ゼロの保管庫 別館

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だれでも歓迎! 編集

26 名前:痴女109号[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 06:34:26 ID:JoMLGd7c

「やめてくださいっ!! サイトさんのそんな言葉なんか、聞きたくありませんっ!!」

 シエスタが、血を吐くような叫び声を上げる。  しかし、その正面にたつ才人も、決して、平静を保っているわけではない。まるで悪い酒でも飲んだかのように、真っ青だ。  メイド姿の少女は、そんな少年に駆け寄り。必死に訴える。 ――いまの言葉は何かの間違いで、たちの悪い冗談だから気にしないでくれ。  そう言ってくれと彼にしがみつき、懸命に訴える。  しかし、才人が吐いた言葉は、やはりさっきと変わらなかった。

「俺は、やっぱりルイズを選ぶ。だからシエスタ……俺の事は、もう、諦めてくれ」

「いやです! いやですっ!! そんなっ、そんな事出来ませんっ!! いまさらサイトさんを諦めるなんて、そんなっ!! ――出来るわけないじゃありませんかっ!!」 「シエスタ」 「じゃあ、――じゃあ、わたし妥協しますっ! 一番でなくとも構いませんっ! 二番目でっ、愛人とか妾とか、浮気相手とかで構いませんっ! ですからそんな事っ!!」 「……」 「――そんなこといわないでください……!」

 才人のパーカーを、自分の涙で濡らしながら、彼女は、親に見捨てられそうな幼児のように駄々をこねる。  しかし、彼からすればやはり、 「シエスタ――」  駄々は駄々でしかなかった。 「分かってくれ、……もう、決めたんだ……!」

「いやあああああああ!!!!!」

 シエスタの発狂したかのような叫びが、その空間――格納庫――にとどろく。  常ならば、愛くるしさに満ち溢れているはずのシエスタの表情は、止めどなく流れる滂沱の涙に濡れながらも、その口元にはうっすらと笑みすら浮かんでいた。 ――無論、陽気な笑顔ではない。半ば狂気さえ含んだ、うつろな笑みである。

「シエスタ……!」  

27 名前:契約(その1)[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 06:37:59 ID:JoMLGd7c

 才人は、彼女の自分に対する想いが、ここまで深かったという事に驚くと同時に、そんなシエスタを悲しませ、絶望させているという現実に、身悶えするほどの自責の念が走る。

――しかし、だからこそケジメはつけなければならない。  何故なら、そんな彼女であればこそ、今までのように思わせぶりな態度で希望を抱かせる事こそ、シエスタにとって最も残酷な事だからだ。  実は、才人がこういう(以前の彼自身の優柔不断さから思えば、ほぼ考えられない)宣告をシエスタにしたのは、彼自身のとある環境の変化が背景になっている。

「――わたし、わたしやっぱりアレですか? もう、邪魔ですか? そうですよね? 貴族の御令嬢との間に御婚約が整えば、もうサイトさんは、平民のメイド風情がでしゃばっていい御身分じゃないですよね? そういう事なんですよね?」  シエスタの言葉が、彼の胸を刺す。

 そう、このたび才人とルイズ(というよりヴァリエール公爵家)との間に、正式に婚約が結ばれたのだ。  ヴァリエール家では、二人の予想通り、次女カトレア以外の全ての家族――文字通り末端の使用人に至るまで――轟々たる猛反発が巻き起こった。  なかでも家長たる公爵本人は、額から角でも生やさんばかりの勢いで激怒し、才人に対して刺客を送り込んだと言う噂まであったという。

――しかし、とにもかくにも、才人とルイズの奔走で、この婚約は成立した。  そして、形の上だけでも婚約が成立した以上は、才人としても、これまでのような、どっちつかずの状態を是正しなければならない。ルイズに対する誠意の話だけではない。さもなければ、そのネタを口実に、こんな婚約はあっという間に破棄されてしまうからだ。 

「シエスタ……ごめん。本当にごめん。でも、俺も本気なんだ。キミの好意はありがたいし、こんな事今さら言って何だが、それ以上に本当に申し訳ないと思ってる」  しかし、シエスタはもう才人を見てはいなかった。呆然とこっちを見てはいるが、涙が流れっ放しの瞳に力はなく、表情もうつろなままだ。未だに二本の足で立っているのが不思議なくらいである。 「……もう、いいんですサイトさん。しょせんわたしは、あなたに相応しくない女だったんです」  才人はもう、たまらなくなった。  こんな彼女を見るくらいなら、いっそ口汚く罵られた方がどれだけ楽か知れない。

「サイトさん」  妙に陽気な声でシエスタが呼ぶ。  顔をあげた才人はぎょっとした。

28 名前:契約(その1)[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 06:42:12 ID:JoMLGd7c

「大丈夫です、サイトさん。――わたし、サイトさんの足手まといにはなりませんから」  そこには、鈍く光る薪割り用のナタの刃を、自分の首筋に当てて微笑むメイド姿の少女がいた。 「ミス・ヴァリエールとお幸せに。――あ、でも、時々は」  シエスタはそこまで言うと言葉を切った。鼻をすすり、震える肩を静め、潤んだ目で才人を見つめ、言った。 ……時々は、私を思い出してくださいね、と。

「やめろぉぉぉ!!」

 思わず才人は駆け寄ろうとして、転んでしまう。  事態の余りの急転直下に、とっさに上半身と下半身のバランスが取れなかったのだ。  顔面を石畳に思い切りぶつけたが、痛がっているヒマなど無い。  彼はそのまま土下座の形で叫んだ。 「やめてくれ! やめてくれシエスタ!! 俺が悪かった。俺が悪かったから、そんな、そんな事はやめてくれっ!! お願いだ!!」  しかし、彼女は答えない。  さっきまでと変わらず、うつろな笑みを浮かべたまま、才人を見つめている。 「何でもするっ!! 君が望むことなら、俺は何でもするっ!! だから、頼むからもうやめてくれっ!!」

 才人がそう叫んだ時、初めてシエスタの瞳に光が宿った。

「何でも……していただけるんですか……?」

「え……?」 「わたしが望めば、何でもしていただけるんですか……?」  才人は答えられなかった。  というより、この期に及んで、彼女が何を言おうとしているのか、彼には分からなかったと言っていい。  そんな才人に、シエスタはたたみかける。

「今一度、確認させて頂きますわ」  一歩、二歩、三歩、……ゆっくり、ゆっくりとだが、シエスタが近付いてくる。無論、その細い首には、鈍く光るナタの刃が添えられている。 「わたしが望めば、サイトさんは何でもしていただけるんですね?」

29 名前:契約(その1)[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 06:44:36 ID:JoMLGd7c

「……俺にできる事なら」 「それはおかしいでしょう」  シエスタは言った。  サイトさんは今“何でも”と言いました。何でもと言うのは、文字通り何でもと言う意味のはずです。――彼女の目と、ナタの鈍い輝きがそう言っている。  その目を正視できずに、才人は思わずうなだれる。

「何を……すればいいんだ?」 「はい」

 シエスタはきびすを返すと、格納庫の、工具や酒ビンなどを置いてある一角から、一枚の羊皮紙と羽根ペンを取り出し、何事かをさらさらと書いた。 「これに、サイトさんのサインと血判を押して下さい」  それだけ言うと、膝をついてうなだれる彼の傍らに寄り、ペンと共にその書類を才人に差し出した。 「――これ、何て書いてあるんだ?」  しかし、シエスタは微笑むだけで答えない。  もっとも、その笑顔はさっきまでのうつろな笑みとは違い、妙に邪悪なオーラに包まれているように感じられた。

 才人には、このハルケギニアの文字が読めない。  彼に出来る書類仕事は、せいぜい自分の名を署名する事くらいである。  しかし、いくら何でも、内容のわからない書面に署名と血判を要求されて、ハイそうですねと従うほどバカではない。現代日本で育った彼は、紙切れ一枚の契約書が、文字通り人生を破壊しかねない悲劇を生むという事実を、骨の髄まで知っていたからだ。  しかし、もはや情況が情況だった。  彼女の言葉に従わずして、彼女を落ち着かせる方法を、いまの才人は知らなかった。  結局、彼は――従った。

「サインと血判、だな」  シエスタはそのままうなずいた。 「それをすれば、思いとどまってくれるんだな?」  シエスタが、やはり無言でうなずくのを見て、才人はペンを手に取った。    この時、彼がこの書面に書かれた内容を知っていたら、いくら何でも署名はしなかったであろう。何故ならこの書類は、才人が危惧を抱いた通り、いや、それ以上に彼の人生を破壊する結果となった、連帯保証人同意書にも等しい、そのものズバリの『死の契約』だったからだ。

31 名前:契約(その1)[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 06:46:26 ID:JoMLGd7c

「これで、いいのかシエスタ……?」

 たどたどしいハルケギニア共通語で自分の名を署名し、親指の皮を歯で噛み切ると、彼はそのまま血判を押した。  その紙面を再び手渡された時の彼女の表情には、もはやさっきまでの憂いは無かった。  悲嘆の涙はそのまま歓喜の涙へと変化し、まるで難産の末に産まれた自分の赤子を、初めてその手に抱く母親のような、そんな感動に満ち溢れていた。  シエスタは紙片を胸に抱き、言った。 「ありがとうございますっ!! ありがとうございますっ!! 大切にしますから! わたし、このサイトさんの書付、死んでも離しませんからっ!!」

「キミが喜んでくれたなら、何だか分からないけど、俺も嬉しいよ」  才人もようやく顔をほころばせた。 「で、さ。――念のために聞かせて欲しいんだけどさ、……それ、一体何が書いてあったの?」 「はい」  シエスタは、うっとりとした笑みを浮かべたまま、その紙面を読み上げた。

「サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガは、わたくしことシエスタに、病めるときも、健やかなるときも、死が二人を分かつまで、絶対の服従と永遠の忠誠を捧げる事を誓います」

 才人は、呆然と立ち尽くし、何も考える事が出来なかった。  そんな才人に、嬉しそうにシエスタが身を寄せてくる。

「さてサイトさん、それじゃあ早速、命令に従って頂きましょうか。手始めに、わたしのブーツにキスをして、忠誠と服従を誓っちゃってください」 「しっ、しえすた……?」 「あらかじめ言っときますけど、逃げたり逆らったりしたら、この書類をミス・ヴァリエールに届けますよ?」  と言い、サイトさんもご承知して下さってると思いますけど、 「わたし、こうと決めた事は、絶対にやり遂げるオンナですから」  そう、うそぶいた。

 小悪魔のような……いや、才人には文字通りその笑顔は、悪魔の笑みに見えた。

96 名前:契約(その2)[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 05:11:54 ID:nWfBNMRn

――ぴちゃ、ぺちゃ、くちゃ……。  深夜の格納庫に、淫らな水音が響き渡る。

「ぁぁぁぁ……サイトさん、気持ちいいですよ……」  椅子に座りながらうっとりと声を上げるメイド姿の少女。  彼女のロングスカートからは、輝くばかりに白い生足がニュッと突き出され、その踵(かかと)を、一人の少年がうやうやしく手に取り、足の指の股を一心不乱に舌で清めている。

 サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ……契約締結から三日後の姿であった。

「うふふふふ……さすがにサイトさん、なかなかお上手になられましたね。“お掃除”が」  シエスタは才人の頭を優しく撫でながら、やっぱり婚約者相手に毎晩実戦練習していらっしゃる方は、何事にも勘がいいですわ、と皮肉る。 「おっ、俺は、そんな事はしちゃいない――ぐぶるっ!」  真っ赤になって反論しようとした才人の口に、シエスタがそのまま、爪先を突っ込む。 「ぐっ、ぐぶぶぶ!!」  そのまま彼女は、才人の口の中で足の指をうごめかし、ついには足の親指と人差し指で、彼の舌をつまみあげた。 「〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!!!!!」

「誰が勝手に意見をしていいと言いましたか? あなたは黙ってわたしの言う事に従っていればいいんですっ!!」  さっきまでの気持ちよさげな表情から一転、鬼のような形相に変化し、シエスタはそのまま、才人の顔面を蹴り飛ばす。 「っっ!」  目から火花が散るような激痛を覚え、思わず才人は険しい目でシエスタを睨み上げるが、 「何かおっしゃりたいのですか……!?」

 逆光の中、目だけを異様に光らせ、仁王立ちに自分を見下ろすメイドの迫力に、思わず彼は目を逸らしてしまう。

97 名前:契約(その2)[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 05:13:40 ID:nWfBNMRn

――悪いのは俺だ。 ――シエスタがここまで理不尽で非常識な行為に走る原因を作ったのは、他でもない。この俺が彼女とルイズとの間を都合よく往復し、どっちつかずな態度を取り続けてきた結果なんだ――。

 そういう罪悪感が、才人を縛り付ける。  無論、先日わけも分からずサインさせられた契約書の事もある。  しかし、現在の才人にとってはその書付けがルイズに露見する恐怖よりも、自分自身の罪の意識のためにシエスタには逆らえない、逆らおうという気が起こらない、と言った方が近いであろう。  そしてシエスタ自身も、彼が抱くそういう罪悪感に当然気付いている。  その証拠に――。

「勘違いなさらないで下さいねサイトさん。貴方は当然償うべき罰を受けているだけなんですよ。だって、そうでしょう? 貴方は、わたしの気持ちを裏切ったんですよ? それも、それも……貴族の爵位なんかにホイホイ釣られてっっ!!」

『裏切った』という言葉で、彼女は才人の心を刺激する。  確かにそうだろう。シエスタから見れば、そう解釈されても仕方がない。  しかし、今さら百万言を費やして説明したところで、シエスタは決して納得しないであろう。  何故なら、それを理解させるためには、才人の心は最初からルイズにのみ向いており、シエスタやアンリエッタに向けた笑顔は、単なる“よそ見”でしかなかった事を語らねばならず、そうなれば彼女は必ず三日前のように、死を選ぶであろうからだ。

