと見せてもらってもいい?」 「ええ、いいですけど」 サイトはそういってシエスタが取り出した箱を開けた。その中には白、赤、緑など様々な色で大きさや形も違ういろんな種類の豆が入っていた。それを見て何故かサイトは顔をしかめ、「これは大変だな」と呟く。 「あの…サイトさん、どうしました?」 「…ん?ああ、ゴメン、ところでシエスタ、この豆少しくれない?」 「まあいいですけど…」 「あ、あとあそこにある入れ物も貸してくれる?」 そういってサイトは壁にかかっていたまるで枡のような小さな木の入れ物を指差した。 「あれなら全然使ったこともないのでいいですよ」 「本当!?ありがとう!」 「どういたしまして…ってサイトさん、豆とあんな箱を使って一体何をするんですか?」 「うん、実は…」 サイトは今日あったことを話した。 サイトがゼロ戦の整備を終え、格納庫の前で横たわっていたときのことである。 サイトは体を大の字にし、草の上でゆっくりとした時間を過ごしたいる。 最近はいろいろとありすぎて疲れたのでたまにはこうやってのんびりするのもいいかな、なんてことを考えながら青空を眺めている。さっきどからほとんど変わってない青空。雲は見える限りではひとつもなく、見渡す限りの青で太陽の光が眩しい。 「雲ひとつない快晴、か……」 そんなことを呟いていたサイトが、ふと上半身を起こしなにやら言い始めた。 「快晴、晴れ、曇り、雨、雪……懐かしいな」 そう、サイトが言ったのは日本にいた頃に習った天気の呼び名である。 「そういえば最近日本のことすっかり忘れてたな…今どうなってんだろうな…」 そういうとサイトは立ち上がり歩き出した。そしてふとこう呟いたのである。 「最近、食ってないな……日本食」 サイトは歩きながら考えた。アレは無理だろう、コレならいけるかもしれない…と。そして 53 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:09:04 ID:Z+5utJQs 「うん、コレなら大丈夫そうだ」 決めたサイトは足取りも軽くルイズ達のいる寮へと向かっていったのだった。 「…それで、豆と木の入れ物を?」 「うん」 「そういうことなら言ってくだされば、私も協力できますけど」 「いや、シエスタは夕食の事もあるし俺のせいで他の人に迷惑かけたくないから」 「でも…」 「大丈夫だって。そんなにたいしたことじゃないから」 「そうですか…わかりました。いい物が出来るよう頑張って下さいね」 「あ、あと白い豆だけ使いたいからここで分別していってもいい?」 「だからそんな大変なことだったら手伝いしますって」 「ホント大丈夫だから。嬉しいけどシエスタは料理の方を頑張って、ね?」 「そこまでいうんなら…分かりました、何かあったら言ってくださいね」 そういうとシエスタは保管庫を抜けて調理室へと戻っていった。 「うん、わかった。ありがとうね」 そういってサイトは目の前にある箱を見ていった。 「これは大変だな…」 結局サイトが木の入れ物いっぱいの豆を選別し終えたのはシエスタが料理を作り終える頃だった。 「ふー、やっと終わった。やっぱ慣れない作業をすると疲れるな」 サイトは選別し終えたばかりの豆を一粒摘んでみる。 「つーかこれ本当に大豆か?」 サイトが摘んでいる豆は色こそ白で丸いがサイトにはそれが大豆なのか分からない。 「とりあえず食ってみるか」 ぱくっ。 「うーん、分からないな…」 普段からよく食べたりしていない限り食べただけで大豆かどうかを見抜くのは難しいだろう。でも。 「まあ形とかも似てるしこれでいっか」 結局はこの結論に至るのだった。だが。 「しまった…忘れてた…」 54 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:11:00 ID:Z+5utJQs 「コレ」を作るにはあと二つ、重要なモノがかけていたのである。一つは調理具、これはシエスタに言えば貸してくれるだろう。しかし二つ目は… 「どうしよう…何か思い出せれば…」 そういってサイトは日本にいたときの記憶を必死に探る。二つ目のモノに関する情報を探して。そして… 「あっ、そうだよそうすればいいんだ!」 思い出した。 「でもどうやってとってくれば…そうだ、ゼロ戦でいけばいいか!