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85 :孔明の罠〜アニエスのばあい ◆mQKcT9WQPM :2007/12/21(金) 00:36:42 ID:SbdFBZYA 見合いの紹介状を灰に還すと、アニエスは馬を飛ばし、王都へと戻った。 しかし王宮へは戻らない。 もし王宮に戻れば、女王に紹介状を燃やした事がばれてしまう。 虚偽の報告をしたところで、数日でその嘘はばれ、アニエスは罪に問われるだろう。 アニエスが向かったのは、馴染みの薬屋。 ここで、才人をあーしたりこーしたりする薬を買うのが常なのだが。 今回は、標的が違う。 相手はにっくきあの男。 ジャン・コルベール。あの男を追い落とすために、必要な薬を買いに来たのである。 奥まった所にあるガラスのケースの中身を眺める。 しかし、どれもこれも、作戦を遂行するには足りない。 そう、足りない。どれもこれも、決定打には至らない。 …どうしたものか。 「あれ?アニエス?」 信じられない声がした。 「ちょ、なんでっ!」 そこにいたのは。 後ろで小さく纏められた短めの黒髪に、トリステインでは珍しい、脚のラインのはっきり出るズボンに身を包んだ。 女王アンリエッタが平民に扮した姿…『アン』がいた。 「ていうか、へい…あなた、公む…じゃなくて、仕事はっ!?」 さすがにこの場で公務がどうのとか、陛下とか呼んでしまうのはまずいので、どもりながらアニエスは尋ねる。 「…ちょっと、抜け出してきちゃった」 アンはてへ、と舌を出して笑う。 「なぁにやってんですかぁぁぁぁっ!」 大声で突っ込みを入れ、そして。 王としての自覚とかあるのかコイツわー! とか心の中で盛大に突っ込みを入れるアニエス。 「大丈夫ですよ、今スキルニルが一生懸命書類にサインしてますから」 そう言う問題じゃなーーーーい! 一体、どれだけの重要書類が、本人ではなくスキルニルのサインで済ませられているのか。そう思うとぞっとする。 しかしアンはそんなアニエスには一切取り合わず。 胸元に抱いた小さな紙袋から、小さな木箱を出して見せた。 「そんなことより、いいものを手に入れたんですよ♪」 その木箱は綺麗な青と赤に塗り分けられていた。 「…なんですか?それ」 五分の四呆れながら、とりあえずアニエスは尋ねる。 86 :孔明の罠〜アニエスのばあい ◆mQKcT9WQPM :2007/12/21(金) 00:37:07 ID:SbdFBZYA アンはうふふ、と意味ありげな笑みを浮かべ、そしてアニエスに耳打ちする。 「これはね。確実に世継ぎを授かるく・す・り♪」 「え」 一瞬動きを止めたアニエスに、アンは自慢げに続ける。 「コレを呑むとね、即座に身体が『オンナ』になるんです。  で、そこで殿方としちゃえば…やだ、私ったら何考えてるのかしらー!」 真っ赤になって頭をぶんぶん振りながら、イケナイ妄想に浸るアン。 そのアンから、アニエスは木箱を即座に奪い取る。 「ちょっと、返してアニエス!」 「…これは没収です。これ使ってアナタ、何するつもりなんですか」 「決まっています。あの方のやや子を…やだもうっ、これ以上言わせないでよっ!」 照れながらアニエスの肩をばしん!と叩くアン。 止まれ。いいから止まれ色ボケ女王。 そう心の中だけで突っ込みながら、アニエスは木箱を懐へしまい込む。 「ダメです。今そんなことをしたら、どれだけ混乱が起きると思うんですか。  これは、時機が来るまで私が預かります」 「えー。それ高かったのにぃー」 「関係ありません。さ、早く仕事に戻ってください」 アニエスはアンを薬屋の外へ連れ出し、王宮を指差して指示する。 早くこの女王を王宮に戻さないと。 そして。 この千載一遇のチャンスを、モノにしないと。 アニエスの思いが天に通じたのか、アンは渋々といった体でアニエスの言葉に従う。 「わかりました…。今回は引く事にします。でも、ちゃんと機会が来たら返してねっ!?アニエスっ?」 