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「たーすーけーてー!」

大気をつんざく女の悲鳴。 その声の主は青い髪をなびかせ、中庭で芝生に腰を下ろしてくつろいでいた才人のところへやってきた。

「どーしたシルフィード?またなんか悪さしてタバサに怒られてんのか?」 「違うのね!だいたいそんなカンジだけど違うのねー!」

言ってシルフィードは才人の背中に隠れ、丸くなってガクガクブルブルと震えだす。 青ざめたその顔には、死の恐怖がありありと見て取れた。

「シルフィまだ死にたくないのねー!きゅいー!」



事は約2時間前に遡る。 タバサは椅子に腰掛けて、既に自分のマニュアルと化した、『素直になれない女主人』の最新刊を読みふけっていた。 すぐ隣ではシルフイードが床に寝転がって、こちらは既刊だが、同じものを読んでいた。 シルフィードが読んでいるのは、友人の結婚式に呼ばれて、「まだ結婚しないの?」と聞かれた女主人が、つい口を滑らせて「私にも婚約者の一人や二人!」と言ってしまい、執事となんとなく疎遠になって慌てるくだりであった。 …素直に『好き』って言っちゃえばいいのに。 この本を読み始めて最初に思わずそう突っ込んだら、タバサに何故か怒られたので何度そう思ってももう突っ込まない事にした。口では。 当のタバサはといえば、花嫁修業の一環で作った手料理が思いのほかうまくいき、執事に感動されて女主人が有頂天になるシーンを読んでいた。


「お、お父様とかお母様に食べさせてお腹壊したりしたらあんまりだから、あ、あんたが片付けなさい」

長いブロンドを揺らし、早まる脈を抑えながら、女主人は執事に言った。

「…お嬢様、味見はされましたか…?」

真っ黒なソースのかかったその揚げ物らしき物体を眺めながら、執事はゴクリと喉を鳴らす。 もちろん食欲からではない。その物体を口に含む想像からくる恐怖が原因である。

「す、するわけないじゃない!毒見は執事の役目でしょうが!」

思わず本気で怒鳴ってしまう。なんで私っていっつもこうなんだろう。女主人はちょっと自己嫌悪に陥った。

「はは…すでに『毒見』なんですか…」

まあ言っても始まらないけど。執事は既に諦めの境地に達していた。 その所々黒く焦げ、香ばしすぎる匂いを放つ、しかもどろどろの真っ黒なソースのかかったソレを、執事はフォークで刺し、口元に運ぶ。 その様子を、女主人はまるで神に祈るように胸元に両手を組み、見つめる。

ざく…。

重い音を立てて、執事の歯が女主人の作品を噛み砕く。

ざく、ざく…ごくん。

「…あれ」

執事の目が点になる。きょとんと呆けたように女主人を見つめ、そして作品をもう一度見る。 女主人の顔が、一瞬で真っ赤になり、そしてそのまま思った事を口にしてしまう。

「な、なによ!マズいならマズいってはっきり言いなさいよ!」 「い、いや…そうじゃなくて…」

執事はぽりぽりと頬を掻き、主人の言葉を否定した。

「おいしいですよ、コレ」 「ま、マズくて悪かったわね!…え?って?」

思わず聞き返す女主人。執事は律儀にもう一度言った。

「おいしいですよコレ」 「ちょ、そんな、無理してお世辞なんて言わなくても」 「おいしいです。いいお嫁さんになれますよ、ご主人様」

言って執事は残りの作品にも手を出し始める。 おいしそうにソレを頬張る執事を見ながら。 女主人の頭の中では、執事の朝ごはんを作る、執事の『お嫁さん』になった自分の生活が展開していた。三か月分くらい。


…こ、これだ…! タバサはぱたんと本を閉じ、たった今舞い降りた天啓を即座に自分と才人に置き換えてシミュレートする。

『シャルロット、おいしいよコレ!』 『お世辞はいい』 『お世辞じゃねーよ。いいお嫁さんになれるよ。もちろん俺の』

きたああああああああああああああああ! タバサは椅子から立ち上がり、早速計画の実行に必要なものを頭の中で纏める。 そしてその必要なもののうち一つは。 自分の隣で本を読むのに飽きて、積み上げた本を枕に居眠りをしていた。


シルフィードが目を覚ますと、目の前にタバサが座っていた。 その手には、一枚の皿と、その上に『何か』が載っている。 その『何か』は赤と黒の混ざった色をしており、こんもりと皿の上に盛られていた。 タバサはそれを、シルフィードの方へ突き出している。