燃料はまだあったはずだし、ルイズだって事情を言えば許してくれるはず。うん、そうしよう」 今日はやけに独り言の多いサイトだった。 サイトが保管庫を出るとシエスタが調理を終えて盛り付けをしていた。 「あっサイトさん終わったんですね?」 「うん。あとひとつだけお願いなんだけど明後日あたりにちょっとここかしてくれない?鍋ひとつでいいから」 「ええいいですよ」 「ありがと。あと豆の入ってる箱はしまっておいたから、これだけもらっていくね?」 「ええどうぞ」 「ごめんね、シエスタには迷惑ばかり掛けちゃって。お詫びに手伝っていくよ」 「いえ、大丈夫です。私がやりますから。それにサイトさん、早く部屋に戻らないとミス・ヴァリエールが待ってるんじゃないですか?」 「あー、そうだね。じゃあ俺は戻るから」 そういうとサイトは木の入れ物に入った豆を持って調理室を出た。 「ただいま、ルイズ」 「遅かったじゃない」 「ゴメンゴメン、ちょっと時間がかかって」 「ふぅん…そういえばアンタ調理室行ってたんでしょ?何やってたのよ」 「え?ああこれに豆入れてた」 「アンタまだ豆、豆て…ってその入れ物は何よ?」 「ああこれ?保管庫に行ったら使えそうな入れ物があったからシエスタに言って借りてきた」 「アンタいまシエスタって…そういえば調理室にはシエスタがいたわよね…しかもアンタ帰ってくるの遅かったし…もしかしてぇ…!」 「い、いや違うって!何もしてないって!信じて!」 「いつもいつもそうやって逃れようとするわよね…」 「本当に今日は何もしてない!本当だから!」 55 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:12:52 ID:Z+5utJQs サイトの真剣な眼差しを受けてルイズも感じた物があったのかそれ以上怒るのをやめた。 「わかったわ、今日はアンタの言うことを信じるわ。それよりなんで豆なんか持って来たのよ」 「うん、それが…」 サイトはさっきシエスタにした説明をもう一度ルイズにした。 ひょんなことから日本を思い出したこと。 日本食が食べたくなったこと。 いろいろ考えた末、コレなら作れると思い作ろうとしていること。 そして説明が終わる頃に丁度夕食の時間となり話の続きはご飯を食べながらとなった。 「…で、その何とかやらを作るために豆とその入れ物がいるってこと?」 「うん。それともうひとついるものが」 「何よ」 「海に行けばとれるんだけど」 「ここにはないの?」 「うん」 「保管庫にも?」 「多分、ていうかまずない」 「じゃあどうするのよ」 「だから明日海までとりに行きたいんだけど、いい?」 「それがあればできるの?」 「うん、材料は揃うからあとはそれを調理するだけ」 「…まあ明日は何もないしちょっとサイトの故郷の料理にも興味あるしいいわ」 「ありがと」 「あっあと…その…」 「ん?」 「その…わ、私も…連れてって…」 「え…」 「そのっさっ最近サイトと二人で外出ることもないしっ…たまには…二人で…」 「…うん、そうだな」 そこまで言うとお互い急に恥ずかしくなり黙りこくってしまう。でもそれが嫌だとは思わなかった。むしろ気持ちよかった。ちょっと恥ずかしくてあったかい、この感じが気持ちよかった。 56 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:15:08 ID:Z+5utJQs 「いやー、若いっていいねぇ、ウン」 台無しだった。 その後空気を読めなかった哀れな剣が処罰されたのは言うまでもない。 そして夜。 「ルイズ、明日の事もあるしもう寝ない?」 「うん、そうね」 時間帯的にはまだおきていてもいい時間だが明日海まで行くことを考えるとあまり夜更かしはせず早めに寝たほうがいいだろう。それはルイズも同感で、珍しく二人は早めに寝ることとなった。 「明日、楽しみだな」 布団の中でサイトが言う。 「ん…そうね」 「じゃあ、おやすみ」 「ね、ちょっと待って」 そういうとルイズはサイトの手に自分の手を重ねた。触れている所からくるぬくもりがあったかい。いつものサイトなら裏声を出してひっくり返るところだが今は不思議と落ち着いていた。 