 契約書がルイズの目に晒されるのは怖い。想像しただけでゾッとする。  しかし、それ以上に才人が恐ろしいのは、自分が原因となって人を死に追いやる事だ。  そんな事態に比べたら、たかだかシエスタの罵倒を浴びるくらい、彼にとっては何でもない事だった。

98 名前:契約(その2)[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 05:15:34 ID:nWfBNMRn

 難航中だった二人の婚約が大きく前進したきっかけは、ルイズが女性の身でありながら爵位を叙勲され、ラ・ヴァリエール公爵家より新たに分家を立て、“虚無”の血統を後世に残するべし、という勅命を受けたからだ。 “虚無”の血を残す、ということになれば、当然ルイズの相手はそこらの門閥貴族の出る幕はない。同じく“虚無”の名を冠し、同じ戦場を共に駆けた大戦の英雄、すなわちサイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ以外に適任者はいない……。

――というのが、実は才人が考え出した二人の結婚のための最終プランだったのだ。

 例え才人がシュヴァリエの称号を手にしたところで、ラ・ヴァリエール公爵が、可愛い末娘を素姓も知れぬ平民上がりに降嫁させるとは、才人は到底考えてはいなかった。(その点ルイズは、少しは期待していたようだったが……)  何故なら、中世貴族にとって婚儀とは、本人同士の情愛の結果ではなく、何より家門同士の結びつきを強調するためのイベントに過ぎないからだ。生まれながらのハルケギニア人ではない才人だからこそ、今ではそれがはっきりと分かる。 ――封建社会における身分の壁とは、それほどに分厚いものであり、特権階級の者たちが自らその壁を崩す例は、絶無に等しいという事が。  つまり公爵にとっては、どうしても才人をルイズと添わせなければならない確たる理由がない限り、二人の結婚を許す事はあり得ない……。

 と、そういう戦略に基づき、才人とルイズの奔走が再開された。  幸い彼らは、この国の最高主権者アンリエッタ女王陛下と旧知の仲であり、先の大戦に於いて築いた軍の高官たちとのコネなどもフルに利用し、最終的に勅命という形で、ルイズの父親に無理やり婚約を承認させた。 “虚無の使い魔”ガンダールヴは、武のみならず政略に関しても能あるところを見せたのである。

 しかし、二人のこの政治的奔走は、可能な限り秘密裏に行われたため、トリステイン魔法学院に事情を知るものは誰もいなかった。つまり、キュルケやタバサやモンモランシーたちにとって、この婚約発表は全く寝耳に水であったのだ。それはシエスタも同じであった。  つまり彼女からすれば、今まで中立(?)を保っていた才人が、勅命によって、ある日いきなりルイズの婚約者になってしまったように見えたのだ。しかも、アンリエッタに文句一つ言いに行くでもなく、唯々諾々と(むしろ嬉しげに)従っている……。    許せなかった。  ルイズも、アンリエッタも許しがたいが、それ以上に彼女は才人が許せなかった。

 さいわいルイズは爵位の叙勲式の打ち合わせで、いま王宮に出かけている。さらにその後、やはり関係書類の問題などで帰省せねばならず、つまり一週間は学院に帰ってこない。 (ならば、その一週間で、サイトさんをムチャクチャにしてやる。あくまで抵抗するようなら、眼前で手首でも切って、一生後悔させてやるんだからっ)  と、シエスタは思った。  もはや、彼女に行動をためらわせるものは、何一つなかった。  

99 名前:契約(その2)[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 05:17:22 ID:nWfBNMRn

(裏切り、か……。やっぱ、そう見えるよな)

 その瞬間、うなだれる才人の股間に激痛が走った。 「ぅぐっ!!」  才人の唾液に濡れそぼったシエスタの生足が、そのまま彼の急所に体重をかけてきたのだ。

「あら、どうなすったんですのサイトさん?」 「っっっ! ぁしを……足を……のけて……ひふぅっっ……!!」 「ごめんなさい、聞き取れませんでしたわ。もう一度ハッキリとおっしゃって下さいます?」  そう言いながらシエスタは指を使い始める。 「ぁぁぁぁ……のけてっ! ぁしを、のけ……あああああっ!!」 「んふふふ……そんなに足を乗っけて欲しいのですか、サイトさん?」 「ちっ、ちが……どけて……あああああ!!」 「やっぱり分かりませんわ。男らしくハッキリおっしゃって下さらないと」  いかにも残念そうにシエスタは呟く。  しかし、その口調とは裏腹に、シエスタの足の指は、まさしく芸術的な機動性を発揮し、Gパンの分厚い生地の上から、彼のペニスを確実に刺激していった。

「しえすた……ああああ……しえすたぁぁぁ……!!」 「サイトさん、分かっているとは思いますが――」  シエスタは言った。 「女の子に踏まれて興奮するような変態には、お仕置きですよ?」 「えっ!?」

 ハッキリ言ってそれは反則だった。  何故なら、シエスタが“興奮したら”という条件付けをした時にはすでに、 「つまり、決定ですね。サイトさんのお仕置きは……!!」  才人のペニスは、彼女の執拗な足コキによって勃起していたのだから。 「ズボンとパンツを脱いで、壁に手を突いて立って下さい」

100 名前:契約(その2)[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 05:19:25 ID:nWfBNMRn

 ばっし〜〜〜んっ。しこしこしこしこしこ……。 「にじゅういちっ!!」  ばっし〜〜〜んっ。しこしこしこしこしこ……。 「にじゅうにっ!!」  ばっし〜〜〜んっ。しこしこしこしこしこ……。 「にじゅうさんっ!! ほぉら背筋しゃんと伸ばしてっ! 猫背になってますよっ!!」 「……ぇすた……、ぐうっ!! ……しえ、すたぁぁ……」 「どうしましたサイトさん?」

 両手の動きを止め、うつむく才人を覗き込むシエスタ。  格納庫の壁に手を突いて歯を食いしばり、必死にスパンキングの痛みをこらえる才人。  ただ痛いだけのお仕置きではない。  右手で才人の尻を叩くシエスタは、同時に左手にたっぷりと蜂蜜を垂らして擬似ローションとし、激痛以上の快感を、そのローション手コキによって与えている。 ――彼女の愛読書『バタフライ伯爵夫人の優雅な一日』から学習したテクニックだ。  これをすると、真っ赤に腫れ上がったお尻と、快感でびんびんになったペニス、さらには射精をこらえる才人の表情と、3種類の『赤』を同時に鑑賞する事が出来る。 ……シエスタはこのお仕置きが大好きだった。

「……今日は……多いよぉ……」 「多い?」 「だって、いつもは――20回で終わりなのに……」    ばっし〜〜〜んっ。

「はぐうっ!!」  シエスタは言った。 「甘いですよ、サイトさん」  スパンキングと同時に、手コキも再開される。

 ばっし〜〜〜ん。しこしこしこしこしこ……。

「昨日、おととい20発だったからって、今日もそうとは限らないでしょ?」 「そっ、……んな……ぁぁぁぁ……いぎっ!……」 「と言うか、今日は回数無制限で行きます。わたしの手がくたびれるか、もしくは」

 ばっし〜〜〜ん。しこしこしこしこしこ……。

「サイトさんが泣くまで、ぶつのをやめません」

212 名前:痴女109号[sage] 投稿日:2007/05/07(月) 20:16:06 ID:RlaksQe3

「つまり、騎兵の特質とは、騎馬による機動力をフルに活用し、大迂回をしつつも敵陣の側面・または後背などの最ももろい面を奇襲し、本隊の攻撃を容易せしめる事にある」

――奇襲、と聞いた瞬間に、講義を聞く生徒たちの表情が曇った。 「つまり先生、不意打ちということですか?」 「それって、卑怯じゃないですか」 「貴公らはバカか? それとも私の話を真面目に聞いていないのか?」  アニエスはやれやれという表情で言い放った。

……はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……あと、何分だ……?

 ここはトリステイン魔法学院の一室。  水精霊騎士隊・通称オンディーヌの構成員は、全員この学院の学生であるため、王都にある士官学校に正式に通学する事は難しく、そのため、彼らには課外授業という形で、魔法の授業のかたわら、非常勤講師が学科や教練の指導に来るのである。  銃士隊長アニエスは、その主席講師に任命され、(本人はいやいやながらも)週二回、きっちり出来の悪い貴族のガキどもを怒鳴りつけに来る。  なんのかんのと、彼女は面倒見のいい女性だった。

……はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……おっ、おなかが、苦しい……。

「単なる騎士なら、大声上げて敵に飛び込めばそれで済む。それが奴らの仕事だからな。しかし、私がここでテーマとして取り上げているのは、単なる騎士ごときではない。“騎兵”だ。騎士と騎兵とでは、その役割は大きく違う」  アニエスは、その教鞭をぴしりと鳴らし、 「騎兵とは、最も速度を要求される兵種であるため、きらびやかな甲冑も重い馬鎧も着けず、また騎馬のみの行軍であるため、私兵を歩卒として従軍させる事も無い。そして敵陣の後背を突くといったところで、当然そこが無防備である可能性は薄い」  分かるか? つまり奇襲と言えば聞こえは悪いが、とアニエスは一声いれると、 「要するに、最も高度な馬術と、最も薄い装備で敵陣を確実に打ち崩す攻撃力、そして勇敢さが要求される兵種なのだ。――この戦術を自在に活用できれば、百戦百勝も夢ではない」  アニエスは興奮気味にドン、と教卓を叩きながら言う。  そんな彼女の迫力に、教室に居並ぶ騎士隊の小僧どもは声もない。

……はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、やべえ……もう、授業どころじゃ……!!

213 名前:契約(その3)[sage] 投稿日:2007/05/07(月) 20:18:44 ID:RlaksQe3

「でも、先生」  おずおずとギーシュが手を挙げる。 「さっきの質問の答えになってません」

――あ? という表情で睨み返すアニエス。 「卑怯はやっぱり……卑怯じゃないでしょうか?」 「まだ分からんのかっ!! 戦場は遊び場ではない。騙し騙されの駆け引きこそが、勝負の趨勢をきめるのだっ!!」  ギーシュ・ド・グラモンっ、とアニエスは叫ぶように彼を呼ぶと、 「貴様、仮にもグラモン元帥の一門であろうが! 正々堂々と正面からの会戦にこだわるなど、敵の十倍の兵力を以て初めてほざける事と何故気付かんっ――って、ゴラァッ!!」

 その瞬間、反射的に頭をすくめた才人の髪ギリギリを、アニエスの教鞭がうなりをあげて通過する。

――危なかった。  ホッとしつつ顔を上げた才人を待っていたのは、怒りで真っ赤になったアニエスの瞳だった。  銃士隊隊長ともあろう剣の使い手が、説教途中に思わず晒したブザマに、教室のあちこちから失笑の声が洩れ、それがさらに彼女の怒りに油を注ぐ。

「ボっとしてた割りには御機嫌にかわしてくれたなサイト。私の授業はそんなに退屈か?」  退屈だなんてとんでもない。ただ集中できない事情があるだけだ。  しかし才人にとっての不幸は、その事情を納得いくように話せる者が、この世に一人もいないことだった。

 荒廃した平成日本の教育現場とは違い、ハルケギニアには教育委員会もPTAもない。  つまり、基本的に体罰オールOKのこの世界で、教室に於いて先生を怒らせるという事は……。 「左右の者、サイトの両脇を固めて立たせろ」  アニエスは教鞭を置くと、ぽきぽきと指を鳴らし、往復ビンタをきっちり4往復いれると、そこで終業のチャイムが鳴った。 「運が悪かったなサイト。チャイムが鳴るのがもう少し早かったら、お仕置きは次の授業に持ち越しになっていただろうにな?」  アニエスがにやりと笑う。   ――持ち越しになっただけじゃ、結局ぶたれる事に変わりは無いじゃないか。  そんな発言をする勇者は、当然この教室には誰もいなかった。

214 名前:契約(その3)[sage] 投稿日:2007/05/07(月) 20:21:48 ID:RlaksQe3

 こんこん。 「サイトさんですか?」

――はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……。

 ドアを開ける。  そこには彼女がいた。  才人とルイズの二人が共に安眠を得る、豪奢な寝台。  そこには、漆黒のメイド服と純白のエプロンドレスを着込み、無造作に横たわる少女。

「そろそろお越しになられる頃だと思ってましたよ」。

――はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……。

「し、しえすたぁ……、はやく……はやく……」  扉を閉め、倒れこむようにベッドにすがりつく才人。 「はやく、これを……取ってくれよぉ……!」  そんな才人を心の底から慈しむような表情で見つめながら、 「これ? これって何です?」  彼女は、たまらなく残忍な言葉を吐く。

「何って……しえすたぁ……!」 「いつも申し上げているでしょう? 言いたい事があるなら、男らしくハッキリおっしゃって下さいと」 「……っっ!」  才人は、アニエスの往復ビンタで真っ赤に腫らした顔を、さらに屈辱で赤く染め、口を開く。

「おっ、俺の貞操帯をはずして、……お尻に入ってるものを……取ってくれ、シエスタ」 「ふふふふふふ……、はい、よく言えました」

 クスリと笑うと、シエスタはポケットから鍵束を取り出した。  才人は、そんな彼女を前にしてベルトを緩め、恥らうように鈍く輝く鉄のパンツをさらけ出した。 ――貞操帯。メイドとしてトリスタニア市街へ買出しに行った時、シエスタが密かに購入したものである。  無論、彼女が買い求めたのはそれだけではない。その他種々の性具や衣装、薬品の類いも彼女は抜け目なく購入しており、その予算は全て才人のサイフからまかなわれた。

