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「ちょっとくべすぎね」  ルイズは胸元を軽く開けて汗ばんだ肌に風を送った。メイドが風邪で倒れたためシエスタが一時的に元の部署に戻ったのだが、いきがけにやっつけ仕事で適当に暖炉に薪をくべていったらしく、火力が強すぎるのだ。 「サイト、何とかしなさいよ」 「俺だって暖炉なんて使ったことないし……」  ルイズは使えない使い魔ね、と言いつつもさすがに火事も嫌なので珍しくお仕置きはしない。するとサイトも逆に気が引けて何とか方法を考えつつ外を眺めた。窓の外は雪景色で、葉を落としたナナカマドの木立ちは雪の綿帽子にくるまれてた赤い実をぶら下げていた。  と、サイトはふと思いついてルイズに待っているよう声をかけると厨房に向かった。 「マルトーさん、お願いがあるんですが」 「おお、我らの剣!何でも言ってくれ」 「ガラスの器とスプーンを借りたいんです。あと練乳を少し」  首を傾げるマルトーに考えを話すと、貴族のお嬢様は面倒だと笑う。それでも快く貸してくれた一式を手に、サイトはナナカマドの木立に向かった。 #br 「あんたこの寒いのにどこ行って……」  ドアを開けた途端に文句を言いかけたルイズの言葉が止まる。サイトは、雪をかき氷状に盛り上げたガラスの器をテーブルに置いた。雪には練乳がかけられており、器の端にはナナカマドの実があしらってある。 「暑いなら冷たいもん食うのもありかな、とか」  サイトの言葉に、ルイズはスプーンを手にとる。しゃり、と雪が鳴る。口の中で雪が熱を奪い、柔らかな練乳の甘さがルイズの舌を包んだ。 「あああんたにしては上出来じゃない」  素直になれない誉め言葉を口にしつつ、ルイズの頬がほんのりと朱に染まる。サイトはへっ、と笑ってルイズの食べる姿を眺める。 「東京じゃ無理だよな」 「トーキョー?」 「俺の国の王都。すげーでかい街で、でも空気は汚いからさ」  ふうん、とルイズは言ってサイトの横顔を眺める。頭についた雪が融け、サイトの頬に滴が垂れる。だが遠くを見つめるサイトは気にする様子もない。そんなサイトを見ているうちにルイズはサイトが急に遠くに行ってしまいそうな気がした。  ルイズは慌ててハンカチでサイトの頭を拭ってやる。 「野良犬じゃないんだから!きちんと濡れたら拭きなさいよ!」  怒鳴ってから、ルイズは器に残った雪のデザートをすくうとサイトの頬を撫でて言った。 「ご褒美よ……あーんして」 〜Fin.

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