「どうしたんだ、ルイズ」 「なんだかこうしていたいの」 「そうか、それならずっとこうしていればいいよ」 「ありがとう…」 普段のルイズからは考えられない態度だったが、過去に何度か離れてはくっついてを繰り返すうちに自然とこういっ たことが増えているのだった。それはお互いが自分のキモチとちゃんと向き合えるようになってきた証だった。この 先、二人が今の関係を超える日が来るのも実はそんなに遠くないのかもしれない。 「ねえサイト、サイトの故郷ってどんな感じなの?」 「ああ、そうだな、こっちにはないものがある。でもこっちにはあるものがない。そんな感じかな…」 「ふぅん。何だか微妙ね」 「まあそうだな」 57 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/25(火) 22:16:13 ID:Z+5utJQs 「こっちの世界とはどっちがいいの?」 「どっちともいえない、今のところは。向こうにもこっちにもそれぞれのよさがあるしな」 「サイトらしいわね」 「俺らしいかもな」 「そういえば、さっきサイトが作るって言ってた―――― こうして夜は更けていく。明日はいよいよ出発の日である。 152 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:22:00 ID:9JxsjUmP ↓ 朝。 「んんっ〜」 先に起きたのはサイトだった。カーテンの隙間から差し込む日差しが寝起きのサイトには眩しく、眼をこする。 「おはよー」 誰に言う訳でもなく、まだ寝ぼけ眼のまま呟く。寝起きでまだ寝ぼけてるとき、意味もなく呟いてしまう。サイトのちょっとした癖である。 そんなサイトだったが、しばらくベットの上でぼーっとしてるとだんだん眠気もなくなってきて、いつものサイトにもどっていく。 眠気も覚めてきたところで、ふと横を見る。 「…すー、すー」 ルイズはまだ眠っている。サイトのほうに顔を向け、無防備なまま。サイトはその姿を見て思わず「かわいい」と思ってしまう。 見た目でこそ起きているものの、まだまだ頭や体は眠っていたのだろう。サイトはそのまま何の気無しにルイズの顔に自分の顔を近づける。 サイトの顔がだんだん近づいていく。1m。50cm。25cm。10cm。5cm。1cm。 しかし、そういうときに限って起こってしまうのものである。 「ん…」 パチッ。 最悪のタイミングである。 「…え?」 「…あ」 ルイズが眼を開けると目の前にはサイトの顔がどアップでうつされていた。そして何故か上から息が吹きかかっている。自分の顔に。 普段のサイトならこのような状況になったらすぐさま逃げるが、まだまだ眠っている頭ではそれをそう判断することは出来なかった。ただルイズが眼を開けたので何が起きた か分からず、サイトの頭の中はフリーズしている。 ルイズもルイズで起きたばかり。当然何が起きたか分からず、当たり前のようにルイズの頭もフリーズする。 朝の日差しが二人を照らす中、寝起きの二人はそのまましばらく固まっていたという。 フリーズした頭が復旧するのは二人ともほぼ同時だった。何が起きたか整理がついた途端、サイトは顔を青くして震え、ものすごい勢いで離れ、部屋から出ようとする。しか し運悪く鍵が閉まったままで、焦りパニックになっているサイトには鍵を外すことなどできない。そうしているうちにも顔を真っ赤にしたルイズがあの杖を持ち迫ってくる。 153 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:23:14 ID:9JxsjUmP 「ごっ…ごめんー!!」 「こっこの…馬鹿犬ー!」 ドゥオオォォォォォォンン!!! 「あら、今日は朝早くから元気ですね」 そう言うのは調理室で朝食の準備をしているシエスタだった。 ********************************************* [#bb4d8bec] 「で、なんでアンタは…あんなことをしたのよ」 ルイズは真っ赤になりながらサイトに問う。 「よく分からないけど…その…ルイズが可愛かったから、つい」 「!!!」 その言葉を聴いた瞬間、ルイズは口に運びかけていたハムを使っていたフォークごと落としもともと真っ赤だった顔を更に真っ赤にして固まる。固まりながらもわずかに震え ているのが指先を見て分かる。 