「当然でしょう? これらの品々はみな、サイトさんを気持ちよくするために使われるのですよ?」  昂然と言い切るシエスタに、才人は何も言い返せなかった。

215 名前:契約(その3)[sage] 投稿日:2007/05/07(月) 20:23:59 ID:RlaksQe3

「それにしてもサイトさん、そのお顔どうなさったんです?」 「アニエスさんに……ぶたれたんだよ。授業中にボケっとすんなって」  へえ、それはとんだ災難でしたね、と楽しそうに笑いながら、シエスタは貞操帯のロックを外す。  さすがに彼も、そのくすくす笑いにカチンと来たらしい。 「災難もクソも無いよっ、ケツにこんなもん仕込まれて、集中できるわけ無いだろっ!!」  思わず声を荒げるが、そんな彼の姿に威厳は皆無であった。  ベッドに手をつき、メイドに尻を差し出す少年。――しかも、その肛門からは小さなリングまで見えているのだから。

「あらあら、申し訳ございません。わたしとしましてはただ――」  彼女の細い指が菊門に吸い込まれると、やがてリングの先の糸から直径1・5センチほどの黒い球体が姿を見せた。 「サイトさんに気持ちよくなって頂きたいだけですのに」

「――ぐぅっ!」  一つ、二つ、三つ、……。  白魚のようなメイドの指先によって、次々と才人の臀部から黒球が産み出されてゆく。

「はぁぁぁぁっっ!! ごっ、ごりごりするよぉっ!!」  才人が尻を震わせ、懸命に刺激をこらえている。 「サイトさん、分かっておられるとは思いますが、今はまだお日様が出ている時間です。あまり大きな声を出されると、誰に聞かれるか分かりませんよ」  シエスタが、才人の耳朶を甘噛みしながら、囁きかける。 「でっ、でも……くうう……!」 「んふふふふ……我慢なさい。男の子でしょう?」

――はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……。

 しかし、過度の快感の前には老若男女の差は無意味だ。  才人はもう全身に力が入らず、無様にベッドにしがみつき、震えながら尻をかかげる事しか出来ない。

216 名前:契約(その3)[sage] 投稿日:2007/05/07(月) 20:26:07 ID:RlaksQe3

 シエスタは、ベッドの上に乗って彼の側面にポジションをずらすと、そのまま右手でアナルビーズを引き抜きながら、左手をパーカーの下に潜り込ませてきた。 「しっ、しえすっ!?」  シエスタの指が才人の胸部を這い回る。 「っっっ!!」  思わず才人が息を呑んだ瞬間、彼女の舌が猛烈な勢いで彼の唇に侵入してきた。 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!」

 ぴちゃ、くちゃ、ぺちゃ……。  流し込まれるシエスタの唾液が、才人の僅かに残る理性をどろどろに溶かしてゆく。  無論その間も、彼女による他の器官への攻撃は続いている。  右手の指は、さっきまで引き抜かれつつあったアナルパールを、新たに彼の菊門へ埋め込みつつ、左手の指は、びんびんに堅くなった彼の乳首を弾きまわし、才人の身体に電流を送り込み続けている。

――くちゅ……。  たっぷり1分は続いたディープキスが、互いの唇の間に白い糸を引きながら終焉を告げる。 「サイトさん、気持ちいいですか?」  才人は答えない。  答えられない。  焦点の定まらない目で、自分を見下ろす少女を呆然と見返し、こくんと頷く。

「なら、……もっともっと気持ちよくして差し上げます」  そう言うが早いか、シエスタは、さっき再び彼のアナルに埋め込んだアナルパールを一気に引き抜いた。

「っっっっっ!!!!!!!!」

 才人はもはや、声すらあげられなかった。

「じゃあサイトさん。これから、貴方の一番気持ちいいところを可愛がってあげますね」  そう言いながら彼女は、才人の剥き出しになったペニスを、そろりと撫で上げた。

484 名前:痴女109号[sage] 投稿日:2007/05/17(木) 06:57:33 ID:NsYJzJhi

 その日、タバサは授業に出なかった。  彼女にしては、これは珍しい事と言わねばならない。  ガリアからの指令があれば、魔法学院の授業はおろか、あらゆるプライベートを省みずに任務に勤しむ彼女であったが、逆に言えば、そう言った任務以外の理由で授業をサボった事は無い。本来、彼女は根が真面目だった。

 原因は分かっている。  昨日見た、あの風景。  あの時、タバサのまぶたに焼きついたあの荘厳なる絵画の如き、淫猥な眺め。  その焼きついた淫画を、あらためて、ぼんやりと思い出す。

(あれが、いやらしい、という事なんだ……)

 男女の間には、そういった事がある、というのは知っている。  男女の間では、そういった事をする、というのも知っている。  その行為の果てに、人は子を産み、育て、死んでいくのだという事も。

 しかし、それはタバサにとっては、天の果てに極楽があり地の底に地獄がある、という教えと同じくらい概念的で、実感の湧かない抽象的な知識だった。  かつてシャルロットという名で、ガリアの宮中にいた頃。さらには故国を追われ、タバサという名を名乗り、血のにじむような魔法の修行に励んでいた頃。――彼女に、そんな当たり前の性教育を施してくれる者は、誰もいなかったのだから。

 もっとも、単に当たり前の性知識だけしか知らぬ者なら、その光景を見て、彼らが何をしているのかも、見当がつきかねたに違いない。  タバサとて、その博覧強記とも言えるほどの読書量と、いつもキュルケが話す、ほぼワイ談交じりの恋愛話を――半ば流しつつであっても――聞いていなければ、彼らが何をしていたか理解は出来なかったに違いない。  それほどまでに、あの二人が繰り広げていた痴態は、タバサの常識に当てはまらないものだった。    むくり。  体を起こしてみる。 ――重い。  昨夜の疲れが、まだ綿のように残っている。  気付けば、全身汗まみれだ。 (シャワー、浴びなきゃ)  のろのろと、着替えを取ろうとして、その時初めて彼女は、自分が全裸であった事を思い出す。  そして、その恥じらいと共に、昨夜の自分の痴態をも。

485 名前:契約(その4)[sage] 投稿日:2007/05/17(木) 07:00:49 ID:NsYJzJhi

(熱い……!)  昨夜、タバサは熱にうなされていた。  尋常の投薬、治癒呪文では決して癒される事の無い高熱に。  熱を持っているのは心だけではない。むしろ肉体だ。――いや、集約すれば、肉体の一部分だ。そこから発生した膨大な熱が、放射状にタバサの全身を冒している。まるで悪性の疫病か何かのように。

 タバサはそっと、その器官――股間に指を下ろす。  触れるか、触れないか、それこそギリギリのタッチで。

――くちゅり。 「くうううううっっっ!!!!」  湿った音と共に、全身に十数回目かの電流が走る。  はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……!!

――気持ちいい。  人間の体というものが、こんな感覚を発生させる機能を持っているということを、彼女はこの夜初めて知ったのだ。かつて読破した、どんな論文にも古文書にも研究資料にも記載されていなかった、禁断の知識。

 すなわち、自慰行為。

 膣孔も乳首も肉芽も、いや、その指、掌が触れるところは全て快感の電流が走り、こすり合わせる太腿さえも、たまらぬ陶酔感を彼女に与えてくれた。  昨夜からほぼ夜明けまで、タバサはこの一人遊びに没頭し、いつ眠ったのかも気がつかずに目覚めたのち、彼女はその生涯で初めて、朝寝坊という行為をしてしまった事を知った。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

 熱い湯が、きめの細かいタバサの肌を流してゆく。  昨夜来の汗の脂が、みるみるうちに清められてゆく。  自慰の快感とは、また別種の心地よさがタバサの身体を支配していた。

(サイト……)  意識がハッキリするにつれて、昨日の一件がまた、彼女の脳裡を占めてゆく。

486 名前:契約(その4)[sage] 投稿日:2007/05/17(木) 07:02:42 ID:NsYJzJhi

「ああああああっ!! やめっ!! やめっ!! はぁぁぁっっっ!!」 「んふふふふ……違うでしょう? 『気持ちいいです。もっとして下さい、お姉様』でしょう?」 「はっ、はひぃっ! ひっ、ひもひ、いいれしゅうぅ……!」 「だめでしょう、ちゃんと言われた通りに言いなさいっ!」

 ここは、風の塔の一室。窓から彼女たちを照らすのは、太陽ほどにまぶしい二つの月光。  そのスポットライトのなかで、二人のメイドが、互いに荒い息を吐いて身体を重ねあっていた。  一人のメイドが、犬のように四つん這いになり、もう一人のメイドがその背後から、彼女に何かをしているようだった。

 最初、タバサは彼女らが一体何をしているのか、分からなかった。 ――というのは、嘘に近い。

 確かに何をしているのかは分からなかった。  しかし、その二人が発散する“淫気”は、性行為に関しては非常に幼い知識すら持たないタバサにすら一目瞭然なほど、露骨なものだった。

(これって……えっち、なの……?)

 キュルケから聞いていたのとは違う。  小説で呼んだものとも違う。  男子生徒が昼休みに話しているのを、何となく聞いた行為とも違う。  そもそも、性行為とは、男と女がするものであって、眼前のメイドたちのように女同士でするものではない。  でも、これは――いや、これこそが“えっち”なのだ。

 タバサは、胃液が逆流するような不快感を覚えた。  同性愛に対する嫌悪感もあった。  それ以上に、人としての矜持を捨て、獣のようにまぐわう彼女たちの“淫気”に、たまらない『だらしなさ』をおぼえたのだ。  その『だらしなさ』は、年齢相応に潔癖なタバサという少女が、最も嫌悪してやまない要素であった。

 そう思った瞬間には、目を逸らしていた。  目を逸らした瞬間には、きびすを返していた。  もともと、この塔にも特別な用があって来たわけではない。  ただ、この塔の、この一室から見える二つの満月が、彼女は好きなだけなのだ。  タバサは、彼女たち二人によって、宙空の双月すらも汚されたような気がした。  その声が、彼女の耳に届くまでは。

「しえす……しえすたぁぁぁ……!! あああああ……!!」 「違いますっ!! 何度言ったら分かるんですサイトさんっ!! わたしの事は『お姉様』って呼びなさいって、言ってあるでしょうっ!!」

 タバサは凍りついた。

487 名前:契約(その4)[sage] 投稿日:2007/05/17(木) 07:05:44 ID:NsYJzJhi

――ぱぁんっ!!

 掌が、何かを平手打ちする音が聞こえた。ついでに、泥の中から何かを引っこ抜くような音も。

「ひっっ!! おっ、おねえさまぁっ!! やめないでっ やめないで続けてくださいっ!!」 「続ける……? 何を続けて欲しいんですか?」 「〜〜〜〜っっっ ひっ、ひじわるいわないれぇぇ」 「ですから、ちゃんと言いなさい。な・に・を・続けて欲しいんですか?」 「おっ、おれの……おしりマンコを……おっ、おかしてくらさいっ!!」

 タバサは信じたくなかった。  これ以上見たくも無かったし、聞きたくも無かった。  でも、やはり彼女の理性は、眼前で行われている、とてもとても淫らな二人の正体を確認せざるを得なかった。  タバサは、そのバラの花びらのような唇で素早くルーンを唱える。  と、同時に、彼女の小柄な身体は、かき消すようにその場から消えてしまった。

 ステルス。――空気の屈折率を変化させて、自分の姿を透明にする呪文。  トライアングル・メイジであるタバサにとっては、そう難しい呪文ではない。  そのまま足音を消し、呼吸を殺し、彼女たちが最も欲見える場所……部屋の中央まで移動する。

「おれ? おれって誰です? あなたは今の自分の立場が、まだ分からないんですか!?」  そう言いながらメイド――シエスタは、四つん這いになったもう一人のメイドのスカートをめくり上げ、そこから見える剥き出しのお尻に、強烈な平手打ちを食らわしている。

488 名前:契約(その4)[sage] 投稿日:2007/05/17(木) 07:07:23 ID:NsYJzJhi

 ぱぁん! 「ひぎぃっ!!」 「“あたし”でしょ、サイトさん?」  ぱぁん! 「ったぁぃっ!!」 「自分の事は“あたし”って呼ぶ。そう決めたでしょっ!」  ぱぁん! 「はっ、はひっ!!」 「わかったんですか? 本当に理解したんですか? 一体何回言わせれば気が済むんですかっ!!」  ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん!! 「しゅいましぇん! しゅいましぇん!! ぁぁぁぁぁ!!!!」

――サイト……!!

 そこにいたのは、紛れも無い才人その人だった。  メイドの扮装に身を包み、ウィッグとカチューシャまで装着したその姿は、ぱっと見には女の子にしか見えないけど、それでも、確かに才人であった。

(何で……何でこんな……!?)