「…?これナニ?お姉さま?」

シルフィードはちょっと興味を引かれて、匂いを嗅いでみる。 そして眉をしかめた。

「ぐえ」

人の数倍のシルフィードの嗅覚が告げる。 この物体は危険だ。近づいてはならない。 口 に 入 れ る な ど 持 っ て の 外 だ。 上半身だけを起き上がらせた状態で、シルフィードは後ずさる。

「どうして逃げるの」

無表情なまま、タバサはにじり寄ってくる。 あの赤黒いものを抱えたまま。

「ひ…!」

そしてシルフィードは立ち上がり。

「いやあああああああああああああ!」

逃げ出したのだった。

これが、事の顛末である。


「シルフィまだ死にたくないのねー!きゅいー!」

そんな事を言いながらシルフィードは俺の背中でガクブルしている。 …ったく、大げさだな。たかがお仕置きだろうに。 そんなことをしていると。

「おい、シルフィード、どうやら年貢の納め時みたいだぜ?」

俺は中庭の入り口を指差す。 そこには、シャルロットがいた。 ん?手になんか持ってる?皿の上になんか載ってる? ま、でもとりあえず。

「よ、シャルロット」

中庭には他に誰もいなかったので、俺はシャルロットを本名で呼ぶ。 名を呼ぶとシャルロットは俺に気付いて、俺の方へやってくる。 で、シルフィードはといえば。 俺を盾にするように、俺の背中でガクブルしている。 …ぱっと見、怒ってるようには見えないんだが。 シャルロットは俺の方に歩み寄ってくると、手に持っていた『何か』を突き出してきた。

「何?」

なんだろうこれは。 例えるならそれは、大盛りのチャーハン。イカスミ味の。 その上に、トマトケチャップを遠慮なく1本ぶちまけたらこういう感じになるだろうか。

「…作った」

ちょっと頬を染めて視線を逸らしながら、シャルロットはそう言ってその皿を俺に突き出す。 …ひょっとして料理かこれ。 まあ、こっちの世界の料理なんだろうな。よくわかんないけど。

「俺が食べていいの?」

俺はその皿を受け取って、シャルロットに尋ねる。 シャルロットは嬉しそうに頷き、俺に皿を渡した。 その時。

「だ、ダメなのねサイト!それは食べ物じゃないのねー!」

シルフィードがいきなり後ろから飛びついてきた。 おっと!あぶね!落とすとこだった。 その言葉を聴いたシャルロットの顔から表情が消える。 そしてすたすたと無言のまま俺のほうに、俺に抱きついたシルフィードめがけて、歩いてくる。 …なんか妙な迫力だなおい。 近寄ってくるシャルロットに、それでもシルフィードは俺から離れない。 …そうやって首に抱きつかれると苦しいんですが。

「わ、私はお姉さまもサイトも好きなのね!だから警告してるのねー!」 「…黙れ」

すっこぉん!

言って物凄い勢いで突き出されたシャルロットの杖が、小気味いい音を立ててシルフィードの眉間にクリーンヒットする。

「いったーい!」

その痛みでシルフィードは俺から離れてうずくまる。 うずくまったシルフィードの前に、シャルロットがゆらりと立ちふさがる。

「…お仕置き」

言って振り下ろされたシャルロットの杖を華麗に避け、シルフィードは逃げ出す。

「警告はしたのね!あとはサイトの問題なのねー!」 「…黙れと言った」

そしてシャルロットは逃げ回るシルフィードを追い回す。 …まったく、仲がいいんだか悪いんだか…。 そして俺は。 手の中の、『イカスミチャーハンもどき(仮)』を眺める。 …んーまあ、こういう料理なんだって言われりゃ納得できないでもないな。 日本には、『甘口イチゴスパゲッティ』とか『辛口マンゴーフラッペ』とかいう理解に苦しむメニューもあるし。 ちょっと匂いを嗅いでみる。 …んー、ちょっとスパイシーだけど…。 アレだ、この赤いのは香辛料かなんかなんだろうな。するってえとスタミナ系? 俺は脇に添えられていた木のスプーンを手にして、『イカスミチャーハンもどき(仮)』を一口分、掬う。 まあ、黒い穀物ってのがちょっと気になるけど。 日本にも古代米とかいうのが健康食ブームで出てたし。 ま、マズかったら一口で止めればいいだけだしな。


ぱく。


ん? なんじゃこりゃ? 味がしないぞ?


