ゼロの保管庫 別館

20-402

最終更新:

familiar

- view
だれでも歓迎! 編集

402 名前: お姫様の憂鬱 [sage] 投稿日: 2007/09/24(月) 00:51:16 ID:RYn9H+bN  それは、小さな体に潜むほんの小さな恋心。  あの人は、私を救ってくれた。氷のような私を、溶かしてくれた。  だから私は誓った。私は従者。私はあの人のために生きる。あの人に、全てを捧げる。私は、あの人のためなら何でも出来る。  あの人のために生きる私は、あの人が幸せであればそれでいい。たとえ誰を好いていようと、あの人が幸せであれば、それでいい。……それで、いい。  授業中だけど、私はあの人の横顔を見る。暇そうな表情で、時折欠伸をしているあの人。欠伸をしたことをご主人様に注意されている人。あの人は笑いながら謝ってて、あの人のご主人様は怒ってる。  でも、私にはわかる。彼女は本気で怒ってない。彼女自身と、あの人に恥を掻いてほしくないから怒っただけ。たぶん、あの人は気づいてない。  あの人、嬉しそう。ご主人様と話をして、とても嬉しそうな表情をしてる。それは私にとっても嬉しいこと。でも、少し胸が痛む。  ううん、駄目。我慢しなきゃ駄目。私は、あの人の幸福のためにある存在。そんな私が、あの人の幸福の邪魔をしちゃ駄目。だから私は、この胸のモヤモヤにも耐える。  あの人が幸せであればそれでいいんだから。あの人が幸せであれば、私はどうなっても構わない。  私は従者。私があの人を守る。その為だったら、私がどんな風になっても構わない。  あ、いつの間にか授業が終わってた。あの人を見てると、すっかり時間の流れが早くなる。 「今日も見てたのね」  見られてたみたい。声の主は、私とは逆の豊満な体を持つ赤い髪が特徴のトライアングルメイジ。私の親友。 「健気ね……彼には相手がいるっていうのに」  わかってる。 「叶わぬ恋かもしれないのよ?」  え? 「それでもいいなら、私は応援するけどね」  ありがとう。……じゃなくて、別に私はあの人とそういう関係になりたいわけじゃない。ただ、あの人の幸せを守りたいだけ。  私の親友は、それがわかってないみたい。私があの人を狙ってるって思ってる。そんなんじゃないのに……。  確かに少しはそういう思いもあるけれど、私が一番に願ってるのはあの人の幸せ。好きな人と一緒に、好きな風に生活を送ること。少しくらい夢も見たりするけれど、それ以上に私が願うのはそれ。 403 名前: お姫様の憂鬱 [sage] 投稿日: 2007/09/24(月) 00:52:22 ID:RYn9H+bN 「この犬ーーーーーー!!!」  突然聞こえてきたのは、あの人のご主人様の叫び声。その後すぐに、あの人の悲鳴と爆発音。たぶん、いつもどおりの折檻。折檻に伝説の力を使うなんて、ずいぶん無駄な使い方だと思う。  大丈夫かな? あの人、無事でいるかな? あの爆発音が聞こえてくるたびに、私は心配になる。怪我とかしてなければいいんだけど。  声と爆発音が聞こえてきたのは広場から。私は窓から、広場の様子を見る。  やっぱり……。  あの人は、ボロ雑巾みたいに倒れてる。そして倒れてるあの人を、そのご主人様はこれでもかというほど蹴ってる。  許せない。  折檻が終わって、あの人のご主人様は怒りながら自分の部屋に戻っていった。あの人は気絶して、意識を取り戻してない。  どうしてそんな痛い目にあってまで、あの人はついていくんだろう。どうして痛い思いをしてまで、あの人はついていくんだろう。  ううん、わかってる。疑問に思うのが間違ってるくらい。  あの人は、優しいから。あの人は、とても優しすぎるから。だから守ろうとする。だから自分の身を犠牲にしても、守ろうとする。  でも、あの人がご主人様を守るのは少し理由が違う。使い魔というだけだからじゃなく、別の感情があるから……。  ……また、胸が痛んだ。  あの人は、今が一番幸せ。痛い思いをしても、ご主人様と一緒にいられるのが幸せ。  でも……。  もしも……それが幸せでなくなったなら……。  私が……。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

人気記事ランキング
目安箱バナー