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ラ・ヴァリエール家のはずれにある日本風の墓。 ここに二人が手を合わせて合掌している。 一人は長身にスーツ、黒髪で黄色い肌と長い剣をを持った ハルケギニアでも珍しい装いの青年。歳は二十歳前後だろうか。 もう一人は背が小さく痩せており、マントに魔法学院の制服を着た 桃色のウェーブのかかっていないロングヘアで、黒い瞳を持った少女。 「ねぇ、お父様」 「ん。なんだ?」 「お母様ってどんなひとでした? ティファやデルフに聞いても教えてくれないんですもの。 お父様にお聞きになったら?としかいってくれないもの」 そうか、この娘は母親の顔を覚えていないんだな。 二人とも教えてやれば良いのに。 「そうだな……姿顔立ちはカトレアさんで性格はエレオノールさんにそっくりだったな」 「姿顔立ちはちぃ姉さまで性格はエレオノール伯母様ってことは…… ドSでツンデレで小さくて巨乳の女王様ってこと?」 何でこの娘はこんな用語を知っているんだ?俺はこんな教育をさせてしまったのか? いや、してしまったんだろう。テファがそんな教育するはずないもんな。 ちなみにこの娘はテファって言うのが呼びにくいのかティファって呼んでる。 「おっと、かなり良いところをついているが一つだけ違うぞ?お前のお母様の胸ランクは虚無だ!」 「えぇ!ティファが使ってるあの魔法ランク!? あ、だけどティファったらあの胸は巨を超えて超ですよね。 よかった〜私は小くらいあって」 「静かに!これ以上言っちまうとルイズが化けて出てしまうぜ?」 「それだったらいいですね。わたしのお母様が見られるのですから!」 やめてくれ!そんなことしたら俺が犬の呪いをかけられてしまう! 夢に出てきて鞭に打たれたり、エクスプロージョンだけは勘弁だ! 普段からルイズパパに公爵家として書類のサイン書いたり貴族としてのあり方とかいろいろ学んでるから、 休憩する暇って言ったらこの毎朝の墓参りと寝る時しかないんだよ……。 「お父様がそんなお母様を選んで、私を溺愛ってことはお父様って貧乳好きってことですよね?」 「いやいやまてまて、それはちょっとちがうぞ!」 娘は俺の眼をみている。どっかの犬が言ってたな、「眼を見ればわかる」って。 人間そんな簡単にいかないんだよ。それだけでわかるのなら俺はそいつにシュヴァリエの称号を与えてやりたい。 「貧乳も好きだし、美乳も好きだし、巨乳も好きだから……よーするに胸全般がだーい好きってことだ!」 俺は女湯をのぞくために命を捨てるのもかまわない男のように指を天に突きつけていった。 「どれにしてもダメ男って事には変わらないですね……」 ちょっとココロが傷ついた……。 「そしたらお父様が私にぺたぺたしてきますけど、私が男子だったら今と同じように接してきましたか?」 俺は悩んだね。あぁもちろん悩みまくった。 もし男だったらそりゃもうアニエスさんみたいにびしびし鍛えてるけど、 今は娘の前!同じように接したといってやらねばいかんな。 でも待てよ?それって俺ショタコンになるんじゃないのか?ついでにホモ? …………えぇい、別に同じように接したで良いじゃないか! ……これを考えるのに0.1秒だったと思う。 「……………当たり前じゃないか〜〜」 「はいはい〜よーく分かりましたよ。よかったですね私が女の子で」 しまった!判断はよかったが口が開くのに時間がかかってしまったようだ! 絶望した!口が思うように動かないことに絶望した! 心地よい風が流れてくる。空を見上げると今日は快晴だった。 確か理科では上を見上げた時に 雲の量が0〜2割くらいが快晴だったっけ?などと考えていた。 「ねぇ、お父様。お母様って小さいらしいし、 使い魔として召喚されたお父様のご主人様みたいですしツンデレで貧乳って、 なんかエロ小説を書いている人が作ったキャラみたいですよね」 「だろー!ルイズは俺のストライクゾーンど真ん中でなー!」 「でもお父様がお母様にベタ惚れなのは分かったけどなんでお母様はお父様と結婚したんだろう?」 「あーそれはだな…… お前が振り向いてくんないから!俺はこんな巨乳好きの男になったんだ! といったら割とすんなり」 「あなたは最低だ!」 「でもほんとの事だし……」 「それって脅迫じゃないんですか! 私はもっと『ルイズー!お前が好きだー!お前が欲しいー!!』みたいな回答を期待していたのに……」 「いやいやもちろんそれだけじゃないぞ本当に。  特にお前が生まれた時には、ルイズものすごく喜んでたしな」 〜二十年前〜 「終わったな。ルイズ」 俺たちはこの戦いの全ての元凶であったレコン・キスタの残党やジョセフたちを倒した。 エルフから聖地を奪還するための力として「始祖の虚無」。 それを目覚めさせるために必要な、 四の秘宝、四の指輪、四の使い魔、四の担い手、いわゆる「四つの四」が集まってしまった。 