ゼロの保管庫 別館

11-474

最終更新:

familiar

- view
だれでも歓迎! 編集

474 :聖女の日〜アンリエッタの場合 ◆mQKcT9WQPM :2007/02/13(火) 02:28:20 ID:nMVwfb7q 「…んあ?」

俺は中庭から聞こえる喧騒に久しぶりの寝坊の時間を中断された。 …久しぶりにルイズがいなくて、朝ゆっくりできると思ったのに…。 窓の外から、やむ事のない喧騒が聞こえてくる。 …ったく、なんだってんだ…。 俺は寝ぼけ眼をこすりながら、窓の外から中庭を見下ろす。 そこには、学院の生徒の半数以上が集まっていた。 その中心には、どこかで見た白い馬車。 …あれ、あの紋章は…。 俺が、記憶の中からその紋章を掘り起こしていると。

「大変だぞサイトーっ!」

ノックもなしにドアを開け、ギーシュがやってきた。

突然、アンリエッタ女王がトリステイン魔法学院に来訪した。 その衝撃は瞬く間に学院を覆った。 才人もギーシュに誘われるまま、中庭の人ごみの外周にやってきた。 今にも降り出しそうな曇天にも関わらず、中庭には結構な数の男子だけでなく、女子生徒までもが詰め掛けていた。

「『聖女の日』に女王自らここへやってきたということはだな!  ひょっとすると学院の男子生徒の中に、想い人がいるかもしれないというわけで!」

羽虫程度なら吹き飛ばせそうな鼻息でそうまくし立てるギーシュ。 対照的に冷静なのがレイナールだった。

「『聖女の日』の贈り物は、送る側から直接手渡されたんじゃ意味のないことを忘れたのかい?  それは取りも直さず『義理』ってやつじゃないかな?」

レイナールの補足説明によれば、『聖女の日』には、好きな相手以外に、普段からお世話になっている殿方に、直接贈り物をする事もあるらしい。 直接手渡すことによって、『私はあなたのこと好きでもなんでもないですよ』と意思表示すると同時に、いつもお世話になっている感謝の気持ちを表現しているという。 まんまバレンタインの義理チョコと一緒だなあ…。 才人がそんな風に思っていると。 今にも崩れそうだった空から、ぽつぽつと雨の雫が零れ落ちてきた。

「…酷くなりそうですね。ホールに案内していただけるかしら」

人ごみの中心の女王は傍らのオスマンにそう語りかけ、ホールへの移動を宣言した。 オスマンの先導で、女王一行と、生徒たちの塊が、ホールへと向かっていく。

「さあ、僕たちも行こう、サイト!」 「あ、ああ」

まだ興奮の冷め遣らないギーシュが、才人の腕をぐいぐいと引っ張る。 降り出した雨の中、才人はギーシュに引きずられる形で人ごみに着いていったのだった。

「水精霊騎士団は前へ」

ホールにつくと、お付で来ていたらしいマザリーニさんが、そう宣言した。 呼ばれた俺たちは、人ごみを掻き分けて姫様の前に出る。 …全員いるじゃねーか…。 まあ、女王の近衛としては当たり前なんだろうけど、俺には全員がここにいる理由が、アイドルの野野次馬に出てきたパンピーと同じものだと推測できた。 …だって、誰一人としてきちんと正装してないんだもんな。 もちろん寝坊してた俺もだけどッ! そんな風に俺がちょっと空しくなっていると、マザリーニさんが整列した俺たちに言った。

475 :聖女の日〜アンリエッタの場合 ◆mQKcT9WQPM :2007/02/13(火) 02:29:05 ID:nMVwfb7q 「聖女の日ということで、近衛である君たちに感謝の気持ちを示したいと、陛下がおっしゃってな」

マザリーニさんの台詞とともに、姫様が一歩前に出てきた。

「お口に合わないかもしれませんが…一生懸命焼いたんですよ」

姫様が手にしていたのは、小さな紙の包みがたくさん入った、バスケット。 匂いから言って、中身はクッキーかな? しっかし、全力で『義理!』って感じだなコリャ。 姫様は緊張と感激でカチコチになっているギーシュにまず、その包みを一個、手渡した。

