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695 :戦場のメリー・クリスマス ◆mQKcT9WQPM :2007/11/19(月) 22:39:55 ID:IcP1OiS2
才人は現代日本人である。
だから、雪のちらつく空を見上げて、ついこんな鼻歌が出てしまうのも仕方のない事で。
「ふっふっふ〜ん、ふっふっふ〜ん♪」
寒空に似合わない明るいジングル・ベルを聞きつけたのは、洗濯物を運んでいたメイドだった。
「サイトさん、その曲なんですか?」
シエスタの質問に、才人は応える。
「ジングル・ベルって言ってね。俺のもといた世界の、そうだな、冬のお祭りの曲」
「冬のお祭り…銀の降臨祭みたいなものですか?」
「んー。ありゃお正月に近いんじゃないかな。クリスマスはまた別モンだよ」
「くりすます?」
シエスタは才人の言っている事がよく分からなかったが、その『くりすます』とやらが、楽しいイベントであることは、楽しげな『ジングル・ベル』の曲調から感じ取れた。
たしかに才人の言うとおりであった。西欧ではクリスマス=新年だが、現代日本はそうではない。
「よくわかりませんけど、楽しそうなお祭りですね」
「そうだな、日本じゃ一年のうちで一番楽しい祭りの一つだよ」
盆に正月、クリスマス。日本の三大お祭りイベントと言えばこれだろう。
才人は彼女が仕事の途中である事を思い出すまで、シエスタと『クリスマス』の話題で盛り上がったのだった。
697 :戦場のメリー・クリスマス ◆mQKcT9WQPM :2007/11/19(月) 22:40:58 ID:IcP1OiS2
「おお、ちょうどよい所にいてくれた!」
シエスタと別れ、水精霊騎士団のたまり場、ゼロ戦の格納庫に向かうと、そこには眩く輝くハゲ面がいた。
コルベールは満面の笑顔で、才人に向かってこぶし大の二つの水晶球を差し出す。
片方は薄い青色、片方は薄い赤色をしていた。
「なんすかこれ」
才人の質問に、よくぞ聞いてくれた、という顔になって、コルベールは応える。
「これはだな、『夢見の水晶球』といって、一対の水晶を持った人間に、同じ夢を見させられるというものなんだよ!
学院の宝物庫で、文献とともに発見したんだ!」
「へえ」
才人の関心が水晶球に向いたのを確認したコルベールは、興奮したように続けた。
「さらにだな!この水晶球のすごいところは、青い球を持った方の人間が、夢を自在にコントロールできるところにあるんだ!」
才人は、コルベールの言う『すごいところ』の意味が分からない。
さらに、なんでこのコッパゲがこんなに興奮しているのか理解できない。
「それがそんなすごいことなんですか?」
「当然じゃないか!いいかね!
この水晶球を使えば、たとえばだね、私と君がこの水晶球を使って、君の居た『ニホン』を私がハルケギニアにいながらにして体験できる、ということなんだよ!」
つまり、この水晶球は、夢を媒介にしたヴァーチャル・リアリティを作り出すマジック・アイテムらしい。
コルベールは、この水晶球で、才人に日本を疑似体験させてもらうつもりなのである。
彼が興奮するのもむべなるかな。
しかし。
それが大いなる誤算であった。
才人は、別の事を思いついてしまったのである。
「先生、この水晶球貸してくれません?先生には今度とっておきの日本の夢見させてあげますから」
コルベールは一瞬うーむ、と考え込んだが。
「分かった、貸して上げよう。私も他の研究があるしな。
『とっておき』、楽しみにしているよ」
言ってコルベールは、才人にその水晶球を手渡す。
「で、どう使えばいいんです?」
「なに、簡単だよ。お互いにその水晶球を持って、同じ部屋で寝ればいい」
才人は一瞬、コルベールと同じベッドに眠る自分を想像して吹き出しそうになったが。
「わかりました。ありがとうございます」
なんとかこらえ、格納庫を後にした。
才人は二つの水晶球を手の中で転がしながら、考えた。
どうせ、日本を見せるのなら。
仲のいい女の子に、日本のクリスマスを、見せてあげたい。
あのイルミネーションの街を、二人で歩けたら、どんなに楽しいだろう。
才人はわくわくしながら、誘うべき女の子に思いを馳せたのだった。
[[24-39]]戦場のメリー・クリスマス〜ルイズの見た夢
[[24-126]]戦場のメリー・クリスマス〜テファの見た夢
[[24-364]]戦場のメリー・クリスマス〜シエスタの見た夢
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