「まあ…なんだ、すまなかったな、朝早くから」 サイトは恥ずかしがりながらも頭をぼりぼりとかいて謝る。 「え…」 サイトの謝罪の言葉を受け、固まっていたルイズの緊張が一気に解ける。 「ん?どうした」 サイトはもう普段に調子に戻り、パンをちぎり口に運ぶ。 「あ、ハム落としてるぞ、ルイズ」 そう言ってハムを取ろうとルイズに近づくサイトだったが、ルイズが小声で何か言っているのを聞き取る。 「……よ」 「え?」 「だから……わよ」 「わよ?」 「だから!その…わっ私が寝てたら少しは…きっキスぐらいはしても…いぃわょ…」 語尾がだんだん小さくなるのにつれ、ルイズは下を向く。恥ずかしくてそうするしかないのだろう。 サイトはルイズの爆弾発言にドキッとしたが、そのうちこらえきれなくなるものを感じふいににルイズをだきしめる。 「ひゃっ!?」 「ありがと、ルイズ」 154 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:24:34 ID:9JxsjUmP 「え…ううん、そっその…してもいいけど私が寝てるうちにしなさいよねばっ馬鹿犬」 「…へいへい」 「何よ、何かおかしい?」 「何も」 すっかりいつものルイズだなあと思い、サイトの顔に自然と笑みが浮かぶ。 「さて、朝ごはん食べたら行くか」 「えっ?…あっああそうね、食べたら行きましょう」 こうして二人の甘い朝食タイムは過ぎていったのである。 ********************************************* [#k258bfd8] ―今ルイズとサイトが歩いているのは場所は格納庫の中。朝食を終え、部屋を軽く片付けた二人はここまで歩いてきたのである。 「ねえサイト」 ふいにルイズが聞く。 「ん?」 「海って言うけど、どこに行くかは決まってるの?」 「どこって、海は海だろ」 「そうじゃなくて、具体的にどこに行くのよ。海って行ってもいろいろとあるじゃない」 「うーん、まぁ適当に飛んで海が見えたらそっちにいけばいいだろ」 「って、ちゃんと決めてないの?」 「うん。昨日決まったばかりだし…」 「じゃあ、地図とかは?」 「ない」 「ちょっと、もし迷ったらどうするのよ」 「大丈夫だって、ちゃんと帰ってこれるから」 「…本当でしょうね」 「信じろって。もし心配ならここで待っててもいいから」 「…心配だから着いていくんじゃない、馬鹿犬」 「なんか言った?」 「何も言ってないわよ」 「で、着いてくのか?」 「当たり前じゃない」 155 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:25:42 ID:9JxsjUmP 「へいへい」 そう言ってるうちに二人はゼロ戦の前に着いた。 「…いつ見てもすごいわね」 「…ま、そうだな」 二人は一言ずつ言い乗り込む。サイトが前、ルイズが後ろ。いつもと同じだ。 「じゃあ、いくぜ」 離陸の準備をしながらサイトが言う。 「気をつけなさいよ」 「分かってるって」 そういうとゼロ戦のプロペラが少しずつ回り始める。 ゼロ戦はその機体を少しずつ進ませながら加速していく。格納庫を低速で抜け、いつも滑走路として使っている広場に差し掛かると速度を上げる。 「今日は調子がいいな」 「そうなの?」 「ああ」 やがて十分な速度になるとすこしづつ地面から離れていく。そして見る見るうちに高度を上げ、大空に飛び立つ。 「離陸成功!」 大空をまるで鳥のように飛び回るゼロ戦。乗っているサイト達はもう鳥気分である。 「海目指してGO!」 ゼロ戦はどんどん高度を上げる。下には森や建物が小さく見える。 「ねえ」 大空を滑空する中、ルイズがサイトに問う。 「今頃だけど、こんなことのために使っちゃっていいの?」 「使うって何を?」 「これよ、竜の羽衣よ」 「…うーん、まあ大丈夫なんじゃないか?」 「まあって、ちゃんと言ってないの?」 「仕方ないだろ、時間なかったんだから」 「誰かに怒られたらどうするのよ!」 「まーそのときはそのときだ」 「…はぁ」 156 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/09/27(木) 00:27:16 ID:9JxsjUmP サイトの無鉄砲さにルイズは呆れたようで思わずため息をする。 