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水面に映る2つの月がわずかに歪み、一人の少女が姿を現した。 後ろから声がするが、少女はその声に振り返ることなくその足を進める。 岸から5歩程行った所で立ち止まり、そっと呟く。 「・・・・水の精霊の御許で誓約いたします。・・・さまを、永久に愛することを」 しかし、後ろから聞こえてくる声は少女の期待したそれではなかった。 意を決した様に今度は少し大きめの声で繰り返す。 後ろから自分を呼ぶ愛しい男にはっきりと聞こえる様に。 「トリステイン王国王女アンリエッタは水の精霊の御許で誓約いたします。・・・さまを、永久に愛することを」 言い終えると同時に少女は後ろから抱きかかえられる。 少女は男の肩にしがみつき、同じように誓約の言葉を発するよう男を見上げるが、男は真っ直ぐ前を見つめたままだ。 (・・・・・・?) 少女が男の名前を呼ぼうとしたとき、男は少女に顔を向けこう言った。 「俺は王子様にはなれませんよ」 ガバッ 半身を起こし荒い息をつきながら、部屋の主は頬を手で覆う。 窓の外は暗く、朝日が昇るにはまだかなりありそうだ。 そこはトリステイン王宮の最奥、王女アンリエッタの寝室だった。 (また・・・) アンリエッタはここ数日、まったく同じ夢を見ていた。 幼き日、身を焦がすほどに愛したアルビオン国王子ウェールズにラグドリアン湖で誓約したあの時を。 だが出てくるのは決まってウェールズではなく、異世界から来たルイズ・フランソワーズの使い魔シュバリエ・サイトだった。 (どうして?せっかく諦めようとしてたのに・・・) 枕に頬を埋め爪を噛みながら、アンリエッタはまた朝まで眠ることが出来ずに過ごす事になったのだった。

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