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最近、タニアは朝が嫌いだ。特に皆と一緒に採る朝食の時間。 なるべくなら、朝は別に採りたい、とすら思うようになっていた。 その理由は。

「ねえサイト、どっちだと思う?」 「何が?」 「やだもう、分かってるくせに…」 「俺は女の子がいいな。テファそっくりの可愛い娘」

妊娠したのがわかってから、公然といちゃつくようになったこの二人である。

「やだサイトったら、冗談ばっかり」 「冗談でこんなこと言わないよ」

今朝のスープには砂糖でも入っているのだろうか? タニアはスープを掻き込みながら、まるで砂糖をまぶした蜂蜜を舐めたかのような顔をした。 二人のアホ面を、特にデレまくる才人を見るにつけ、一時でもこんなの好きになったのは気の迷いだったんだ、とタニアは思っていた。

「ごちそうさまっ!」

空になった皿とスープ皿をまとめて、タニアは席を立つ。

「タニアねーちゃん早っ!」 「ちゃんとかまないとおいしくないよー」

ジムやサマンサ、その他子供達の非難を浴びながら、タニアは食堂を後にした。

「まったく…誰かあのバカップルなんとかしてくんないかしら…」

食事の後片付けを終えたタニアは、日課の兎狩りに出かけた。 狩猟用の、しっかりした造りの短弓を持ち、小さな矢の入った矢筒を腰のベルトに差す。 タニアは、村で唯一弓を扱える子供だった。 というよりも、おもちゃの弓で遊んでいるうちに、弓の扱いを覚えたのだが。 それでも彼女の腕は確かで、犬もいないのに三回に一度は必ず、猟果を挙げてくる。 この弓であのバカップルどもの脳天をブチ抜いてやろうと思った事もある。 でも仮にも育ての親である。そういうわけにもいかない。

「…ほんと…頭さえ沸いてなきゃいい人たちなのよねえ…」

言いながら村を出て、道沿いに兎の巣のたくさんある狩猟ポイントへ向かう。 しばらく道沿いに進むと。 奇妙な二人組みが道の向こうからやってきた。 大量の荷物を背負った黒髪のメイドと、フードを目深にかぶった桃色の長い髪の、背の低いおそらく女。 道に迷ったおのぼりさんかしら、とタニアが思っていると。 二人はこちらへ気付き、近寄ってくる。 …怪しい人だったら弓でなんとかしないとね。 軽く警戒しながら、タニアはその二人に手を振る。

「どうしました?道に迷いました?」

道に迷った旅人にかける台詞で、タニアは二人に話しかける。 二人はある人物を探しているのだと言い、そしてその人相をタニアに告げる。 タニアはその人物を知っていた。 そして気付く。 この二人は救世主だ。 この二人を村に連れて行けば。 きっと明日からは、おいしい朝ごはんが食べられる…! そしてタニアは、二人をウエストウッドの村へ案内した。 249 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 03:18:29 ID:al9RE2S0 ウエストウッドの村には、季節外れの嵐が吹き荒れようとしていた。

村の入り口にやってきた余所者に気がついたのは、洗濯物を干しに出ていたティファニアだった。 才人は妊娠しているティファニアを気遣って、重い仕事は全て才人が請け負っていた。 今才人は、果物を採りに東の森に出かけていた。 ティファニアは外出用の大きな帽子をかぶり、二人に近づいていく。 ぱっと見、二人連れの、女の子の旅人のようだ。 それでも一応警戒しながら、ティファニアは二人に近づいていく。

「あの、この村には宿も何もありませんよ?」

ティファニアは二人から一定の距離を取り、いつでも叫べるように警戒する。 才人に言われて、知らない人間にはこうするようにしているのだ。 『もう自分だけの身体じゃないんだからな』…だって!だって!

