ゼロの保管庫 別館

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だれでも歓迎! 編集

312 名前:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/04/02(月) 22:39:43 ID:xTnH8xTx 大丈夫。自然にしてればばれないはず。 あの馬鹿結構周り見えてないし。 大丈夫、絶対大丈夫だから。 そして扉が開く。

「お帰りなさいませ、ご主人様」

あくまで自然に。 まるで、最初から自分がそうするのが当然であるかのように。 そして、相手がそうされることを当然だと思うように。 そこに『不自然さ』や『ぎこちなさ』があってはならない。

「お疲れでしょう。お召しものをこちらへ」

気付かれてはならない。 狡猾に、繊細に、大胆に。 あるがままであるように振舞えば、全てはうまくいく──────。 はずだった。

「さ、最高だよっ、モンモランシィィィィィィィィィ!」 「落ち着けこの馬鹿っ!」

扉の前で固まった状態からルパンダイブに移行したギーシュを、モンモランシーのアッパーが撃ち落した。

313 名前:モンモンメイドになる。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/04/02(月) 22:40:45 ID:xTnH8xTx モンモランシーが『メイド実習』のご主人様に選んだのは、もちろんギーシュ・ド・グラモンその人だった。 ギーシュにメイドとして仕えるなど、ある意味危険極まりないことだが、モンモランシーに選択の余地はなかった。 他の娘をこの男に近づけさせないためにも、自分自身が犠牲になる必要があったのである。 そして今。 ギーシュはメイド姿のモンモランシーに踏まれていた。

「あ、あの、モンモランシー?」 「質問は却下。  私は今からあんたのメイドとして仕えるけど、それは実習の一環だから。それ以上でも以下でもないから。  もし変なことしようとしたりしたら、溺れてもらうからね?」

言ってモンモランシーがいつの間にか手にしていた杖を振ると、ギーシュの目の前にこぶし大の水の泡が浮かぶ。

「わ、わかったよモンモランシー」 「わかればよろしい」

モンモランシーは杖をしまい、ギーシュの背から脚をどける。 ギーシュは埃を払って立ち上がると、まじまじとモンモランシーを見つめた。

「…な、何よ」

はだけてもいないのにモンモランシーは思わず胸のあたりを隠す。 そんな彼女に、ギーシュはうっとりと呟いた。

「モンモランシー。君は本当に何を着ても似合うなあ」 「ほほほほ、褒めたって何も出ないんだから!」

思わず照れて赤くなってしまうモンモランシー。 そして歴史は繰り返す。

「そんな可憐なキミもステキだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 「するなっつってんでしょうがっ!」

今度ははたきおとされた。

メイドに手を出せばどういう目にあうか、さんざんギーシュの身体に教え込んだモンモランシーは、まず最初に何をするべきか考えた。 やっぱりここは。

「で。何かして欲しいことはない?」

ご主人様に尋ねてみるのが一番。

「どうせなら」 「ヤらしいこととか言ったら溺死させるからね」

釘を刺すのも忘れない。

「うぐ」

やっぱりか。 ギーシュは言葉につまり、モンモランシーの鋭い視線に思わず仰け反る。 呆れたように見つめるモンモランシーに、ギーシュはあーでもないこーでもないと考えをめぐらせる。 …どうしよう。 ギーシュはヤらしいことしか思い浮かばない自分に驚愕していた。 こ、これがサイトの言っていた『ワビ・サビ』の魔法というやつか! ちょっと違う。

314 名前:モンモンメイドになる。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/04/02(月) 22:41:34 ID:xTnH8xTx 「…して欲しいことないんなら勝手にやらせてもらうわよ」

悶えるギーシュに、モンモランシーが歩み寄り、その肩に手を掛ける。 ギーシュがはっとしてモンモランシーを振り向く。

「や、やっぱりそうなんだねモンモランシぃぃぃぃぃ」

そして両手を広げて抱きつこうとする。

「止まれ馬鹿」

ごっちんとモンモランシーの拳とギーシュの頭が音をたてた。 痛みにうずくまるギーシュ。 モンモランシーは軽く痛む拳をさすりながら、うずくまったギーシュの肩をむんずと掴む。

「…やっぱり」 「…な、何がやっぱりなんだいモンモランシー?」

疑問を口にするギーシュには一切応えず、モンモランシーは無理やりギーシュを立たせると。 ベッドに向けて、うつ伏せに押し倒した。 また何か言おうとするギーシュの頭を、今度は発言する前にベッドに頭を押し付けて口を封じた。 じたばたともがくギーシュの頭を抑え付けたまま、モンモランシーは呟く。

「最近、水精霊騎士団の演習とか出ずっぱりじゃない?  疲れてるだろうと思ってさ」

言って今度はギーシュの背中を押す。 ガッチガッチに凝っていた。 普段、まともに身体を動かすことの無い貴族が、毎日演習だ訓練だで身体を酷使しているのだ。当然といえば当然だった。 モンモランシーは凝っている部分を中心に、マッサージを始めた。

「どう?きつくない?」

モンモランシーのマッサージは、それなりに気持ちがよかった。

「うん、なかなか上手だねモンモランシー」

それは、メイド実習で習った成果なのだが、褒められて悪い気はしない。 モンモランシーは凝った部分を解しながら、言った。

「ほんとにもう、凝りすぎ。何をこんなに頑張るんだか」

呆れたように言うモンモランシーに、ギーシュが応える。

「決まっているだろう、もちろん君のためだよ」

不意打ちだった。

「僕には君を守る力が無い。前の戦いでそれを思い知ったんだ。  だからちょっとでも君を守れる男になれるよう、自分を鍛えているのさ」

いつもの演技くさい声ではなかった。 生の、ギーシュの声だった。 マッサージを受けているせいもあるのだろう。ギーシュはモンモランシーに本音を吐いていた。

「まあ、お陰で毎日筋肉痛だけどね。普段鍛えてないとこういう目にあ」

ぎゅう。

モンモランシーは突然、ギーシュの首を後ろから抱きしめた。

315 名前:モンモンメイドになる。の巻 ◆mQKcT9WQPM [sage] 投稿日:2007/04/02(月) 22:43:41 ID:xTnH8xTx 「え?え?モンモランシー?」

驚くばかりのギーシュに、モンモランシーは囁くように言った。

「…ばか。そんな頑張らなくたっていいのに」

自分のため。そう言ってくれたのがこの上なく嬉しかった。 モンモランシーはそっとギーシュの横顔を覗き込む。そして、彼の耳元で、囁く。

「…私、守ってなんかもらわなくても、ギーシュがそばに」

よく見るとギーシュの鼻の穴が2倍ほどに膨らんでいた。 背中に密着した胸がやっぱりまずかったようである。

「モ、モンモランシィィィィィィィィ!ぼかぁ、ぼかぁもぉっ!」

器用に上と下を入れ替えて、ギーシュが上になる。 そのまま食虫植物のように伸びた唇がモンモランシーを襲い。 正気に戻ったモンモランシーの拳が、ギーシュを壁まで吹っ飛ばした。 この、せっかくいい雰囲気だったのにこのバカはっ! この二人が結ばれるには、もう少し時間がかかりそうである。〜fin

追記:モンモランシーに脅されて、ギーシュは合格を出したらしい。

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