 タバサが知る才人は、この世に於ける彼女の唯一の“勇者”であった。

 かつて彼女は才人に命を救われた。  それだけではない。  囚われの身であった母すらも、彼は命がけで救ってくれた。それも、平民の身でありながら、せっかく叙勲されたシュヴァリエの称号すら投げ捨てて。  だからタバサはこの少年に、命すらも捧げる、そう言い切る事が出来たのだ。

 お前は才人が好きなのか?   そう問われれば、彼女は赤面して、ただ返答に困るしかないだろう。  なぜなら、男性としての才人は、すでに自分の手の届くところにはいないのだから。  彼は元来ルイズの召喚した使い魔であり、理解者であり、戦友であり、そして恋人であり、現段階では婚約者ですらあった。  この二人の間に、割って入ることは不可能だ。  タバサはそう思っていた。  それでいい、そうでなければならない。そう思おうとしていた。

489 名前:契約(その4)[sage] 投稿日:2007/05/17(木) 07:09:37 ID:NsYJzJhi

 しかし……。

「“あたし”はぁ……“あたし”はぁ……」 「“あたし”は? サイトさんは一体誰なんですか?」 「“あたし”は、……シッ、シエスタお姉様の、いもうとの……ドジでエッチな……どっ、どうしようもない淫乱メイドですっ!!」

 しかし……。

「んふふふふっ……。よく出来ました。ご褒美は何がいいですか?」 「……ああああ、シエスタお姉様の、堅くて太いのを、……“あたし”のおしりマンコにぶちこんでくださいっ!!」

 しかし……何故、こうも彼らが美しく見える!?  タバサは、もはや叫びだしたくなる自分を抑えるのに、必死だった。

「ええ、どうぞ……ゆっくり味わってくださいね」  物凄い顔で微笑んだシエスタが、自らのスカートを捲り上げた時、そこには本来、女性にはあるはずのない器官が、タバサには見えた。  黒く、太く、逞しい、見事なペニス。  恐らく才人自身のイチモツよりも更に、立派なサイズであるに違いない。無論そんな事まで、今のタバサには分かるはずも無いが。  その雄渾なるディルドゥーが、彼のアナルに吸い込まれてゆく。  ゆっくり、ゆっくり。しかし、その動きはむしろスムースで、無理やり捻じ込んでいるようには全く見えなかった。 「ああああああああ……おねえさま……いいいい、れしゅぅぅぅ……」

 しかし、タバサにも分かる事があった。  さっきまで彼女自身を包んでいた、身の毛もよだつような嫌悪感が、いまや雲散霧消してしまっているという事だ。  その理由すらもタバサには分かっている。  ほんの数瞬前まで、才人への想いを無意識に封印しようとしていた自分自身に対し、その行為が何の意味も持たないナルシシズムである、と彼女は気がついたのだ。  逆に言えば、今この瞬間にタバサは、自身の才人への慕情に気付き、それを認め、その上で、開き直る覚悟を決めたのである。

――私は、サイトを奪う。このメイドからも。そして勿論、ルイズからも。

490 名前:契約(その4)[sage] 投稿日:2007/05/17(木) 07:11:45 ID:NsYJzJhi

 一体その考えの何が悪いというのだ。  現に、ルイズの居ぬ間に蹂躙されているサイトの、この美しさはどうだ?  タバサは、今まで才人という少年を、自分が全く理解していなかった事を、つくづく思い知らされた。

 彼は、略奪されるべき存在なのだ。  他者から虐待され、蹂躙され、屈服させられる瞬間、その瞬間こそ、このサイト・ド・シュヴァリエ・ヒラガという少年は、最大限の魅力を発揮するのだ。

 その後、シエスタというメイドは、四つん這いになった才人のペニスをしごきつつ、気が済むまで彼の尻を掘りまくると、スペルマまみれのメイド服に身を包み、精根尽き果てた才人に水をぶっ掛け、去っていった。  才人も、ずぶ濡れのまま、よろよろと立ち上がると、そのまま塔から姿を消した。  タバサが、ステルスの呪文を解除したのは、それからだった。  それから彼女は自室に帰り、一晩中、狂ったようにオナニーに励む事となる……。

 きゅっ。  シャワーの蛇口を閉めると、彼女は大浴場から出て、身体を拭く。  拭きながら考える。  才人を手中に収める方法を。  才人を服従させる方法を。 (そもそも、何故サイトは、あのメイドに逆らえないのか)  ならば、才人本人よりも、メイドに直接当たるべきかも知れない。  ルイズが帰ってくるのは、もう明日だ。  なら、万一、手間取ったら命取りだ。

 そこまで、思案した時、彼女はすでに制服を着終えていた。  きゅっ、とマントを引き締める。  眼鏡をかける。

――この際、メイドと協同戦線を張るのもアリかも知れない。

 眼鏡を中指で、くいっと持ち上げる。  そのレンズの奥で、タバサの碧眼が妖しく輝いた。

637 名前:痴女109号[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 05:20:17 ID:YGULRSV0

 こんこん。

 シエスタが部屋をノックする。 「ミス・タバサ、お食事をお持ちいたしました」 「入って」  扉の奥から声が聞こえる。  ドア越しだけに、か細く、小さいけれど、はっきりとした意思を感じさせる声。 (ご病気だと聞いたけれど……案外具合はいいのかも)

「それでは失礼致します」  シエスタは扉を開けると、キチンと礼をし、室内に入る。  そこに、いつもルイズにしているような反抗的な態度はカケラも見受けられない。

 と言うより、本来シエスタにとっては、むしろ生徒や教師一人一人に対し、こういう所作をとる事こそ自然なのだ。彼女はあくまで、この学院における使用人であり、家政婦であり、一人の平民に過ぎないのだから。

 才人がハルケギニアに出現して以降、シエスタは驚くほど自分が変わったと思う。  まず、第一にメイジが怖くなくなった。  これまで彼女たちにとってメイジとは、自分たち平民にとって生殺与奪の権を握る、文字通り“怒らせれば命は無い”というほどの対象であった。  しかし、才人を通じてシエスタは、彼ら貴族もまた人間でしかない事を知った。  そして、この学院のメイジたちも同様に、才人によって、平民たちもまた人間であるという事実を知ったのだ。

 結構以前までは、本音はともかく、この学院で才人の事を堂々と、 ――平民め!  と、口に出して誹謗できるもの、もうあまりいなくなっていた。 (俺をそしれる資格のある者は、俺以上のことが出来るやつだけだ)  才人のその、あけっぴろげな笑顔の裏にある自信は、この学院の全ての見習いメイジたちも、無言で認めざるを得ないものがあったのだから。

 もっとも、ルイズが卒業すると同時に才人が彼女をめとり、新たに領地と官位まで下賜される、という事実が発覚した現在では、そうはいかない。  いまや彼は、この学院における嫉妬と羨望の眼差しを一身に受ける存在であった。  無論、そんな風当たりなど、才人にとっては風馬牛といった感じではあったが。

 しかしその中で、才人にではなくルイズに嫉妬する者がいる事を、……自分以外にそんな者が存在している事実を、うかつにもシエスタは知らなかった。

638 名前:契約(その5)[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 05:21:47 ID:YGULRSV0

「お食事、こちらに置きますね。このシチュー、精の付くものを特に多くいれてあります」  そう言いながらシエスタは、トレイをタバサの正面のテーブルに置き、彼女の方をちらりと見る。  タバサは、ソファに座って読書に勤しんでいた。 (さぼり?)

 仮病を使い、授業をさぼったあげく、わざわざ自室にまで食事を届けさせる。  そういう貴族たちの尊大さは――慣れているとはいえ――やはり、やりきれないものを感じさせる。  しかし、若干の違和感もある。  少なくとも、シエスタが知るタバサという少女は、そういう貴族の典型と言うべき倣岸さを、他人に見せるタイプではない。

 ルイズやキュルケたち程ではないが、それでも彼女にとってタバサはまんざら知らない仲ではない。  一応、才人たちとともに宝捜し――という名のキャンプ旅行に出かけたこともあるくらいだし、他の学院生たちよりは、寝食を共にした仲だという気安さはある。  また、その宝捜しの最後の一点である“竜の羽衣”が、曽祖父の形見だったという事実もあって、その時の一行は全員、シエスタの実家を一夜の宿として借りてまでいるのだ。

――しかし、このタバサという異様に寡黙な少女は、その時の旅でもそうだったが、結構コミュニケーションが取りづらい。 ギーシュなどとは違い、何かと頼りにはなるのだが、宝捜しの時も直接的な面倒は、ほとんどキュルケに任せっ放しで、自分はほぼ没交渉だったような気すらするのだが。

 今になって、ふと疑う。  タバサの目的は、自分をここに呼ぶ事にあったのか?  自分でなければ出来ない話を、二人きりでするために。  思い当たる節は――ない。

 シエスタは、このタバサという少女が、自分同様、才人に熱い眼差しを向けているという事実を、まだ知らない。

639 名前:契約(その5)[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 05:23:31 ID:YGULRSV0

「食事、ありがとう」  ぼそりとタバサが呟く。 「ああ、いえ、とんでもない」 「おいしそう」  そう言うとタバサは、自分の食器棚から銀のスプーンを取り出し、その感謝の言葉とは裏腹に、何の感情も見せない表情で、ビーフシチューをすすり始めた。

 シエスタは辛抱強く、タバサが口火を切るのを待っていたが、この寡黙なメイジは一向にそんな様子を見せない。それどころか、一瞥の視線さえシエスタに投げかける気配も無く、シチューを味わっている。 「ミス・タバサ、お紅茶はいかがでしょうか?」  トレイの上のポッドから、装飾を施したカップに、湯気の立つ紅い液体を注ぐ。 「ありがとう」  と言いながらも、やはりタバサは、ただ黙々と食事を続ける。

(ばかにしてる)  さすがにシエスタも思った。  彼女は出自こそ平民の村娘ではあるが、決して気位の低い女ではない。  もっとも、そんな彼女でなければ、公爵家の令嬢を向こうに回して、男の取り合いなどできるものではない。  それとも、彼女がわざわざ自分に食事を持ってこさせたのは、特に意味も無い事だったのか。

 シエスタにとっては――まあ、どっちでも良かった。  用が無いなら帰るまでだ。明晩にはルイズが、実家から帰ってくる。あの可愛い“妹”をいたぶれる機会は今夜しか、もう残っていないのだ。  そう思うと、シエスタは矢も盾もたまらず、才人の元は行きたくなった。   「では、ミス・タバサ、これでわたくしは失礼致します。食器の方は、また後ほど回収させて頂きますので、扉の外にでもお出し下さいまし。……では、失礼致しました」 「待って」  この声がかかるまでは。

「昨日の“妹”は元気?」

 タバサは、この時初めてシエスタを見上げた。  その青い瞳は、いそいそと部屋を出ようとするシエスタを、明らかに嘲っていた。  そして、シエスタの表情は、タバサの碧眼以上に真っ青になっていた。

640 名前:契約(その5)[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 05:26:33 ID:YGULRSV0

「……ミス・タバサ?」

 タバサは、もうシエスタを見てはいない。  さっき見せた、悪戯っぽい表情は、紅茶のカップを持つ小さな手に隠れて、シエスタには何も見えない。  しかし、その肩も、その背も、僅かに見えるその口元も、いや、彼女の全身が発する雰囲気からして、タバサは明らかに嘲っている。誰を? 無論シエスタを、だ。

「あっ……、あの……ミス? 昨日の妹って、一体何の事でしょうか?」

 タバサは答えない。  今のシエスタにとっては、百万言の脅し文句より、その沈黙の方が怖い。

「ミス・タバサ。あの、ちゃんとおっしゃって下さい。私にも分かるように、その――」 「風の塔」

 もう疑う余地すら残っていない。  決定的だ。シエスタの頭はもう真っ白だった。 (見られた……!!)  そう、見られたのだ。  見られた以上、シエスタとしては、土下座してでもこの少女の口を封じねばならない。  なんとなれば、この一件のスキャンダルは、シエスタはともかく、才人の身柄をも決定的に失墜させるものだからだ。彼女としては、無論それは望むところではない。

 シエスタは知っている。  才人が、その心底では、誰よりもルイズを愛しく思っている事を。  例え今は、彼女の体の下で、お尻を犯されむせび泣く、シエスタの“妹”奴隷であったとしても、だ。  そして、ルイズへの嫉妬はともかく、才人が幸せになる事を考えれば、今回のこの醜聞は、断じて表沙汰にするわけにはいかないのだ。

 才人は、彼が望む女性と結ばれ、その上で幸せにならねばならない。  結果として、彼が自分を選ばなかった事は、骨が鳴るほどに悲しいが、だからといって、その縁談もろとも才人の将来をもを叩き潰してやる、などと考えるほどシエスタは下品な女ではない。  今回の彼女の暴挙は、自分を捨てた才人への怒りもあったが、何より、ルイズが実家から帰ってくるまでの、ほんの、お仕置きのつもりだったのだ。  だから、お尻の処女は奪っても、才人の童貞は、あくまで手をつけてはいない。  ルイズが帰り次第、シエスタは大人しく身を引く予定だったのだから……。

「それでいいの?」

 タバサが眼鏡の奥から、何もかも見透かしたような、そんな目付きで問い掛ける。

641 名前:契約(その5)[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 05:27:55 ID:YGULRSV0

 何がです?  と、シエスタにしてみれば、聞き返すべきであったかもしれない。  タバサのペースに巻き込まれず、自分の望む方向へ話の先を取りたいなら、彼女はそうすべきであった。  しかし、シエスタの口は開かなかった。  その、喉元まで出かかった言葉は、語られる事は無かった。 (何で、私の考えてる事が……?)  もはや、シエスタは冷静ではなかった。  彼女にとっては、タバサが自分の考えを読んだという事が、何より――才人との醜聞を見られたという事実そのものよりも――パニックを喚起させていたのだ。    タバサからすれば、シエスタの表情と、沈黙の呼吸、全身の雰囲気などから、彼女の意思を読み取り、ブラフをかけたに過ぎない。歴戦の戦巧者でもある彼女からすれば、たかだか平民のメイド一人、論理誘導する事など、さほど難しくは無い。

 結局、シエスタは、そのタバサの問いに返答できなかった。  なぜなら、シエスタが答える前に、タバサが新たな問いを発してきたからだ。

「何故、それでいいと思うの?」 「わっ、私は何も言ってません!」 「いいえ、分かるわ。貴方はサイトを諦めようとしている。だから逆に、ルイズが帰ってくるまでに、彼の身体に自分の痕跡を残そうとしているのでしょう?」