「あの、どうかなさいましたか?」

二人のうち黒い髪のメイドが、赤くなって回りだしたティファニアを奇妙な生き物を見る目で見つめる。 …いけないいけない。 ティファニアは我に返り、二人に今一度尋ねる。

「この村に、何のご用件でしょう?」

その質問に、黒い髪のメイドが応えた。

「あなた、ご存知ないかしら」

言って、上着のポケットから一枚の羊皮紙を取り出す。 そこには、ある男の人相書きが認められていた。 それは、どこか間の抜けた冴えない、黒髪の少年。 それほど上手な絵ではなかったが、ティファニアにはその少年を知っていた。 そして、後ろに控えていた桃色の髪の少女が、それに続けた。

「この男の名前は、サイト。  サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ。  先のアルビオン大戦で、行方不明になった、トリステインの騎士よ」

そう、それはまさに才人だった。 ティファニアは思った。 この人達の目的がなんであれ…サイトを渡すわけにはいかない。 私の大切なひとを。 生涯の伴侶を。 …ヤダ私ったら何言ってるのかしらまだ式も挙げてないのに!

「あの、大丈夫ですか?」

再び赤くなってくるくる回りだしたティファニアを、黒髪のメイドの一言が再び止めたのだった。 263 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:49:51 ID:al9RE2S0 その時、才人は。 がっつり果物を採取して、村に帰ってきていた。

「ちょっと頑張りすぎたかな」

果物を満載した荷車を見ながら、才人は言う。 そのまま町で果物屋を開けそうな物量だ。 そんな才人に背中に背負われたデルフリンガーが突っ込んだ。

「やりすぎだぜ相棒?この辺の果物が全部無くなっちまうかと思ったぜ」 「俺もあと1年後にはパパだからな!気合い入れないとな!」 「人の話聞けよ…っつーか少しは自重しろこの種馬」 「二人目は年子がいいかな?それともちょっと離したほうがいいかなっ?」 「はいはいわろすわろす」 「あー、双子だったりしたらそんなの意味ないかぁ。あははははははははは」 「…うわマジ無視かいこいつ」

呆れたようにデルフリンガーがそう言い終わるのと、才人の牽く荷車がウエストウッドの村に着いたのが同時だった。

「ただいまー、今日もお父さんがんばっちゃったよぉ」

誰がお父さんやねん、と突っ込みたいデルフリンガーだったが、絶対無視されると確信していたので敢えて突っ込まずに居た。 そして、才人はニコニコ笑顔で荷車を倉庫前に運ぶ。 そしてそこで、運命が動き出す。

「…ずいぶん幸せそうねえ、犬」

風が吹いた。 その風は才人に声を掛けた、フードを目深にかぶって厚ぼったいマントに身を包んだ少女の、フードを吹き上げる。 それと同時に、少女の柔らかい桃色の波打つ髪が、柔らかく風に舞う。 才人は知っていた。 この声を。この桃色の髪を。この少女の名を。

「ルイズっ!?」

その声に応えるように。 少女の目がぎらり、と光る。 それは、獲物を見つけた肉食獣の目だった。

264 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:50:34 ID:al9RE2S0 才人はその視線と久しぶりに感じる戦慄に、完全に硬直してしまう。

「見つけたわよこのバカ犬!  もー逃がさないわよっ!」

言ってルイズは両手をわきわきさせて才人に飛び掛ろうとする。 それを、背後から伸びてきた、白い手が止める。

「ルイズ。あなたがそんなことしちゃいけませんよ」

そして、ルイズの前に立ったのは。 黒髪の、メイド。

「し、シエスタっ!?」 「お久しぶりです、サイトさん」

にっこり笑って、シエスタは軽く首をかしげる。 その両手には、大きなバスケットが抱かれている。

「ちょ、シエスタ、私はコイツにっ」 「落ち着いてルイズ。身体に障るわ」

言ってシエスタは優しい笑顔で今にも才人に飛び掛ろうとするルイズをなだめる。 …まて、なんでシエスタがルイズを呼び捨てにしてんだ? それに、あの二人あんなに仲良かったか? 才人がその疑問をぶつける前に、シエスタが話しはじめた。

「サイトさん…あなたがいなくなってから、いろいろあったんですよ」 「いろいろって…?」 「まず。トリステイン王家に、世継ぎが生まれました」

シエスタの言葉に、才人は驚く。

「え?姫さま、結婚したんだ…?」 「いいえ」 「え」

結婚してないのに、世継ぎってことは…? 可能性は一つ。しかしそれは、才人にとって否定するべきものであった。

「女王陛下は、結婚していません。でも、陛下は身篭っていたんです。  陛下は、行方不明になった、ある人が残した種だと、言っていました」

才人の身体から、汗が吹き出る。 まさか。まさか。

265 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:51:17 ID:al9RE2S0 シエスタは、淡々と続ける。