「はい、騎士団長どの。いつもお疲れ様です」

言って、にっこり微笑む。

「へへへへへへ陛下の!陛下の手作りくっきぃぃぃぃぃぃぃ」

手渡されたギーシュは、感謝の言葉を返すのも忘れて、卒倒してしまった。 …なんつーかな。オーバーすぎないコイツ? でも、ギーシュの反応はちょっと行き過ぎにしても、他の団員たちも大差のない反応をしていた。 みんな一様に緊張し、クッキーの包みを受け取っている。 俺にはよくわかんないけど、王様と貴族に一子弟には、そんだけ身分の差があるってことなのかな。 …民主主義で育った俺には全くワカラン。 そうこうしていると、俺の番が回ってきた。 姫様はにっこり笑い、俺の目の前に紙の包みを差し出した。

「はいどうぞ、シュヴァリエ・サイト」

…? 俺は、姫様のその笑顔に、妙な違和感を覚えた。 しかし受け取らないわけにもいかず、俺は手を出す。 しかし。

「あっ」

俺が手を差し出す直前、手を滑らせたのか、姫様は包みを落としてしまった。 俺は慌ててしゃがみこんでそれを拾おうとする。 するとなんと、目の前の姫様も、同じように包みを拾いにしゃがみこんだのだ。 するってえと、俺と姫様の距離がすごく近くなるわけで。 具体的には、吐息がかかるくらい。 ドキっとした俺に、姫様は小声で言った。

「…部屋に帰ったら、ドアの前を確認しろよサイト」

…え? しゃがんだまま俺の動きが止まる。 今のしゃべり方。まさか。 アニエスさんーーーーーーーーー!? てことは何か、今俺の目の前にいるのは! 姫様に化けたアニエスさんかーーーーーーーーーーーーーー!! そういや前妙な薬で別の娘に化けてたっけアニエスさん。 俺は妙に納得し、目の前の姫様inアニエスさんから、包みを受け取った。 アニエスさんは一瞬で姫様の演技に戻ると、立ち上がって言った。

「あらあら。とんだそそうをしてしまいました。すみません次の方」

そう言ってにっこり笑い、何事もなかったかのように次の騎士団員に、包みを手渡していった。 …しかし、なんでアニエスさんが…。 その疑問を口にするチャンスは、結局姫様に化けたアニエスさんが、学院を去るまでなかった。

476 :聖女の日〜アンリエッタの場合 ◆mQKcT9WQPM :2007/02/13(火) 02:29:39 ID:nMVwfb7q 才人がルイズの部屋に戻ると。 そのドアの前に、小さな包装された箱が置いてあった。 …アニエスさんの言ってたのってこれか? 才人は箱を手に取り、部屋の中に入る。 部屋に入ると、デルフリンガーが出迎えてくれた。

「おかえりー、相棒ー」

出迎えといっても、立てかけられた部屋の壁から、声をかけるだけだが。 才人はただいま、と言葉を返すと、早速扉の前にあった小箱を開けてみる。 中にあったのは、小さなハンカチ。 隅っこに、トリステインの紋章の書かれた盾の刺繍。 広げると、その隙間からひらひらと、小さな紙が舞い落ちた。 その紙には一面に、文字らしい象形の列。

「…俺字読めないのに…」

贈り主の間抜けさに、才人はため息をつく。 仕方がないので、才人はデルフリンガーに通訳を頼んだ。

「デルフ、これなんて書いてあんの?」

紙きれを広げ、デルフリンガーに見せる才人。 デルフリンガーはそれを律儀に読む。

「えーっとだな。 『トリステインの盾へ。ありったけの愛を込めて。  学院の、一緒にシチューを食べた思い出の場所で、待ってます。ずっと、ずっと』  だってよ。差出人の名前はないぜー」

…え。 今までの出来事で贈り主の予想はだいたいついていた。しかし。 才人は慌てて窓の外を確認する。 大粒の雨が、容赦なく地面を叩いている。 …思い出の場所って…! 才人は、デルフリンガーに律儀に礼をすると、マントをひっつかんで慌てて部屋を飛び出していった。

