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95 名前: 犬竜的日常〜デリカシー編〜 [sage] 投稿日: 2007/10/12(金) 21:38:02 ID:i2TnILM6
ある日、かっぽかっぽと馬で歩いていたギーシュは、向こうからふてくされた顔の才人がやってくるのに気がついた。
「やあサイト、辛気臭い顔をしてどうしたんだね」
「おうギーシュ、聞いてくれよ、ルイズの奴がよぉ」
聞くところによると、いつも通り洗濯を済ませて部屋に戻ったら、ちょうどルイズが着替え中だったのだとか。
悲しい男の本能、思わず凝視してしまったら、顔を真っ赤にしたルイズが鞭の雨を降らせてきた訳で。
「『あんたにはデリカシーってものがないの!? ノックぐらいしなさい、このバカ犬!』とか言いやがってよ」
「はははは、それは君、タイミングが悪かったというやつだね」
「最初の頃は俺の前で平気で着替えしてたくせに……」
「男として意識されている証拠じゃあないか。いいことだよ、いいこと」
「そうかね……っつーか、デリカシーがどうのって言うぐらいだったら、着替えのときぐらい鍵かけろっつーの」
「まあ、僕からすればどっちもどっちというところかなあ」
などと道端で雑談を始めたものだから、ギーシュが乗っている馬はこれ幸いとばかりにくつろぎ始めた。
草をはみはみ尻をフリフリ、挙句の果てには
「うわ、ギーシュ、この馬クソしてんぞ!?」
「ん、そうだね。ははは、これは臭い」
「笑ってる場合かよ、オイ。このクソどう始末すんだよ」
「別に、放っておけばいいんじゃないのかね。肥やしというやつだよ」
「こんなところで何を肥やすってんだ、ったく。俺は絶対こういうマナーの悪い真似はしねえぞ」
「ほう。具体的にはどうするんだね」
「今度から、馬とかに乗るときはいつも袋とシャベルを持ち歩くことにする。犬の散歩のようにな。絶対道端にクソは残さねえ」
「馬の糞は尋常な量じゃないが」
「それでもやる」
「変なところで真面目だね、君も」
で、数日後。
「あ、サイト、サイト!」
「おおシルフィード、今日も元気だなあ」
「うん、シルフィいつも元気なのよ。ねえねえサイト、今日もシルフィと一緒にお出かけするのね」
「おういいぞ、また遠くまで連れてってくれよ」
「わーい、お出かけお出かけ……? サイト、その手に持ってる袋とシャベルはなぁに?」
「ああこれか? これはな」
「で、どうしてまたボロボロになって飛んできたんだね君は」
「……『サイトのバカァッ! デリカシーなさすぎなのね!』って蹴り飛ばされた……」
「……本当に難儀な男だね、君も」
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