ぱく。


もう一度口に入れて、今度はよく噛んでみる。 んー?噛めば噛むほど味が出てくるような? おいしいかも?


ぱく、ぱく。


うん、うまいかも。いけるかも。 何か目の前がチカチカするし。おいしいかもこれ〜。


ぱくぱくぱくぱくぱくぱく


かゆ                                        うま



一通りシルフィードをボコボコにし終わると、タバサは才人を振り返る。 その時既に才人の手の中の皿はからっぽで。 そして。 タバサがそれを確認すると同時に。 才人は顔を白黒させてぶっ倒れたのだった。 タバサは慌てて才人に駆け寄り、上半身を抱き上げる。 才人の顔は土気色に染まり、大量の汗をかいている。 まずい! タバサは慌てて『レビテーション』の魔法を使い、才人の身体を持ち上げ、自室へ運んだのだった。


部屋に戻ると、タバサはまずベッドに才人を横たわらせた。 一見眠っているように見える才人の口元に耳を寄せ、呼気を確認する。 呼吸が止まっていた。 タバサは慌てて才人の顎を上げ、気道を確保する。 そして、少し躊躇った後。 思い切り息を吸い、才人に息を吹き込んだ。 タバサは肺の中の酸素を全て才人に送り込むと、一端口を離した。 まだ、才人は息を吹き返さない。 タバサは才人の胸に軽く手を当てると、胸の中心部より少し下を、思い切り押した。 何度か体重をかけ、思い切り押す。すると。

「ごほっ!ごほっ!」

今度は、息を吹き返した。

「サイト、大丈夫?」

上半身を持ち上げ、咽こむ才人に、タバサは心配そうに寄り添う。 才人の鼻先で、タバサの青い髪がふわりと揺れ、彼女の香りが才人を覚醒させる。 才人の目が、タバサを捉える。 その瞳はどこか虚ろで、いつも宿っているものとは別の光を宿していた。 タバサはすぐに異変に気がつき、才人から離れようとする。

「あっ」

しかし、それは適わない。 才人が勢いよく、タバサを抱き寄せたからだ。

「さ、サイト…」

抱きしめられるう腕の力に、タバサの喉から息とともに才人の名前が零れ出る。 しかし才人は苦しそうなそのタバサの声を聞いても力を緩めない。

「ふぅー、はぁー、はぁぁ…」

才人は抱きすくめたタバサの耳元で、荒い息をついている。 その吐息は、飢えた獣のそれに酷似していた。 才人の異変に、タバサは思い当たる。 …料理に混ぜた…アレのせい…! 微量しか加えていなかったのに、熱を加えたせいで何か変化が起きた…? そう分析する間にも、才人はきつくきつくタバサを抱きしめる。

「かはっ…!」

みしみしと体が軋むほど抱き締められ、タバサの肺から空気が完全に搾り出される。 一瞬、タバサの意識が遠のく。 その一瞬の間に、タバサはベッドに組み敷かれる。

「はぁー…、はぁー…、はぁー…」

才人は虚ろな目で荒い息をつき、タバサを見つめる。 その手がタバサの上着にかかる。そして。

ぶちぶちぶちっ!

ボタンを引きちぎり、タバサの上着の前がはだけられる。 雪のように白い肌と、桜色の突起が露になる。

「やっ、サイトっ」

抵抗しようとタバサは才人の身体を両手で押す。 しかし才人はその両腕を乱暴に掴むと、強い力でタバサの腕をベッドのシーツの上に押し付けた。

「うぅ…がぁぁ…」

才人の瞳は完全に獣のソレになっていた。 吐かれる吐息は熱く湿って、タバサのむき出しにされた起伏の少ない胸を撫でる。 そしてその舌が、タバサの胸を撫でる。 タバサの背筋を悪寒が走る。 それはいつもの才人の愛撫と違い、優しさのカケラもなかった。

「やめ、て…」

しかしタバサのその声も、今の才人には届かない。 才人はタバサの肌の味を確かめるように舐めまわす。 やがて、タバサの身体に変化が訪れる。 舌の圧力に負けていた小さな肉の芽が、硬くなり始めたのだ。

「ふぅ、あっ…」

乱暴な行為を否定する理性が折れ始める。 たとえ獣のような行為でも、相手は才人なのだ。 才人はタバサの両腕から手を離す。 そして、牝の本体の眠る下半身に目を付けた。 タバサはそんな才人を見つめて、言った。

「サイト…」

才人はそんなタバサには耳を貸さず。 タバサの股間を覆う、小さな布に手を掛け。

ビィィィィィッ!