王宮への道を歩き始めたと思ったら、急に振り返ってそんなことをのたまうアン。 いやいーから。さっさとカエレ。 「はいはい。分かりましたから仕事に戻ってください」 アニエスが呆れたようにそう言うと、アンはもう振り返らなかった。 …やった。まさか、こんないいものが手に入るとは…! アニエスは手の中の木箱を見つめて心の中でほくそ笑む。 彼女の中では、着々と炎蛇を篭絡する作戦が組みあがりつつあった。 そして王宮の執務室。 『アン』に化けたスキルニルが、元の人形に戻った事を、アンリエッタは右手の中指に嵌めた『遠見の指輪』によって知る。 「さて。薬は無事彼女の手に渡ったみたいね。  ここからは、彼女次第。お手並み拝見といきましょうか」 謀を終えた女王は、書類の山の中でそんな事をひとりごちるのだった。 120 :孔明の罠〜アニエスのばあい ◆mQKcT9WQPM :2007/12/22(土) 01:17:01 ID:Xj8LSX0H コルベールは状況が把握できないでいた。 学院で来訪者にいきなり呼び出されたと思ったら、手持ち式の短銃を突きつけられたのだ。 「いいから黙って来い」 半眼で恫喝するアニエスに、コルベールは手を上げて抵抗の意思がないことを示す。 何の用なんなんだろう、と疑問に思ったが、アニエスのただならぬ雰囲気に黙って従った。 そして、正門前に用意されていた軍用のごつい馬車に乗せられる。御者はアニエス本人。 がたごとと馬車に揺られて、二時間も経っただろうか。 停まった場所は、街道沿いの大きな街。その、かなり豪華な食堂の前。貴族の立ち寄る店なのだろう。入り口には門衛が立ち、侵入者を拒んでいる。 アニエスはコルベールを伴い、予約した者だが、と自分の名を告げる。 しかし門衛は、槍を交差させたまま微動だにしない。そして、鎧姿のアニエスとみすぼらしいローブのコルベールの格好を一瞥して一言。 「当店は盛装のお客様のみのご利用となっております。盛装にてお越しくださいませ、シュヴァリエ」 アニエスははっとして、しまった、と呟く。この店のルールをすっかり忘れていた。 アニエスは呆気に取られるコルベールを引っ張り、近所にある仕立て屋まで引きずっていく。 そして、店のドアを開けると、対応に出てきた店員にコルベールを放り投げる。 「このハゲ頭に似合う一張羅を今すぐ仕立ててくれ。代金は私が払う」 言って自分も、鎧を外し、軽装になる。 「ついでに私のドレスも頼む。急ぎでな」 そして、息をつく間もなく。 あれよあれよと言う間にコルベールは、上等な絹糸で織られたタキシードに身を包んでいた。 …今度顔を合わせたら、次こそこの騒動の意味を問うてみよう。 流されて流されてここまで来てしまったが、そもそもの原因はアニエスにある。 そして、コルベールが決意を新たにしていると、女性用の仕立て部屋のドアが開いた。 「ちょっと、いきなりどうしてこんな…ことを…」 言おうとした言葉が喉の奥で絡みつき、留まる。 目の前に、信じられないほど美しい貴婦人がいた。 薄い蒼の生地に、銀の薔薇の刺繍が美しく彩られたドレス。 その薔薇に寄り添う蝶をイメージして、大きめの白いリボンが腰の右側でふわふわと舞う。 少し恥ずかしそうに桃色に染まった頬の、短い金髪を後ろでシニヨンに纏めた貴婦人が、目を点にしているコルベールを睨んだ。 「…何を呆れた顔をしている」 アニエスには見とれるコルベールの顔がそう映ったのだろう。不機嫌そうに眉根を寄せる。 その不機嫌そうな表情すら、可憐に取れてしまう。 「いや…あのですね…」 口ごもるコルベールの腕を、さっきと変わらない力強さで、アニエスはがっしりと掴む。 「早く来い。女に恥をかかせるな」 言ってアニエスは、照れるコルベールを引きずって、先ほどの店へ引き返したのだった。 121 :孔明の罠〜アニエスのばあい ◆mQKcT9WQPM :2007/12/22(土) 01:17:25 ID:Xj8LSX0H 「いいか。これは単なる礼だからな。  二度も命を助けられて、何の礼もしなくては、まるで私が希代の恩知らずのようではないか。  