外は、まさにバケツをひっくり返したような大雨だった。 …まずい、こんな雨の中ずっと待ってたりしたら…! 俺は、必死に『その場所』めがけて走る。 厨房の方へ向けてしばらく駆けると。 少し小高くなった芝生の上に、容赦なく雨が叩きつけられている。 その上で。 まるで、着衣のままシャワーをあびているように、天を仰ぎながら。 そこにいたのは、黒髪の、足にぴったりしたズボンをはいた。 『アン』だった。

543 名前:聖女の日〜アンリエッタの場合 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 21:18:08 ID:8cLIjhEv 「なにやってんだっ!?」

才人は渡り廊下の屋根の下から飛び出て、そのままの勢いでマントを脱ぐ。 すぐにそこへ辿り着いた才人は、そのマントでアンを雨から守る。

「サイトさん…来てくれたんだ」

頬を伝う雨を気にも留めず、にっこり笑い、アンはそう言う。

「もし、俺が来なかったらどうするつもりだったんだっ?」

才人の問いに、アンはうれしそうに笑い、

「もしそうなら、私は風邪をひいていたでしょう。でも、そうならなかった」

そして、びしょ濡れのまま、才人に抱きついた。

「来てくれた…!サイトさんは、来てくれました…!」

そのまま才人の胸の中で泣きじゃくるアン。 才人はそんなアンを優しく抱きしめる。 涙のせいだけではないだろう。その身体は大粒の雨に冷やされ、震えていた。

「と、とにかくどっか入って服乾かそう、な?」

そして才人が目をつけたのは、厨房から少し離れたところにある、物置代わりの納屋だった。

俺は納屋に入るとまず、ランプを探した。 入り口脇にそれはあり、火口箱と一緒に置いてあった。 俺は種火を起こすとランプに火を移し、納屋の中を照らす。 納屋の床は土間で、辺りには使わない物を 収めた木箱やら、古くなった布やら、錆びた鍋やらが無造作に積まれている。 アンは、納戸の入り口にいた。 俺のマントを羽織っているとはいえ、雨に濡れた寒さで小刻みに震えていた。 …急がないと、二人とも風邪ひくな。 俺は納屋を見渡して、火の移りそうな木片をかき集めると、土間の中心にかき集めて、 ランプからぼろきれに火を移して、その上に置いた。 …こっちに来て、色々覚えたよなぁ、俺…。 日本じゃ、火を起こしてランプに火をつける、なんてやんなかったもんな。 なんて考えていると、アンがかわいいくしゃみをした。 …ヤベ。 俺は木片に火が移り、焚き火の体裁をもってきたのを確認すると、アンを納屋の中に引き入れた。 …さて。 俺はアンに背を向けながら、言った。…まあいまさらだけども、こういうのはケジメが大事だし。

「…あのさ、服脱いで乾かそう。このままだと二人とも風邪ひくし。  俺アッチ向いてるからさ」

俺はアンの返事も待たずに服を脱ぎ始める。 しかし、それは無理になった。 アンがいきなり背中から抱きついてきたからだ。 ってか濡れた素肌のやわらかいマシュマロが俺の背中でビッグバンアタックしてるんですけどっ!?

「…あ、あのー?抱きつかれると脱げないんですけど?」

いやまあここで言うべきはそうじゃないのは分かってるんだけど! 今俺の頭の中では、理性が最強の本能と地球最後の大決戦を繰り広げていたのである。 アンはそんな俺の葛藤を知ってか知らずか、密着したまま俺の背中から語りかけてきた。

「…サイトさん。聖女の日の曰くは、知っていますか?」

…ってーとアレか、贈り物の贈り主が分かったら真実の愛がどーのこーのって。

「…知ってますよ」

俺の答えとともに。 アンが俺の身体をより一層強く抱きしめた。 いやまってまってまって!そんな強くひっついたら! ってさきっちょ硬くなってんじゃんーーーーーーーーーーーーーーーーー! も、も、も、も、もうだめだぁ。 俺が納屋の天井をあおいで酸素不足の金魚みたいにぱくぱくしていると。

「サイトさんは、あの贈り物が私の物だって、わかったんですよね…?」

アンは急に、手を離してきた。 その声が少し震えているのに気づいた俺は、アンを振り返る。 アンは、俺を不安そうに見つめていた。 雨に濡れた髪が、素肌が、濡れて透き通った上着が。 焚き火の橙色の明かりに照らされて…まるで、生きた彫像のように見えた。 そして、俺は…。