しかしサイトたちの活躍がありを防ぐことができたのであった。                  「始祖の虚無」 それは世界を作り直す究極の魔法だった。世界を破壊する。 または一からやり直すためのもので、どこかのカチューシャをつけた団長様のような力だった。 集まってしまい世界が赤い空で満たされ海もまた赤い海で何もかもが赤一色だった。 「始祖の虚無」は目覚めた。サイトは「始祖の虚無」をデルフリンガーで吸収しようとした。 しかし吸収しようとしてもそう簡単にいくものではない。「始祖の虚無」は世界を作り変える力。 デルフリンガーで吸収しきれる量の魔力は、はるかに超えている。 そのときルイズの虚無が発動し、サイトのガンダールヴとしての真の力 がでて左手の刻印から銀色の光が満ち溢れサイトの左腕を伝って 体全身に及び光の翼を出現させ「始祖の虚無」を吸収し、なくした。 ハルケギニアの世界の命は全て守られたのであった。 そして……サイトの帰るときがきた。 サイトのガンダールヴの刻印が左手の徐々に戻っていく。サイトは全てが終わったのだと実感した。 「終わったな。ルイズ」 しかしルイズは首を横に振る。 「いいえ、まだ終わってないわ。あなたは自分の世界に戻らなくちゃいけないのよ、サイト」 サイトはハッとした。自分にはまだやるべきことが残っていることに。 「…………………わかった」 別れたくない。自分たちは愛し合っているのだから。 触れたい。抱きしめたい。壊れてしまうくらい抱きしめたい。 たくさんキスだってしたい。同じ太陽の下で暮らしたい。 笑いあいたい。二人で、みんなで。しかしそれは叶わない夢。叶えてはいけない願い。 二人はそのためにここに来たのだから。 仲間たちがいる。もうお別れだ。 「ギーシュ、お前モンモンを大切にしろよ?次浮気なんかしたら殺されるぜ?」 「わかってるよ。僕には右手に一本のバラだけで良いのさ」 「けっ!最後までギザな奴だぜ……モンモランシー、こんな奴だけど支えてやれよ。」 「もちろん、貧乏くじだからって後悔しちゃいないわ。 それにしてもアンタやっと私のこと名前で呼んだわね」 「そうか?」 「そうよ」 「ギーシュ、お前この頼りになる水精霊騎士の副隊長がいなくなるんだから隊長としてしっかりやれよ?」 「あたりまえだ」 俺たちは握手をした。だがギーシュがかなり力を入れてきたので ガンダールヴの力で思いっきり握り締めてやったら死にそうにな顔をして面白かったので放してやった。 「キュルケ、今までありがとう。コルベール先生と幸せにな。」 「えぇ。私たちでこの世界の機械文明はどんどん進歩していくと思うわ。 だけどこのひとったらあなたの世界に飛び込んじゃいそうで」 「やりかねないな、コルベール先生は」 「だって、私は君の世界を見てみたいんだ。君の飛行機よりももっと凄い飛行機を見てみたいし、 魔法のない世界がどれほどまでに凄いのかこの眼で見たいのだよ、サイト君」 「だめよ、ジャン!あなたがいてくれなきゃ私死んでしまうわ!」 キュルケがコルベールに抱きついている。まぁなんとゆうか……微笑ましい(?)のかな。 「タバサ、ありがとう。お前がいてくれなきゃきっと俺はそこら辺の道端で死んでたと思う」 「いい、別に。私こそあなたにどれだけのお礼をしなきゃいけないのか分からない」 「だったら、おあいこだろ」 「そんなことない。私のお母様を治してくれたし、 私の復讐を手伝ってくれたし、何より私の心を開いてくれたのはあなた」 「……それは俺だけじゃなくてみんながやってくれたんだ。俺だけじゃないよ。だからさ、みんなを大切にな?」 「……うん」 タバサが泣きはじめて来たので俺は頭をなでてやった。 「シルフィードも元気でな。お前女の子なんだからもうちょっと身だしなみに気をつけろよ?」 「サイトに言われたくないのね!竜の状態で衣服を着ている竜なんていないのね」 「じゃあ、その元気をタバサにも分けてやれよ」 「まかせてなのね!」 シルフィードにも頭をなでてやった。 「……最後に一つお願いがある」 「なんだ?」 「…シャルロット、って呼んで」 「……今までありがとうな。シャルロット」 タバサ…いや、シャルロットが抱きついてきた。まぁルイズもいるけどこんな時ぐらい抱きしめてもいいかな。 「ジュリオ、お前にお願いがある」 「なんだい?まさかルイズを守ってくれ、じゃないよね?」 「ご名答だ、いいよな?」 「いいけど……それは僕がルイズをとっちゃってもいいってことだね?」 「ダメに決まってんだろ?それにもしお前がルイズに求愛しても一寸の愛もくれないぜ」 「それはひどいな……」 当たり前だ。ルイズは俺に惚れててめろめろなんだからな。 「サイト様、本当にありがとうございました。 あなたがいてくれなければ、私たちの世界は滅んでいたことでしょう」 深々と頭を垂れるのは、アンリエッタ女王だった。 