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390 名前:こんなデルフは超嫌だ[sage] 投稿日:2007/05/13(日) 19:03:42 ID:sn8Zj+DJ

「なあデルフ」 「なんだい相棒」 「お前っていろいろ変な力持ってるよな」 「変ってのは失礼だね。俺一応伝説よ伝説」 「いやでもな。用途がよく分かんねえ能力ばっかりだし。でさ、なんか他にないの、変な能力」 「だから変なってのは……まあいいや。そうだねえ……あ、あれがあるな。人間に変身する奴」 「マジか!?」 「ああ。変身っつっても、イリュージョンの応用で、剣本体の周りに幻影を作り出してそれらしく見せるだけなんだけどね」 「え、それ今もやれんの?」 「んー、まあ、問題ねえはずだよ」 「おお、じゃ、やってみせてくれよ」 「あいよ。じゃ、ちょっと俺っちを地面に突き立ててくれ」 「こうか?」 「そうそう。よし、じゃ……むむむ……カーッ!」  デルフが気合をいれて叫んだ瞬間、彼の刀身から眩い光が迸った。目を庇いながら、才人はあれこれと想像する。 (しかし、デルフが人間の姿に……どんなだろ。声からすると渋いオッサンって感じか?  美形だったらとりあえずルイズには内緒にしておこう) 「よっし、出来たよ相棒」 「おっし、それじゃ見せてもらおう……か……」  目を開けた才人は、目の前に立っていた人物にぽかんと大口を開けることとなった。  そんな才人の間抜けな姿に、目の前の人物がきょとんとした顔で首を傾げる。 「ん、どったの相棒」 「幼女じゃねえか!」  人間になったデルフリンガー……いや、正確にはデルフリンガーが作り出した幻影は、  人間と言っても大人の男のものではなかった。かと言って、大人の女でもない。それどころか、少女ですらない。  才人の認識で言うと、身の丈80cmほどの小柄な体格。ちょうど、膝の上に乗せたらすっぽり収まりそうな大きさだ。  髪は透き通るような銀色で、すぐにでも撫でたくなるほど柔らかい巻き毛である。  目蓋はぱっちりとした二重で、長い睫毛の下には空よりも青い瞳がある。  小鼻の下には大人しい大きさの唇があり、肌はいかにも子供らしい瑞々しさと柔らかさを備えているように見える。  その上、着ている服はふんだんにフリルをあしらった白いドレス……とまあ、これ以上ないほどに幼女幼女していた。 (っつーか、正直狙いすぎだろ。今時誰も描かねえぞこんなデザイン)  その直球具合に恐れおののく才人の前で、デルフリンガーが怪訝そうな顔をした。 「さっきからどうしたのよ相棒。何か変だぜ」 「デルフ、一つ聞いておきたいんだけどよ。お前のこの外見にはどういう狙いがあるんだ?」 「趣味じゃない?」 「そんなアッサリ!?」 「いやだってよ。そもそも剣の周りに幻影張るだけだから、自分で動ける訳じゃねえし。使い道ないよこんなもん」 「うーむ。確かに。とすると、始祖ブリミルってのはずいぶんと嫌な趣味の持ち主だったんだな……」 「まー、数多ある機能の中じゃ、使いどころのないようなもんもあるよ、相棒」  そう言って、デルフリンガーはぴらぴら手を振りながらカラカラと笑う。  外見はいかにも大人しそうな美少女であるから、そういう親父くさい仕草は違和感抜群である。 (その上いつも通りのオヤジ声だしなあ。もうちょい何とかならんものか)  腕を組んで唸る才人の前で、デルフリンガーは最初と同じようにきょとんとした顔で首を傾げた。 「どったの、相棒」 「いやそれだよデルフ」 「何が?」 「もうちょっと、今みたいな可愛らしい仕草ができんもんか」 「何のためによ」 「……何のためにだろう? いやほら、折角可愛い外見なのに、勿体ねえじゃん」 「人間の考えることはよく分からんねえ。んーと、こういう感じ?」  デルフは両手を握って口元を隠し、いかにも不安そうな眼差しで、上目遣いに才人を見上げた。 「うおっ、そうそう、そういう感じだよデルフ。なんかうめえじゃん」 「ま、これでも何千年も生きてるしね。人間の仕草ぐらい覚えてるわな」 「あー、ついでに、その声と口調。なんか台無しだから、どうにかならん?」 「今日は注文細かいね相棒……えーと、一応この形態のときの声が入力されてるね……あー、あー。  口調は……相棒の好みから考えて……えと、こういうのでいいのかな、サイトおにいたん」  完璧だ、と才人は思った。変化したデルフリンガーの声は、まさに人間の大人しい幼女そのものである。  神秘的な響きを持つ声ながら、まだまだ成長途上にある、一生懸命喋っていると思しき舌足らずな口調。 (ちくしょう、サービス良すぎるぜデルフ。その声で『おにいたん』なんて言われたら、俺はもう、もう……!)