サイトさんが、私をぎゅっと抱きしめてくれた。 濡れて冷え切った服の上から、彼の体温が染み込んで来る…。 私の中の不安が、どんどん溶けていく…。 もし、私が贈り主だって分からなかったら。 もし、気づいても来てくれなかったら。 雨に打たれながら、ずっとそんなことを考えていた。 その不安は雨と一緒に、私の中に降り積もって…。 雪のように、私の心を冷やしてしまっていた。 あの時私は、このまま雨と一緒に溶けてしまえたら、楽になれるんじゃないか、なんて思っていた。 でも。 サイトさんが見つけてくれて。 ぎゅっと抱きしめてくれて。 私の心は、どんどん温かさを取り戻していった。

「サイトさんっ…!サイトさん…っ!」

私は彼の腕の中で彼の名を呼び、必死に彼にしがみついた。 彼の温かさが、彼の存在が、嘘じゃないと確かめるために。 そんな私の頬を、そっとサイトさんの手が撫でる。

「こんなに…びしょ濡れになって…。寒かっただろ?」

そして…そのまま私の顎を指で持ち上げて…。 私は抗いもせずに、彼のされるがまま、唇を捧げた。 そして…。

「今も、寒いです…。  温めて下さい…。  サイトさんの、愛で…」

私は彼をぎゅっと抱きしめ…今度は私から唇を奪った。

濡れた服は焚き火に当たるよう、木箱の間に渡したロープの間に吊るした。 その簡素な布のカーテンの向こう。土間の上に敷いた古ぼけた絨毯の上で、 才人の上にアンが座る格好で、二人は抱き合った。

「あったかい…」

才人の胸板に顔を埋め、アンは呟く。 そんなアンの濡れた髪を、才人は指で優しく漉く。気を紛らわせるためだった。 身体を密着させているせいで、アンの胸の豊かな双丘が才人に押し付けられて歪み、 才人に至上の柔らかさを伝える。 その快感で、否が応にも才人自身は一段と強くそそり立つ。 気を抜くと、即座にアンを滅茶苦茶にしてしまいそうだった。

「熱いの…当たってる…」

アンのその台詞が、才人の本能にさらに火をくべる。 しかし、才人の野獣が暴れだす前に、アンは行動に移った。 勢いよく体重を上半身にかけると、才人を絨毯の上に押し倒した。 毛足が短いのと、空気が湿っているせいで、埃はほとんど立たなかった。

「サイトさん…ください…コレ…」

言ってアンは、そそり立つ才人を優しく右手で撫で上げる。

「うっ…」

その刺激に才人は軽く呻く。 刺激に耐える才人を見て、アンの中の獣がより一層強く暴れだす。 欲しい。サイトさんが欲しい。 アンの獣の欲望が、じわりと桜色の裂け目から涎のようにあふれ出す。 アンはそのまま才人に手を沿え、才人を飲み込もうとして。 それは、適わなかった。 才人が、自分の上に跨るアンの両手を掴み、それを止めたのだ。

「え…?」

才人の行動に、思わずうろたえるアン。 そんなアンに、才人は下から語りかける。

「ちゃんと、濡らさないと。痛いよ?」

言って、軽くアンを引っ張り、涎を垂らす裂け目で、自身を自分の上に押し倒す。

「あっ…」

裂け目を擦る雄の温度に、アンの喉が踊る。 そして才人はアンの手を握ったまま、言う。

「じゃあそのまま、腰を前後に振ってみて…?」 「は、はい…」

言われたとおりにアンは、そのまま濡れた秘裂で、才人の裏側をなぞり始めた。

「あっ…あったかい…あったかいです…」

荒い息をつきながら、前後に腰を揺するアン。 アンの裂け目から溢れた蜜が、才人を濡らし、覆っていく。 それとともに、アンの腰の奥がむずがゆく疼き、目の前の才人を貪りたい衝動が溢れてくる。