彼女の目尻にも悲しみの涙が溜まっているのを見た才人は、困ったような笑みを浮かべると 「いや、そんな……。俺は大した事はしてませんよ。 もしお礼を言うのならルイズに言ってやってください」 「わかりました。前はトリステインの英雄だったのに、今度は世界の英雄ですね」 「そういえばそうですね……全然考えていませんでした、 というか実感ありませんよ。英雄なんて」 「まぁ英雄とはそんなものではないのでしょうか」 「かもしれないっすね。……今までお世話になりました」 「いいえ、こちらこそありがとう」 「アニエスさん、女王様をしっかり守ってくださいよ。」 「なんだ?お前はいつから師匠を超えたのだ?」 「勝ってはいませんけど、俺、今、世界の英雄ですよ?」 「そうだな……だが、私を罵るなどとは10年早いわ!」 「す、すみませんでした!……アニエスさんもアンリエッタさんも幸せになってくださいよ!」 二人とも辛い過去がある。だから幸せになって欲しいんだ。 「テファ、子供たちとベアトリスを大切にな」 「大丈夫。あなたは私の最初のお友達だもの。 あなたこそ私たちのこと忘れないでね」 「忘れるもんか」 その革命的な胸を見せられたら忘れようにも忘れることができません。 「シエスタ、君は俺がこのハルケギニアにきた時に一番最初にやさしくしてくれた人だ。ありがとう」 「サイトさん…今までありがとうございました……あちらのほうに行ってしまうんですね。」 「うん。……あのさ、また合えることがあったらあのヨシェナヴェだっけ?食べさせてくれよ」 「もちろんです!」 「それともう一つ……ゼロ戦を守ってくれないかな。それに、あれはもともと君の家のものだし」 「サイトさんが望むのなら構いませんわ」 少し時間を置いてから俺はシエスタを抱きしめた。キスはしない。それはこれが友好の証だからだ。 「ルイズ……お別れだな。」 「早くいっちゃいなさいよ! もうアンタが…アンタが……アンタなんかを召喚しちゃったから私の人生は狂いっぱなしじゃない!」 虚無魔法の使いすぎでかなり弱ってるはずなのに…コイツの元気は底なしなのかな? 「ルイズ……お前は俺とあえて幸せだったか?」 「…そんなの……幸せに決まってるじゃない……サイトのバカバカバカーー!!」 ルイズがぽかぽかと殴ってくる。俺はルイズをそのまま抱きしめた。 「いてーよルイズ。幸せだったよ、おれも。別れたくないし。できることなら一緒にいたい。 だけど俺はあっちの世界に……地球に戻らなきゃいけない。 それが俺たちの選んだ道だったろ?だから俺はやるべきことをするためにここにきた。 ルイズ……俺は君とあえて嬉しかった。愛してるよ」 「私も……愛してるわ」 俺たちは抱き合いキスをした。そういえば俺たちの出会いはキスから始まったんだよな。 だったら締めはキスで決めるべきなんだろうな。 「じゃあな」 俺は「始祖の虚無」の力がこめられたデルフをふってゲートを作った。 「サイト!」「サイトさん!」「サイト君!」 みんなが呼んでくれる。 振り向きたかった。だけど振り向かない、いや振り向けない。 振り返ったら、それだけで、足が、体が、心が止まってしまいそうだったから。 「大丈夫だ、相棒。俺がついてるからよ」 俺のすべてを察してくれたデルフが励ましの言葉をくれた。 「ありがとうな」 俺は大きく拳を握り締めて天に突き上げゲートの中へ入っていった。 〜地球〜 「なんだよこれ……」 俺がゲートを潜り抜けそこにあるのは確かに地球の日本の秋葉原だった。 ただ何かが違う。灰色の空、崩れ落ちてるビル、昼だというのに人一人いない。 地震でも起こったのだろうか。いや、それで人がいないのはおかしい。電気もついていない。 秋葉原に電気がついてないだなんておかしすぎる。それに雑音一つ無く、かえって耳が痛くなりそうだった。 小さい女の子ようの赤い靴が片方落ちていている。道路を見ると走行していたの車が瓦礫によって押しつぶされたようだ。 中の人はいるのか?近寄って確かめてみた。しかし運転席には誰もいない。脱出したのだろうか? ……違う。脱出したのならドアが開いているはずだ。だから脱出できるはずが無い。 なのに遺体がどこにも無いってどういうわけなんだ? 「おーい!誰かいませんかー!」 とりあえず俺は叫んだ。人がいるって信じたかった。返事が無い、まるで町自体がただの屍のようだ。 せめて高い場所から町が見たかった。東京の高層ビルは全て崩れ去っていた。 まずは家族を探すために近くのハーレーに乗った。キーがさしてある。考えたくないが乗ろうとした時に消えてしまったのだろう。 考えるだけで吐き気がしてきた。だから、無用心だな、と思って気を紛らわそうとした。いや、現実から眼をそむけようとした。 バイクをものすごいスピードで走り向ける。時速200キロは出してるだろう。 自分の家の場所についてみると確かにある自分の家。