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391 名前:聖女の日 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23:25:20 ID:4hyPC9DQ 「いい?明日は絶対部屋から出ちゃダメなんだからね!?  それと、何か届いたら必ず受け取ること!  ご主人様は今日明日いないけど、明日の夕方には帰ってくるからね!  ちゃ、ちゃんといなさいよ!わかった?」

真っ赤になりながら、今朝ルイズはそう言い放って部屋から出て行った。 …なんなんだ一体。 外出する用件も話さず出かけたルイズを不審に思った才人だったが、久しぶりの自由を満喫するために、今日は一日外遊することにした。

…なんだかみんなそわそわしてんな。 俺が最初に感じたのはそれ。 すれ違う生徒のそれぞれが、まるで祭りの前夜のようにそわそわしている。 明日なんかあるのか?その準備でルイズも出かけたのかな? 俺はそんなことを考えながら、水精霊騎士団のたまり場に向かっていた。

「い、いよいよ明日だな!」 「いいよなギーシュは、今年はほぼ確定だもんな」 「い、いやしかしだな、僕の愛は普遍のものだからして。分かっていても正解を出すわけには…」 「とか言って。明日、君の部屋に贈り物が届いたらどうなるかな」 「ああ、ああ!愛の女神よ、なぜにあなたはこうも残酷なのだ!」

…もう酔ってんのかこいつら。 倉庫の傍らの円卓で、むやみに騒いでいるギーシュとレイナールを見て、俺は半分呆れた。 昼間っからめでたいやつらだよ実際。

「なーギーシュ、なんでお前らそんな浮かれてんの?」

挨拶代わりに俺は質問した。 だってなあ。みんな浮かれてるのに俺だけ理由もわからずにいるなんて。 なんか祭りからハブられてるみたいで。 寂しいんだもん。 そんな俺に、ギーシュは『何をぬかしているんだこの唐変木は』ってな顔をした。

「…サイト、君もこちら側の人間だろうに」 「…いやだから。何で浮かれてんのかって」

理由聞いてんのに『こっち側』もクソもないだろうに。

「サイト、ひょっとしてお前知らないのか?」

レイナールが驚いた顔をして俺に尋ね返してきた。 …悪かったな知らなくて。俺は元々こっちの世界の…まあいいや。 俺はレイナールの言葉に素直に頷いた。 知ってるふりしても何の得にもならないしな。

「しらねーよ。なんか祭りでもあんの?」

俺の言葉に、ギーシュがいきなりがばぁっ!と俺の肩を掴んだ。 ちょ、おま、鼻息!近いって!

「さささささサイト!君は知らないのか?『聖女の日』のことを!?」

『聖女の日』?なんだそりゃ? 俺が満面に『知りませんそんなの』って表情を湛えていると、ギーシュが肩をすくめながら言った。

「全く…ルイズもうかばれないな」 「…ルイズになんか関係あんの?」 「あるとも!大アリさ!ブリミルの物語にガンダールヴがつきもののようにね!」

392 名前:聖女の日 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23:25:58 ID:4hyPC9DQ …よくわからん。 ギーシュは前置きが長いんで、俺はレイナールに視線で『ナニソレ?』と尋ねる。 レイナールはちゃんとその視線の意味を汲んでくれた。

「分かりやすく言うと、女の子から、好きな男に贈り物をする日なんだ」

…つまり、こっちのバレンタインみたいなもの? それだけなら大したことないんじゃ? 俺がそんなことを思っていると、ギーシュが大仰に振りなんかつけながら、レイナールの言葉を継いだ。

「しかぁし!それだけじゃないぞ!  そう、話は数百年昔に遡る!あるところに、それは美しい聖女がいた!  彼女には想い人がいた!しかし彼女は始祖に仕える身!想いはかなわない!  そこで彼女は、想い人にありったけの愛を籠めた贈り物をしたのさ!差出人の名は付けぬまま、ね!  しかし想い人はそれが彼女からの贈り物だと、見た瞬間に分かったのさ!  それを知った始祖は、二人の愛を認めた!そういうわけなのさ!」

…いや俺が聞きたいのは昔話じゃなくてさ。

「つまり、そういう伝承を基にした、習慣なんだよ。  女の子は、手作りの贈り物を、差出人の名前を書かずに、好きな男に届ける。  そして、贈り物を受け取った側は、その日のうちにその贈り物の贈り主を当てる。  それが『聖女の日』ってわけ」

そう、レイナールが補足説明をしてくれた。 へえ。結構面白そうだな。 あーそれでルイズあんなこと言ってたのか。なるほど納得。 でも、そこまで浮かれるようなことかぁ?

「でもさ、そこまで浮かれるようなイベントかそれ?」

日本のバレンタインと比べても、この盛り上がりは異常だと思う。 好きな相手に告白するってだけだろ?なんでそんな盛り上がるのか理解できん。 しかし、ギーシュの答えを聞いた俺は、その理由に納得した。

「いや、問題はその先だよサイト。  贈り主を当てた場合、そして二人が両想いだった場合…」 「だった場合?」 「二人は真実の愛で結ばれるのだよ!『真実の愛』!この意味がわかるかねサイトーっ!」

言ってまたギーシュはがばぁっ!と俺の肩を掴んだ。 だからっ!鼻息っ!近いってコラ! 俺はギーシュを両手ですっとばすと、『真実の愛』について考えてみた。 つまりそれは、話からすれば神職の女性がその資格を失うような愛なわけで。 つまりそれは、うまくいっちゃうと十月十日後に実っちゃったりする愛なわけで。 …な、なるほど、それは興奮するわけだな…! ちょ、ちょっと俺も興奮してきたぞ? 話を聞くと、どうやらレイナールも心当たりがあるっぽく、それでギーシュと盛り上がっていたわけだ。 で、ギーシュは当然モンモンと。でも、ほかの女の子の愛もないがしろには…とか言ってる。 実際、ギーシュは毎年複数の女の子から贈り物を貰い、その度に全部外してたらしい。 …でも今年はモンモン本気だろうからなあ。他の女の子の贈り物なんか、握りつぶしそうだ。そのままの意味で。 そうして俺たちが盛り上がっていると。

393 名前:聖女の日 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/02/10(土) 23:27:22 ID:4hyPC9DQ 「くく…くくくくくくくく…」

地獄の底から響いてくるような、昏い地響きのような含み笑いが、倉庫に響き渡った。 俺たちはその声の出所を振り向く。 そこは倉庫の入り口。開かれた扉の真ん中に、まん丸な人影が、俯いて笑っていた。 その名はマリコルヌ。風上のマリコルヌだ。 …ヤツは、俯きながら、含み笑いを漏らしている。そこ声はあくまで昏く、まるで笑っているというより啼いているようだった。

「あああーーーーーっはっはっはっは!」

そう笑いながら、マリコルヌは顔を上げた。 …笑いながらマジ泣きしてる…。 ドン引きの俺たち三人に、マリコルヌはゆぅらりゆらりと、まるで酔っ払いのように歩み寄り、言った。

「聖女の日に贈り物をもらえる男は…。  死 ぬ が よ い」

そして、倉庫の中を暴風が荒れ狂った。

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