ゼロの保管庫 別館

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だれでも歓迎! 編集

796 名前:異世界協奏曲[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 21:31:26 ID:DhIoxA19

第1巻 p12より

「サモン・サーヴァント」  貴族に従う使い魔を召喚する伝統ある儀式である  魔法学院では生徒が2年生になるとすぐに行われる。

私が1年生から進級して数日経ったある日、トリステイン魔法学院の広場には2年生の生徒が全員集まっていた。 サモン・サーヴァントを終えた私は、広場の隅っこで校舎に背を預けて本を広げていた。  すると友達のキュルケが話しかけてきた。 「ねぇ、タバサ見て。私ったらサラマンダーを召喚したのよ」  チラッと前を見てみると、キュルケは赤くて尻尾に火が灯っているトカゲらしき生き物の頭をなでている。  サラマンダー、火属性の聖獣のランクでは高い所に位置している。 「でもあなたのウインドドラゴンにはかなわないわね」  キュルケは笑いかけてきた。  私は視線を上を向いた。空にはさっき召喚したウインドドラゴンを待機させていた。 まだ幼児らしいのだけど見たところ大きさは全長20メートルはあると思われる巨体。けれど翼を広げて空を飛べば、その姿の美しさは妖精にも見えた。 ただ校舎は小さいので普段は一緒に行動できないのは難点になるかもしれない。 「あっ、次はゼロのルイズの番みたいね」 私が視線を戻すとキュルケはおもしろそうね、と笑いながら広場の中央に歩き出した。 2年生のみならず、ほかの学年でもおちこぼれとも噂されているルイズは魔法成功率ゼロなのだ。そんなルイズの二つ名はゼロになった。 ちなみにキュルケは微熱で、わたしは雪風になっている。 なんて考えていたら盛大な爆発音が辺りに響き渡った。 きっとルイズはいつもどおり失敗したのだろうと思い、たいして気にしなかったけど、周りの反応はいつもと違っていた。 「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民をよびだしてどうするの?」 平民、という言葉が気になって目線を広場の中央に向けてみる。 ルイズはあきれた顔で何かを見ていた。その視線の先には見慣れない服装をしている人間がいた。なるほど、この国の貴族の服装とはちがっている。確かに平民みたいだ。 私は変わった服装をしている平民に少しだけ興味を持った。

797 名前:異世界協奏曲[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 21:32:42 ID:DhIoxA19

p199より

今、ルイズの部屋には人が4人いた。部屋の主であるルイズと使い間の才人はもちろんのことだが、他にもお客のキュルケやタバサもいた。 部屋の中央ではルイズとキュルケが剣について言い争いをしている。才人はニワトリの巣で両手で持っている2本の剣を眺めている。そしてタバサはベッドに座り本を広げている。 「言ってくれるわねヴァリエール……」  キュルケの顔色が変わる。ルイズは勝ち誇ったように言った。 「本当のことじゃない」  言い争いも徐々に白熱していき、二人は杖に手をかけた。  それまで、じっと本を読んでいたタバサは二人より早く杖を振った。  杖からつむじ風が舞い上がり、ルイズとキュルケの手から杖を吹き飛ばした。 「室内」  タバサは淡々と言った。その言葉を合図にまた言い争いが始まる。  才人は剣を置いた。ルイズとキュルケの言い争いは自分のせいと自覚していたので怖くて体を縮こませていたが、実はもっと気になることがあった。 「よ、よお」  その気になる対象であるタバサに小声で話しかけてきた。 「あの、なんて本、読んでんだ?」  しかしタバサは黙々と本のページをめくっていた。 「お、おれ、才人っていうんだけど」  何度も話しかけた成果か、相変わらずの無表情だが才人の方に顔を向けた。

 俺は体を硬直させてしまった。背もピンとまっすぐになってるし顔も赤いだろう。  あぁ、きっと俺ってマヌケな顔してんだろうな、などと考えているうちにタバサは顔を本に戻してしまった。 「フゥ〜」  声にならない小さなため息をついた。 何秒かはわからないけど見つめあってしまった。そういえば話しかけたのは初めてだった。いつも近くにいるキュルケが積極的に話してくるから機会がなかったんだよな。 俺を取り合ってると思われるご主人様のルイズとキュルケ、この二人を比べれば胸がないのがネックだけど顔のいいルイズの方が好みである。ただ性格がきつすぎる、この性格のせいで随分と苦労させられている。 だからといってキュルケと付き合うとその美貌から寄ってくる男達に殺されるのは目に見えている。 だから物静かでライバルもいないと思われるタバサは、なんだかまったく欠点が無いように見えてしまうのだった。おまけに初めて見たときに、電流が体中を駆け巡ったのだ。一目惚れ、というやつであった。 「ハァ……」  才人は二度目のため息をついた。  もう一度話しかけようかな、こっち向いてくれるかな、本読むの邪魔しちゃ悪いかな、などと色々考えていた。  すると横からものすごい殺気を感じて才人はわれに返った。重大なことを忘れていたのだ。  俺やばい、俺まずい、死ぬ、殺される。  頭は混乱しつつもわずかに残った冷静な部分が勇気を振り絞る。  恐る恐る横を向くと、2つの顔がものすごい形相で才人をにらみつけていた。