それに、いい機会だから言っておく。私は故郷の復讐を忘れたわけではないからな」 言いながら、赤い頬で目の前の料理を切り分けるアニエス。 まるで照れ隠しにまくしたてているようだ。 コルベールはとりあえず、これはそういうことなんだと納得しておくことにしたが。 とりあえず言っておく事にする。 「でも、いきなりこんな事しなくても、事前に言ってくれれば」 「それでは遅いのだっ!」 コルベールの反論に、アニエスがだん!とテーブルを叩く。 個室になっているおかげで他の客に迷惑はかからない。だが、物音を聞きつけた店員が『どうかしましたか?』と扉の向こうから声をかけてくる。 「い、いや、なんでもない!」 アニエスはそう言って店員を下がらせる。 コルベールは先ほどのアニエスの言葉に疑問を抱いた。 「…どうしてそんなに急がなくてはいけないのです?」 それは、言うわけにはいかなかった。 まさか、王家からコルベールに紹介された見合いを破談にするため、などとは。 それに、目的はそれだけではない。 「…お前が役立たずになる前にどうにかしようと思ってな」 「はい?どういう意味…」 言いながら、コルベールの視点が定まらなくなってくる。 …こ、これは…何かの…。 それがワインに解かされた薬がもたらした効果だと気付いた時には、コルベールは机に突っ伏していた。 「…連れが酔って寝てしまった。部屋を用意してくれ…」 遠のく意識の中、コルベールは店員にそう告げるアニエスの声を確かに聞いた。 122 :孔明の罠〜アニエスのばあい ◆mQKcT9WQPM :2007/12/22(土) 01:18:13 ID:Xj8LSX0H コルベールが目を醒ますと、とんでもない事になっていた。 全裸で、頑丈な椅子に縛り付けられていたのだ。 それだけではない。 目の前でとんでもない光景が展開していた。 足元で、短い金髪が上下に揺れている。 具体的に言うと。 アニエスがおフェラの真っ最中だった。 ちゅぱちゅぱと濡れた音を立てながら、アニエスは一心不乱にコルベールの一物を舐めている。 コルベールが目を醒ましたのも、この音と刺激が原因だった。 「ちょ、ちょっと何してるんですかっ!」 コルベールが声を上げたので、アニエスは口に咥えていたモノから口を離し、コルベールを見上げる。 粘ついた唾液とコルベールの先走りの混合物がアニエスの唇から垂れ、アニエスの胸の谷間に糸となって垂れる。 そう、アニエスも全裸だった。 「見てのとおりだ。女性に奉仕されたことはないのか?」 見上げながら、さも当然の行為ようにアニエスは呟く。 「そういう意味じゃなくてですねぇっ、何でこんなことしてるかって聞いてるんですっ!」 慌てるコルベールに、アニエスはあくまで冷静に言い放つ。 「もちろん、刺激して勃起させるためだ。フニャフニャでは役に立たんからな」 「いやだから!なんで私を勃起させる必要が」 そこまで言ったコルベールの唇を、アニエスは乱暴に奪った。 驚いて固まるコルベールの唇を、アニエスは愛おしそうに舌で愛撫する。 しばらくそうすると、満足したのか、唇を離す。 そして言った。 「言っただろう…女に恥をかかせるな、と」 言ってコルベールの太股の上に自分の太股を乗せ、ペタン、と座り込む。 綺麗な桃色に充血し、その先端を尖らせて興奮を示す乳首と、それを押し上げ支える小ぶりだが形のよい白い乳房がふるふると震えているのが目に入る。 金色の草原が縁取るその性器は、淫らな蜜によって、ぬらぬらと淫靡な光沢を放って、牡の視線を釘付けにする。 コルベールの喉がごくり、と鳴る。 「命を二度も救われた。  …これは、私なりのその礼のつもりだ」 言って、そのまま真っ直ぐに勃ったコルベールをまたぐ。 123 :孔明の罠〜アニエスのばあい ◆mQKcT9WQPM :2007/12/22(土) 01:19:11 ID:Xj8LSX0H 反論の余地もなく、アニエスは一瞬でコルベールを飲み込む。 そして淫靡に腰をくねらせ、コルベールに至上の快感を与える。 