「まあいいけど、いつものことだし」 「そうだと思ってくれ」 そんな話をしながら、飛行機はどんどん飛んでいった。 「あれ?あれって確か竜の羽衣…サイトさん何する気でしょう?」 そういって小さくなりつつあるゼロ戦を見て首をかしげるのはシエスタ。 「まあサイトさんのことですし、そのうち帰ってきますよね」 ―あまり心配はしていないようだった。 373 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:48:13 ID:uwud0C7L 場所は変わって、ここはトリステイン西部の海岸沿い。まわりには人が住んでいる気配はなく、ひたすらただっ広い野原と砂浜が続いている。 「おっ、あそこなんかよさそうだな」 そういってるのはここまでゼロ戦を操縦してきたサイト。学園を出てしばらく飛ぶと意外とすぐ遠くに海岸線が見えたので迷わないでここまで来ることができた。 「海がすぐ見えたから良かったけど迷ったらどうする気だったのよ」 そういってため息をついているのは後ろの座席に座っているルイズ。 「ま、いいじゃねえかちゃんと来れたんだしさ」 サイトはそういうとゼロ戦を操縦して着陸の態勢に入る。 ゼロ戦はだんだん高度を下げ、砂浜に程近い野原に着陸した。サイトたちは着陸したのを確認するとゼロ戦から飛び降りる。 「お、なかなかいい景色じゃねえか」 「そうね、海に来るなんて久しぶりだし」 目の前には誰もいない真っ白な砂浜と青い海。雲ひとつない青空には海鳥が飛び交い、緩やかな波がザザーッと音を立てながら何度も何度も砂浜に打ちつける。 まるで漫画の世界だな、とサイトは思いながら海に向かって歩いていく。靴が隠れるほどの背丈の草が一面に生えている野原を少し歩くとすぐに砂浜にたどり着く。砂浜を歩いて海に行こうと砂浜に足を踏み入れた。すると。 キュッ、キュッ まるで砂が鳴いているような音を立てる。サイト達は更に歩き出す。 キュッ、キュッ、キュッ、キュッ 「お、鳴き砂か」 「なきすな?」 不意にそう呟くサイトにルイズが問う。 「なきすなって、この音が出る砂のこと?」 「あぁ、俺のとこではそう呼んでた」 「サイトの故郷にもあったの?」 「うーん、あったけど少なかったな」 「なんでよ」 「海がきれいじゃないと砂が鳴らないんだよ。俺んとこはかなりの砂浜が汚染されてたから」 「ふぅん、そういうものなの」 374 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:49:29 ID:uwud0C7L 「そういうもんだ」 などと他愛のない話をしているうちに二人は波打ち際まで辿り着いた。 波が立てるザザーッという音が海に来たことを今更ながら実感させる。 サイトは用意してきた容器に海水を入れるとよしと言って戻ろうとする。 するとルイズがそれを引き止める。 「もう終わり?」 「ん?そうだけど」 「せっかく海まで来たんだからもう少しいないと勿体無いわ」 「…ま、それもそうだな」 そう言うとサイトは海水の入った容器を置いてルイズの横に腰掛けた。 少しだけ塩のにおいがする風が並んで座る二人に優しく吹き付ける。 ゼロ戦を背後に、二人して座るルイズとサイトの姿が影となり白い砂浜に映る。 しばらくは二人とも何もしゃべらず海を見つめたりしていたが、ふとサイトが話しかける。 「なんだか久しぶりだよな…こうやって二人っきりになるの」 ルイズはサイトの『二人っきり』と言うフレーズにドキッとするが、動揺を悟られないよう取り繕って返事をする。 「ん…そうね」 「最近忙しかったし」 「こんなにゆっくり出来るのもそうそう多くないものね」 「そうだよな…」 話が切れてしまう。お互い二人っきりなのを意識してしまい上手くしゃべれないせいでいつもの調子が出ない。ぶっちゃけ言ってしまえばルイズの部屋にいるときなど結構二人っきりでいることは結構多いのだが。 ともかく、二人の周りにはなんだか気恥ずかしいような気まずいようなまるで付き合いたてのカップルのような空気が流れていた。 しかし、サイトの一言でその空気は一気に熱くなる。 「何だか…デートしてるみたいだな」 そう照れて頭をかきながらサイトが言う。 「でぇと?」 ルイズは『デート』の意味がわからず問う。サイトはこの時非常に大きな壁のようなものを感じた。