 タバサがゆらりと立ち上がり、音も無くシエスタの隣に立つ。  気配をまるで感じさせない、幽霊のような動きで。  そのまま囁く。  サイトを奪いなさい、と。  ルイズから奪いなさい、と。  サイト自身からも、ルイズを消し去りなさい、と。

「ダメですっ!! そんな事はダメですっ!!」  タバサの悪魔のような囁きに、シエスタは耳をふさいで、その場に座り込む。

642 名前:契約(その5)[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 05:30:12 ID:YGULRSV0

――なぜ? 「サイトさんが不幸になりますっ!! サイトさんがっ!!」 ――ならないわ。 「なりますっ!! だってサイトさんが、サイトさんが好きなのは私じゃないんですもんっ!! サイトさんはミス・ヴァリエールと結ばれてこそ――」 ――違う。

 シエスタは振り仰いだ。  タバサが無言で彼女を見下ろしている。  しかし、そのたたずまいは、むしろ森厳とすら言うべきであり、先程までの悪魔じみた囁きを、この少女が発していたとは到底信じがたいものがある。

 タバサは言った。 「人の心は脆いもの」  例えサイトがルイズを愛していようと、それだけでは得られぬ快楽がある事を教えてあげればいい。 「現に」  タバサは続ける。  現に、あなたは実践しているではないか。男でありながら“女”として、“陰門”を征服される悦びを、あなたは彼に、十二分に教え込んでいるではないか。――と、そう言った。 「……」  シエスタは言葉を返せなかった。

 才人はまだ若い。  若い男性の目には、精神的な愛情よりも、肉体的な快楽の方がより魅力的に映るであろう事は、シエスタにとっても、自明の理だという事は分かる。  しかし……。

 そんな事が出来るであろうか?  殴られても蹴られても、ある意味一途にルイズへの愛を貫き続けてきた才人なのだ。  ティファニア、アンリエッタ、そしてこの自分と、他の女性に乗り換えるなら機会はいくらでもあった。しかし、それでもなお、諦めずにルイズへの想いを捨てずに、そして念願のゴールインを迎えた彼らを、快楽の力だけで、引き離す事など可能であろうか。

643 名前:契約(その5)[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 05:31:12 ID:YGULRSV0

「できるわ」

 タバサは言い切った。 「あなた一人じゃ無理かもしれない。でも、私が手を貸せば、出来る」  そう言ってタバサは、へたり込むメイド少女に手を差し伸べる。

 シエスタは、むしろ恐怖を持って彼女に尋ねる。  あなたは何故、そこまで自分を、一介のメイドに過ぎない自分を、ここまで後押ししてくれるのですか、と。

「決まってる」    タバサがそう言った時、シエスタの片手はすでに彼女の掌中にあった。

「私もサイトが好きだから」

 そして次の瞬間には、ふわりという感触と共に、タバサの薄い胸の中に吸い寄せられていた。

「サイトを、ルイズだけのものにしたくないから」

339 名前:契約(その6)[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 19:34:39 ID:kIHtn6WC

「……!!」

 才人は絶句した。   (どういう事態なんだ……これは……!?)

 いま、この部屋には、シエスタを含めて三人の女性がいる。  タバサ。シルフィード。そして、この淫靡なイベントの主催者であるシエスタ。 ――いや、何も知らない者が見れば、女性の人数は四人に見えたに違いない。そこに女装を強制された才人を加えたならば。

 いつもの通り、ノックもなしにイキナリ部屋に入ってきたシエスタに、当然のように突き出された、下ろしたてのメイド服。それと、ウィッグを含む数々の化粧用品。 「こ、このあたしを、お姉様の“いもうと”に戻して頂いて、有難うございます……」  才人はそんなシエスタに、ぎこちない感謝の辞を述べ、彼女に為されるがままに着付けとメイキャップを施されてゆく。  当然、ただ着替えるだけではすまない。  才人の言葉に、鷹揚にうなづき、淫らな微笑を返しつつ、彼女はいつもの行動に移る。  唇、ペニス、アナル、乳首、耳朶、うなじ、脇の下といった、才人の全身の性感帯を撫でまわし、存分に彼の悲鳴を堪能しながら、それでもシエスタは手際よく、才人を変身させてゆく。

 股間からペニスを生やした、とても残念な生き物……シエスタの“いもうと”に。

340 名前:契約(その6)[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 19:36:32 ID:kIHtn6WC

 はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……。

 メイクが完了した頃には、才人はいつものように肌を紅潮させ、息も絶え絶えになっていた。  そんな彼を見下ろし、シエスタは言う。

「喜んでくださいサイトさん。今日はね、特別ゲストがいらしてるんですよ」 「え?」 「どうぞ、準備は出来ましたのでお入りください。――ミス・タバサ」 「なっ!?」

――いま、いま何と言いやがった!? たばさ? タバサと言ったのか!?

 その言葉に才人が愕然となる暇すらなかった。  扉が開いて現れたのは、まさしく、彼が知る寡黙な少女、タバサその人であった。

 さらにその後ろから、 「きゅいきゅい、待ちくたびれちゃったのね!」  という、いかにも無邪気な声とともに入室してきた、もう一人の女性。  タバサと同じく、青く美しい髪を背まで伸ばした、二十歳前後の綺麗な女性。 「――しっ、シルフィ……!?」

「あっ、サイトっ!? どうしたのね? 何かいつもと違う格好してるのね」 「あ、いや、その、これは――」

――ばたんっっ!!

 必死に言い訳しようとする才人の口は、重い音と共にシエスタに閉じられた部屋の扉によって、遮られた。 「……しえすた?」  とっさに、幼児のように救いを求める視線を、シエスタに投げかける才人。

 しかし、シエスタは、まるで彼の逃げ場を塞ぐかのように扉の前に仁王立ちになり、さらに彼を追い詰める。

「さあ、サイトさん、この方々に説明してあげてくださいな。――いまの自分が、一体どういう事になっているのか」 「そっ、そんなっ!?」 「逆らうんですか?」 「……!」

341 名前:契約(その6)[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 19:38:25 ID:kIHtn6WC

――ここまで、ここまでするのか、シエスタ……。

 何度も味わった、この絶望。  絶望の淵に叩き落されていたはずの自分が、さらに深く、暗い闇の底まで引きずり落とされてゆく感覚。  逆レイプに始まり、射精管理、飲尿行為、アナル開発、野外プレイ、さらには男性用貞操帯と授業中の道具責め。そして現在の強制女装からのレズセックス。  シエスタの口が開くたびに、そこから紡ぎだされる新たな命令に才人は、いつもこの感覚を味合わされていた。すでにして希望を捨てている彼をして、更なる絶望の暗闇に叩き落す、彼女の恐るべき嗜虐性。

――何を言ってるんですかサイトさん。まだまだ、これからなんですよ。

 そして今もシエスタは、そう言わんばかりに両手を腰に当て、ねっとりとした視線を才人に送っている。

「きゅいきゅい、早く説明してサイトっ。一体なんでこんな格好してるのっ?」 「そうですよ、サイトさん。ゲストの方々をお待たせするのは、メイドとしてはとても恥ずべきことなのですよ。私は“姉”として、あなたをそんな“いもうと”に躾たつもりはありませんよ。ふふふ……」

 無邪気なシルフィード。その尻馬をあおるシエスタ。  才人は、その迷える視線を、おそるおそる第三の少女……タバサに向けてみる。

 タバサの、常に自己の感情を窺わせない青い瞳。  その美しい碧眼が、わずかに興奮の色合いをにじませつつ才人を射抜き、言う。

「早く」

 彼は、その一言を聞いた瞬間、まるで下半身が泥になったように、その場に崩れ落ちた。

342 名前:契約(その6)[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 19:41:27 ID:kIHtn6WC

 この、絶望的なまでに無残な姿を晒している自分を見て、あのタバサが、僅かにであるが頬を紅潮させ、目を潤ませ、笑みすら浮かべている。それも、シエスタと同質の淫靡な微笑を。

(もうダメだ) 「……あ、あたしは……」 (ダメだよルイズ……) 「あたしは、――シッ、シエスタお姉様の“いもうと”で」 (もう……限界だ……!!) 「ドジで間抜けで、いつもお姉様にご迷惑をかけて、お仕置きをして頂いている、サイトっていうメイドです」 (俺、もう、何か、壊れちまったよ……)  才人は、全身を震わせながらひざまずき、 「ミス・タバサ、それにミス・シルフィード。こんな哀れなあたしを、ど、どうか、お姉様と三人で、……お、お仕置きして下さい……!」

 そう言って才人は、三人の靴にキスをした。

348 名前:痴女109号[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 03:44:54 ID:V7ARRJ95

 元来、この部屋はルイズの個室だった。

 そこに、使い魔として召喚された才人が同居し、さらに才人の“御付きメイド”となったシエスタが押しかけてきて、いつの間にやら三人部屋になったのだが、それでも、この部屋の家具や、クローゼットの衣装などはほとんどがルイズの私物である。  つまり、この部屋の中には当然の事ながら、ルイズの体臭こそが一番染み付いている。  ベッドにも、シーツにも、枕にも、布団にもである。  そんなルイズの匂いにまみれた夜具の中で、彼女の夫になるべき男を蹂躙する。   ――シエスタの優越感をこれ以上ないほどに刺激するこのシチュエーション。    そして、肝心の“寝取られ男”は今、彼女――シエスタにスカートをまくりあげられ、四つん這いになって剥き出しの尻をさらし、シエスタにアナルを舐められていた。  その連日の荒淫ですっかり黒ずんだ彼の菊門はパックリと口を開き、そこから伸びた黒い細紐の先には、金属製のリングが鈍く光っている。

――シエスタのアナルパールの紐であった。

349 名前:契約(その7)[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 03:47:26 ID:V7ARRJ95

「きゅいきゅい、すごい! シルフィ、とっても気持ちいいのねん!!」

 ワンワンスタイルになった才人の頭部は、シルフィードの細く長い両足に挟まれ、拘束されている。  いくら人間の姿をとったところで、元はドラゴンである。恐らく彼は、かつて経験した事のないパワーで頭蓋を圧迫され、必死になってシルフィードの恥部に舌を振るっているはずだ。

「きゅいきゅい!! こんなのっ!! こんなの初めてなのねんっ!!」  いまシルフィードの神経を、どれだけの快楽電流が迸っているかは、そのムダ毛一本生えていない白い美脚が、真っ赤に紅潮している事でも予想はつく。

「きゅい〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 二十歳前後の容貌に似合わぬ甲高い声を発し、シルフィードの全身から、一気に力が抜けた。  首の骨を捻り折られる前に、どうやら才人が、この竜の幼生を頂上に追いやったようだ。  イったシルフィードも、イカせた才人も、互いに肩で荒い息をしながら、ベッドに突っ伏した。

(当たり前よね)  シエスタは、余韻に酔いしれるシルフィードを見て、むしろ自慢気に鼻を鳴らした。  この“いもうと”は、シエスタが都合数十時間の連続調教の果てに、女性を(と言うか自分を)悦ばせるためのあらゆる手練手管を叩き込んだ、いわばシエスタ自慢の『作品』でさえある。  いかに伝説の風韻竜といえど、いかに妙齢の美女に変身していたとしても、所詮は幼竜一匹、“いもうと”の手にかかれば物の数ではない。

350 名前:契約(その7)[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 03:52:07 ID:V7ARRJ95

「んふふふふ……サイトさんったら、ホント学習しない人ですねえ」

 そんな上機嫌とは裏腹に、シエスタは尻肉に、がぶりと歯を立てる。 「〜〜〜〜〜っっ!!」 「私はサイトさんに『お尻を差し出しなさい』と言ったんですよ」  彼の臀部に歯型を生産しながら、シエスタは言葉を続ける。 「誰が休んでいいと言ったんです? あなたがこのベッドでお休みになれるのは、ここにいる全員が、あなたを罰し終えてからなんですよ。まだそんな事も分かりませんか?」 「すっ、すびばせんっ! お姉様っ!!」

 そう言われて才人が、満面の恐怖を浮かべながらシエスタを振り返る。  が、当然シエスタは彼を許すつもりはない。

「さあ、どういうお仕置きがいいでしょうか、ミス・タバサ?」  そう言いながら、シエスタは視線をタバサに移す……が、その時になって、彼女の姿が自分の視界にないことに気が付いた。

「このリングは何?」

――っっっ!!?  肩越しにかけられた冷静な声音に、シエスタは驚きの余り、体勢を崩して振り返る。 (いっ、いつの間に私の後ろにっ?)  そこには、碧眼碧髪の眼鏡っ娘が、まるで理科の実験でも観察するような冷静な眼差しで、シエスタを見つめていた。

「それに、サイトの肛門が完全に口を開いてしまってる」

 いや、彼女が見つめていたのはシエスタではない。 「何をしたらこうなるの?」

 タバサの眼中にあるのは、あくまでも才人一人なのだ。 「この、お尻のリングが関係してるの?」

351 名前:契約(その7)[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 03:55:49 ID:V7ARRJ95

 タバサは、シエスタの隣――丁度、才人のアナルを最もいい角度で覗ける場所に移動してくると、そこで初めてシエスタを振り向いた。 「引っ張っていい?」

 どうやら、タバサは才人のアナルから生えたリングに御執心らしい。 「その必要はありませんわ」

 シエスタは、さっきの驚きはどこへやら、逆に誇らしげに答える。  彼女としても、才人の調教状態をタバサに示せる事が嬉しくてたまらないらしい。 「ミス・タバサのお手を煩わせるまでもありません。――サイトさん」  シエスタは、歯型をぺろりと一舐めすると、闇に沁み入るような声で命じた。