鍵は開いていなかったので家族で決めている鍵の隠し場所である倉庫から鍵を取り出して玄関を開けた。 久しぶりに嗅いだ自分の家のにおい。それだけで眼が潤んできた。 そして二階の自分の部屋に行った。自分がハルケギニアに飛ばされた頃から変わらない自分の部屋だった。 本棚には自分のマンガ本や使ったのが一回しかない参考書、作文を書くときに使った辞典。 勉強なんて居間でやっていたからまったく使うことの無かった机。 タンスに入っているもう背が伸びてしまってきることが困難そうな服。自分が使い慣れてたベット。 だいぶ疲れていたのでデルフを壁に立てかけてベットの上に大の字になった。 自分の家族はもういない。父さん。親孝行できなくてごめんな。母さん。味噌汁のみたかったよ。 さっき居間の机においてある写真立てを見た瞬間から涙があふれ出てきた。 ルイズ、明日から俺はどうすればいい?カンダールブの刻印をなぞりながら答えを出す前に俺は眠りにつこうとした。 一睡もできなかった。 次の日、向かっているのは新東京タワー。600mもあるのだから東京の町並みを見るよりいいのではないかと思ったからだ。 自分がハルケギニアにいた頃はまた建設されてもいなかったがもう自分も20代だ。もう建設完了してあるだろうと思っていた。 そして新東京タワーついたらその大きさに圧倒された。建設当初は600mって聞いてたけど、これ1000mはあるぞ? きっと建設当初高さでは世界一にならないから意地張って作ったんだろうな。中に入りエレベーターのボタンを押してみると扉は開いた。 きっと非常用の電源は生きているのだろう。もし電源が無かったら1000メートルの高さを階段で上らなきゃならない。 どこかの高校ラグビー部の約三倍だ。カンダールヴの力なら無理ではないだろうが、さすがに上るのは疲れる。ほっとした感じがしてエレベーターの中に入った。 エレベーターはぐんぐんとものすごい勢いであがっていく。第三展望台までの直通のエレベーターだ。気圧の変化で耳が痛くなってきたのでつばを飲んだ。 第三展望台につくとサイトは言葉が出なかった。上から見下ろした東京は廃墟というよりも地獄だった。 バイクでも見てて分かったが、ほとんどのビルは破壊されていた。 まるで時間が止まっているかのような世界。ジョジョもびっくりな世界だ。 なんだこれ?これが東京?あのカップヌードルの世界でも人はいたぞ?だけど人は一人もいない。だから何も動かない、動いていない。 サイトはデルフリンガーを抜いた。 「一日ぶりだね、相棒」 「ああ、一日ぶりだな」 「おでれーた!これがお前さんの言ってた日本かい?」 「ああ、そうだよ。だけど何でこんなになったか分からない。ほとんどの建物は崩れてて人は一人もいない。死んだんじゃない、消えたんだ、突然に」 「…………きっと「始祖の虚無」のせいだろうな」 「………」 「予想だが「始祖の虚無」はハルケギニアだけじゃなくこの地球にも影響を及ぼした。 ハルケギニアの「始祖の虚無」は発動段階で防げたが地球の「始祖の虚無」は防ぐことができなかったんだ。 そして地球が造り変わる直前に俺たちがハルケギニアの「始祖の虚無」を防いじまった。だから人は消え、建物がこんな状態なのさ」 「………じゃあもうこの地球に希望は無いのか?」 「……わからんさ。あくまでこれは予想だ、真実じゃない。「始祖の虚無」はあの時全てを飲み込んだわけじゃない。 ハルケギニアにはあの真っ赤な空だったが、サハラやロバ・アル・カリイエのほうにまであの空だったかはわからねぇ。 もし地球もあっちと同じように影響を受けたのなら、まだ無事なところもあるかもしれないぞ? 希望を捨てるにはまだ早いんじゃねーのか?」 「……だけど世界中を旅するなんて簡単なことじゃない。ましてや人がいないこの世界でだ」 「……うん」 「それでも俺はやらなきゃいけないのか」 「……ああ、そうだね。お前さんはやらなきゃならない責任がある。……大丈夫だ。オイラがついてる。そしてお前さんは、今や真のガンダールヴだ。」 「そうだけどそれがどうしたんだ?」 「お前さんは気づいて無くて当然だが……お前さんは覚醒したときにルイズの虚無を受けた。 それはガンダールヴ後からの扉の『鍵』をあけるものだよ。扉の開け閉めはお前さんだけでもできる。 それにブリミルが「始祖の虚無」を作った理由をお前さんは分かっているのかい?」 俺の頭の中では考えがつかなかった。 「ブリミルは聖地の奪還を目的としていた。だがエルフは強い。ハルケギニアの国が全て集まっても敵わないし虚無の担い手がたった4人では無理だ。 だからもし聖地を得ることができなかった時のために「始祖の虚無」を準備しておいたのさ」 「……全てが無かったことにできるように、か」 「そうだ。そしてその「始祖の虚無」の魔力はこのデルフリンガー様の体の中に入ってる。そして真のガンダールヴとなったお前さんは不老不死だ」 「は?なんで?」 