と同時に自分とルイズの出身が違うことを少しだけ後悔した。 「ねぇ、『でぇと』って何よ」 …とりあえず空気を読め、と突っ込みたくなるサイトだったかそれを抑えて答える。 「『デート』っつーのはだな、まあ、その、恋人同士が二人で買い物したり遊んだりすること…だ、簡単に言えば」 375 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:50:29 ID:uwud0C7L 「そういうもんだ」 などと他愛のない話をしているうちに二人は波打ち際まで辿り着いた。 波が立てるザザーッという音が海に来たことを今更ながら実感させる。 サイトは用意してきた容器に海水を入れるとよしと言って戻ろうとする。 するとルイズがそれを引き止める。 「もう終わり?」 「ん?そうだけど」 「せっかく海まで来たんだからもう少しいないと勿体無いわ」 「…ま、それもそうだな」 そう言うとサイトは海水の入った容器を置いてルイズの横に腰掛けた。 少しだけ塩のにおいがする風が並んで座る二人に優しく吹き付ける。 ゼロ戦を背後に、二人して座るルイズとサイトの姿が影となり白い砂浜に映る。 しばらくは二人とも何もしゃべらず海を見つめたりしていたが、ふとサイトが話しかける。 「なんだか久しぶりだよな…こうやって二人っきりになるの」 ルイズはサイトの『二人っきり』と言うフレーズにドキッとするが、動揺を悟られないよう取り繕って返事をする。 「ん…そうね」 「最近忙しかったし」 「こんなにゆっくり出来るのもそうそう多くないものね」 「そうだよな…」 話が切れてしまう。お互い二人っきりなのを意識してしまい上手くしゃべれないせいでいつもの調子が出ない。ぶっちゃけ言ってしまえばルイズの部屋にいるときなど結構二人っきりでいることは結構多いのだが。 ともかく、二人の周りにはなんだか気恥ずかしいような気まずいようなまるで付き合いたてのカップルのような空気が流れていた。 しかし、サイトの一言でその空気は一気に熱くなる。 「何だか…デートしてるみたいだな」 そう照れて頭をかきながらサイトが言う。 「でぇと?」 ルイズは『デート』の意味がわからず問う。サイトはこの時非常に大きな壁のようなものを感じた。と同時に自分とルイズの出身が違うことを少しだけ後悔した。 「ねぇ、『でぇと』って何よ」 …とりあえず空気を読め、と突っ込みたくなるサイトだったかそれを抑えて答える。 「『デート』っつーのはだな、まあ、その、恋人同士が二人で買い物したり遊んだりすること…だ、簡単に言えば」 376 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:56:52 ID:uwud0C7L 申し訳ない・・・ それを聞いてルイズがぼん!と一気に赤くなる。まるで頭から湯気が出そうなくらいに。 「ななな何言ってるのよこの犬!その…私とアンタが『でぇと』してるだなんて…」 「す、すまんルイズ」 サイトは今頃になって『デート』なんて言った自分が恥ずかしかった。あの場面で普通言うか?いや、言うのか?などと パニックになりかけながら自分で自分に突っ込んでいるとルイズがとんでもない発言をした。 「でも…サイトは…私と、その、『でぇと』したいの?」 「へ?」 「だから…アンタは私の事好きなの?」 何かが吹っ切れたように大声で叫ぶ。そして叫んだ後に自分がとんでもなく恥ずかしいことを言ってることに気づいて顔 を真っ赤にし俯く。 「アンタは…アンタはどうなのよ」 俯きながらいったルイズのその言葉は先ほどの発言でパニックに陥っている俺の頭に更に追い討ちを掛けた。待て、マテ、 マチナサイ。ルイズサンハイマナント?オレガルイズサンノコトヲスキカダッテ?アアスキデストモ。…ジャナクテ、ナ ンデソンナコトヲキクンデスカ?モシカシテ?モシカシチャッタリスルンデスカ? …と結論の分かり切っている問いを必死になって考えていた。パニック状態に陥っているサイトの頭ではコレが精一杯で ある。 ドウスルノ?ドウスルノオレ?トリアエズコタエレバイイノ?スキッテイエバイイデスカ? パニックになりながらもどうにか答えを出すことができた。 「俺は…好きだ、ルイズのこと」 その答えを聞くとルイズは耳まで真っ赤な顔を俯けたまま震えていたが、しばらくしてサイト好き!