「サイトさんっ…私っ…もうっ…辛いですっ…」

荒い息とともにそう訴えるアン。 しかし才人はそれを許さない。アンの手首を強く握ったまま離さない。

「ダメだよ。もっとちゃんと濡らして」

しかし、アンはもう我慢ができなかった。

「お願いっ…ガマンできないのぉ…」 「だぁめ。もうちょっとだからさ」

何がもうちょっとなの…? 腰を浮かそうとするアンを、才人は手を引くことで押し止める。 自分自身にアンを擦りつけ、自分を高める。アンは必死になって腰を浮かそうとしたが。

「うっ」

びゅっ、びゅっ

少し浮いたアンの下で、才人が弾けた。 白濁液がアンの裂け目に打ち付けられる。 その感触と才人の表情で、アンは才人が果てたのを知った。

「あぁ…ずるい、サイトさんだけぇ…」

今にも泣き出しそうな表情で、才人を責めるアン。 そんなアンに、あくまで笑顔で、才人は応えた。

「ごめんごめん。ちょっと調子に乗りすぎた」

言って、再び立ち上がり始めた自分自身の先端を、 愛液と精液の混合液にまみれ、ひくつきながら牡を待ち受ける裂け目に押し当てる。

「あ…」

期待に満ちた目で、才人を見つめるアン。 才人はその期待に応え、アンの手を引き…一気に奥までアンを貫いた。

「きゃんっ!」

その衝撃に、仔犬のような声が、アンの喉から転がり出る。

「今日は可愛い声で啼くんだね」

言いながらも、才人は下から突き上げるのを止めない。

「あっあっ…だってっ…いきなりっ…おくまでするからぁっ…」

突き上げられる快感に、とろけそうになりながら、アンは応える。

「もっと聞かせてよ。  アンの…可愛い声…」

言って、ストロークの速度を上げる才人。 そんな才人の上で揺られながら、アンは囀る。

「あっあっあっあっ…だめっ、だめぇっ…もうっ…」

才人の上で揺れるアンの背中がしなり、才人を一際強くしめつけた。

「いく、いっちゃうぅぅぅぅぅぅぅっ!」

それとともに、アンの中で才人が弾けた。




王室に無事帰ってきた陛下は、ものすごくご機嫌だった。

「お疲れ様アニエス♪一日ご苦労さまでした♪」

これ以上ないくらいの笑顔で、陛下は私の両手をにぎってぶんぶん揺する。 …テンション高いなー…。 私は正直、笑う気力もない。 私は陛下から渡された魔法の指輪の力で、身代わりになった一日の間、陛下に化けて執務をこなしていた。 …まあ、学院のイベントはまだよかった。 その後の各種政府部門からの訴え、そして書類整理、それから辺境貴族からの陳情。 ずーーーーーーーっとマザリーニ殿がついてて、気の休まる瞬間なんか一瞬たりとてなかった。 まあ、彼を騙しているっていう負い目もあったんだろうけど。 始終だれかの視線に追われているというのは、精神衛生上とってもよろしくないと思い知らされた。 だから私はぐったりと、ソファーに腰かけていたのだが。

「あらあらアニエス、元気ないわね?  わけてあげましょうか?えいえいえいっ」

言いながら陛下は、ぐいぐいと私の肩を押す。どうやら『元気をわけて』いるらしい。 いやそれ確かに一部のひとは元気になるでしょーけどー。

「ご機嫌ですねえ陛下わぁ…」

もー抵抗する気力もなーい…。 しかしそんな私を一瞬で奮い立たせる言葉が、陛下の口からこぼれ出た。

「ええもうすっごくご機嫌♪  アニエスに王位を譲ってもいいくらい♪」

ぶーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! カンベンカンベンそれだけはマジカンベン!

「じょじょじょ冗談でも言っていいことと悪いことがっ!」

しかし私の反論を、陛下はまったくお聞きになっていない。

「そうね、名案かも、だわ♪  いざとなったら、アニエスを王様にして私はサイト様と…きゃっ♪」

いやちょっとまてそれなんか違うから!

「もし孕んじゃったりしたら、トリステインをお願いね、アニエス♪」

こらちょっとまてこの色ボケ女王ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! それから小一時間ほど、私は女王に説教するという、かつてない偉業を成し遂げた。 …私はマザリーニ殿が鶏がらになった理由が分かった気がした。〜fin

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

人気記事ランキング
目安箱バナー