アニエスの中は弾力に満ちて、そして幾重にも折りたたまれた襞が、コルベールの神経の中枢をまるで肉の鑢で削るように蠢く。 「くぁっ…こ、これはぁっ…!」 コルベールはただ送り込まれてくるその快感に堪えるしかない。 アニエスは遠慮なく腰を進め、膣の最奥でコルベールの先端をくわえ込む。 「はぁ…あたってる…」 そこでさらに捻りを加え、相手だけでなく自分にも快楽を刷り込む。 ぎゅうぎゅうと締め付け、吸い上げ、絡みつくアニエスの名器と腰技に、コルベールは悶絶する。 「くぅ…!なんてっ…すごっ…」 背筋を襲う心地よい悪寒に、ただ堪えるしかない。 そんなコルベールを抱き締め、アニエスは囁く。 「そして…忘れるな。  私は、お前を恨んでいる…。一生かけて、償わせてやる…!」 そして、コルベールがその言葉の意味を問う前に、一気に腰を動かし始める。 ぐちゃ!ぐちゅ!ぶちゅぅっ! 融けた肉の摩擦音が部屋に響き、お互いの中で快楽が弾ける。 「あぁ!くる!おくまで来るッ!出せっ、全部中にだせっ!」 「くぅ、ダメだ、こんなっ、いかんっ!」 女が男を嬲るという異常な情景が、二人の快楽から歯止めを奪う。 牝の肢体が跳ね、牡を貪り、そして貪欲なまでに精を求めて締め付ける。 しかし。 先に限界を迎えたのはアニエスだった。 「あ、らめ、いきたくな、まだだめぇッ!」 自分の身体の限界を叫び、コルベールの首に抱きつき、腰に脚を絡ませて絶頂を迎えるアニエス。 きゅうぅぅぅぅぅぅぅぅーっ! 凶悪なまでにアニエスの膣が蠕動し、コルベールを締め付け、最後の、そして最高の拷問をコルベールに課す。 124 :孔明の罠〜アニエスのばあい ◆mQKcT9WQPM :2007/12/22(土) 01:19:40 ID:Xj8LSX0H 「く、だめだ、もうっ!」 しかし、牡も限界だった。 どくどくどくどくどくどく…! ギリギリまで高められた熱い衝動が溢れ出し、アニエスの膣襞の奥の奥まで染み込む。 いよいよ、アニエスの企みが、成る時が来た。 「あ、きた、いっぱいきたぁ…!」 蕩けたような笑顔で、コルベールの精を受け入れるアニエス。 その子宮口は、精液の到達を知るや、大きく開門する。 そして、まるでそこが捕食を行う器官であるかのように、吐き出された精子を呑み込む。 その奥、卵巣から続く卵管からは、薬の影響によって排出された卵子が吐き出されている最中であった。 奔流となった熱い白濁は、卵管から吐き出されたその卵を一瞬で覆い尽くす。 まるで砂糖に群がる蟻のように、無数のコルベールの種がアニエスの卵を陵辱する。 卵の周囲に張り巡らされた薄い薄い皮膜は瞬く間に一つの種によって破られる。 そして、種は卵の最奥まで貫き、融け合う。 そしてすぐに。 命を吹き込まれた卵は二つに割れ、四つに割れ、新しい命の刻を刻み始める。 アニエスの胎内に、にっくき仇の子が宿された瞬間だった。 125 :孔明の罠〜アニエスのばあい ◆mQKcT9WQPM :2007/12/22(土) 01:20:22 ID:Xj8LSX0H 精液の排出が終わるまで、アニエスはコルベールを束縛し続けた。 全ての精液を搾り取ると、アニエスは満足し、コルベールを解放する。 「…どうして、こんな事をしたんですか」 開放されたコルベールは、まずそう言い放った。 軽く顔が怒っているように見えるのは、気のせいではないだろう。 しかし、この男に対していまや圧倒的なアドバンテージを獲ているアニエスに、そんな脅しは通用しない。 アニエスはにやりと嗤って言った。 「そんな事を言う前に、精液と愛液でベトベトの一物をなんとかしろ」 言われて気づいたコルベールは、慌てて手近に会った布で己を拭く。 刺激に起ちそうになる息子をなだめながら、改めてアニエスの方を向く。 そしてすぐそっぽを向く。 アニエスは、その肢体を隠す事もせず、精液と愛液の垂れる女陰を隠そうともせず、ベッドの上で脚を組み、頬杖をついて炎蛇を見つめていた。 「さて、どうして、と尋ねたな?  これは復讐だよ」 成った復讐に、満足そうに嗤うアニエス。 