と叫んでいきなり呼 ばれたじろぐサイトに抱きついた。 「ア、アノ、ナニヲヤッテイラッシャルンデスカ?ルイズサン」 サイトは固まりながらもどうにか言葉を捻り出して聞く。正直抱きつかれたルイズからいい香りや暖かい感触が直に伝わ ってくる今の状況はある意味危険である。このまま続けられて甘い言葉を一つや二つでも囁かれた日にはサイトの息子は 東京タワーと化してしまうであろう。そしてそれをルイズに見られた日には…ということで離れて欲しかったサイトだっ たが、その後ルイズの取った行為はサイトの予想していた遥か上を行くものだった。 「…!むーっ、んむー!!」 なんとルイズは少し体を離したかと思うといきなりサイトの唇にルイズのそれを思いっきりくっつけたのである。サイト は最初こそ何が起きたか分からないが、自分がキスされてることに気づくとびっくりして声をあげようとする。しかしサ イトの体はルイズががっちりと掴んでいて動かすことが出来ず、サイトはルイズに舌を入れられても動くことは出来なか った。 人が二人しかいない砂浜に程近い野原で二人の人間が交じっていた。ピチャクチャといやらしい音を立てて濃厚なキスを している二人はルイズとサイトである。ルイズは覚悟を決めたのか、最初からずっと目を瞑りっぱなしだ。サイトはいき なりキスされ最初は戸惑ったが、そのうち目をとしてルイズとのそれに専念するようになった。ここなら誰にも見られる 心配が無い。そういった意識が二人のストッパーを見えないうちに外していたのだった。 「ん…ぷはっ」 「ん、く、ふう」 377 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/01(月) 23:59:33 ID:uwud0C7L ばらくして濃厚なそれは終わり、二人の間には太陽の光で僅かに銀色に輝く透明の架け橋が架かっていた。 「ルイズ…」 「サイト…」 そして二人はそのまままだ見ぬ夢の世界へと突入していく――― 太陽がカッカと照りつける昼下がり、誰も見知らぬ海辺の野原で愛し合う若者が二人… まったく、昼間からお若いものである。 そして夕方。 結局昼間の行為の後二人は眠ってしまい、目が覚めると夕方だった。日は傾き、海に映える夕日が美しい。二人は 乱れた服を治すと顔を一度も合わせずにゼロ戦に乗り込んだ。二人とも恥かしくてお互いの顔が見れないのである。まあ二人ともこれが初体験だから仕方が無いのかもしれないが。 そうして、野原に赤い証拠を残してゼロ戦はルイズたちの住む寮へと向かっていったのだった。 寮に帰る途中、サイトがルイズに問う。 「あの、ルイズサン?」 「ふぇ?…な、何よ?」 ルイズも恥かしい中いきなりサイトに話しかけられ一瞬動転しかける。 「あ、あのー、昼間のアレはいったいどういう風の吹き回しで?」 こう聞くのにかなりの勇気を要したが、昼間のいつもとは違う態度がどうしても気になったので聞くことにしてみた。 「あ、うん、その、たまたまよ!たまたま!」 誰がどう聞いても嘘をついてるのが丸分かりの返答である。 ルイズも絶対昼のことを聴かれるとは思っていたものの、いざ聞かれてみると昼間の情事を思い出してしまい恥かしさでまともに答えられなくなってしまう。 「たまたま?」 「もしかして…嫌だった?私とするの」 「いや!そんなめめめっそうもございません!」 サイトはルイズの弱気発言に背中をピシッと伸ばして否定の言葉を口にする。 「本当?」 「はい、本当です!」 誰が見てもいつもの二人ではなかった。当たり前なのかもしれないが。 「…で、結局のところは…」 「う…うん、その、何だかサイトとあそこにいたら変な気分になっちゃって…」 「変な気分?」 「うん。サイトと二人っきりでいるって思うと、サイトに抱きつきたくなって…それで、サイトに抱きついたら、その、キ、キスしたいなって…」 378 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/02(火) 00:00:41 ID:uwud0C7L 「それで…と?」 「うん…」 「あと、あのときの好きってのも…」 「!私そんなことも言ってた?」 「え、ああ、まあ」 「…まあ、言ったことに間違いは無いわ。で、でもね、勘違いしないでよね!