「『産卵』のお時間ですよ」

「こっ、ここでですかっ!?」 「私に恥をかかせるおつもりですか、サイトさん?」

 その一言で才人の口答えは終焉を告げた。 「あ、いや、その、申し訳有りません、お姉様……」

 生半可な反抗が、どれほどの“罰”となって我が身に帰ってくるか、彼はもう、骨の髄まで承知しているのだろう。タバサには、そんな才人がとても新鮮に見えた。

353 名前:契約(その7)[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 04:01:08 ID:V7ARRJ95

「ひっ、ひっ、――ふぅぅぅぅうううううう!!!」

 才人が、半ば悲鳴のような声を上げながら、全身の力を振り絞っていきみだす。  すると、やがて才人のアナルから出現したのは、リングから伸びる紐に結ばれた直径3センチほどの球体だった。 「んっ、んっ、んっ、んっ、んんんんんんっ!!!」  才人の全身が、電気椅子で処刑された死刑囚のように痙攣する。

「すごい……!!」

 思わずタバサが呟いた。  才人のアナルから出現した球体は、なんと一個だけではなかったのだ。  二つ、三つ、四つ、……。 ――まだ、まだある? まだ入るの!?  なるほど、『産卵』とはよく言ったものだ。しかし彼女たちの眼前で全身を震わせ、球体をひり出し続ける才人の姿には、ウミガメの出産のごとき荘厳さはカケラもない。

 タバサは、滅多に感情を表さぬその容貌を、驚きと悦びに染めながら、ひたすら球体を排出し続ける彼のアナルを、食い入るように見つめ、そんなタバサを、シエスタはこれ以上ないほどの優越感と誇りを持って見下ろしていた。

「お姉様ぁっ、お姉様ぁっ、もう、もう!!」  そう叫ぶ才人の肛門からは、数珠繋ぎに結ばれた“卵”が四個ぶら下がり、しかも四つ目の“卵”からは、まだ紐が彼のアナルまで続いている。 「だらしないですねぇ、サイトさん」  そう言うと、シエスタは、そこで初めてリングに指をかけ、 「御自分の異物を、排泄する事さえ出来ないのですか?」  一気に引き抜いた。

 ずぶりっっ!!

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」

 鈍い音がして、さらに二つ、都合六個の“卵”が、異臭にまみれてベッドに落ちる。才人自身も、それと時を同じくして、再びベッドに崩れ落ちる。

 その数珠繋ぎのアナルパールを携え、ひょいと才人の枕元に移動したシエスタは、刹那、タバサに勝ち誇った眼差しを向け、戦慄すべき新たな指令を、愛する男に下した。

「さあ、サイトさん。御自分で汚したモノは、御自分で綺麗にして下さい。メイドの基本ですよ」

 糞臭匂うアナルパールを、才人の口元に突きつけながら下したこの言葉は、眼前の才人にのみ向けられたものではない。つまり、 (私が命じて、サイトさんに出来ない事など、もはや存在しない。貴方と私の、今の差を思い知らせてあげますわ、ミス・タバサ……!!)

624 :契約(その8):2007/06/22(金) 01:52:27 ID:o2mqbQuL

(こっ、これを、……俺がっ!?)

 異臭を放ちつつ突きつけられた数珠繋ぎの物体は、才人に新たなる絶望を味あわせるには充分な存在だった。 、そして、いまや彼にとって、絶望という感情は、彼の魂を闇の淵に蹴りこむだけでは済まない、むしろ甘美な響きさえ伴う、黒い欲望に同化しつつあった。

――すなわち、マゾヒズム。

 元来、平賀才人という少年には、その素養があった。  そもそも、ある日イキナリ、自分を異世界に召喚した、その実行犯たる少女に唯々諾々と従い、それでもなお、自分を人間以下に扱おうとする彼女に、好意を越えて愛情さえ抱いてしまう。 ――常識的には、はっきり言って、考えられる事ではない。  そんな非常識をあっさりクリアーしてしまう順応性。これをマゾヒズムの兆候と解釈する事に何の誤謬があるだろうか?

 まあいい。

 とにかく、この場において確かに言える事は、彼に与えられる更なる絶望は、もはや快楽に化学変化することさえ稀ではない、という事実。  その証拠に、才人は眼前に突きつけられた、異臭漂うこの性具を見つめる眼差しに、明らかな興奮の熱を持った光を灯している。  そして、ゆっくり、ゆっくりと、『それ』を手に取った才人を、シエスタはにやりと笑って見下ろした。

625 :契約(その8):2007/06/22(金) 01:54:13 ID:o2mqbQuL

「きゅい、きゅい! ズルイのねん。サイトだけ、美味しそうなお団子食べて!!」  その声の所有者が、いきなりその性具を横取りして口に放り込まなければ、彼は間違いなく、その物体を自らの口に納めていただろう。  しかし。

「――ぶほっ、なにこれっ!? ごほっ!! ごほっ!!」 「あっ、シルフィさん、だめっ!!」  シエスタが止める暇さえなかった。  シルフィードは、その堅い食感と、何よりその物質の全体を覆う臭味に驚き、アナルパールをそのまま、窓の外に放り投げてしまったのだ。

 一瞬、残念そうな、ほっとしたような表情の才人を残して。

「なにこれっ!? くさいのねんっ! まずいのねんっ!! 気持ち悪いのねんっ!!」  全身に鳥肌を立たせるシルフィード。  無理もない。  才人のクンニにイカされて、ようやく天地晦冥の中から意識を取り戻したばかりの彼女は、残忍極まりないシエスタの産卵命令も、才人の出産シーンも見てはいないのだから。  つまり、このピンポン球大の性具が、そもそもどこに仕込まれていたか知らない訳だ。

「自業自得」 「きゅいきゅいっ! お姉さまヒドイのねんっ!!」 「勝手な真似するから」  そう言いながらタバサの指は、うなだれて、荒い呼吸を整えている才人の顎に、差し入れられた。 「サイト」 「……何? タバサ」 「貴方の身体で、この子を口直しさせてあげて」

 そうタバサが言った瞬間、きゅいきゅい騒いでいたシルフィードが突然静かになった。 「――いいの? お姉さま」 「……」 「お姉さまより先に、シルフィがサイトを食べちゃっても」   「いいの。順番なんてもう、無意味な事だもの」

「ミス・タバサ! ちょっ、ちょっと、待って下さいっ!」

 しかし、シエスタの声は結局タバサの唇によって中断された。 「んっ……んんんん〜〜〜〜っっっ!!」  イキナリ敢行されたタバサのディープキスは、数瞬であっても、メイドから判断力を奪うには充分だった。

「おっ、おい、タバサっ!!」  そして、彼女を振り返ろうとした瞬間、 「きゅい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」  という、奇声と共に、碧髪の美女が才人の胸に飛び込んできたのだ。 「ちょっ、まっ、っっぁぁぁ〜〜〜〜〜!!」  そしてたちまちの内に、うなじの急所に吸い付かれて、何も言えなくなってしまう。

「きゅいきゅいっ! お姉さまのお許しが出たのねんっ!!」 「しるっ、しるふぃっ!!」 「きゅいきゅいっ! うるさいのねんサイトっ!」  胸のボタンを引き千切ると、そのままシルフィードは彼の乳首を音を立てて噛む。 「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

626 :契約(その8):2007/06/22(金) 01:55:46 ID:o2mqbQuL

「どう、おいしい? サイトの体は?」  シエスタの胸を揉みながら、タバサがこちらに目をやる。 「すごいのねんっ!! とってもおいしくて、シルフィ感動しそうなのねんっ!!」  そのまま、赤子のように、ちゅうちゅう彼の乳首を吸い始めるシルフィード。

 そうなのだ。  彼女は、いまでこそ美しい髪を背まで伸ばした妙齢の美女の姿をとってはいるが、本来は竜の幼生。まだまだ母のぬくもりが恋しい年頃である。  そして、そんな彼女ならばこそ、さっき才人の舌によって自分の肉体を襲った、未経験の快感についても、当然理解してはいなかった。

――ただ一つ、タバサから言い含められたサイトの『童貞』の件を除いては。

「どういう、どういう、おつもりなんですかミス――あっ……タバサっ!?」 「……」 「あなたはサイトさんを、一体――くぅぅ――どうするおつもりなんですか」 「サイトの童貞を、あの子に奪わせる」

 その言葉を聞いた瞬間に、シエスタはこの少女に対する自分の認識が、全く甘かった事を思い知った。

――敵っっ!

 この方は、やっぱり敵なんだ。  ミス・ヴァリエールだけじゃない。私からすらも、サイトさんを奪おうとしている恋敵! (甘かった。気を許したわけでもなかったのに、何でこんな……!!)

 さっきのあの瞬間、才人は完全にアナルパールを口に入れようとしていた。  さっきのあの瞬間、才人は完全にシエスタの軍門に下った、いわば無条件降伏の状態だったのだ。  しかし、その流れはいま断ち切られた。    いま、才人の“男”は奪われつつある。  シエスタがどうしても手を付けられなかった、才人の男としてのシンボル。  ルイズへの遠慮なのか?  いいや、それは言い訳に過ぎない。  シエスタには分かっていた。  彼女が、才人の“男”に手を付けなかったのは、そうする事で何かが終わってしまう、何かが変わってしまう、そう思ったからであり、それが怖かったからだ。  何故なら、才人が本当に好きなのは、あくまでも自分ではなくルイズであるという事実を、彼女は誰よりもよく知っているからだ。  しかし、このタバサという少女には、自分のような中途半端なためらいはない。  その証しに、彼女の使い魔たるシルフィードは、才人の体を……。

「きゅいきゅい、サイトのおっぱいは何にも出て来ないから、ちょっとつまらないのねん」  そう呟くと、シルフィードは才人の着るメイド服のエプロンごと、スカートを中央から縦に引き裂いた。

 びびっ、びびびびびっっ!!!

「ああああっ ちょっとお前、この服タダじゃないんだぞっ!!」  この才人の叫びが照れ隠しだったのか否かは、恐らく問題ではない。  スカートを縦に割って突如出現した巨大スリットのおかげで、小さなショーツからはみだした彼の堅いペニスが、大気中に一気に晒される事になったのだ。

627 :契約(その8):2007/06/22(金) 01:59:29 ID:o2mqbQuL

「きゅいきゅい!! サイトのおちんちん、可愛いぱんつからはみだしてるのねんっ!!」 「やっ、やめろぉっ!! みるな……ぁぁぁぁああああ!!!」 「んふふふふ。やっぱサイトは、いい反応してるのねん」

「あああっ!! いやだっ!! サイトさんっ!! サイトさんっ!! しっかりして下さいサイトさんっ!!」 「黙って」

 自分に乗りかかるタバサの小さな体の向こうから、あからさまな才人の悲鳴が聞こえて来る。それは、“姉”を名乗り、才人の身体を思うさま蹂躙してきたシエスタにとって耐え切れる響きではなかった。  本当なら、今すぐにでも、自分にまとわり付くタバサを蹴散らして、愛する男の貞操を守りに行きたかった。

 しかし、跳ね除けられない。  タバサが駆使する、舌、指などのテクニック。それに加えて、抵抗しようと暴れるシエスタの力を巧みに逸らし、流し、あるいは利用し、体格に於いて自分を圧倒しているはずのシエスタの体から引き剥がされないようにしている。

――もっとも、『北花壇騎士七号』として、魔法・体術を含む様々な戦闘訓練を修めているタバサにとっては、たかがメイド一匹グラウンドで押さえ込むのは、造作もない事なのだが……。 (でも、手加減はしない……!!)

「ひぃぃっ!! 剥かないでっ!! そこの皮は――痛でぇぇ!! 剥かないでぇぇ!」 「きゅいきゅい、意外なのねん。サイトってば、こんなに立派なの持ってるのに、先っちょは、『お子様』なのねん?」

 そう、そこに聳える才人の男根は、サイズはともかく、いまだ幼いままの形状を保っていた。  シエスタは、彼がいくら泣き叫んでも、“そこ”に手を付けてはくれなかったのだ。  そこに、シエスタ独特の不安感とルイズへの遠慮があった事は前述したが、しかし、それだけではない。 (徹底的に焦らせてあげます――!)  彼の男としての機能を、あくまでも無視し、それ以外の性感帯の開発に重点を置く事で、より深い屈辱と、それによる快楽を与えよう。当時の彼女はそう思ったからだ。

――しかし、今は後悔している。  こんな形で、こんな形で奪われてしまうなら、私がっ!! この私が誰よりも早く奪ってしまえば良かったっっ!!! 涙ながらにシエスタは思う。

「きゅいきゅい、サイトだめなのねん。あんまりモガモガすると、おちんちんの皮が剥きにくいのねん」 「だからっ!! 剥かなくていいっ!! って、聞いてねえだろオマエ――ああああ!!」 「嫌なのねん。シルフィは剥きたいのねん。サイトのおちんちん、剥きたいのねん」 「ちょっ……何すんだよっ!?」 「だから、サイトは少し静かにするのねん」  シルフィードはくるっと体勢を入れ替えると、69の体位で自分の股間を、彼の口元に持っていった。

「男の子は我慢が大切なのねん。今からサイトは、シルフィのあそこを舐め舐めして、忍耐力を養うのねん」

628 :契約(その8):2007/06/22(金) 02:01:34 ID:o2mqbQuL

「見える?」

 タバサが、メガネの奥から、いつもとはまるで違う妖しい光を放ち、必死に抵抗を続けるメイド少女に囁く。 「サイトの皮が剥ける瞬間」

 めり……!

「サイトが大人になる瞬間」

 めりめりめりめり……!!