「公式に相手が誰という発表もなく、相手のはっきりしない子供を生んだという事で女王陛下は糾弾されましたが…。 『愛した殿方の子を生むということが罪だというなら、その罪は私が負いましょう。  しかし、その事を盾にわが国とこの子を貶めようと言うのなら、その相手を私は全力で滅ぼします』と。  母の愛って偉大ですよね」

才人の脂汗は最高潮を迎えていた。 まずい。やばい。あの夜のアレが大当たりですかまさか!? シエスタはにこにこと笑顔のままだ。しかしその笑顔は微動だにしない。 ルイズはその後ろで俯いているだけで何の言葉も発さないが、震える両の拳が彼女の気持ちを代弁していた。 三人の間に流れる緊張が最高潮に達そうとした瞬間。

びええええええええええええええ!

突然、空気を振るわせる咆哮が辺りに響いた。 それは甲高く、人の注意をそちらへと喚起し、そして保護欲を刺激する声だった。 分かり易く言うと、赤子の鳴き声。 それは。 シエスタの抱えた、大きなバスケットの中から響いていた。

「あー、はいはい、おなかすきまちたかー?」

シエスタはバスケットを一旦地面に置くと、中身を取り上げた。 そこから現れたのは。 黒髪の、小さな小さな赤ん坊。 赤ん坊はシエスタの腕の中で、泣いて自己主張を続ける。 ゑ。アレナニ。ましゃか。 才人の頭の中で、名探偵サイトがあの赤ん坊に関する推理を繰り広げていた。 あの赤ん坊は、そう、ここに来る途中でシエスタが拾って、面倒を見ている子供だ! それが証拠に シエスタは赤ん坊を揺らしながら、無遠慮に胸元をはだけた。 そして。

「ほーら、たっぷりのむんでちゅよー」

大きく張った乳首を、赤ん坊の口元に持っていく。 赤ん坊は小さな手でシエスタの乳房に掴まると。 乳首を口に含んで、んくんくと喉を鳴らし始めた。 シエスタの乳房からは、確実に母乳が出ていた。

「あ、あの、シエスタさん?」

才人は先ほどにも倍する脂汗をかきながら、シエスタに尋ねようとした。

267 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:52:38 ID:al9RE2S0 才人が本文を口にする前に、シエスタは応えたのだった。

「あ、この子、ハヤトっていうんですよ。  サイトさんの名前と、語感を合わせて名づけたんです。  ほーらハヤト、この人が  パ パ で ちゅ よー」

ま───────────────て────────────! ちょっとまて───────────────────! こっちも大当たり───────────────────ッ!? シエスタがにこにこ笑顔で赤ん坊の顔を才人に向けるが、赤ん坊は完全に無視して一生懸命シエスタのおっぱいを飲んでいる。

「…この子生んでたから、ちょっと出発が遅れちゃって…えへ」

軽く赤くなって、シエスタはそう言う。 そんなシエスタを、ルイズが押しのけた。

「『えへ』じゃないわよシエスタ!  アンタここに何しに来たのか忘れたわけ?」

ものすごい剣幕でシエスタに噛み付くルイズ。 そんなルイズを、シエスタが宥める。

「ちょっとルイズ。そんなに怒っちゃ…」 「これが怒らずにいられるわけないじゃないの!  やっとこの節操なしに文句言ってやれるってのに!」

言ってルイズはびしっ!と才人を指差す。 …ん? 才人は異変に気付いた。 …ルイズ太ったな? 才人の受けた印象の通り、ルイズのシルエットは丸かった。特にお腹の辺りが。 才人の記憶しているルイズは、こんなにぽっこり膨らんだお腹をしていなかった。 …ッテチョットマテ。

268 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:53:39 ID:al9RE2S0 シエスタと口論を続けるルイズは、ついにばさぁっ!と身に纏っていた厚ぼったいマントを払いあげた。 その下は。 ルイズは見慣れたトリステイン魔法学院の制服ではなく、下腹部を圧迫しないよう縫製された、長いスカートの野暮ったいワンピースを着ていた。 その下腹部は、まるで妊婦のようにぽっこりと膨らんでいた。