別に何してもいいわけじゃないからね!」 「…分かったけど、これで俺たち恋人ってことだよな?」 「こっ恋人ですって!?何でそうなるのよ!」 「だって俺もルイズも好きって言ったし、ついでにアレもしたし」 「うるさい!アンタは私の使い魔なのよ?使い魔の分際で好きだとか恋人だとか言ってんじゃないわよ!……で、でもっアンタがどうしてもっていうんならその、恋人になってあげてもいいけど…」 「へいへい、分かりましたよ。俺の恋人さん」 「なっ何いってんの?」 「へーへー」 すっかりいつもの調子に戻った。でも二人にはこれが一番合っているのかもしれない。 そんなこんなで話しているうちにゼロ戦は寮についた。 「さて、いよいよ調理の始まりだな」 「あ、すっかりわすれてたわ」 「まあ俺もさっきまで忘れてたんだけどな。コレ見て思い出したわ」 そういって海水の入った容器を取り出した。 「そういえばどこで調理するの?」 「シエスタに調理場貸してもらえるよう頼んどいた」 「ついでにへんなことしてないでしょうね?」 「…してません」 「怪しいわね」 「本当にしてねえってば」 「ふぅん。ま、そこまで言うんならいいわ」 実際本当にしてないわけなのだが。 ともかくそんな話をしながら二人は調理場に向かっていった。 二人が調理場に着くと丁度夕食の準備中だった。 379 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/02(火) 00:04:07 ID:uwud0C7L シエスター」 「あっ、サイトさんにミス・ヴァリエール」 「後でひとつ鍋貸してくれるー?」 「分かりましたー。準備が出来たら呼びますからー」 「ありがとねー」 そういって二人は部屋に歩いていった。 「今日の二人、なんだか妙に幸せそうでしたね…何かあったっぽいですね」 シエスタは意外と鋭かった…のではなく、サイトもルイズも感情を抑えるのが下手なだけだった。実際二人は頬が緩み、今にも幸せオーラを発しそうな勢いだった。原因は…まあ言わなくても分かるだろう。 そして食後。鍋を空かしたシエスタに呼ばれサイトとルイズ、シエスタは調理室にいた。 「サイトさん、どうやって作るんですか?」 「教えなさいよ」 「えーっと、確か最初に海水を火にかけてにがりを作るんだよな」 「にがり?何それ」 「まあ今出来るから待ってろって」 そういうとサイトは持ってきた海水を鍋に入れ火をつけた。 数十分後。 「サイトーまだなのー?」 「もうすぐだから待ってろって。」 「まだー?」 「よし、出来た」 サイトはそういって鍋の火を止め、布をかぶせた木箱のにそれを流し込んだ。 「あっ、せっかく出来たのに何やってんのよ」 「いや、こうやって取り出すんだよ」 サイトがかぶせた布を出すと木箱の中には透明の液体があった。 「これが…トーフー?」 「これは豆腐じゃなくてにがりだよ」 「にがり?」 380 名前: Bean Story [sage] 投稿日: 2007/10/02(火) 00:06:09 ID:afCqw8sX 「にがりって何ですか?」 さっきから二人の様子を見ていたシエスタが口を挟む。 「にがりってのは豆腐を作るときに固めるのに使うんだよ」 「ふーん、そうなの」 ルイズはそういいながら調理場に置かれていたスプーンでにがりをすくった。 「ちょっと味見してみようかしら」 「あっ!ちょっ待てって」 ペロッ。一足遅かった。 「…苦い」 「だからにがりって言うんだろ」 「何でこんなもの作るのよ」 「豆腐に入れば苦くなくなるから大丈夫だって」 「本当なの?」 「まあ信じがたいかもしれないけどな」 「で、次は何をするんですか?」 「あ、つぎは豆を水に入れて一晩置くから、入れたらまた明日朝お願いできる?」 「分かりました。にがりもとっておけばいいんですね?」 「うん。そこに置いといて」 「はい」 「何だか悪いね、シエスタには。昨日といい今日といい」 「大丈夫ですから。その代わり完成したら少し分けて下さいね」 「いいですよ」 「私にも頂戴よ」 「はいはい、ちゃんとあげるから。じゃあまた明日」 「また明日。サイトさん、ミズヴァリエール」 そして翌朝。再び鍋の前。

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