「お前さんは世界を見届ける必要があるんだよ、サイト。ブリミルだって人間だ。人類が滅亡して欲しくないだろうさ。 「始祖の虚無」が発動したら何もかもが無かったことになる。「始祖の虚無」は最終手段だからな。世界が終わりそうになったらお前さんが防ぐんだよ。 そして人類が死滅しかけたら子供が作れるようにするためだ。だかさブリミルはお前さんを不老不死にしたんだよ。 じっさいに一睡もできなかったんだろ?寝つきが悪かったからじゃない。寝る必要がねーからだ」 「……なんだよ、それ。もう何いっていいかわかんないよ。フリーザさんも叶えられなかったことを俺がやってのけてしまうなんてさ。」 俺はできる限りのものを持った。だけど食料や水は要らない。死なないから。 寝袋もいらない。寝ないから。だけどその代わり発電機と一眼レフのデジタルカメラとありったけのメモリーとGPS。 そして相棒のデルフリンガー。まるでジャーナリストみたいだな。 そしておれは数百年を旅した。さびしくは無かった。デルフがいたから。 ただ会いたかった。人に、生命があるものに。だけど木には会えたが虫も鳥にも人にも会えなかった。俺は写真をとり続けた。 「なぁデルフ」 「なんだ?相棒」 「ひといねーな!」 「そうだなー!」 「世界中旅したけど67億人中一人も見つけれなかった!」 「そーだなー!」 「今俺たち何歳だろ!」 「わからんねー!」 「どうしたらいいんだろー!」 「どうしたいんだー!」 「ルイズたちに会いたい!」 「会いたいなー!」 「でもその方法がわかんねー!」 「だったら俺様で空気を斬ってみろー!」 「わかったー!ゼァア!」 「ゲートが開いたぞー!よかったなー!相棒ー!」 「うん、よかった!ってええええええぇぇぇえぇぇぇ!!」 それは確かにハルケギニアから地球へくるために通ったゲート。 「な、なんでゲートがでるんだよ!……もしかして、デルフてめぇゲート作れるっとこと知ってやがったな!」 「いいじゃねーか。不老不死なんだし。一応世界見た後で作ったっていいだろう?」 「だからって教えてくれるくらいいいじゃねーか!」 「だって、相棒は聞いてこなかっただろ!?」 「おまえ、こんな世界見たらハルケギニアに帰りたいって思うだろ!なんで新東京タワーの時教えなかった!」 「だってオイラ剣だもん、人間の気持ちわかんないもん!」 「うるせー!俺の数百年の苦労返しやがれーー!」 俺はデルフを近くの岩に何度もたたきつけた。 「ごめ、ちょ、痛いって!」 「成敗成敗成敗!」 「お、いげ、とがき、え」 「あー!?なんだって?」 「だからゲートが消えかかってんだよ!俺が吸い込んだ「始祖の虚無」の魔力はもう無いからゲートが消えたら二度と……」 「うううぅぅぅおおおぉぉぉ!!」 俺はデルフの説明を聞く前にゲートに飛び込んだ。 ゲートを抜けた先にあったのは、とっても大きな水溜り。 飛び込む先にはきれいなすんだ水。そして、バッシャン、というド素人のような飛び込み音。 「冷た!」 とりあえず息をしようと口を水面まで持ってきた。 周りを見回すとどこかで見たことがあるような景色だった。 小鳥の鳴き声。木に囲まれた池?湖?近くには白い小さな船。 ルイズが「秘密の場所」と言っていた、ラ・ヴァリエール家の中庭の池だった。 「懐かしいな……此処は。俺が……最初にルイズに自分の思いを告げた所だしな……」 何百年も前のことだから思い出すのに少し時間がかかったが、思い返すとやっぱりはずかしくなってきた。 陸に上がると、デルフや自分の荷物が無い事に気づいた。 「おーい!デルフー!どこだー!」 「ここだよー!相棒ー!」 しかし声がするほうを見てもどこにもデルフはいなかった。 とりあえず声がするほうにいくと、あの白い小船にたどり着いた。 中を覗くと布が被っていて膨らんでいる。そういえば、カトレアさんにいわれてルイズを探した時、 ここにいてこんな感じに布を被っていたよな。俺はとりあえずそっと布を取っ払った。 そこにはデルフと自分の荷物が置いてあった。 「はぁー、よかった。荷物ぬれてなくて」 「何だよ、相棒はオイラの心配はしてくれないのかよ……」 「デジカメぬれたら大変だもんな。一様防水加工してあるけど、データ吹っ飛んでたら俺の旅の苦労が全て水の泡だし」 「無視かよ……デルフ泣いちゃうぞ……」 ヤバイ。なんかデルフの声が少し震えている。マジで泣かれるとコイツうるさいんだよなー。 「…ごめん」 「わかればいいーのさ」 「だけど、何でこんな所に俺はいるんだ?」 「さー?」 まぁいいや。小船を見てわかったがあのときからあんまり小船が変わってない事から、 俺が旅立ってからあまり年月は経ってないことが推測できた。……固定化の魔法がかけられていたらわかんないけど。 服が乾いてから、俺はヴァリエール家の屋敷を目指した。何百年も前のことだからかこの景色はほんと懐かしい。 ただひとつだけ、どう見ても変わっているものがあった。 