391 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/13(日) 19:05:43 ID:sn8Zj+DJ

 激しく身悶える才人を、デルフは若干気味悪げに見つめていたが、やがて大きくため息を吐き出した。 「なあ相棒、もう止めていいかい? なんか疲れるんだよねこれ。変に注目浴びるし」 「駄目だ! っつーか声と口調戻さないの!」 「ふえ……ごめんなたい、サイトおにいたん」  涙目になって謝るデルフリンガー。瞬時にこの切り替えである。 「くおーっ! プロだ、プロすぎですよデルフリンガーさん!」 「おにいたん、こういうのしゅきなの?」 「だいしゅき!」 「そうなの。えへへ。うれしいな」  にっこりと、いかにもご機嫌な感じに笑ってみせるデルフリンガー。 (もう辛抱たまらんッスデルフリンガーさん……!)  少し息を荒げる才人の前でも、デルフリンガーは大人しくにこにこと笑っている。  本物の子供相手ではこうはいかないはずである。最高。デルフ最高。 「……いや、こんな可愛い女の子にデルフリンガーはないな。ちょっともじって……  よし、この形態のときのデルフはデルフィと呼ぶことにしよう」 「それ、わたちのおなまえ? わあい、うれしいなあ。ありがとう、サイトおにいたん」 「くふーっ……よ、よし、じゃあおにいたんとちょっとお話しようかデルフィ」 「うん、いいよ、おにいたん」  嬉しそうに、小さな体全体を使うように大きく頷くデルフリンガー。  これが元々親父的な感性を持つ剣であることなど忘れかけながら、才人はまた腕を組んで唸った。 「えーと、じゃ、何の話を……」 「……ねえ、サイトおにいたん」 「ん、なに?」  デルフリンガーは下を見つめ、口を尖らせながら地面を蹴っていた。  いじけたようなその姿勢のまま、上目遣いでこちらを見上げながら問いかけてくる。 「おにいたん、デルフィのこときらい?」 「え、いや、嫌いな訳ないって。すき。もうだいしゅき!」 「ほんとう? でもおにいたん、あんまりデルフィとおはなししてくれない。デルフィ、さみしいの」 「いや、そんなことは……」 「だって、ルイズおねえたんといっしょにいるとき、いっつもデルフィのことむしするもん。  おにいたん、ほんとうはデルフィのことじゃまだとおもってるのね。デルフィかなしいの」  段々と声に涙が滲んでくる。その内目元をこすって泣きじゃくり始めたデルフリンガーの姿に、才人は胸を貫かれた。 (な、なんてこった、こんな小さな女の子を泣かせちまうなんて! 俺は卑劣漢だ、ロクデナシだ!)  デルフリンガーの演技の巧みさに、才人はもうそもそも何でこんなことをしているのかも忘却の彼方に捨て去った。  泣きじゃくるデルフリンガーのそばに屈みこみ、視線を合わせながら必至で彼を……いや彼女をなだめる。 「そんなことないよデルフィ。おにいたん、お前のこと大好きだよ」 「うそつき。サイトおにいたんのうそつき。おにいたん、ルイズおねえたんの方がしゅきなんでしょ」 「いや、そんなことないって。おにいたん、世界で一番お前のことが好きだなあ」 「ほんとう?」 「ホント、ホント」 「じゃあね、いちにちいちじかんはデルフィとおはなししてほしいの」 「分かった分かった、もう一時間でも二時間でも好きなだけ話してやるよ」 「わあい、うれしいな。デルフィねえ、ずっとさみしかったの」 「そっか。ごめんな、寂しい思いさせちまって」 「ううん、いいの。これからもずっといっしょだよね、サイトおにいたん」  邪気のない瞳でにっこりと見上げられて、才人は地面を転げまわりたくなるほどに身悶えた。 (もう駄目だ。この円らな瞳と一日中見つめ合っていたい。このちっちゃなお手手といろいろ手遊びしてみてえ。  肩車してキャアキャア騒いだり、夜は抱きしめて眠り、日差しが穏やかな休日は草原で膝の上に乗せてお喋りしたい!)  そして才人は唐突にガバッと身を起こすと、デルフリンガーの小さな体にダイビングした。 「だいしゅきだ、デルフィー!」 「あ、それはだめだよサイトおにいたん……っていうか、マジでやべえって相棒!」  おいおいデルフ声と口調戻すなって言ってるだろ……などと考えた瞬間、才人は――