「…何見てんのよ」

赤い顔で、ルイズは凝視する才人に文句を言う。

「あ、あああああああああのルイズ、そそそそそそそそそそそのお腹…」

才人の声は震え、うまく言葉にならない。 ルイズは赤くなって、ぷい!と顔を逸らす。 そして、言った。

「あ、あんたの子供に決まってんでしょ!  安定期に入るまで動き回るなって、お医者さまが言うから…。  って何説明させてんのよっ!」

怒るルイズにしかし、才人は完全に固まっていた。 あ、あの、ここまで大フィーバーってマジありえないんですけど…。

「こういうの『確変』って言うんだよな?すげえな相棒」

デルフリンガーの突っ込みにも、才人は応えられない。 そんな才人に、シエスタがルイズを抑えながら言った。

「ルイズは落ち着いて、ね?お腹の赤ちゃんに障るわ。  あの、サイトさん。  ルイズね、相手のいない赤ちゃん孕んだからって、勘当されちゃったんです」

言ってルイズを見る。 ルイズは、二人から視線を逸らしているので、表情が見えない。 しかし、ルイズはそのまま言った。

「そ、そうよ、アンタが悪いんだから!  アンタのせいで私は貴族の身分まで捨てる事になったのよ!責任とんなさいよ!」

シエスタはそんなルイズの言葉を聴いてくすっと笑うと。

269 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:54:46 ID:al9RE2S0 「でもルイズったら、『絶対産みます!例え貴族の身分を捨てても、この子は私が信じたひとの子ですから!』って啖呵きって。  すごかったんですよぉ」 「ちょ、シエスタ、何勝手にしゃべって」 「その剣幕があんまりすごいから、ルイズのお父上も折れて、勘当はするけど、トリステインで最高のお医者様を付けてくださって」 「し、し、し、し、シエスタあああああああああああああああ!」 「しかもー、そのお医者様が『ちゃんと産むまでは安静にな』って言ってたのにー、安定期に入ってガマンできなくなってー、『サイトを捜しに行く』ってー」 「ししししししししししししシエスタああああああああああああああああああああああああ!  いいいいいいいいいいいいいいいいいいいい言い加減なこと言うんじゃないわよおおおおおおおおおおお!」 「いい加減じゃないですぅー。全部事実ですぅー」

言い合いながらじゃれあう二人を、才人はじっと見つめる。 才人の中では、必死に現実を否定する才人が居た。 …あ、あの、なんですかこれわ。タチの悪い淫夢かなんかっすか。 そ、そうだ、きっとこれは夢だ。 目を覚ませば、俺はやわらかい藁の上で寝ているに違いない。 目を覚ませ俺。早く!早く早く早く早く早く早く早く早く!

「現実を見ようぜ相棒ー」

固まったまま動かない才人に、デルフリンガーがそう言う。 そして、もう一つの声が、才人の意識を完全に現実に引き戻す。

「サイト」

才人の背後からかけられたのは、鈴を転がすような、澄んだ声。 振り向くと、そこにいたのは。

「て、テファ」

俯いた、ティファニアがいた。 ま、まさかさっきの聞かれてた?

「あ、あの?」

ティファニアは、才人の声に顔を上げる。 その顔は、笑顔で満たされていた。

270 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:55:38 ID:al9RE2S0 「あの人たちね、サイトを捜しに来たんだって」 「そ、そうみたいだね」

脂汗とともに、才人は応える。 ティファニアは笑顔のままだ。

「サイト、知ってる人なの?」 「う、うん、とってもよくご存知です」

才人の脂汗が倍になる。 ティファニアの笑顔は変わらない。ように見える。

「でね、二人に聞いたんだけど」

キタ。 ティファニアはまだその美しい笑顔を崩さない。 しかしその美しい笑顔には、妙な迫力が篭っていた。

「な、なにをお聞きになったんでしょうか?」 「二人とも、サイトの子供がいるって」

ティファニアの笑顔は変わらない。 しかし、その質は完全に反転していた。 いつものティファニアの笑顔を陽とするなら。 今のティファニアの笑顔は、完全に陰と化していた。 よく見ると。 ティファニアは巨大なリュックを背負い、手には外出用の大きな帽子を持っている。 そして、首をこくん、と軽くかしげて、満面の笑顔で言った。