「……なんなんだ、この像?」 「どう見ても、相棒の像だね」 「じゃあ、何でゲートを潜り抜けたらこんな所にいるんだ?」 「知らんよ。そんなことは」 俺の姿をした、約高さ20メイルのでっかい像がそこにドン、と置いてある。 像は青銅で作られていて、俺が両手を腰にあて胸を張っている。よくできているが、どうにも周りの景色にあっていない。 作った奴のセンスは良いのか悪いのか、どうにも分からなかった。 像の台座を見るとプレートがはってある。 『 世界を救った大英雄  サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ 』 世界を救ったと言われると、なんかよく分からない気持ちが心を満たしていった。だけど何か心に引っかかるものがあった。 「俺、こっちの世界は救えたかもしれないけど、あっちのほうは救えなかったんだけどな……」 「あれは相棒のせいじゃねーさ」 「……ありがとうな」 優しい声をかけてくれるデルフに礼を言った。 「しっかし、こんなにでっかい像を誰が作ったんだろうねー?」 デルフが疑問の声を上げている。俺は像を後ろから見てみようと反対側に回った。 そこには反対側にもプレートがはってあった。 『 作 ギーシュ・ド・グラモン マリコルヌ・ド・グランドプレ 』 ……やっぱり。俺そういえば、マリコルヌに別れの言葉言ってなかったな。 あいつの事だから絶望して首吊り自殺してるんじゃないかと思ってた。……これを見る限り大丈夫そうだ。 ルイズに会いたかった。屋敷の方へ体を向け全速力で走り出した。 屋敷に着いたはいいが、やはりハルケギニアでは名家といわれるだけのヴァリエールだ。 警備がしっかりできているし、防犯用の魔法もかかってるように思える。 あんな像があるくらいだし俺は超有名人だろう。そのまま玄関に行けば、中には入れるかもしれない。 だが、騒ぎを起こすのもどうかと思い、忍び込むことを決意した。とりあえず、誰かが窓とか扉を開けた隙を狙うしかない。 しばらく木のそばで隠れながら待つこと約1時間。 大きな帽子を被った女性が裏の扉から出てきた。取りあえず後をつけていくことにしたが、彼女の行き先は裏庭にある花壇のようだ。 俺は音を立てないように歩き……俺、立派なストーカーじゃねーか……。 日が傾き、山吹色の光が降りそそいで来る。彼女は花に水をやっているところを俺はじっと観察していた。 彼女はとてもきれいで歳は20後半から30前半ぐらい。 とても長く一本一本が細い金髪をリボンで一束にまとめていた。 服装はどう見ても貴族のものだった。 顔を見ようにも口から上が大きな帽子によって隠れていたから誰か確認できない。 どうしてもその素顔を見たくて、うずうずして、……俺、もーストーカーでいいやー。 そんな姿を少し眺めていたのだが、突風がものすごい勢いで、裏庭を駆け抜ける。 それによって彼女の帽子が空へと舞い上がった。 彼女の顔でその女性が誰であるかを知った。 長い耳。きれいな細い髪。妖精であるかのような可愛さ。そして、この俺が名づけた『バスト・レヴォリューション』。 ティファニアだった。 「テファ!!」 俺は大きな声で彼女の方へ走っていった。ティファニアは驚いたのかビクッと肩を震わして俺の方を向いた。 「……………誰?」 俺は思いっきり、ずっこけ、滑りながら倒れた。 プロ野球だったら監督からも、チームからもほめられていると思われる理想的なヘッドスライディングだった。 ゆっくり落ちてきた帽子が俺の頭に乗っかった。 『あなたは私の最初のお友達だもの。あなたこそ私たちのこと忘れないでね』 テファ…の言葉、嘘だったのか? 忘れるなって言った奴が忘れちゃいけないだろ、俺姿顔立ちとか全然変わってないんだから。 しかも、屋敷の近くに俺のでっかい像置いてあるだろ……。 「俺のこと……覚えていない?」 「ごめんなさい……見たことはあるような気がするんだけど……」 「オイラたちだよ、忘れちまったかい?エルフの娘っ子?」 「もしかして……サイト?」 あぁやっと思い出してくれた!このエルフはなんて天然なんだろ…… 「ひさしぶりだな。テファ……きれいになったな」 なんか、また胸が大きくなってないか。うーん、俺、熟女好きじゃなかったはずだけど…… 「ふふふ、ありがとう。本当、久しぶりね。大体200年振りくらいかしら、あなたに出会うの」 「……そんなに経ってたのか」 やっぱりルイズたちには会うことはできないんだろう。 会いたい気持ちが強すぎて気づかなかったが、かなりの時間が流れていたのだ。 200年も人間が生きられるわけがない。 エルフの血が流れているティファニアは歳を取るスピードが遅いから今でも若い姿だが、 当時の仲間はみんな死んでしまっているのだろう。 もうみんなに会えることはできないのか、と思い俺はとっても悲しくなった。 「そっちの世界はどうだった?」 