力任せに引きちぎる。 タバサはそんな才人に、されるがままだ。

「サイト…」

潤んだ目で、タバサは才人を見つめる。 才人はズボンを脱ぎ去ると、タバサの膝を乱暴に割り開き、そそり立つ牡をタバサの入り口に押し当てた。 突然タバサは上半身を起こし、才人の首筋に抱きつく。

「ごめん…サイト。  私のせいで…こんなに…」

才人はタバサの言葉など一切聞こえないかのように、己の欲望がまま、タバサを貫く。 まだ潤う前にタバサの入り口は、肉の摩擦をもって才人の侵入を拒む。 その摩擦に、タバサの顔が苦痛に歪む。 そのまま腰を使い始めた才人に、タバサは続けた。

「いいよ…犯して。  サイトの、気の済むまで…」

そして、愛のない欲望だけの交わりは、才人の欲望がタバサの中に入りきらなくなるまで、続いた。


目が醒めると、スゴイ臭いがしていた。 …あ、あれ?俺なにしてたんだ? シャルロットの料理(仮)を食べてからの記憶がない。 重い頭を振りながら、俺は身体を起こす。 そして。 すぐ隣で眠っている、精液まみれのシャルロットに気付いた。

えーーーーーーーーーーーーーーーー!?

ま、待て、この状況から察するに! 俺がやっちゃった?

「う、あ…」

俺が起きたのに気付いたのか、シャルロットも目を覚ます。 俺は慌ててシャルロットを抱き上げる。 精液でぬるぬるするけど、今は気にしてる場合じゃない。

「だ、大丈夫かシャルロット!」 「あ、サイト…」

タバサはぼんやりと俺を見つめて、ちょっと微笑んだ。 あ、ヤベ。 精液まみれのシャルロットなんかものすっげエロい。

「ひょ、ひょっとして、これ俺が?」

その質問にシャルロットは首を振る。

「私のせい」 「え、でも」 「私の料理のせいで、サイトがヘンになった。  だから、私のせい」

…シャルロットはそう言ってくれるけど。 シャルロットの身体のあちこちにできた赤い痕が、俺の行為の酷さを物語っていた。 俺はそんなシャルロットが愛おしくなって。 優しく抱き締めた。

「サイト…」 「ごめんな、シャルロット」

シャルロットはそんな俺を優しく抱き締め返してくる。 そして、そんな風に密着すると。

「あ…」 「ご、ごめんシャルロット、べ、別にそういうつもりじゃ」

元気全開になった俺のアレが、シャルロットの身体にヒットするわけで。 俺は慌ててシャルロットの身体を引き剥がす。 でも、シャルロットは。 たぶん、さんざん俺にヤられちゃった後だろうというのに。

「いいよ…」

少し赤くなって、俺を見つめる。 いや、でも、あの。

「いやでも散々しちゃったあとみたいだし!」

俺のその言葉は結局、意味のないものになってしまう。

「でも、前は一杯だから…」

シャルロットは、俺に背を向けて四つんばいになると。 まだ俺の精液が零れだす割れ目の上にある、小さな穴を広げて、言った。

「後ろで、して」

すいませんごめんなさい。 ゴチになりまーーーーーーーす♪


「いいですかミス・ヴァリエール、料理のコツはたった一つ。  『レシピを守る』!これだけです!  料理を失敗する原因は、手抜きや余計な創意工夫にあります。  手間をかけて手順を守れば、料理なんて簡単なものなんですよ」

その時厨房では。 ルイズが一生懸命シエスタに料理を教わっていた。

「ちょっと待ってシエスタ、今なんかすごいイヤなカンジが」 「誤魔化さないでくださいミス・ヴァリエール。  だからサンドイッチに妙な食材使わないでくださいってば!」 「な、なによ!煮詰まっっちゃったシチューを挟んで再利用しようってのよ!何が悪いの!」 「そもそもそのシチューの材料なんなんですか!」

そしてルイズの部屋に戻った才人はルイズの料理で別の意味で天国を味わう事になるのだが。 それはまた別の話。〜fin