「ほら、どんどん剥けていく……」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」 「あああっ、ダメなのサイトっ! もっともっとシルフィのあそこ舐め舐めするのぉ!!」 「いやっ! いやっ! サイトさんっ! サイトさんっ!! サイトさんっっ!!!」 「ほらっ、見なさいっ!! もっとしっかり、サイトが大人になる瞬間をっ!!!!」

 めりめりめりめりめり……びりっ!!

「――ひっく、うぐ……ううう、あううううう……」 「そんなに泣くことないのねん。たかだか、少し血が出たくらいで」    そう。――才人は今、処女を破られた乙女のように、股間を抑えながら泣いている。  シルフィードが敢行した皮剥きプレイによって、彼の亀頭を包んでいた分厚い包皮はめくれ上がり、恥垢によって癒着していた皮が無理やり剥き下ろされ、いま、彼のペニスは軽い出血状態にあった。  しかし、それは傍目に見れば、恥垢で真っ白に染まった彼の亀頭を、鮮血がデコレートしているという、見ようによっては、これ以上はない刺激的な眺めだった。

「きゅいきゅい、それにしてもサイトのおちんちん、まるでストロベリームースみたいで、美味しそうなのねん」 「ひっ!!」

――れろり。

 シルフィードの長い舌が、彼の亀頭を舐めあげる。 「〜〜〜〜〜〜〜!!!」 「んふふふ……。もうサイトったら、気持ちよすぎて声も出ないのねん」 「ちがっ!! いだっ!! いだいようっっ!!」 「きゅいきゅい、サイトったら嘘ばっかりなのねん」 「ちがっ! うそじゃなくてっ!! ぁぁぁああああ!! もうやめてよおおお!!!」 「だったら、どうしてこんなにサイトのおちんちんは、堅いままなの?」

 その一言は、彼から抵抗の言葉を奪った。  シルフィードの言う通り、彼の股間は、初めて空気に晒された彼の白い亀頭を装備した事で、いよいよその角度・硬度を増し、文字通り漲るようなサイズにまで膨張していた。 ――それも、かつて無かったほどの勢いで。

「シルフィ、サイトを立たせてあげて」 「はい、なのねん。お姉さま」  シルフィードは、サイトの背後に回りこむと脇腹に両手を入れ、竜の怪力にモノを言わせて、一気に彼を、タバサと彼女が組み敷いているシエスタに見えるように立たせた。 「サイトさん……!!」  シエスタが思わずうめき声を挙げる。

 そこにいるのは、縦に大きく割られたメイド服のスカートから、血のしたたるペニスを突き出し、絶望と快楽の狭間で呆然と立ちすくむ、彼女の“妹”……。

629 :契約(その8):2007/06/22(金) 02:04:11 ID:o2mqbQuL

 れろり。

「ぐふうっっっ!!」  シルフィードの舌が、再び才人の股間を襲う。

 ちゅばっ……れろっ……じゅるっ……。

「……!!」

「サイト、痛い?」 「う、うん」  タバサの声に顔をゆがめて答える。  しかし、タバサは言う。

「嘘ね?」

「うそじゃないっ!!」  思わず言い返すが、しかし、それが単なる反射でしかない事は、彼自身が一番良く知っていた。 「だったら、何故そんなイキそうな顔をしているの」

 そう言われた瞬間、心臓がドクンと激しく鳴った。  そうなのだ。  正直、シルフィードの舌など、気持ちよくも何とも無い。  ただ、これまでの人生でも、かつて無いほどの激痛が、下腹部を中心に全身の神経を貫いている。  なのに。  そう、なのに、――だ。

 何故、こんなに射精感が昂ぶっている。  痛くて痛くてたまらないのに、何故こんなに、それこそ今にもイってしまいそうなほどに、射精感が全身を包んでいるのは、何故なんだ!?  彼には分からない。  シエスタが、これまで与えてくれたのは、形はどうあれ、まっとうなエクスタシーだった。ペニス以外の性感帯を刺激や、他者に屈服する快楽など、歪曲はしていても、それは紛れも無い快感で構成された責めだった。――しかし、これは……違う!!

「サイト、オナニーしなさい。このシエスタ“お姉様”にちゃんと見えるようにね」 「……」 「ミス・タバサ……」

 もはやサイトは、その言葉に逆らえなかった。  彼は出来る限り亀頭を刺激しないように根元を持つと、ゆっくりと扱き始める。

「顔をあげて」 「……」  涙を堪えながら、タバサを見る才人。 「シルフィは、サイトの先っぽを舐めてあげて」 「はいなの」 「笑いなさい。サイト」 「……はい」

――いやらしい。  タバサは心底そう思う。  もっともそこに、彼を否定したり排撃したりする心境は、一分も無い。  乱れたメイド服。  乳首があらわになった右胸。  恥骨まで切り裂かれた純白のエプロンから突き出した、剥き出しのペニス。  遠い笑みを浮かべながら自分を見つめ、震えながらそのペニスを扱く少年。 ――これが、サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ。その『本当の姿』

(まるで、天使のようだわ)  彼に、新たなる頂上への階段を上らせながら、我ながら思わずうっとりする。

630 :契約(その8):2007/06/22(金) 02:05:50 ID:o2mqbQuL

 いまや才人は、さっきまでの激痛をまるで感じていないようだった。いや、この表現は正確ではない。  その痛みはますますひどくなる一方だ。しかし彼の神経は、その痛覚をもはや、単なる苦痛とは感じていないのだ。SMにおける鞭打ちや、蝋燭責めのように、才人は徐々にではあるが、『苦痛系』の快楽を覚えつつある、ということなのだ。    しかし、シエスタにはそれが分からない。 「何で……? 何でサイトさんは、あんなうっとりした顔を……?」  思わずシエスタがそう呟いた。  まるで、今までの才人がどこかに消えてしまったような、寂寥感すら彼女は感じた。

 ずぶりっ!! 「いだぁいっ!!」

 それまで、ぐずぐずだったシエスタのヴァギナをやさしく責めていたタバサの指が、突然激しさを増した。 「ふかいっ! 深いですぅっっミス・タバサァっ!!」  タバサは、指を突っ込んだままくるりと体を入れ替えると、そのままメイドの上背を起こし、背後に回り込んで、自分にもたれる体勢になるシエスタを支えた。

「無理よシエスタ。貴方じゃ無理」 「ひ……っ……ぃぃぃ……!!」 「貴方には、――いいえ、私にも多分、サイトの立っているところへはいけない」 「そっ、そんな! そんなぁぁっっ!!」 「だからせめて、サイトと同時にイカせてあげる」 「いやあああ!! サイトさんっ!! サイトさぁぁぁんっっ!!!」

 才人が注視すると、タバサは彼に見えやすいように自分の体の位置を入れ替えた。  シエスタのそこは、タバサの指を二本まで飲み込んでいるように見えた。

「ひいいぃぃぃっっっ!! 出るっ!! 出るようっ!!」 「きゅいきゅい、お姉さまっ、サイトがもう限界そうなのねん!!」  美味しそうに亀頭を舐め回していたシルフィードが、主を振り返る。  しかし、タバサの視線が自身の使い魔に向けられることは無かった。

「イキなさいっ、サイト!! 思いっきりブチまけなさいっっ!!」 「サイトさんっ! イクんですかぁっ!? イクんですかぁっ!!? サイトさぁぁん!!!」 「そうよ、シエスタっ! 貴方もイクのっ! 同時にイクのっ!!」 「「ああああああぁぁぁぁぁあああああ!!!!」」

 どくんっ、どくんっ、どくんっ、どくんっ!!!

――サイレントの呪文をかけられてなかったら、恐らく両者のその悲鳴は、階下どころか、女子寮全体にに響き渡っていただろう。それほどのイキっぷりだった。

 二人は精根尽き、特に才人はばったりとベッドに倒れ伏してしまった。

631 :契約(その8):2007/06/22(金) 02:11:21 ID:o2mqbQuL

「ね、サイト」 「……」 「痛かった?」 「……」 「答えなさい」

 そう言うと、少女は眼鏡の奥の碧眼を妖しく光らせ、そのペニスを一扱きする。 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

「やっぱり痛いのね」 「痛い痛い痛い痛い痛い!! 決まってるだろっ!!」  そう言って声を立てる少年を、くすりと笑いながら見つめると、そのままタバサは彼の背後の美女に言った。

「それじゃあシルフィ、予定通りに」 「はいなの、お姉さまっ!」

――予定?  どうせろくでもない事だろうとは思うが、しかし、そう言ったタバサ本人はベッドの向こうに行ってしまった。 「おいシルフィ、お前の御主人様は一体――」  そう言って振り返った瞬間、またもや、この竜族の娘の怪力は、少年を押し倒していた。

「ちょっ、おい、待ってっ!」 「きゅいきゅい、これからサイトの『どーてー』は、シルフィが頂いちゃうのねん!」 「ちょっと待てぇっ!! こんな血まみれのチンコで、エッチなんか出来るかぁっ!!」 「大丈夫なのねん。サイトならしっかり、中出しまで頑張ってくれるって言ってたのねん」 「だれが?」 「お姉さまが」 「――て、おいっ、タバサぁぁっっ!!」

 シルフィードの、あまりに頭の悪い物言いに再度彼女の主を振り返ろうとした、その瞬間だった。

「きゃあああああああ!!!!」

632 :契約(その8):2007/06/22(金) 02:12:44 ID:o2mqbQuL

 メイジの衣装を投げ捨て、全裸になったタバサ。  その体格(特に上半身の或るパーツ)は、完全に年齢不相応の幼さに満ちており、とてもではないが、シエスタが絶叫を挙げて騒ぐほどの威厳は存在しない。――はずだった。

 その、股間から生えた、ある『物質』を除けば。

「しょっ、しょく……!!?」

 そう、彼女の股間でぐねぐねとうねるそれは、紛れも無い『触手』だった。

「ひぃっ、ひぃぃぃっっ……!!!」  シエスタは、余りの恐怖のために“それ”を見る事も出来ないらしく、チアノーゼのような顔色でベッドを逃げ回る。が、タバサはそんなメイドを全く容赦のない動きで組み敷き、横たえる。

「まっ、待てっタバサぁっ!」  その一言でこちらを振り向いた少女に、才人は恐る恐る口を開いた。 「それは……何?」 「これはトリスタニアの魔法道具店で見つけたバイオペニスの一種。『ナマコの――』」 「そんなこと訊いてるんじゃないっ!? それで……その、またぐらの化物を使って、一体シエスタをどうしようって言うんだ」

 タバサは答えた。 「決まってる」   それこそ、今まで見せた事の無いような楽しげな笑みを浮かべて。

「これでこの子の処女をもらうの。血まみれのペニスで童貞を散らされる貴方の隣でね」

 才人は絶望した。  その言葉を聞いた瞬間、高らかに勃起した自分自身への、絶望。  もはや、絶望を受け入れる事になんのためらいも無かった。  背後からの手に自らを委ねる。  激痛以外、もはや何も感じないはずのペニスを、シルフィードの下半身が飲み込んでゆく。  ふと、目をやると、発狂せんばかりの絶叫とともに、処女を『触手』に散らされる“姉”がそこにいた。

 才人は子供のような笑みを浮かべてシエスタに手を伸ばし、彼女は、半分以上うつろになった瞳を彼に向けると、まるで、砂漠でオアシスを見つけた旅人のような勢いで、彼に熱烈なキスをした……。 107 :契約(その9):2007/07/08(日) 01:00:10 ID:5JXRtAHB

「ただいまっ! サイトっ!!」

 王家の紋章入りの馬車から飛び降りるや否や、ルイズはピンク色の弾丸と化して、彼の胸に飛び込んだ。  ヴァリエール家の紋章ではない。  いまのルイズは、正式な王宮の女官“虚無の担い手”として動いている。  女王の勅を奉じる者として、国内最大級の太守であるヴァリエール公爵家に使いに行っていた。――という名目ではあるが、当然その談判の内容は、ルイズの帰省を兼ねた、結婚式の最後の打ち合わせであった。

「聞いて聞いてっ!! 母さまがね、あの母さまがねっ! やっと認めてくれたのっ!」 「俺たちのことをか……嘘だろ、あのおっかないオマエの母ちゃんが俺との事を?」 「本当よっ 私だって信じられないっ!! でも、でも、言ってくれたのよっ、『幸せになりなさい』って!」 「そっか……。分かってくれたんだ、俺たちの事」

 人目もはばからず、校庭で大声をあげまくるルイズ。そんな彼女を、半分苦笑しながらも、真正面から受けとめ、こゆるぎもしない才人。  シエスタはそんな彼ら二人を、何か眩しいものでも見るように、上目遣いに見上げていた。

――うらやましい。

 心底からシエスタはそう思う。

 眼前の恋敵が、溢れんばかりの多幸感を発散しながら、男の胸元を独占している。  しかし、ルイズは知らない。  彼女が抱きついたその男は、すでに全身の隅々まで開発され、征服され、何度も泣き叫び、悶え苦しみつつ、自分に許しを乞うた肉体なのだ、という事を。  にもかかわらず。  そう、にもかかわらず、だ。

108 :契約(その9):2007/07/08(日) 01:02:35 ID:5JXRtAHB    幸せそうな寝取られ女を横目に見ながら、黒い愉悦にほくそ笑む事こそ、シエスタなりの復讐のはずだった。

――いまあなたが、惜しみなく愛をぶちまけているその男は、すでにあなたを裏切っているのですよ!

 自分が一声そう叫ぶ事で、眼前の男女の愛は破綻する。  そう思うことで、恋しい男を奪われた溜飲を下げれる。  そのはずだった。

 しかし、そんな思いは、たちまちの内に雲散霧消してしまっている自分に気付く。  ルイズを出迎えた、才人の嬉しそうな表情を見た瞬間に、自分の企みが、いかに矮小で醜いものであるかを、嫌でも気付かされてしまう。

――ああ、サイトさんが、あんなに嬉しそうに……!!