798 名前:異世界協奏曲[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 21:34:40 ID:DhIoxA19

p261より

「主人のダンスの相手をつとめる使い間なんて、初めて見たぜ」  バルコニーにいるデルフリンガーが呟いた。  食堂の上にあるホールでは、貴族の恒例行事である「フリッグの舞踏会」が行われていた。  その舞踏会では、今はダンスの時間であり、才人はルイズに誘われて踊っていた。  といっても才人はダンスなんてしたことがないので、ステップはぎこちなく、たびたびルイズの足を踏んでしまったりしていた。  才人はルイズのドレス姿を見て、可愛らしさを改めて実感して、照れたりしていた。その一方で物足りなさを感じてもいるのであった。    才人の中で一番強いのは、タバサと踊りたい、という気持ちである。  そのタバサはと言うと髪型やめがねは一緒なのだがを肝心のパーティドレスは黒い色をしている。喪服か、と才人は心の中で突っ込みをいれた。そして豪華なフルコースのあるテーブルでダンスもせずに料理と格闘している。  ただタバサが何を着ても、どういう行動をしても才人はそれが可愛く見えてしまうのであった。  ふと才人はあることに気づいて足元をみた。しばらくダンスのパートナーであるルイズの足を踏んでいないのである。  ルイズのようにかろやかと言いがたいが、才人の足はぎこちなくもダンスのステップを踏んでいたのだ。  これならいける! 才人は心の中で叫んだ。  そしてダンスも踊らず料理と格闘しているであろう、タバサの方をチラッと見てみた。  タバサは料理と格闘していなかった。何をしていたかというと本を読んでいたのである。才人は心の中で「どっから出したんだ」と突っ込みをいれた。 「才人、どうしたの?」  ハッと我に返っていつの間にかなっていた、にやけ顔を直してルイズの方を向く。  ルイズがこっちをじっとにらんでいる。 「あ、いやっ、その、なんでもないよ」 「あやしい。何見てたの」  まずい、と才人は思いふたたびタバサのほうを見る。その方向にあるものを発見した。 「ほら、窓の外にある月を見てたんだよ」 しどろもどろになる才人であったが、その時丁度音楽が終わった。ダンスの一幕目が終わりを告げたのだ。  才人とルイズは向かい合っていて、気まずい空気が流れていた。  ルイズが何かを言おうと口を開くと周りから「ミス・ヴァリエール」という声が聞こえた。  見てみると、名前も知らない男子生徒が群がっている。 「次の曲は僕と踊ってくれませんか?」  たくさんの男子生徒からルイズは誘いを受ける。  ルイズは才人をしばらくにらんでいたが、やがて他の手を取ると名残惜しそうな目をしてどこかに去ってしまった。  才人は周りを見回してみるとなるほど、皆さっきと違う人といる。どうやら1曲ごとにダンスパートナーを替えるらしいことに気づいた。  これはチャンスだ、と才人は考えタバサの方を向く。 そして一回深呼吸して緊張した顔で歩き始めたのであった。

799 名前:異世界協奏曲[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 21:36:27 ID:DhIoxA19

 それと対照的にタバサの顔はいつもより少し、他の人が見ても気づかない程度だったが明るいのであった。いつもよりも豪華で、おいしい料理を食べたからである。  そしてどこからか出した本を広げて読み始める。  しばらくすると横から声をかけられた。 「あ、あの、タバサ」  声のほうを横目で見てみる。そこには才人が片方の手を頭にやりながら立っている。その顔は少し赤く、照れるようにも取れる。 「えっと、その……」  どうして才人の話し方がぎこちないかはわからないタバサであったが本に目を戻す。  何回か「えっと」や「その」が聞こえてきていたがやがて強い声が聞こえた。 「俺と踊ってくにゃにゃい」  しばらくの間、時が止まった。 「……はああぁぁぁ、もうだめだ」 透き通るような弱々しい声をだした才人は、もう片方の手も頭にやり抱え込んでうずくまってしまった。 表情の変わりは無いもののタバサは驚いていた。才人の言った「踊って」の後の言葉が何かを理解していたからである。「踊ってください」まさか自分がダンスに誘われるとは思っても見なかったからである。 それと同時に暖かい何かが心を満たしていった。 その気持ちは前にも一度経験している。 タバサは昔を思い出す、今から一年ほど前の出来事だ。キュルケに「あたしが本の代わりに友達になったげるわよ」という言葉をかけられたときである。キュルケと仲良くなったきっかけであり、あの時も今と同じで暖かい何かが心を満たしていた。 タバサはうずくまっている才人のほうを見た。 そして首を縦に振って返事をした。 本人はわかっていたかもわからないが、タバサの顔はかすかに笑っていた。 しかし、惜しいことに才人はうずくまっていたのでタバサの返事が見えていなかった。 そして再び音楽がホールの中に流れ始めたのだった。

「おでれーた!」  相変わらずデルフリンガーはバルコニーにいた。 「こりゃ面白いことになりそーだ!」  デルフリンガーは相棒の他に、他の男子生徒と踊っている二人の女子生徒を見た。  桃色がかったブロンドの髪をした方は才人をにらみつけていた。燃えるような赤い髪をした方は面白そうに才人を見ていた。 「相棒はてーしたもんだ!」    音楽が三曲目に入ると、ダンスをしているなかにちょっと変わった衣装の二人が踊っていた。

800 名前:異世界協奏曲のあとがき[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 21:40:05 ID:DhIoxA19 以上です。 こんなタバサの心情はありえない! と思った人は遠慮なく文句いってください。 あと上げてしまって申し訳ない。 続きに関しては気が向いたら書くということで。

では、ゼロの使い魔ファンの同士よ、さようなら!

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