しかし、そっぽを向いたままのコルベールにその表情は見えない。 むしろ見たらまずい事になる。自分の息子が。 コルベールは顔を逸らしたまま尋ねた。 「ど、どうしてこんなことが復讐になるんですかっ」 「言ったろう?一生かけて償わせてやる、と。  実はな、私はここに来る前に、ある薬を飲んできた」 そう、それはアンリエッタから奪ったあの薬。 呑めば確実に『オンナ』になる薬。それは、強制的に排卵を促す、魔法薬。 アニエスは続ける。 「その薬を飲んで性交すれば、確実に妊娠できる。  お前がたっぷり出してくれたおかげで、今私は確実に妊娠できた。  …ああ、わかる、わかるぞ。私の胎内で命が芽吹いているのが」 言ってアニエスは満足そうに下腹部を愛でる。 そしてコルベールを見る。 面白いように蒼白になっていた。あの炎蛇が。 「さて、この場合、トリステインの男はどうやって責任を取るのかな?」 言ってにっこり笑う。とてもとても幸せそうに。 「…い、いや、あの」 しかしコルベールも踏ん切りがつかない。 いくらなんでも、好いていない相手と結婚するのは。 「あ、あなたはいいんですか!?好きでもない相手と結婚などと」 126 :孔明の罠〜アニエスのばあい ◆mQKcT9WQPM :2007/12/22(土) 01:20:48 ID:Xj8LSX0H しかし、その台詞は即座に否定される。 「何を言っている。私はお前を愛している」 コルベールが固まった。 アニエスはベッドから立ち上がり、そっとコルベールを抱き締める。 その抱擁はあくまで優しく、その微笑は慈愛に満ちており、とてもその言葉が嘘とは思えなかった。 「本当だぞ。二回も命を救われた、命の恩人だしな。いい男だし。…背中もけっこう広いし」 言ってつつつ、とコルベールの背中に指を這わせる。 「じゃ、じゃあなぜ復讐ができると」 そこまで言ったコルベールの耳元で。 今度は悪魔のように囁いた。 「…ふふ。カンタンな理屈だよ。  私はお前と結婚して、幸せな家庭を築くんだ。子供もすぐに生まれるしな。  私は一生涯かけてお前を愛し続けると、誓ってもいい。  だから」 言ってコルベールから離れて。 下腹部に手を当て、恐ろしい計画を未来の夫に話し始めた。 「復讐は、この子に託すことにする。  この子に教えてやる。  お前の父親は、お母さんの故郷を焼き払い、さらに復讐を誓ったお母さんの心を手折って、お母さんを妊娠させた外道だとな。  お前は自分の子供に一生蔑まれて生きるんだ」 「ちょ、ま、なんてことを!」 しかし、絶望するコルベールにアニエスはにっこり笑って言った。 「大丈夫だ、お前がいくら子供に蔑まれても…。  私が代わりに、全身全霊を以って愛してやる」 そして、愛を込めて愛する男を抱き締めたのだった。 127 :孔明の罠〜アニエスのばあい ◆mQKcT9WQPM :2007/12/22(土) 01:32:41 ID:Xj8LSX0H 〜十三年後、とある貴族の家にて〜 「でさあ、ホントの所、キミお父さんのこと恨んでる?」 「ううん全然。まあたしかに外道だとは思うけどさあ」 「そりゃあねえ。復讐しにきたお母さんを押し倒して乱暴して監禁して妊娠するまで犯した挙句、自分のものにしちゃったんだもんね」 「でもさ、最近それってヘンじゃね?とか思うようになってきてさ」 「なんで?それ全部お母さんが言ってたんじゃないの?」 「そうだけどさ。だってさ、それ話すお母さんがさあ…なんていうか…」 「何?」 「うん、嬉しそうなんだよ、すっごく。普通そういうのって、悲しそうに話したりするもんでしょ」 「まあそうだけど」 「それにさ、別に外道でもいいんじゃなかな?」 「なんで?」 「お母さんがお父さんを好きだから。お父さんもなんのかんの言いつつお母さん好きだし。  結局愛し合ってんだよ、あの二人は」 「…歪んでんなー、キミんち」 「…お前んとこに言われたくないぞ…」〜fin

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