俺は今までのことをティファニアに話した。「始祖の虚無」によって地球の人類や生命が全て消えてしまったこと。 人がいないか、何百年もかけて旅をしていったが一人もいなかったこと。 真のガンダールヴとして世界を見届けるため、不老不死になったこと。 「……そうだったの、大変だったのね。お疲れ様、サイト」 ティファニアの優しい言葉が俺の心を癒していってくれた気がした。俺はみんなが幸せだったのか気になった。 「……ルイズはどうだった?幸せに生きて、死んでいったのか?」 「……あなたが向こうの世界に旅立ってからルイズは5年くらいで亡くなったわ。 虚無魔法の使いすぎが原因。彼女は命を削りすぎた。 私にはわからないわ……彼女が本当に幸せだったか。 ……だけどね、サイト、あの人はあなたをずっと愛していた。 だから他の人と婚約を結ばなかったし、あなたの持っていた『のーとぱそこん』を大切に保管していたもの」 「……そっか」 俺は嬉しかった。俺が向こうの世界にいっても愛していてくれたことを。 だけど悲しくもあった。あのルイズが大切な人生を楽しむことができず早くに亡くなっていたことを。 「サイト、あなたはルイズを愛してる?」 「もちろんだよ」 俺がそう答えると、ティファニアは杖を取り出した。 「何をする気なんだ、テファ」 「あなたを、過去に送ってあげるのよ。サイト」 俺はあっけに取られた。 「……そんなことができるのか?」 「一応、私は伝説なのよ?サイト」 ティファニアは胸を張って言った。テファ……君がそういう行動すると、その革命的な胸が揺れるんだよ…。 しかし、魔法ってのはほんとに何でもありなんだな、と思った。 もし本当に過去に送ってくれると言うのならこれほど嬉しいことはない。 「何年も虚無魔法なんか使ってないから精神力はかなりたまってると思うわ。一度もその魔法を詠唱したことないんだけど」 「良いさ別に。頼む」 ティファニアが首を縦に振り、彼女の口からゆっくりと言葉が流れていく。 詠唱の開始と一緒に俺の体を青白い光が包んでいく。 魔法の詠唱が終わったのか、ティファニアは俺のほう向いて言った。 「ルイズを絶対に幸せにしてね!」 「当たり前だ!」 ティファニアが杖を振ると同時に、俺はこの時間から姿を消した。 ティファニアは少し時間が経った後、裏庭のもっと奥の方へ歩いていった。 そこにあるのは、一つの小さな墓石。 『 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 』 と書かれている ティファニアが優しい声で語りかけるように言った。 「ルイズ……。大丈夫、彼はきっとあなたを幸せにしてくれるわ」 西に太陽が沈んでいき、東に二つの蒼と紅の月が出てきていた。 「なぁデルフ?」 「なんだい?相棒」 「浮いてるな」 「浮いてるね」 俺がいるのは宇宙。無重力なんて初めてだ。 体を反転させてみると、そこにあるのはとってもきれいな蒼い星。 大陸の形を見るとこの星は地球じゃない。きっとハルケギニアだろう。 だけどあの天然エルフ…なんで宇宙なんかに跳ばすんだ? 真のガンダールヴの力を発揮してなかったらどうなっていただろう。……想像するのはやめておこう。 本当にこの力は便利だ。飛べるし、疲れないし、怪我しても力を込めれば再生する。 不老不死だけど宇宙でも活動できるなんて思わなかった。 ただ、どんどん人間から遠ざかっていることに嫌気がさしてきた。 「星って丸いんだな。はじめて知ったぜ相棒、きれいだなー」 「ほんとだ。大きな星がついたり消えたりしている…大きい…彗星かな? いや、違う。違うな。彗星はバアーッと動くもんな…暑っ苦しいな…」 「いやほんとあついぞからだがとけちゃうあついあついあついしぬのかおいらいやいやいやしぬのはいやー!!」 ありゃ、知らないうちに大気圏突入しようとしてるみたい。 俺は大丈夫だけどデルフは溶けちゃうだろうし、何より自分のデジカメと服が危ない。 落ちた時にスッポンポンだ。 「大丈夫だ、デルフ!!お前はは死なない!!お前はは俺が…俺が守るから!!うおおぉぉぉ!!」 大気圏突入のために光の翼で身体や荷物を覆い、摩擦熱から保護した。 後は落ちるだけだ。だけどトリステインに落ちる確立はごくわずか。 ロバ・アル・カリイエとか訳もわからないところに落ちたらどうしよう。 まぁ何とかなるだろうけどさ。とりあえず俺は眼を閉じて祈ることをしてみた。 ラ・ヴァリエールの中庭……。 モンモランシーは傍らのマリコルヌとギーシュに尋ねた。 「……こんな夜中に、見せたいものってなに?」 寝ようとしたら、見せたいものがある、と、呼び出されたのでやってきた。 目の前には何もないが、このパターンはギーシュがモンモランシーに何かを見せる時である。 「やっと完成したんだ。一番最初に、君に見てもらいたくてね」 「また何か作ったのね……今度は何?この前作ったわけわかんないものじゃないでしょうね?」 