「この、  超伝説級節操なし───────ッ!」

その声と同時に、振り上げた掌を、右から左へ振り抜いた。 すぱーん、と小気味いい音がして、才人の左頬にきれいな手形が残った。 そして、その衝撃で尻餅をついた才人に、ティファニアは言った。

「実家に、帰らせていただきますッ!」 「え、テファ実家って」

才人の疑問に、ティファニアはくるん!と振り向いて、背中で応えた。

「エルフの国!私、エルフの国に行きますっ!」

そして、すたすたと歩き出した。

「あ、待ってテファっ!」

追いすがろうとした才人だったが。

がし。

その肩を、二つの手が掴んだ。 シエスタと、ルイズの手だった。

「どこに行こうっていうのかしら?」 「まだお話は終わっていませんよ、サイトさん?」

そして、遠ざかるティファニアの背中を見ながら。 才人は、二人の肉食獣に完全に捕縛されたのだった。

271 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:56:59 ID:al9RE2S0 結局タニアの朝の不機嫌は解消されたのだが。

「で、どー責任とるのよこの節操なし」 「ルイズだめよ、子供たちもいるんだし、ね?」 「子供『たち』!そー『たち』って所よ問題は!  タバサもなんか大きいお腹抱えて本国に帰ったし!  アンタどんだけ種バラまいてんのよ!」 「ほ、ほら落ち着いて、ね?」 「オチついてられるかぁぁぁぁぁ!」

あれから毎朝毎朝、半分抜け殻と化した才人を、二人の女の子が庇ったり小突きあったりしている。 まあ、朝から甘ったるい会話を聞かされ続けるよりはいいのだが。

「いいぞー、やれやれー」 「きょうはどっちがかつとおもうー?」 「ルイズおねーちゃんー!」 「シエスタおねえちゃんに1ドニエ!」

…子供たちの教育には果てしなくよろしくない。

「はいはい人の喧嘩を肴にしなーい。  ほら朝ごはん片付けてー」 「ちぇー」 「タニアおねえちゃんのけちんぼー」 「はいはいケチでもなんでも結構でございますよー」

言いながら呆れ顔で子供達をどやすタニア。 そんなタニアに、ジムが言った。

「タニアねーちゃん、なんかおばさんくさいぞー」

その言葉にタニアははっとなる。 そして天を仰いで、叫んだ。

「じょおだんじゃないわよっ!  私はまだ十三なのよっ!?  なんでこのトシで子守フラグ立てなきゃなんないわけっ!?」

しかし悲しいかな。 言いながら両手にはしっかりと食べ終わった器を重ねている。 既にタニアが子守で行き後れることは運命といえた。

「いーぃ度胸ねシエスタ!今日こそ決着をつけるべきかしら!」 「それはこっちの台詞です!どっちが本妻か、この機会にはっきりさせなきゃいけませんしねぇ!」 「いーぞー」 「やれやれー」

苦悩するタニアを他所に、すでに恒例となった天下分け目の痴話喧嘩が始まり。 ウエストウッドの村に、平和な日常がやってくる。

272 :華の嵐 ◆mQKcT9WQPM :2007/07/13(金) 23:57:39 ID:al9RE2S0 「で、結局テファお姉ちゃんはエルフの国で子供生んだらしいの。  あっちから定期的に届く手紙で知ったんだけどね。  今?さあ、三年くらい前からかな、手紙こなくなっちゃって。  ま、私も心配かけるようなトシじゃないしね。  タニアお姉ちゃん?まだウエストウッドにいるみたいよ?  私たちはこうしてあっちこっちで出稼ぎしてるけどさ、まだあっちには手のかかる子供がいるのよねー。  そそ。その二人の子供。  結局さ、サイトお兄ちゃんもどっちつかずだったんだけど、最終的にルイズさん選んだっぽいんだけどね?  たぶん今も取り合いしてんじゃないかなー?  ほんっと、いい題材よあの人たち。  私の恋愛譚のネタの半分以上はあの人達題材にしてんの。  あ、それそれ。今売り出し中の『王子様と異界の姫』。  ま、元ネタわかっても知ってるの私と他の子たちくらいだから。いいじゃない。  んじゃ、新刊もよろしくねっ♪」

〜吟遊詩人ヒースクリフの、人気作家エマ氏へのインタビュー記事より抜粋〜