 彼を“妹”として責め嬲っていた頃には、決して見せてくれなかった表情……。

「なぜ落ち込むの」  氷のような声が背後から響く。それこそシエスタにだけ聞こえるように。 「ミス・タバサ……」 「あれが敵」  タバサは、眼鏡の位置を中指で、くいっと直し、 「私たちから彼を奪った、憎むべき敵」  それだけ言うと、手に持っていた分厚い本に再び視線を落とす。

「……!」

 シエスタは慄然とした。  この童顔の貴族は、本心から、そう思っているのか?  才人を自分が独占するためなら、彼のささやかな幸福など破壊しても構わない、本気でそう思っているのだろうか?  そんなシエスタの顔色に気付いたのだろうか。  タバサは本から視線すら上げぬまま言う。

「私は本気。そして、あなたも私に協力する義務がある」

109 :契約(その9):2007/07/08(日) 01:05:34 ID:5JXRtAHB

 婚儀の話は着々と、それこそとんとん拍子に進みつつある。

 トリステイン王国では、女性への爵位叙勲は前例のない事ではあったが、アンリエッタは、ルイズに対する一代限りの特例という事で、国法改正の問題に正面から向き合うことを避けた。  女性に官位を認めるには、ハルケギニア世界はまだまだ中世でありすぎた。  銃士隊長アニエスや、先代マンティコア隊隊長カリーヌほどの有能な女性軍人でさえ、その武勲によって官位が与えられる事は無かったのだ。  無論、その爵位は、才人との間に生まれた嫡子によって引き継がれ、その家系は紛れも無い貴族の、ラ・ヴァリエール一門の分家として続いてゆく。

 また、その領地は王家の直轄領から下賜され、他の貴族諸侯の領地からは一寸たりとも割譲される事は無い、という一報が公表された事も、宮廷議会である貴族院を黙らせる大きな要因となった。  国土面積に限界がある以上、貴族が新たに家を興すという事は、他の領主の封土を割譲せねばならないということだ。  実力による国盗りが可能な乱世なら知らず、今のトリステインは歴とした治世である。貴族間の遺恨や王宮への不満は、下手をすれば内乱の芽に発展しかねない。

 ヴァリエール公爵家からは当然、自領からの領土献上を王宮に働きかける動きがあった。  何といっても、目の中に入れても痛くない末娘の独立である。当初は分家どころか婚約自体に不快の感情を隠さなかった公爵家サイドではあったが、一旦割り切ってしまえば、その協力に骨惜しみは無かった。  しかし、アンリエッタはこれを拒否した。  ルイズに対する旧交のよしみからだけではない。  ルイズの使命は、あくまで“虚無”の血統を後世に残す事なのだ。単なるヴァリエール公爵家の分家ではない。可能な限り、王家との結びつきを強固なものにしておく必要があったのだ。

 また、才人も別の理由で公爵家からの領土割譲を拒絶したかった。  これ以上、ヴァリエール公爵家から借りを作れば、もはやとことんまでルイズと、その一家に頭が上がらなくなってしまう。その事態は避けたかった。

 と、まあ、そういう紆余曲折を経て、彼ら二人の婚儀を三日後に控えた頃、シエスタは独り、現状に困惑していた。

110 :契約(その9):2007/07/08(日) 01:08:43 ID:5JXRtAHB

 とはいえ事態は、ある意味、シエスタの当初の予定通り進みつつあった事は確かだ。

 ルイズが学院を不在中の一週間で、才人の肉体に、徹底的に責められる快楽を教え込み、自分の虜とする。  そしてその上で、ルイズが帰還してからは放置を決め込み、彼の身体をさらに疼かせる。  何と言っても、あのルイズお嬢様のカマトトぶりは尋常ではない。  人一倍、そういう事に興味を持ちながら、そしていざとなれば、そういう行為に全く躊躇いを感じないくせに、しかしそれでも彼女は、本番だけは拒みつづける。頑なに。

『そういう事は結婚するまでダメなんだから。結婚しても、三ヶ月はダメなんだから』

 そうやって彼を拒む事で、自分の体の価値を吊り上げようというのだろう。  いかにも貴族の乙女らしい、そしていかにもルイズらしい考え方ではある。  しかし、才人からすれば、それはもはやたまらない現状であろう。  彼はすでに、女体の美味を知ってしまっている。  そして、それ以上に、自分の体が一体の楽器であることを知ってしまっている。  他者によって責められた時、この若いオスの肉体は、どれほど美しい快楽の楽曲を奏でることが出来るか、もはや彼自身が一番知ってしまっている。  そんな彼が、シエスタに再び懇願の眼差しを向けるのは、確実すぎる事だった。

 でも、シエスタの予定では、そこまでだった。  それ以上、才人の抱かれるつもりも、抱くつもりも無かった。  今まで通り、平民上がりのシュヴァリエと、ちょっと馴れ馴れしいメイドの関係に戻るつもりだった。  才人に対するあてつけもある。  ルイズに対するささやかな友情もある(一介の平民メイドの言葉ではないが)。  また、そうでなければ、結婚後、自分たちの領土に去ってしまう二人に対し、この学院に置いていかれるであろう自分が耐え切れなくなるはずだ。そう思ったからだ。

――距離を取るなら、早いうちがいい。

 これ以上、才人と関係が続けば、今度は逆に自分の心がもたない。  シエスタは、そんな事態だけはどうやってでも避けたかった。

 しかし、予定はあくまで予定に過ぎない。  タバサという予定外因子が入り込んだ事で、シエスタの計画は確実に狂いつつあった。

111 :契約(その9):2007/07/08(日) 01:10:33 ID:5JXRtAHB

 シエスタは絶句した。

 タバサの個室で、才人が二人の女性に犯されていた。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ!」 「きゅいきゅい!! 気持ちいいのねっ!!」

 才人のペニスを正常位でくわえ込んだシルフィード。彼女の両足はガッチリ才人の腰にホールドされ、あたしをイカせるまで放さないぞこの野郎、と言わんばかりの欲情が丸出しだ。  そしてタバサは、そんな才人の背後から、彼のアナルを指でほじくっていた。

 例えばキュルケのような、彼女と親しい人間がよく見れば、タバサがいつになく興奮しているのが見えただろう。  しかし、あの褐色豊満な女メイジほどに、タバサを知悉しないシエスタから見れば、碧眼碧髪の眼鏡少女は、まるでカエルの解剖をする学者のように、冷静に見えた。  現に彼女は、シエスタの姿を見ても、顔色一つ変えずにこう言ったきりだ。

「遅い」

「たっ、たばさぁ……!! はやく、はやくぅっ!!」  そう叫びながら才人が、後ろを振り返りつつ白い尻をちらつかせる。  彼はもはや、シエスタがこの部屋に入室してきた事すら気付いていないようだ。 「早く?」

「おっ、俺のお尻まんこに、……たばさのおちんちんを、めっ、めぐんでくださいっ!!」

――くすっ。

(ミス・タバサが笑った……!?)  シエスタは、その瞬間初めて見たのだ。タバサが誰にでも分かる明らかな笑顔を浮かべたのを。その微笑みは、シエスタが予想していた数十倍の破壊力あった。  同性であるはずのシエスタでさえ、思わず赤面してしまうほどに。  いわんや、その笑顔の直撃を受けた才人は、瞬時に神経がフリーズしてしまう。

「いいわ」  タバサの股間の触手が、才人の肛門に吸い込まれたのは、その瞬間だった。

112 :契約(その9):2007/07/08(日) 01:11:55 ID:5JXRtAHB

「ひっ、ひいいいいいっっっ!! あああああああ!!」

 才人の体が、より深い快感によって、これまで以上に暴れ回る。  もっとも、そのじたばたも、彼の腰に回された美女の脚と、後背位によって才人の菊門を汚す美少女によって、ガッチリと固定されていたが。

「きゅいきゅい、サイトの、またまた太くなったのね!!」  シルフィードが、半ば白目をむきながら叫ぶ。 「イクのねっ!! イっちゃうのねっ!! あああっ、お姉様ぁぁぁぁ!!!」  背まで伸びた青い髪を振り乱し、竜族の美女が虚空に叫ぶ。  恐ろしく気持ちよさげな表情で。  そして、それにつられるような形で、才人の我慢も限界を突破しつつあった。 「でるっ!! あああっ! おれもでるよぉっっっ!!」

「だめよ」 「〜〜〜〜〜っっっっ!!」

 それまで気持ちよさげに喘いでいた才人の上半身が、いきなり悲鳴と共に跳ね上がった。  腰を固定するシルフィードの両脚のため、えびぞりのような形になる。  彼女と同時に絶頂を極めるはずだった才人の肉体が、いきなりのタバサの“攻撃”で思わずのけぞってしまったのだ。

「誰も射精していいなんて、言ってない」

 シエスタには見えた。  タバサの小さな手が、彼の睾丸を、つぶさんばかりに握り締めていたのを。  言葉にもならない絶叫をあげながら、地獄の苦痛に悶える才人の表情は、彼の体の下でエクスタシーに身を委ねるシルフィードと、見事なまでのコントラストを形成していた。

「……た、ばさぁっ……!!」

 ほろりほろりと美しい涙を流しつつ、童顔のメイジを振り返る少年。 「あなたに、自分勝手な射精をする権限はない」  タバサはちらりとシエスタを横目で見ると、 「少なくとも、私とこの子の許可を取らない射精は、絶対に許さない」

 そう言われた才人は、その時、初めてシエスタと目を合わせた。

113 :契約(その9):2007/07/08(日) 01:13:39 ID:5JXRtAHB

 こんなはずじゃなかった。  そんな才人を見た瞬間、シエスタは心底そう思った。

 少年の口元に張り付いた、媚びた笑み。  少年の目に宿る、歪んだ情欲。  なにより、少年の全身から発散される“いじめてオーラ”。

「どうすれば、どうすれば、射精を許して下さいますか……?」

 才人の背後から、うなじに舌を這わせながら、眼鏡少女が答える。 「ルイズを頂戴」 

 びくんっ!!  震える少年に、なおも彼女が言い続ける。

「あなたの婚約者の処女を、私たちに差し出すの」

   彼の視線は、まっすぐシエスタに向けられたままだ。だがその目には、シエスタの姿など、まるで映っていない事は、メイドには痛いほど理解出来た。  タバサに後ろから抱きしめられた才人の容貌は、かつてシエスタが見たことも無いほどに醜く、そしてそれ以上に官能の喜悦に満ちた、いびつな笑みを浮かべていたのだから。

――サイトさんは“絶望”を欲している……!!

「承知したら、そう言って」  タバサは脇腹から彼のペニスに手を伸ばすと、そっと、握り締めた。 「搾ってあげる」 「ぁぁぁ……!!」

「サイトさんっ!!!」  もう、シエスタには耐え切れなかった。 「もう、もう、やめてくださいっ!! 目を覚まして、いつものサイトさんに戻って下さいっ!!」

「サイトは見たくないの? ルイズがあなた以外の者に処女を捧げる、その瞬間を」 「ああああああああ!!!!」

114 :契約(その9):2007/07/08(日) 01:15:40 ID:5JXRtAHB

 タバサが、才人の耳朶を甘噛みした瞬間、彼の瞳から完全に正気の光が消えた。  無論、消したのは甘噛みという愛撫にではない。  タバサが発した言葉に、自ら酔い、狂ってしまったのだ。  ウェディングドレスに身を包んだ愛する花嫁が、タバサの舌に、指に、さらに股間の触手におもうさま蹂躙されている、その想像上の衝撃映像を描きながら。

「ささげますぅっ!! ささげますぅっ!! ルイズをタバサに、ささげますぅっっ!!」

 どくんっ!! どくんっ!! どくんっ!! どくんっ!! どくんっ!! どくんっ!!

 おそらく実際は、タバサが彼のペニスに手を触れる必要さえなかっただろう。  しかし少女は、まるで放尿のような勢いで射精する少年のペニスに手を添え、それをしごき尽くす。――あたかも一滴たりとも出し惜しみするなと言わんばかりに。  そしてシエスタは、そんな才人の姿を呆然と見つめていた。  恋人の処女を、他の女に捧げる誓いを絶叫しながら、その行為だけで興奮の余り絶頂してしまった、哀れで無様な想い人を。

 常日頃、凛と雄々しい才人を汚し、堕とし、辱める。  皮肉な事に、今の才人を作り出したのは、シエスタ本人でさえあるとも言える。  シエスタは、ようやく自分の胸中にある、才人に対する鬱屈の正体が分かった気がした。  彼女が精根かけて調教した“妹”。  そんな彼をタバサが、――自分以外の女が、さらに深い快楽を――絶望という名の快楽を与えている。それがシエスタには何より許せないのだ。

 才人をルイズの手に返す。  それはいい。  何故ならルイズには、才人が望む本当の快楽――絶望という名のエクスタシーを、彼が望むだけ与える事など不可能なのだから。

――世界でサイトさんを、真なる意味で満足させられるのは、この私だけ。

 そう思えばこそ、羨望の意を隠しつつも、彼女は才人を恋敵に返す事にためらいを覚えなかったのだ。しかし、もはや、情況は変わった。タバサという女のおかげで。 「ミス・タバサ」  もうシエスタは我慢する事を、やめていた。

「ミス・ヴァリエールの処女は、私が頂きたく存じます」

 そう言ったシエスタの口元は、かつて才人に自分を“姉”と呼ばせていた頃と同じ、歪んだ笑みが張り付いていた。

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