※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

564 名前:220 1/3[sage] 投稿日:2007/04/08(日) 01:05:52 ID:SuOW14ld 「…ん」 目が覚めた。さっきまでの夢と現実の区別がつかなくなるような求愛が、過ぎ去った闇の静寂の中で。 夜の月は風流…なんて言うのはガラじゃない。ただ、差し込む光に自然と惹かれて、なんとなく夜風を浴びたくなった。熱くなり過ぎた頭を冷ましたい思いもある。 「…すー」 動くには、胸を枕にしている少女をどけなければならない。 こうなる事、今夜がどんな夜になるかを予想して、入念に洗っていた桃色の髪からは優しい香りが鼻をくすぐった。 寝息を立てている柔らかな唇も、規則正しく呼吸に合わせて上下する、将来は母になるであろう体も

全て自分が汚してしまった。望んだ事とはいえ痛い思いもさせ、涙を見てしまった。

その責任は、自分の一生で償うべきだ。 だから今朝は、愛しい者と共に祝福の道を歩んだのだ。 この世界の伝説、始祖の前でこれからもその者を守る事を誓って。

夢の世界から引き戻さない様注意して、体を引き抜く。一つのベッドに一緒に寝ているとは言え、貴族の寝床は二人でも大きい。床に着くのに距離がある程だ。

どうか起きないでくれよ…

自分が居なくなった後の空間に、冷たい空気が流れ込む。この冷たさが最愛の人の素肌に当たり、眠りを覚ます事だけは勘弁して欲しい。

「よっと…」 ベッドの横にある机には、使い慣れたズボンと下着が置いてあった。きれいに畳まれていた事に首を傾げたが、彼女を待つ間の、自分でも理解不能の行動で畳んでいたと思う。 上着はシャツ一枚だけ。春先の夜風は寒いかも知れないが、冷ますと言う目的にはちょうど良いだろう。 行く先は豪勢なベランダだが、目を惹かれるのはその先の景色にある。

566 名前:220[sage] 投稿日:2007/04/08(日) 01:07:29 ID:SuOW14ld 自分の身長を裕に越える窓、と言うよりベランダへの入り口を開けた。裸足にその床は冷たかったが構わず手すりまで進み、ひじで上半身を預ける。

白塗りの床は月光に照らされて青白い。いや、幻想的な変化を起こしているのはそればかりでは無かった。眼下に見える森も、遠くに見える山も、距離が圧倒的に違う筈なのに一様の変化だ。緑がさらに深くなり、碧とも翠とも全く違う緑を見せる。 むしろ蒼いのか?元々、緑の物が蒼く見える事は無いとは思うが、目の前に見えるのは蒼い夜の景色だった。 故郷と違うのは月光の光源が二つである事。この蒼さの中で唯一、「燦然と」輝いている。 夜の風は肌を少しだけ撫で、鼻と口を抜けて、最後にはこの体をすり抜けていくように、風を感じさせてくれた。 景色を楽しむ癖など無かったのに、何故かベッドに戻れなくなっている。妙な安心感を覚えて。

「なにしてんのよ?」 「…起きたのかよ」 「そんなに窓を開けっ放しにして、寒い思いをさせるとは思わなかったのかしら?」 ならそんな格好で出てくるな。と言いたい。彼女が来ているのは薄手の…下着同然の寝間着。確かに肌触りは良く、その愛らしさに虜にされたのは自分だが、実用性は無いだろう。

571 名前:220 3/3 [sage] 投稿日:2007/04/08(日) 01:16:29 ID:SuOW14ld 何しろ薄手過ぎて素肌を触っているのと殆ど差が無かったからだ。触れれば体温を感じる程に。

「お陰で目が覚めちゃったじゃない」 「悪かったな」 「もう!……まだ寝ないの?」 「…うん。もう少し…」 「そう…」 隣にやってきて、同じように月を眺める。どうやら一人で寝るつもりは無いらしい。桃色の髪からは、相変わらず優しい香りがした。

「風邪引くぞ」 「ありがと…」 肩を抱き、寄り添う。華奢な体を、いつまでも守りたい相手を、傍らに置いた。

「似合わないわよ」 「わかってるよ」 「…」 「…今日は可愛かったな」 「うるさいわね」 「それにすっげぇ綺麗だった。式の時も、さっきも」 「それがアンタのモノになってあげたんじゃない。素直に喜べないの?」 「喜んでるよ」 「足りないわよ。もっと…表現しなさいよ」 「はいはい」 「…さっき」 「うん?」 「さっき、風で目が覚めたのは嘘。隣にアンタが居ないって気づいたから」 「…そっか」 「今日はずっと抱きしめてて欲しかったの。アレしてる時も、寝る前も、目が覚めた時も、アンタが居るって…感じたかったのに…」 「ごめん」 「もう良いわ。今日はおめでたい日だから…じゃあ、先に寝るわね」 どこで彼女は傷つくかわからない。いつも彼女の事で頭を一杯にしていないと、彼女はすぐに離れてしまうだろう。 それだけやきもきさせて、すれ違って、ようやく手に入れた人だから。

「ルイズ」 「なに?」 「戻る。一緒に寝ようぜ」 「…うん。それと…」 「わかってるって。お前が寝るまでは起きてる。俺が寝てても離さねぇよ。ルイズ」 「…ま、まあわかってるならいいわよ。あなた…で良いのかしら?」 「…無理すんなよ?」 「わ、私もアンタのお嫁さんになったんだから、ちゃんしなくするわ…よ」

微笑んでしまう。嬉しくて。