392 名前:こんなデルフは超嫌だ[] 投稿日:2007/05/13(日) 19:07:34 ID:sn8Zj+DJ

「たたた、大変ですよミス・ヴァリエール!」 「なに、どうしたのよシエスタ」 「なんか、サイトさんが大怪我したって!」 「ええ!? どういうこと、また何か変な連中の襲撃!?」 「いえ、よく分からないんですが、デルフさんに抱きついて頬擦りしたとか何とか……」 「……何やってんの、あの馬鹿は」

「いやあ、災難だったね相棒」 「デルフ、もうちょっと早く警告してくれよ頼むから!」 「まあまあ、良かったじゃないの腕も脚も顔も無事なんだし」 「ったく、お前がノリノリになるから……」 「いや、っつーか俺相棒もふざけてるんだと思ったんだよな。まさか本気で俺っちの演技に参っちまってるとは思わなくてよ」 「へん、別に参ってねえやい」 「……ひどい、やっぱりうそついたんだ、サイトおにいたん」 「げっ、デルフ、てめえまた声変えやがって」 「そんなこわいこえだしちゃいやぁ」 「……く、クソッ、もう騙されねえぞ俺は」 「ひどい、サイトおにいたんのいじわる……えーん、えーん」 「……だーっ、悪かったよ。機嫌直せよデルフ」 「デルフじゃないもん、デルフィだもん」 「おいデルフ、お前いい加減に」 「やだやだ、デルフィって呼んでくれなきゃやーだ!」 「……わーったよ、デルフィ。ほら、これでいいか?」 「わーい。ありがとう、だいしゅきサイトおにいたん」 「ちっ、全く……あれ、なんか今扉が開いて」 「……サイト」 「げえっ、ルイズ!」 「あんた、なんか今小さな女の子と話してなかった?」 「ち、違う、これは孔明……いやデルフィの罠で」 「あ、その女の子なら相棒がさっき窓から逃がしたよ嬢ちゃん」 「デルフ、てめえ!」 「どうやらお仕置きを日課にしなくちゃならないらしいわね、わたしは……」 「いや、やめて、許してルイズおねえたーっん!」 「何がおねえたんだこのクソ犬があぁぁぁぁぁぁっ!」  そんなこんなでいつも通りの馬鹿騒ぎを眺めながら、「今度鞘に突っ込まれそうになったら、その度に声を変えよう」と  決意するデルフリンガーであった。

「ちくしょうデルフ、後で覚えてろよテメエ」 「おこっちゃいやよサイトおにいたん」 「この野郎……」 「ねえおにいたん?」 「なんだよ」 「ほんとうは、いつものおじちゃんみたいなのがうそで、  ほんとうのデルフィはこっちのほうなのっていったら、おにいたんうれしい?」 「なんですと!?」 「いや冗談だよ冗談。いやー、いちいち反応が面白いね相棒」 「……いやしかし、実際人間のときの仕草が全く違和感なかったし、デルフ、お前まさか本当に……」 「まさかね。いやどうだかねー。俺剣だから分かんないねー」