「これだよ」 ギーシュは唇をニヤリとさせてばさっと、何もないように見えた空間を引っ張った。 そこに現れたのは……、高さ20メイルはあろうかという、巨大なサイトの像。 両手を腰にあて胸を張っている立派な像だった。 「何ヶ月かかったことやら。サイトがゲートをくぐってから一ヶ月経った頃ぐらいから作業しはじめてね。 ルイズたちに見つからないように、僕とギーシュで毎晩作業をしていたんだ。ずいぶんと苦労したよ」 マリコルヌは、やれやれといった感じで言った。 「これ、昔、造ったサイトの像をもとにして巨大化させたやつ?」 「そうだよ。懐かしいだろ?後はいつものように“錬金”をかけて青銅にするだけだ」 「明日の朝、ルイズやティファニアにも見せてあげましょうよ。 ガリアにいるタバサとかゲルマニアにいるキュルケや先生も呼んで!」 「だったら姫さまやシエスタも呼ばなきゃならないな! みんなでパーティをしよう!大英雄ヒラガ・サイトを称える会だ!」 「じゃあ、あなたはそんな大英雄の像を作り上げた最高の男だわ!」 「あ、ありがとう……モンモランシー」 ギーシュは愛する人に褒められ照れくさくなった。モンモランシーはそんな彼に唇を近づけようとする。 二つの唇が重なり合おうとしたとき……モンモランシーとギーシュは、ギュッと音がしたので思わずそっちのほうに眼を向けてしまった。 そっちを見てみると……マリコルヌが首をつっていた。木の枝からたれているロープがゆらゆらとゆっくりと動いている。 ギーシュはいそいで縄抜けの呪文をそのロープにかけた。 しかし急いでいて何かをミスをしてしまったのか、ロープは緩むどころか逆にきつくしまってしまった。 マリコルヌの顔はどんどん青くなり、手と足が訳のわからないようにじたばたと動いている。 今度はモンモランシーが縄抜けの呪文をかけた。 彼女もあせっていたので失敗しそうになったが、取りあえず成功しロープは解けた。 ロープから落ちたマリコルヌは、ぜぇぜぇと急いで空気を肺の中へと入れている。 そして叫んだ。 「死んだらどーする!」 夜の寒い空気が風となって駆け抜ける。 「……なぁマリコルヌ、死にたかったんだよな?」 「なのに、死んだらどーするって……」 二人はあきれながらも言った。その言葉にマリコルヌはキレた。 「うるさい!ああ、そうさ、死にたかったさ! 僕がいるのに、目の前でそんなラブゲームなんか繰り広げ、僕の存在さえも無視して! 彼女すら一人もいないこの僕が!この僕が!!死にたくなるのは当然だろがぁぁぁ!!!」 マリコルヌはこの世の全てを今にも破壊しそうな雰囲気、いや、オーラが出ていた。 「「ごめんなさい」」 二人は土下座して謝る。貴族とあろうものが土下座をするのだ。 彼の怒りを静めるにはただ謝るしか方法がなかった。 「じゃあさぁぁぁ!僕にも紹介してよぉぉぉ!!いちゃいちゃさせてくれるひとをさぁぁぁ!」 モンモランシーがマリコルヌを説得しようと思って、顔を上げ空を見たら一言、 「あ、流れ星!」 「モンモランシー、そんなふうに話をはぐらかしたら逆効果だぞ」 ギーシュは小声で言った。 「だけど見てみなさいよ!ほら!」 モンモランシーは、星空に指を突きつける。 「……うん、確かに流れ星だね」 ギーシュはうなずいた。 「……またそうやって君たちは僕をのけ者にするんだねぇぇぇ!!!死んでやる!死んでやるぞぉぉぉ!!」 マリコルヌは椅子ににのぼり、もう一度ロープに輪を作って死のうとした。 「なぁモンモランシー……いくら流れ星でも長すぎないかい?」 「……そうね、確かに光り輝く時間が長すぎるわね……」 二人が話しているのを見ながらマリコルヌは死のうとしているのに止めてくれないバカップルを見て死ぬことを改めて決心した。 父上、母上、自分の死に場所がみつかりました…、などと思っていると、 「どんどんあの流れ星大きくなってないか?」 ギーシュのつぶやきにモンモランシーが叫んだ。 「こっちにくるわよ!!」 「マリコルヌ、逃げろーーーーー!!!」 ギーシュがマリコルヌに叫ぶ。 その言葉に椅子の上にいたマリコルヌが、へ?っと言って振り返った。 その一瞬だった。 その流れ星はものすごい威力で巨大な像を貫き、その直線上にいたマリコルヌにダイレクトに直撃。 まっすぐに約50メイルも吹っ飛んだ。 椅子は跡形もなく破壊され、その先にはさっきの流れ星によってできた大穴。 その大穴に二人が駆けつけて覗くと、マリコルヌと光の翼で包まれた『何か』がみえた。 マリコルヌは……もう言葉ではなんともいえない状況になっていた。ただ『ひどい』としか表現できない。 その『何か』は光の翼に包まれていたが二人には見覚えがあった。 ゆっくりと光の翼がひろがる。 「………ただいま」 サイトだった。

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